7月 112012
財務省の勝 栄二氏に踊らされて、民主党が政権交代を果たしてたった三年で、崩壊への道を歩むことがほぼ、決定づけられたようである。この政党ができた最大の功労者は、おそらく一番資金を提供したと巷間言われている鳩山由起夫氏であろう。今回の騒動で、その彼が半年の党員資格停止である。
<勝 栄二 氏>
そして、その豪腕で、この政党に政権を取らせた男=小沢氏を今回、民主党の執行部は実質上、追い出してしまった。意味するところは、民主党、終わりへの道の始まりである。ところで二年前に、小沢一郎という政治家をマスコミ、司法が、これほど「人物破壊キャンペーン」を繰り広げるのか、あまりに不可思議で下記のようなレポートを書いたことがある。
<以下、引用>
「小沢一郎は、なぜこれほどマスコミに叩かれるのか?」
小生は、小沢一郎という政治家と面識もないので、彼についての私的な感情は、全くない。しかし、小沢一郎という政治家がこれほどマスコミに叩かれるのには、不可思議である。特に今回の民主党の代表選を巡る大手マスコミの世論調査の数字とネットでの世論調査との数字の大きな違いは余りに不可解である。今回は、その裏にどんな思惑が隠されているのかを考えてみたい。
民主党の代表選挙は、これまでに前例のない展開になっている。新聞・テレビなどの大手メディアと、それ以外のメディア、特にネット上の世論が大きく分かれているのだ。9月6日に発表された朝日新聞の世論調査では、菅直人首相支持が65%で小沢一郎前幹事長が17%、同じ日の読売新聞の調査でも菅支持66%、小沢支持18%で、これだけ見ると大勢は決したように見えてしまう。ところがネット上の形勢は逆である。
例えばヤフー!の「みんなの政治」の投票では、菅氏29%に対して小沢氏が58%(7日現在)。4日に出演したニコニコ動画の投票では、21.5%対78.5%で小沢支持だった。ライブドアのBLOGOSのようなサイトでも、「想像を超えて雄弁だった小沢一郎の街頭演説」とか「小沢一郎さんの選挙の巧さ。」といった記事が上位に並び、ほぼ小沢支持一色になっている。あまりに都合が悪くて消された読売オンラインの民主代表選の世論調査の数字は、小沢76%、菅直24%であった。あまりに不自然である。意図的なものが隠されている判断するのが、自然であろう。
ところで、以下、興味深い記事を紹介する。
<エレクトリックジャーナル 2010 2月18日号より>
「小沢潰しを狙う三宝会」
ところで、竹下登、金丸信両氏、それに小沢一郎といえば、旧経世会の三羽烏といわれていたのです。竹下、金丸とひとくくりにしていうと、金のノベ棒によって象徴される金権体質の政治家というイメージがあります。そして、小沢はそのDNAを引き継いでいる現代の金権体質の政治家の代表ということになってしまいますが、この見方は完全に間違っています。日本の政治の世界はそんなにきれいなものではありません。権力をめぐって権謀術数が渦巻き、政官業と大マスコミが癒着し、己の利益のためなら、マスコミを使って世論操作でも何でもするというひどい世界になっています。ですから、本気でこれを改革しようとする政治家があらわれると、政官業と大マスコミが謀略を仕掛けて追い落とすことなど、当たり前のように行われるのです。それは現在でも続いているのです。現在そのターゲットとされている中心人物が、小沢一郎なのです。彼が本気で改革をやりそうに見えるからです。それがウソと思われるなら、ぜひ次の本を読んでいただくとわかると思います。平野貞夫著 『平成政治20年史』/幻冬舎新書
小沢は田中角栄にかわいがられた政治家であることはよく知られています。田中角栄は小沢に亡くした長男を見ていたのです。しかし、それを快く思わなかった人は少なくないのです。 その中の一人が意外に思われるかもしれないが、竹下登氏なのです。
村山首相が政権を投げ出し、橋本龍太郎氏が後継首相になると、竹下氏は「三宝会」という組織を結成します。三宝会の本当の目的は、小沢を潰すことなのです。
もっと正確にいうと、自分たちの利権構造を壊そうとする者は、小沢に限らず、誰でもそのターゲットにされるのです。なぜ、小沢を潰すのでしょうか。それは小沢が竹下元首相の意に反して政治改革を進め、自民党の利権構造を本気で潰そうとしていることにあります。この三宝会について平野貞夫氏は、その表向きの設立の目的を次のように書いています。
