1月 172013
まるで、米国の要望する政策を実現するために行われたような昨年末の総選挙の結果を考えると2013年の動きをある程度予想することができるのではないか。
すなわち、残念ながら日本は、しばらく覇権国である米国の思惑通り、動かされるということである。まず、そのような考えで以下の文章を読んでいただきたい。また、あの石原慎太郎氏も昨年、この財団によって「尖閣騒ぎ」を起こしたことも合わせて思い出していただきたい。
(引用始め)
*古村 治彦氏のブログより
ヘリテージ財団(Heritage Foundation)ウェブサイトより
2012年11月14日
「ヘリテージ財団の日本政治論:シナリオはできていた? 」
http://www.heritage.org/research/reports/2012/11/us-should-use-japanese-political-change-to-advance-the-allianceアメリカは日本の政治の変化を利用して同盟を深化?させるべきだ(U.S. Should Use Japanese Political Change to Advance the Alliance)
ブルース・クリングナー(Bruce Klingner)
<要約>:2012年12月16日、日本国民は、日本の政治状況を再び変えるための機会を持つ。多くの有権者にとってこのような変革は3年前にも見たものである。この時は、民主党が選挙に大勝し、政権を獲得した。選挙公約を実現できず、改革を現実のものとすることができなかった。その結果、日本国民の政治の変革を求める熱望は満足させられないままの状態にある。世論調査の結果を見てみると、保守の自民党が再び衆議院で過半数を占め、安倍晋三元首相が次の日本の首相になると予想される。安倍氏の保守的な外交政策に対する考えと日本国民の間で中国に対する懸念が増大していることは、アメリカ政府にとって素晴らしい機会を提供することになる。アメリカ政府は、この機会を利用して、日米同盟の健全性にとって重要な政策目的を達成することができる。
重要なポイント(Key Points)
1.2009年の総選挙は、日本政治におけるリーダーシップの在り方を変えてきた。しかし、民主党は選挙公約を実行できず、改革を現実のものとすることができなかった。その結果、日本の一般国民の政治を変革したいという熱意は存在しているものの、どの政党にも信頼を置いていない。
2.日本の次のリーダーたちは、いくつかの厳しい挑戦に直面することになる。それらは、停滞する経済、増大していく公債、高齢化していく人口、中国と北朝鮮からの安全保障上の脅威、国際社会における影響力の低下である。
3.中国は日本に地政学上の攻勢をかけている。この結果、日本全土でナショナリズムが高揚している。そして、日本の政治状況と来たる選挙の結果を変えることになる。
4.各種世論調査の結果から、次の総選挙では、保守の自民党が衆議院で再び過半数を占め、安倍晋三元首相が日本の次期総理になることが予想される。
5.安倍氏の保守的な外交政策に対する考えと日本国民の間で中国に対する懸念が増大していることは、アメリカ政府にとって素晴らしい機会を提供することになる。アメリカ政府は、この機会を利用して、日米同盟の健全性にとって重要な政策目的を達成することができる。
3年前、民主党は総選挙に大勝し、政権を獲得した。民主党の大勝は、自由民主党による半世紀に及ぶ支配によって作り出された政治の停滞に対して人々の怒りがうねりになったことによるものだった。しかし、高揚感はすぐに消え去った。財政の現実?に直面し、民主党は、非現実的な経済に関する公約を破棄することになった。そして、中国と北朝鮮からの脅威に対応することで、民主党は現実離れした外交政策を転換せざるを得なくなった。アマチュアリズムが蔓延し、多くのスキャンダルに見舞われ、民主党は政治的に自民党同様、機能不全に陥り、短期間で首相を次々と変えるようになってしまった。民主党政権初の首相、鳩山由紀夫は1年も持たずに辞任し、二人目の菅直人もわずか15か月、首相の地位に留まっただけだった。有権者たちは民主党支持から態度を変え、参議院では、それ以前の選挙では信頼しなかった自民党が参議院をコントロールできるだけの議席を与えた。
公約を実現できなかった結果、民主党は次の選挙で衆議院の過半数を失い、政権を手放すことになるのはほぼ確実だ。
各種世論調査の結果によると、次期総選挙では、保守の自民党が過半数を獲得し、自民党総裁で元首相の安倍晋三が日本の次の首相に選ばれる可能性が高い。安倍氏は、外交政策について保守的な考えを持っている。そして、日本国民は中国への懸念を早大させている。こうしたことは、アメリカにとって絶好の機会となる。アメリカは、こうした状況を利用して、日米同盟の健全性にとって重要な政策目標を達成することができる。
