~北海道の夕張市を始め、日本全国の地方自治体が破産の危機に直面している。なぜこうした事態が発生したのだろうか。~



それには資本主義社会における「会社」というものを考えてみる必要がある。



会社というものは営利企業である。出来るだけ利益を出すことを目標としている。目先だけ考えれば、働いている者に支払う給与が安ければ安い程、当然会社経営者の手元に残る利益は増える。人件費のコストが安くなった事により、コストを低く押さえ利益を増加させる事が、会社経営者としては手っ取り早く利益を出す方法に見える。その結果、当然そう言った行動をとることになる。(日本経営の神様と呼ばれた松下幸之助はそう言った経営行動の逆をした、彼には大局が見えていた。)

一企業の行動としてはこれが(短期的には)「合理的な行動」と言えよう。



しかし、働いている者はもらった給与で食料品や自動車等、様々な商品を買う消費者であり、その給与は消費に回り、「商品を買う力」=購買力になる。

企業が自分の利益を増加させるために、働いている者の給与を低く押さえようとする「当然の合理的な行動」が、社会全体では購買力の低下=商品が売れ残るという結果になる。そのため商品をアメリカや中国に売り込む途轍もない努力をすることになる=円借款や米国債の購入、あるいはODAにような資金貸し付け、資金提供と言った「シジフォスの神話」のような努力をすることになる。つまり、現在、日本は国内で節約した以上のお金を海外に貸し付けて商品を買ってもらっているのである。当然、それにも限界がある。その結果、企業は自分で自分の「首を絞めて」いく事になる。(上場企業が最高益を上げるなかで日本国民全体の可分所得が一年に10兆円をも減少しているのはその事を意味している。)企業は商品が売れ残れば、当然生産を止める。働いている者をクビにし、あらたに人間を雇う事を止める。働いている者はクビになり、給与が入らなくなり、ますます消費しなくなるから購買力は落ちる。商品はますます売れ残る。企業は生産を止め、要らなくなった人間をクビにする事でますます商品が売れなくなる。

この道の行く先には企業倒産が待っている。

企業はアルバイト等を使い人件費コストを下げる事で、長期的には自分で自分の会社を「倒産に追い込んでいる」事に気付かない。人件費コストを下げるという目先の利益しか見ない。商品が売れ残ったので従業員のクビを切るという場当たり的な対応しかできていない。

こうした循環を通して社会全体に失業者があふれ大不況が来る。これが資本主義社会の構造循環である。



10年以上に渡った平成大不況等、定期的に大不況が来る理由はここにある。

利益を追求するという、企業としてはある意味「当然」の合理的な行動、エゴが社会全体の利益を損なう結果になる。

こうした不況を解決する唯一の手段は戦争である。戦争はある意味で最も資本主義社会においては効率の良い公共事業と言えよう。

戦争になれば毎日戦車やジープが破壊される。自動車、トラック、ブルドーザー等の工場は、ジープ、装甲車、戦車の工場になり、衣類企業は毎日破損する=需要の大きな軍服の工場になる。軍隊を動かす食料やガソリンも要る。軍隊は「何も生産せず」、ひたすら物を破壊し消費する。企業は売れ残った商品の在庫処分が出来る。アルバイト等を使い人件費コストを安く押さえるという企業の行動が戦争を生み出すと言っても過言ではない。



つまり、資本主義社会における究極の不況の解決方法が戦争なのである。



アメリカを中心とする軍産複合体は「北朝鮮が悪い」「イラク、イランが悪い」・・様々な理由を付けて、定期的に戦争をやろうとしている。本当は「北朝鮮、イラン、イラク」などどうでも良いのだ。ただ戦争をやらないと経済が回らなくなっているのだ。もし、アルバイトを禁止し正社員のみとし、世界中で最低賃金を月給30万円にし、違反した企業経営者を「戦争引き起こし罪」で終身刑にすれば、戦争は無くなり世界中は大好景気を継続し世界中の人間の生活が豊かになり、アフリカ等の貧困は消えて無くなるはずである。

・・・だがそれは有り得ない。



なぜなら、企業はアルバイト等で人件費コストを減らすという「目先」の利益しか頭になく、社会全体の事を考えて行動しないからである。彼等、経営者はアルバイトの若者達が月給10万円で貧乏な生活をし、結婚も出来ず将来への夢も希望も失い、また世界各地で人間がバタバタ餓死し、戦争で人間がバタバタ死んで行く事など眼中にないのだ。

そして一生懸命経営してきた自分の会社が現在の資本主義社会の構造欠陥による不況で倒産する運命であることを理解しようとしないのだ。



このようにして1930年代の大不況を「解決」するため第二次世界大戦が起こされ、大量の人間が殺害された。

企業が「人件費コストを押さえる」事を禁止もせず戦争も避けたい・・そう考えたイギリスの経済学者ケインズは、「人件費コストを押さえた結果」の売れ残り商品を、国が「買い付け」消費する事を思い着いた。これが有効需要の創出:公共事業である。