(三宝会の)設立の目的は「情報を早く正確にキャッチして、(中略)、行動の指針とするため、(中略)立場を異にする各 分野の仲間たちと円滑な人間関係を築き上げていく」というも のだった。メンバーは最高顧問に竹下、政界からは竹下の息が かかった政治家、財界からは関本忠弘NEC会長ら6人、世話 人10人の中で5人が大手マスコミ幹部、個人会員の中には現 ・前の内閣情報調査室長が参加した。要するに新聞、テレビ、 雑誌などで活躍しているジャーナリストを中心に、政治改革や 行政改革に反対する政・官・財の関係者が、定期的に情報交換 する談合組織だ。
平野貞夫著 『わが友・小沢一郎』/幻冬舎刊
この三宝会によって、小沢は長年にわたってことあるごとに翻弄され、しだいに悪玉のイメージが固定してしまうことになります。「剛腕」、「傲慢」、「コワモテ」、「わがまま」、「生意気」など、政治家としてマイナスのイメージは、三宝会によって作られたものなのです。 なお、三宝会のリストはいくつかネット上に流出しており、見ることができます。その会員名簿のひとつをご紹介します。
http://www.rondan.co.jp/html/news/0007/000726.html
(*大変おもしろいリストを見ることができます。ご高覧下さい。)
この会は現在も存続しているといわれており、上記の名簿の中には、現在、TBSテレビの「THE NEWS」のキャスターである後藤謙次氏(共同通信)の名前もあるのです。後藤謙次氏のニュース解説は定評がありますが、こと小沢に関してはけっして良いことを言わないことでも知られています。もっとも現在のマスコミにおいて、小沢を擁護するキャスターやコメンテーターは皆無でしょう。口を開けば「小沢さんは説明責任を果たせないなら、辞任すべきだ」――もう一年以上こんなことが飽きもせず続いているのです。
昨年来の小沢捜査で、唯一小沢に対して比較的擁護すべき論陣を張っていたのはテレビ朝日系の「サンデープロジェクト」だけです。それは、元検察官で名城大学教授の郷原信郎氏の存在が大きいのです。郷原氏は2009年の大久保秘書逮捕のときからこの捜査を最初から無理筋の捜査であり、容疑事実からして納得がいかないと断じていたのです。郷原氏のコメントは実に論理的であり、納得のいくものであったのです。それは、今年になってからの小沢捜査でも変わらなかったのです。しかし、他局――というより、「サンデープロジェクト」以外の番組は、「小沢=クロ」の前提に立って、それは徹底的に小沢叩きに終始していたのです。一方、「サンデープロジェクト」以外の他局の代弁者は、元東京地検特捜部副部長のキャリアを持つ弁護士の若狭勝氏です。サンプロ以外のテレビにたびたび出演し、当然のことながら、若狭氏は一貫して検察擁護の立場に立って主張したのです。
「サンデープロジェクト」の郷原氏に対して、同系列局も含めて他局はすべて若狭氏なのです。もっとも「サンデープロジェクト」では、1月29日深夜「朝まで生テレビ」でこの2人は激突しています。1対1の対決ではなく、小沢クロ派――平沢勝栄氏山際澄夫氏、それに若狭氏、これに対して、小沢擁護派は細野豪志氏、大谷昭弘氏と郷原氏という強力な対決であり、勝負にならなかったようです。しかし、ほとんどのテレビ局が反小沢というのは本当におかしな話です。
(引用終わり)
*田中紹昭の国会探検より
「あぶりだされるこの国の姿」
民主党代表選挙によってこの国の姿があぶりだされている。「官僚支配」を続けさせようとする勢力と「国民主権」を打ちたてようとする勢力とがはっきりしてきた。
アメリカは日本を「異質な国」と見ている。「異質な国」とは「自由主義経済でも民主主義でもない国」という意味である。ある知日家は「日本は、キューバ、北朝鮮と並ぶ地上に残された三つの社会主義国の一つ」と言った。またある知日家は「日本の司法とメディアは官僚の奴隷である。そういう国を民主主義とは言わない」と言った。