アメリカ政府は、これまで長い間、日本に対して、自国の防衛でより大きな役割を果たすこと、そして防衛力と経済力に見合った海外での安全保障の責任を引き受けるように強く求めてきた。日本が防衛予算を増大させ、集団的自衛権を行使し、海外での非岩維持活動における武器使用についての厳格なルールを緩め、沖縄の普天間基地移設問題で辺野古に代替施設を建設することは、アメリカにとって利益となる。
<日本の有権者は今でもリーダーシップを切望している>(Japanese Electorate Still Longing for Leadership)
2009年の総選挙は日本の政治状況を変化させたが、民主党は公約を実行して、改革を実現することができなかった。その結果、日本国民の政治の転換に対する熱望は残ったままになり、政党に対する不信感が残った。世論調査などを行っても、「支持政党なし」「支持する候補者なし」という答えが多くなっている。このような政治不信は、日本政治に空白を生み出し、そこに大阪市長の橋下徹が登場し、日本維新の会(Japan Restoration Party、JRP)を結成した。
2010年に尖閣諸島を巡り中国と対峙して、民主党は選挙期間中に訴えていた、外交政策、安全保障政策に関する公約を放棄した。例えば、民主党は、日米同盟を批判しなくなった。また中国との関係を深め、アメリカ抜きの東アジア共同体を構築するという主張も放棄した。また現在、普天間にあるアメリカ海兵隊の航空基地を沖縄県外に移設するということも言わなくなった。民主党は事実上、ライバルである自民党の外交政策を踏襲したことになる。
民主党の経済政策についての公約もまた同じような運命をたどった。例えば、2009年の選挙戦で、民主党は高齢者に対して年金と医療費の増額を約束した。そして、2009年から4年間はいかなる増税も行わないと主張した。しかし、選挙に大勝した後、民主党は公約を放棄した。2011年、野田首相は、消費税を現行の5%から10%に倍増させるということを提案した。野田首相はまた、税収の増加分は全てトラブルが頻発している社会保障システムの安定のために使い、政府の規模を大きくしないということも約束した。
しかし、人々の人気が低い消費税増税を強行したことで、野田首相は、政治的に見て、民主党の墓堀人になったと言える。民主党所属の川内博史代議士は次のように語っている。「自民党政権下での年金と健康保険に対する一般国民の不信と、私たちが国民とした約束によって、私たちは政権を取ることができました。しかし、現在の民主党は昔の自民党と同じになっているのです」
<政治的な津波は大阪から?・・・それとも北京から?>(A Political Tsunami from Osaka…or Beijing?)
日本維新の会が次の衆議院議員選挙に大きな衝撃を与えることになるのは間違いない。しかし、それよりももっと大きな要素は、中国の積極的な姿勢ということになるだろう。特に、日中間の緊張関係の高まりは、自民党を利することになるだろう。それは、有権者は、自民党と安倍総裁が中国に立ち向かってくれると考えるからだ。
尖閣諸島をめぐる争いは橋下市長にも悪い影響を与えている。メディアは、橋下市長の選挙運動を取り上げなくなったし、彼の外交政策の分野における経験のなさを報道するようになった。日本ではナショナリズムが高揚しているが、橋下氏が「安倍氏を追い越す」ことができない以上、ナショナリズムの高揚は橋下氏にとって不利に働く。また、橋下氏は、ベテランの政治家たちを迎え入れて、より細かい外交政策を策定するためのアドバイザーにする気はないように見える。
盛り上がるナショナリズムについて。中国が地政学的に積極な行動を取り続けている。これに対して、日本全体でナショナリズムが盛り上がっている。そして、ナショナリズムの盛り上がりは、日本の政治状況を変えている。これは次の総選挙の結果も左右するだろう。
結果、日本政府は中国の拡大主義に対抗し、軍事力の増強をしようとしている。2010年、尖閣諸島を巡り、中国は積極的な行動を取り、日本の人々は、中国は傲慢な態度を取っていると認識した。これらの結果、日本は新しい防衛戦略を採用した。世論調査の結果によると、70から80%の日本国民が中国に対して否定的な見方をしている。政権の座に就いて以降、民主党は、より保守的な外交、安全保障政策を採用するようになった。そして、全ての主要な政党は、アメリカとの同盟関係を強化することを支持している。
これらの変化によって、日本は同盟国が攻撃された際に、一緒に防衛することができるようになる。
