9月 082010
*たまには小生の市議会の活動の一端をお送りします。本日、本会議で、一般質問した内容です。
現在、全国の自治体病院の70%は、10年後、今の形態では存続できないと言われています。しかし、市長をはじめ、市役所職員にはその危機感はないようです。
2010年 9月 一般質問 (山本正樹)
<豊橋市民病院について>(序文)
現在、1961年(昭和36年)よりスタートした世界に誇るべき国民皆保険制度による日本の医療提供制度が危機に瀕しています。そしてこのことは、妊婦の病院たらい回し、受け入れ拒否、コンビニ受診、一部地域での医療崩壊等を数年前から、マスコミが報道するようになって、多くの人が知ることとなりました。
ところで、日本は世界一の長寿国にもかかわらず、医療費水準は、OECD国(ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め30ヶ国の先進国が加盟する国際機関)の(GDP比)比較でも低い方に分類されます。そして、WHO(世界保健機構)が発表する健康達成度の総合評価でも日本は世界一位です。ちなみに、アメリカは、健康達成度の総合評価15位、ドイツは14位です。このことは、日本人が、世界的に見て、極めて少ない費用で、レベルの高い医療を、国民皆保険制度によって、誰でも公平に、どの医療機関でも受けている現実を反映しています。
ここに保険会社AIUが調査した盲腸で手術入院した場合の、都市別治療費用というデータがあります。それによりますと、ニューヨーク243.9万円、ロサンゼルス193.9万円、香港152.6万円、ロンドン114.2万円、台北64.2万円、日本36万円であります。もちろん、この数字は保険適用前の数字ですが、日本の医療費が、世界的にいかに低く抑えられているかが、よくわかるデータであります。
また、一頃、「医師の偏在」という言葉でかたづけられた日本の医師不足は、OECDのヘルスデータを見ても明らかです。人口千人当たりの医師数は、日本2.0人、ドイツ3.4人、フランス3.4人、アメリカ2.3人です。また、病床100床当たりの医師数は、日本13.7人、ドイツ37.6人、フランス42.5人、アメリカ66.8人となっています。また、これも興味深いデータ(OECDのヘルスデータ)ですが、国民一人当たりの一年間の医療機関の受診回数は、14.1回で日本が世界一位、イギリスは5.2回と日本の三分の一となっています。医師の数が、少なくて受診数が多いのですから、診察時間が短くなるのは、当たり前と言うことにもなりますし、昨今、言われている医師の過重労働問題も容易に推測できるデータでもあります。
私の友人の心臓外科医も、同僚の伊藤議員も真っ青になるぐらいのグルメにもかかわらず、現在、千葉県の病院の勤務医をしておりますが、病院では、夜勤の時も含めて、病院の食事はほとんど、おにぎりだと言っておりました。それほど、忙しいということだと思われます。
以前、米国の医療保険改革に情熱を燃やしていたヒラリー・クリントンによって組織された米国の日本視察団が「日本の医療は、医療従事者の聖職者さながらの自己犠牲によって成り立っている」と報告したとの話を裏付けるデータでもあります。
ところで、アメリカでは、健康保険の未加入者が4,600万人もいます。また、健康保険に加入していても大きな病気にかかると保険が適用されない厳しい現実があるために、「百貨店の女性店員が脳腫瘍と誤診され、34万ドルの手術費が払えないで傷心の旅」に出るというような悲喜劇(ラスト・ホリディ)がハリウッド映画に時々描かれ、その実態を知ることができます。現実にアメリカでは、医療費を捻出するための借金が自己破産の最大の原因になっていることもこれからの日本の医療を考える上で、注視すべきところです。
また、イギリスにおいては、サッチャー保守政権による医療費抑制政策が招いた、一般医療の場合は、半数は2日以上待機、専門医療の場合は、腫瘍のエコー検査を半年も待つような状況になった医療崩壊の経験から、医療の「評価と説明責任の時代」:第三次医療革命の時代に入ったとも言われ、現在、医療費拡大政策に転じています。今後、どのような成果が上がるか注目されるところであります。
一方、「政権交代」があったとは言え、現在、日本の医療制度は、後期高齢者医療制度、一つをとっても混乱の中にあります。9月6日の日本経済新聞の朝刊にも掲載されておりましたが、前鳥取県知事、片山善博慶応大学教授は、「公務員は、国保に入れ」という大胆な提言をしています。
このような国の医療制度が先行き不透明な状況の中でも、豊橋市民病院は、東三河の基幹病院(最終病院)として地域の安全・安心のために医療を確保し続けるという責務があります。そのような観点から以下、7点お伺いします。
(1)医療には、患者への医療サービス提供の側面である医療提供制度と、それを支えるお金の側面である医療保険制度との2つがある、両方が揃って初めて医療 制度は機能する。しかしながら、日本の医療制度改革と言えば、医療提供制度 より、医療保険制度の改革という名の変革ばかりが、話題になってきた。そして、医療保険制度の改革と言えば、患者の自己負担費用の引き上げや診療報酬 の切り下げ(本年度は若干引き上げられたが)など公的医療費抑制のための改革を意味していた。このような現状を本市はどのように考えているのか。