言われた時には反発を感じた。「ロシアと中国の方が異質では」と反論したがその人は首を横に振るだけだった。よくよく自らの国を点検してみると言われる通りかもしれない。何しろ百年以上も官僚が国家経営の中心にいる国である。財界も政界もそれに従属させられてきた。「官僚支配」が国民生活の隅々にまで行き渡り、国民にはそれが当たり前になっていておかしさを感じない。
北朝鮮には顔の見える独裁者がいるが、日本には顔の見えない「空気」がある。「空気」に逆らうと排斥され、みんなで同じ事をやらないといけなくなる。その「空気」を追及していくと長い歴史の「官僚支配」に辿り着く。それが戦後は「民主主義」の衣をまとった。メディアは「官僚支配」を「民主主義」と国民に信じ込ませてきた。
確かに複数の政党があり、普通選挙が行なわれ、国民の意思が政治に反映される仕組みがある。しかし仕組みはあっても国民の意思で権力を生み出す事が出来ない。どんなに選挙をやっても自民党だけが政権につくカラクリがあった。社会党が選挙で過半数の候補者を立てないからである。つまり政権交代をさせないようにしてきたのは社会党であった。表で自民党、裏では社会党が協力して官僚は思い通りの国家経営を行ってきた。
民主主義とは与党と野党が権力闘争をする事である。そうすれば国民が権力闘争に参加する事が出来る。選挙によって権力を生み出すことが出来る。ある時はAという政党に権力を与え、次にBという政党に権力を与える。AとBは権力を得るために切磋琢磨する。それが官僚にとっては最も困る。異なる二つの政策の政党を両方操る事は出来ないからだ。それが昨年初めて政権交代した。
官僚の反撃が始まる。政権与党に分裂の楔を打ち込む工作である。一つは「政治とカネ」の攻撃で、もう一つは野党に昨年の選挙のマニフェストを批判させる事で民主党の分裂を誘った。最大の攻撃対象は小沢一郎氏である。それさえ排除できれば、民主党も自民党も手のひらに乗せる事が出来る。
小沢なき民主党は自民党と変わらなくなる。それが官僚の考えである。案の定、昨年の民主党マニフェストが批判されると菅総理は自民党と似たような事を言い始めた。
従って民主党代表選挙は「政策論争」の選挙になる筈だった。積極財政を主張する小沢氏と緊縮路線の菅氏の政策競争である。小沢氏は政策を掲げて路線も明確にした。
ところが菅氏が路線を明確にしない。「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と経済政策としては全く意味不明の事を言いだし、次いで「政治とカネ」を争点にした。
積極財政と緊縮財政は、かつて自民党内の党人派と官僚出身者がそれぞれ主張した事から、「政治主導」か「官僚主導」かに分類する事は出来る。また総理就任以来の菅総理の言動は財務省官僚のシナリオで、かつての竹下元総理と同じである。大蔵省の言う通りの政権運営をした竹下氏を金丸氏や小沢氏が批判して経世会は分裂した。
それだけ見ても小沢VS菅の争いは「政治主導」と「官僚主導」の戦いだが、菅氏が「政治とカネ」を持ち出した事でさらにその意味が倍加された。「政治とカネ」はロッキード事件以来、検察という行政権力が政界実力者に対して犯罪とも思えない事案をほじくり出し、それをメディアに騒がせて国民の怒りを煽り、無理やり事件にした一連の出来事である。
小沢氏の疑惑も何が事件なのか元司法担当記者である私にはさっぱり分からない。騒いでいるのは検察の手先となっている記者だけだ。メディアは勝手に小沢氏を「クロ」と断定し、勝手に「政界追放」を想定し、勝手に「総理になる筈がない」と決め付けた。小沢氏が代表選に立候補すると、自分の見立てが外れて慌てたのか、「あいた口がふさがらない」と相手のせいにした。無能なくせに間違いを認めないメディアのいつものやり口である。
メディアはこれから必死で小沢氏が総理にならないよう頑張るだろう。世論調査をでっち上げ、選挙の見通しをでっち上げ、足を引っ張る材料を探し回る。世論調査がでっち上げでないと言うなら、いくらの費用で、誰に調査させ、電話をした時間帯、質問の順序、会話の内容などを全て明らかにしてもらいたい。街頭インタビューと同様、あらかじめ決めた結論に沿ったデータを作る事などメディアにとっては朝飯前だ。