更に言えば、安倍氏のこれまでの政治活動歴と日本のナショナリズムに関する議論は切り離して考えることが重要だ。日本の戦時中の行動に関して、安倍氏は修正主義的な歴史観を持ち、それに基づいた発言をしている。もし安倍氏が首相になっても、このような行動をするならば、トラブルを招き、アジア諸国との間でいらぬ緊張を引き起こすことになる。日本がアジア・太平洋地域における、有能なリーダーになるためには、いくつかの政治的な足かせを取り除く必要がる。その時、安倍氏はただ闇雲に自分の思うとおりに行動することは控えねばならない。
安倍氏が最初に首相を務めた時期、安倍氏は挑発的な行動を控えた。そして、アメリカは、安倍氏に対して個人的に、歴史を書き変えるなどという必要のないことに政治的な資源を投入するべきではないと助言し、それはうまくいった。
安倍氏が首相になっても、日本の政策の方向性は変更されないであろう。それは、民主党が既に自分たちの元々の計画を変更し、自民党の政策を採用したからだ。新しい政権は、現在の政策の変更というよりも、深化と実行を行うだろう。政策の変更と実行との間には大きな違いがある。
<アメリカ政府は何をすべきか>(What Washington Should Do)
アメリカは以下の方法で、日本の国家安全保障の新しいプログラムを補強すべきだ。その方法とは以下の通りだ。
・日本はこれ以上、他国に依存するだけで海外での国益を守り続けることはできないということをはっきりさせる。日本政府は、大国としての地位に見合った国際社会における安全保障上の役割を受け入れるべきだ。例えば、日本はシーレーンの防衛のための努力を強化すべきだ。
・日本政府に対して、自国の防衛と同盟国アメリカの安全保障に必要なだけ防衛支出を増大させるよう求める。(太字が極めて重要)
・日本政府に対して、集団的自衛権の理論をあまり厳格に解釈しないように求める。それによって、危機的状況になった時、日本は同盟国を守るために行動することができるようになる。日本はより現実的な交戦規定を採用すべきだ。そうすることで、日本が海外での安全保障に関する活動を行う際に、同盟諸国に迷惑をかけることなく、より効果的な貢献を行うことができるようになる。
・日本政府に対して、沖縄の普天間基地の代替施設の建設について、具体的に進めるように圧力をかけるべきだ。次の首相は、単なる言葉の上での支援ではなく、日米両政府のかわした約束を実行するようにすべきだ。
・日韓の軍事的、外交的協力関係を進化させるように促す。二国間の軍事情報に関する包括的保全協定(GSOMIA)、情報共有協定は、同盟関係を進化させ、日韓共通の脅威に対応する能力を強化する。
・米韓日3か国の軍事協力を深化させる。3か国は、共同しての平和維持活動、対テロ活動、対核拡散活動、対麻薬活動、対潜水艦作戦、地雷除去活動、サイバー上の防衛、人道支援・災害救援活動を行う可能性を追求すべきである。
・西太平洋地域に展開しているアメリカ軍をそのまま維持する。西太平洋地域に展開するアメリカ軍は韓国軍、日本の自衛隊と密接に統合され、運用されるべきだ。このような統合によって、同盟国同士が防衛し合うことが可能になる。それだけでなく、日本の軍国主義の復活に対する韓国側の恐怖感を和らげることができる。
・アメリカは、太平洋地域にある同盟諸国に対し、明確に支持、支援を行うことを示す。アメリカは、二国間の安全保障条約の不可侵性を確認するだけでなく、中国を安心させるべきではない。アメリカは中国に対して、アジア諸国が中国から威嚇されているとして支援を求められたら、その要請に応えることを明確に示すべきだ。
・安倍晋三には私的に、彼の修正主義的な歴史観を打ち出さないように言うべきだ。安倍氏は、日本政府が日本の戦時中の行動についての声明を撤回することを求めている。しかし、これはアジア地域に根深く残り続けている日本への敵意の火に、必要もないのに油を注ぐ結果になる。日本は償いと謝罪の声明を見直し、韓国の傷つきやすい感情を満足させるべきだ。また、そうすることで、中国がアジア地域に残る日本に対する怒りの感情を利用して、地政学的に利益を得ることを止めさせるべきだ。
結論(Conclusion)
中国と北朝鮮は自分たちで意図せず、アジア地域の地政学的な状況を自分たちに不利なものに変えている。中国は「平和的台頭」という仮面を外し、北朝鮮は、オバマ大統領の対話の申し入れを拒絶した。日本国民は、中朝両国のこうした態度を見て、民主党のナイーブな外交政策ではいけないと考えるようになった。その結果、日本政府と日本国民は、地域に存在する脅威に対して、日本は脆弱であると考えるようになった。