(2)県の「公立病院等地域医療連携のための有識者会議」「地域医療連携ワーキング」等で、再編、ネットワーク化についていろいろ検討されていることは、承知しているが、広域連携のなかで本来は、もっと具体的、効率的な役割分担をそれぞれの自治体の病院間ですべき時期に来ていると考えるが、その点をどのように考え、東三河のリーダー市としてどのように行動していくつもりなのか。
(3)東三河の基幹病院(最終病院)としての位置付けを現在、本市はどのように考えているのか
(4)現在、総務省は、地方公営企業法の改正に伴い、「減資」制度の導入について検討している。利益剰余金の処分や減資が自治体の判断で自由にできるようになれば、累積欠損金の額も大きく変わってくる。その点について本市は、どのような認識を持っているのか。
(5)全国で自治体病院の70%が赤字である。経営改革プランの中にも、「地方公営企業法の全部適用、地方独立行政法人、指定管理者制度」との経営形態が示されていたが、このほかには、社会医療法人による経営等も考えられないこともないが、今後、病院の自主的な経営判断の尊重や責任の明確化のために経営形態、そのものを検討していくつもりは、あるのか。
(6)経営改革プラン、「効率的・効果的な病院経営の推進」のなかで、老朽化した医師公舎など、一部未利用資産について売却も視野に入れるなど有効活用を検討するとある。具体的な動きはあるのか。
(7)市長マニフェストにあった市民病院の交通アクセスについて現在、どのような改善策を考えているのか。
<参考資料>日本経済新聞 9月6日 朝刊
~インタビュー領空侵犯~
公務員は国保に入れ 保険財政、一気に改善
慶応大学教授 片山善博
~公務員専用の医療制度を廃止すべきだとのお考えのようですね。~
「そもそも公務員が自分達だけの特別の仕組みを持っている事がおかしい。公務員は国民の生活を安定させるために、奉仕する立場のはず、それなのに一般の国民と同じ制度に入ってないのでは十分な保証が受けられない、いい生活ができないといわんばかりである」
「日本の公的医療保険は、大企業の従業員などが入る健康保険組合、中小企業従業員の協会けんぽ(全国健康保険協会)、公務員の共済組合などに分かれている。このどれにもはいらない自営業者らが、市町村が運営する国民健康保険(国保)に入ります。ただし、医師や弁護士などには自前の国保組合という制度があります。
要するに国保には零細自営業者や退職した高齢者、無職の人達が多く加入し、働いて保険料を納める人が少ないという構造的問題がある、公務員はこの国保に加入するようにすべきです。」
~公務員だけがなぜという不満も出そうです。~
「保険制度の原点に戻るべきです。保険は老いも若きも富める人も貧しい人も1つの制度にはいってこそ安定します。職業に関係なく地域単位ですべての人が加入する制度を作るべきなのです。その理念に向かってできることから始めるべきです。その第1ステップが公務員の国保加入なのです。」
「公務員は自分や家族にもかかわるので、問題だらけの国保をよくしようと真剣になるでしょう。安定した収入がある全国300万人を超える公務員が国保に入れば、国保の財政状況の改善に大きな力となります。国保を助けるために、国保から75歳以上の高齢者を切り離して後期高齢者医療制度という評判の悪い仕組みをつくったわけですが、こんな対策も不要になるでしょう。そのうち市町村国保は他の制度加入者がうらやむほどの安定した制度になり、会社員も国保に移ってきて、最終的には、すべての人が同じ制度に加入する一元化が完成するのです。」
~実際には障壁がたくさんありそうです。~
「この改革は一石二鳥どころか、三鳥の改革なのです。一つは国保の問題の解決。もう一つは公務員が国民と同じ立場になるという公務員制度改革の実現。そして共済組合という組織を大幅に縮小させる行政改革の実現です。」
「日本が置かれた難局を乗り切るためには、まずは自らの身を切る。政府・民主党は内輪の争いをしている場合ではなく、それぐらいの覚悟を示してもらいたいものです。それでこそ、国民も政治が変わったと思うでしょう。」
(聞き手から)
政府の公的医療保険制度に関する説明資料では、共済組合についての記述が少ないことが珍しくない。これ一つとっても「優遇制度を隠しているのでは」との疑念を招く。片山氏の提案を実現するには課題が多いが、国民と同じ立場で国民のために働くという公務員のあり方が今こそ求められているのは、確かだろう。
(編集委員 山口 聡)
片山 善博(かたやま よしひろ、昭和26年(1951年)7月29日 – )
日本の自治官僚、政治家。慶應義塾大学大学院教授、鳥取大学客員教授。行政刷新会議議員。鳥取県知事(1999年-2007年、2期)。
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