メディアが頑張れば頑張るほどメディアの実像が国民に見えてくる。メディアは今自分があぶりだされている事に気づいていない。自らの墓穴を掘っている事にも気づいていない。
「政治とカネ」が裁判になると「事実上は無罪だが有罪」という訳の分からない判決になる事が多い。しかし政治家は逮捕される前からメディアによって「クロ」にされ、長期の裁判が終る頃に「事実上の無罪」になっても意味がない。アメリカの知日家が言う通り、この国の司法は民主主義国の司法とは異なるのである。
それを裏付けるように最高裁判所が9月8日、鈴木宗男氏に「上告棄却」を言い渡した。民主党代表戦挙の1週間前、北海道5区補欠選挙の1ヵ月半前である。多くの人が言うように一つは小沢氏を不利にする効果があり、もう一つは自民党の町村信孝氏を有利にする効果がある。最高裁の判決は二つの政治的効果を狙ったと疑われても仕方がない。疑われたくなければ10月末に判決を出しても良かったのではないか。
北海道5区の補欠選挙への鈴木氏の影響力は大きいと言われる。自民党最大派閥の領袖が民主新人に敗れるような事になれば町村派は消滅する。官僚にとって都合の良い自民党が痛手を受ける。だからその前に判決を出した。民主党代表選挙に関して言えば、その日開かれた菅陣営の会合でいみじくも江田五月氏が言及した。「だから菅さんを総理にしよう」と発言した。最高裁判決は菅氏を応援しているのである。
司法もまたその実像を国民の前にさらしている。行政権力に従属する司法が民主主義の司法なのか、国民はよくよく考えた方が良い。それを変えるためには国民の代表が集う国権の最高機関で議論してもらうしかない。
江田氏が最高裁判決に言及した菅陣営の会合での馬渕澄夫議員の発言にも驚いた。「民主主義は数ではなく、オープンな議論だ」と言ったのである。すると民主党議員の間から拍手が巻き起こった。申し訳ないが民主主義を全く分かっていない。
重大な事案をオープンな場で議論する国など世界中ない。どんな民主主義国でも議会には「秘密会」があり、肝心な話は密室で行なわれる。
日本の国会が異常なのは「秘密会」がない事だ。重大な話は官僚が決め、政治家に知らされていないので「秘密会」の必要がない。オープンな場で議論できることは勿論オープンで良いが、それだけで政治など出来る訳がない。「オープンな議論」を強調する議員は「官僚支配」を認めている話になる。政治主導を本当にやるのなら、「オープンな議論」などという子供だましをあまり強調しないほうが良い。
民主主義は数である。国民の一票が大事な制度だからである。それをおろそかにする思想から民主主義は生まれない。政策を決めるにも一票が足りずに否決される事を考えれば、数がどれほど大事かが、分かる。それに加えてアメリカでは「カネ」が重視される。「カネ」を集める能力のない人間は政治家になれない。
菅陣営にはそういうことを理解する人が少ないようだ。この前の国会でも「オバマ大統領は個人献金でヒモ付きでないから、金融規制法案も提案できるし、核廃絶を言う事も出来る。企業の献金を貰っていたらそうはならない」と発言した民主党議員がいて、菅総理がそれに同調していた。
とんでもない大嘘である。オバマに対する個人献金は全体の四分の一程度で、ほとんどはウォール街の金融機関からの企業献金である。企業から献金を受ければ政治家は企業の利益のためにしか働かないというのは下衆の考えで、献金を受けても政策はそれと関係なく実行するのが政治家である。核削減も平和のためと言うより米ロの交渉に中国を加えたいのがオバマの真意だと私は思うが、とにかく献金を受けるのが悪で貰わないのが善という驚くほど幼稚な議論をこの国は続けている。
政治家が幼稚であれば官僚には好都合である。このように民主党代表選挙は図らずもこの国の様々な分野の実像を見せてくれる契機になった。そして改めて対立軸は「官僚支配」を続けさせる勢力と、昨年の選挙で初めて国民が実感した「国民主権」を守る勢力との戦いである事を認識させてくれる。
(引用終わり)
ところで、菅政権は小泉政権同様に財務省主導の経済政策で、「財政再建(緊縮財政)・金融引き締め・構造改革」路線であり、外交・安全保障政策では「対米追従」路線である。