余った商品を国が買い付け、公共事業の名前で全国に道路や巨大な橋、ビル、公民館等をどんどん建設すれば良い。道路も橋も公民館も「公共」の役に立つのだから

良いであろう。建設費用が税金では足りなくなれば、借金すればよい。



超単純化すると、企業は生産された商品=価値1000万円分に対し、給与300万円を従業員に支払い、給与をもらった従業員は300万円を消費して商品を買い、生活する。この700万円分の商品が「余っている」のであり、サラリーマンの給与300万円に課税した300万円のごく一部の金額の所得税や、企業利益700万円に課税した700万円のごく一部の金額の法人税で、700万円分の「売れ残り」を全て購入することは不可能であることは原理的に明らかである。(企業のその他のコストは便宜上除外)そして700万円の「売れ残り」を毎年購入した政府と地方自治体の借金が、700万円と300万円の「ごく一部」を税金として得た政府、自治体の収入で将来的に返済出来ない事=国家と地方自治体が将来破産する事は原理的に明らかである。



つまり、ケインズの政策は「その場しのぎの先送り」でしかなったことになる。



公共事業を行う国や地方自治体の借金は「必然的」になる。経済成長し経済の規模が大きくなれば成る程、「人件費コストを押さえた」結果の「売れ残り」の規模も大きくなる。「本当に必要な公共事業」だけでは「売れ残り」を処理し切れない。

地方の誰も利用しない道路まで舗装し、人口500人の町に2000人を収容出来る

オペラハウスを建設する事になる。

500人の住人の内、オペラが好きな人間など1人もいなくても「そんな事はどうでも良い」。「売れ残った」セメ ント、鉄骨、ダンプカー・・商品を何とかして消費「しなくてはならない」からだ。しかし、国も地方自治体もついに借金で破産状態になっってしまった。

小泉総理の時代に「公共事業はもう止める、道路建設、新幹線は止める」と大合唱が始まった。だが元々公共事業は戦争を回避するために始まった。

公共事業がストップすれば、次はアメリカのように戦争という選択肢しかない。だから、安倍政権では「憲法を改正し軍隊を認めろ」と大合唱が始まったともみることもできるのである。もっともハイパーインフレにする解決策もあるが、

しかし、ドイツの地域通貨リーフのように、地域経済が多国籍企業の世界市場=グローバリズムから自律してしまえばこの問題は根本的に解決する。

「売れ残り」商品の在庫処理のために、不必要な公共事業や戦争を行う必要は全くなくなる。作り過ぎて「売れ残った」お菓子マドレーヌは、リーフ市場の友人の八百屋、肉屋のオジサン、オバサンに無料でプレゼントすれば良いのである。

お返しに「売れ残った」野菜や肉をくれるであろう。今晩の夕食の材料が無料で入手出来るだけである。

このように物の循環をさせれば、どうやっても戦争など起こりようがない。穀物や材木等、生産し過ぎ売れ残った物資は、不作の年に備えて倉庫に保管しておけば良い。これが不作の時のための「保険」になる。



多国籍企業の世界市場では、過剰生産は戦争と無用な公共事業=環境破壊の原因となるが、地域自律経済では不作の備え=保険となる。戦争という不安の原因は、万一への備えという安心の原因となる。悪は善に転換する。過剰生産=富が安心を与えるのは 当然であり、過剰生産が戦争を生む多国籍企業が支配している現在の資本主義の限界を示している。

多国籍企業にとって都合の悪い地域自律経済の確立こそが真の意味での21世紀への挑戦ではないかと思われる。



*経済学者シルビオ・ゲゼルは、時間と共に価値が減る貨幣を提唱した。1ヶ月に10%価値が減れば、発行年月日の記載された紙幣を見て、発行から3ヶ月経過した1万円札は、マイナス30%=7000円の商品しか買えない事になる。

紙幣は蓄積すればする程価値が減る。早くお金は使ってしまわなくてはならない。

10ヶ月経過すれば100億円の財産はゼロになる。

大金持ちの存在を認めず、企業の「蓄積」を認めない。つまり過剰生産と在庫が無くなり戦争を起こす必要が無くなる。

第二次世界大戦後、ゲゼルから学んだ経済学者ケインズ等は、各国の外貨保有=利益を自動的に「バンコール」という国際通貨に置き換え、時間と共に無価値になる国際通貨制度を提唱した。第二次世界大戦を反省し、2度と戦争を起こさせないためだ。

もちろん世界中の金持ち、大企業、そして金持ちをバックに持つ政治家達に、力づくでバンコール・プランはつぶされてしまった。しかしこの通貨の「あり方」は、国際通貨としても地域通貨のプランとしても、今後極めて有効である

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