これに対して、小沢氏は、経済政策では「財政拡張(積極財政)・金融緩和・平等主義(分配主義)」路線であり、外交・安保政策では「対米自立アジア重視」路線である。
いずれにせよ、今回の民主党代表選を通じて、菅首相と小沢氏の思想・政策の違い、換言すれば、民主党内の相反する思想・政策の違いが鮮明になるのは歓迎すべきことなのである。
昨今の円高への対応をはじめ、これまでの民主党政権の経済政策を見ると、民主党が分裂して、政界再編に進むことこそが、政策のねじれを解消し、政局ばかりの日本の政治が、少しでもまともな方向に行くことに繋がるはずである。
<以上、引用終わり>
上記のレポートに書いてある事情により、当然のごとく、日本のマスコミは今回の小沢一郎氏の行動にも批判的である。離党者が50人を切ったことを指摘して「小沢氏の力も落ちた」などと相変わらずトンチンカンな論評をしている。
細川総理を誕生させた1993年、小沢氏はたった44人で自民党を離党したのである。マスコミは都合良くそのことを忘れてしまったようである。ところがである。米国のウオールストリートジャーナルは全く違う論評をしている。一読されて吃驚される方もいるのではないだろうか。
(以下引用)
2012年 6月 29日
【社説】「闇将軍」小沢氏に日本再生のチャンス与えた消費増税
過去20年間にわたって消費増税を政治家に働きかけてきた日本の財務省がついに、思い通りの結果を手に入れた。6月26日に衆議院を通過した法案は、現行5%の消費税率を2014年4月に8%、2015年10月に10%にまで引き上げるというものだった。官僚たちは金融危機を防ぐために必要な措置だと言うが、経済に占める政府の割合が拡大されるのも事実である。これにより官僚はさらに大きな力を握ることになる。
この法案の可決によって得をしたのは財務省ぐらいだろう。6月6日付の朝日新聞の朝刊に掲載された世論調査の結果によると、回答者の56%は増税に反対していた。経済にとっても痛手となるはずだ。結果として、野田佳彦首相が率いる政権の余命はいくばくもなくなった。
野田首相が代表を務める民主党所属の衆議院議員のうち57人がこの法案に反対票を投じた。野党である自民党、公明党の協力で衆議院を通過した同法案だが、参議院での可決後、両党は衆院解散・総選挙に追い込むため内閣に不信任案を提出することを明言している。
これで優位に立ったのが、民主党内で造反を主導した小沢一郎氏である。その駆け引きのうまさから「闇将軍」として知られる同氏は民主党を離党し、新党を結成するとみられている。小沢氏への国民の支持は、4月に政治資金規正法違反事件で無罪となったこと、消費増税に長年反対してきたことなどが好感されて高まることもあり得る。
そうなれば日本にとっては朗報である。小沢氏は減税と官僚制度改革に的を絞った新党設立のために自民党からの離反者を取り込んだり、選挙戦術を駆使したりするかもしれない。経済政策をめぐる論争がついに公の場に移され、1980年代のバブル崩壊からずっと問題を先送りにしてきた一連のコンセンサス主義の短命政権とは違う選択肢が有権者に与えられるかもしれない。
これに似たことが起きるのではという期待感は、小沢氏の力で民主党が自民党に大勝し、政権交代が起きた2009年にもあった。しかし、初めて与党になった民主党の政治は、公的部門の組合の支持に頼っていることもあり、過去の保守的な党派政治に姿を変えてしまった。政治家が財務省の圧力に抗うのは容易ではない。というのも財務省には公共支出を各選挙区に振り分ける権限があり、これで政治家の再選を後押しすることも可能だからである。結局、消費増税をする前に行政機関を徹底的に見直し、無駄や不正を排除することを約束した民主党の選挙時のマニフェストが守られることはなかった。
財務省の支配から脱却するには、米国の保守系草の根運動「ティーパーティー(茶会)」のようなものが必要になろう。日本の保守的な政治制度では無理なことのようにも思えるが、勇気づけられるような兆候もある。たとえば、大阪市や名古屋市で勢力を誇っている地域政党は「大きな政府」に異議を唱え、自由主義市場原理経済派のみんなの党もまだ小規模ながら全国的な支持を集め始めている。
増税の開始が転換点になるかもしれない。1997年に消費税率が3%から5%に引き上げられた時のことを振り返ってみよう。経済はそれまでプラス成長を示していたが、翌四半期には前期比で2.9%、年率換算では11.2%も縮小し、1974年以来で最大の下げ幅となった。好調だった輸出の伸びがなければ、その縮小幅は14.7%にもなっていたという。消費の低迷はその後も続き、自動車の販売台数に至っては減少が32カ月間も続いた。
その影響が政治に現れるのにも長い時間はかからなかった。翌年、自民党は参議院の議席で過半数を失い、当時の橋本龍太郎首相は辞任に追い込まれた。景気がようやく回復したのは、小沢氏が当時代表を務めていた自由党が自民党との連立の条件として減税を要求してからのことだった。
小沢氏を説得力のある改革の先導者候補にしているのは、同氏の官僚制度に対する根深い不信感である。衆議院で民主党を過半数割れに追い込むには、小沢氏は少なくとも54人の民主党議員を引き連れて離党する必要がある。
「小沢チルドレン」と呼ばれる初当選議員にとって財務省に刃向うことは、大きなリスクとなる。そうした造反議員たちが慰めを見出せるとしたら、それは国民の間で広がっている無駄な政府支出や失敗に終わったケインズ主義的な景気刺激策に対する不信感だろう。
既得権益という時限爆弾は早急に処理されるべきであり、景気回復は規制緩和によって実現されるべきである。さもないと日本はギリシャのような危機に直面することになるだろう。今の日本に欠かせないのは、こうした議論を始めることである。
(引用終わり)
小沢一郎氏はもう70歳、古稀である。最後の大勝負に出た背景を上記のウオールストリートジャーナルの記事を読むと何となく想像できる。小沢氏を一貫して排除しようとしてきた米国勢力の衰退である。
金融危機に喘ぐ米国の今回の大統領選には、盛り上がりがほとんど感じられないが、世界寡頭勢力の非公開会議と言われているビルダーバーグ会議が、2012年5月末から6月頭にかけて、米ワシントンDC郊外で行われた。
今回も、次期大統領を引き続きオバマで行くか、ロムニーで行くかが内々に決められた事は間違いない。ロムニーは、共和党候補でありながら、米戦争屋=ネオコンの影が非常に薄い。
このように、次期米大統領がオバマかロムニーのどっちに転んでも、米戦争屋の影は薄く、かつてのブッシュ時代のように戦争屋政権(=石油利権派)に戻ることはない。
要するに、オバマになってもロムニーになっても、米戦争屋のボスであったデビッド・ロックフェラーの天敵・ジェイ・ロックフェラーに近い大統領の誕生ということになることが決まっている。
さらに小沢氏はジョイ・ロックフェラーと共闘関係にあった欧州財閥の総帥ジェイコブ・ロスチャイルドとも近いと言う情報もある。
意味するところはやっと、92歳のデビッド・ロックフェラーの時代が終わるということである。 おそらく、小沢氏はこの変化を読んで、最後の勝負に出たのである。
もちろん、現在の日本の支配層の多くは、デビッド・ロックフェラー系の米戦争屋ジャパンハンドラーを盲信して従属しており、現オバマ米政権とも距離がある。当然、デビッドの失脚とともに、これら、ジャパンハンドラーのパワーも急速に弱まっていく可能性が高い。おそらく、現在はその狭間なのである。
そうなると、これから、小沢氏への攻撃も弱まってくると予想できる。上記のウオールストリートジャーナルの記事はその兆候である。おそらく、その辺のところが、日本のマスコミは、読み切れていないか、わかっていても方向転換できないほど、既得権益が強いのか、どちらかであろう。
先日のテレビ朝日の深夜番組「朝まで生テレビ」にて小沢氏のアンチ野田政権的行動(マスコミのいう造反)を評価する視聴者が66%に達した。一方、大手マスコミの世論調査では、どれもこれもそろって、小沢新党支持は15%前後しかない。どちらが本当か、今後はっきりすることになる。もっとも、反原発官邸デモが15万人、20万人という数字に膨れあがっても報道しない大手新聞社もあるのだから、日本のマスコミ報道そのものを、国民が信用しなくなる日が近づいていると考えるべきかもしれない。
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