日本の持つ脆弱性に向き合う第一歩は、日米同盟の刷新を行うことで既に踏み出しているように思われる。次のステップは、日本が自国の防衛により大きな責任を負う決意をし、国際的な安全保障上の脅威に向き合うことだ。アメリカは、このような新しい流れを大きくするように促進すべきだ。それは、こうした新しい流れは、アメリカの国家安全保障上の目的に合うものだからだ。
次の首相が、日本が直面している様々な嵐をうまく切り抜けられるかどうかは、アジア・太平洋地域におけるアメリカ国益にとって大変重要である。ここ最近の日本は、弱い政治指導者たちが続いたために弱体化してきている。日本の次の首相は(アメリカのために)大胆な改革を実行し、日登る国が日没する国にならないようにしなければならない。(終わり)
要するに当分の間、日本はすべて米国の言う通りに国際政治の舞台で動かされるということである。そして、一番重要なことはアメリカの思惑通り動かされることによって、日本は、インフレ、バブル経済にいつのまにか誘導され、あっと言う間に谷底に落とされるシナリオが、石原慎太郎氏の尖閣騒ぎからスタートとしているということを冷徹に読み取ることだろう。
ところで、私のような単純な頭の人間にはどうしても理解できないことがある。
現在、米国は潜在的破綻国家で、地方政府と中央政府の財政赤字の累計が実際には約1京3千兆円あると言われている。そして私たち日本国の財政赤字が地方と国を合わせて約1千兆円である。不思議なことに、ほとんどの日本の有識者は、覇権国である米国の天文学的な財政赤字を問題にすることはない。それとは全く逆に、日本の財政赤字の1千兆円を声高に問題視し、こんな巨額な借金を返せるわけない。したがって、中期、長期的にはドル高、円安、日本国債の暴落の可能性まで言及している。ところで、アメリカのGNPは、日本の約2倍、財政赤字は13倍である。しかも、米国は世界最大の債務国である。一方、日本は最大の債権国である。私には現在、米国という国は、軍事力と政治力でどれだけ、覇権の寿命を延ばせるかという実験段階に入っているとしか思えないのだが、そして、その寿命を延長させる最大の駒にされそうなのが、わが日本である。
安倍氏が政権復帰する前から表明していたように、彼が国債と円の増刷を過激にやらされる、やる理由は、リーマンショック以後、米国で米国債とドルの過剰発行(QE3)が行われ、米国債とドルが崩壊しそうなので、それを防ぐため日本の国債と円を過剰発行させ、資金がドルから円に流れるのをできるだけ防ぎ、米国を助けるためであることは言うまでもない。
その結果は、日本の国債と通貨を米国並みに弱くしていくことにつながるが、1996年以降おそらく米国の日本経済封じ込め政策によって名目経済成長が全くできなかったデフレ経済から劇的に脱却することになるだろう。
その意味するところは、日本経済の一時的復活を許さざる得ないほど米国経済は崖淵に立たされているということである。そして、世界の先進国の中で一番実際には経済のファンドメンタルがいい(リーマンショック以後の金融メトルダウンに一番遠い国)、日本がアベミックスのような政策をとれば、1987年のバブル経済の再現をもたらすことになる。
ごく一部の評論家が言い始めている「資本主義最後のバブル」が日本にくるのである。もちろん、このバブルも、覇権国であるアメリカが、何らかの方法で基軸通貨特権を維持しようという大きな戦略の一貫であることは、言うまでもない。
この大きな見取り図をおそらく、一番わかりやすく提示しているのが下記に紹介する元外交官原田武夫氏の「ジャパンシフト」という本である。
彼の想定するシナリオは、以下のものである。
(1)これから現在のシリア、イランの紛争が中東大戦争に発展し、オイルマネーの裏付けを失うユーロの崩壊が現実のものとなる。その結果、世界の金融マーケットは一時的に総崩れとなる。
(2)しかしその後日本のマーケットだけが上がる。強烈な円高圧力に対抗するだけの金融緩和政策をすることによって空前の「日本バブル」となる。この機会に政府は保有資産の大量売却を実行し、累積した財政赤字の圧縮を目論む。
よって日本政府もこのバブルを助長する政策をとることになるはずだ。おそらく、この状況は2014年半ばまでは続く。
(3)その後、欧米の投資家達によって、やはり日本の国家財政が危ないというキャンペーンが始まり、大量の日本国債売りが仕掛けられる。時を同じくして中国や韓国でも政治・経済の両面で動揺が走り、現在布石を打っている極東有事が米国によって仕掛けられることになる。
*上記のような動きが進むなかで、太陽活動の変化による(以前からレポートで度々指摘している)「地球寒冷化」が誰の目にも明らかなものとなる。
液化化石燃料の純輸出国になるべくシエールガスや石油開発を二酸化炭素による地球温暖化騒ぎのウラで着実に進めていた米国の戦略がこの時点で大きな意味を持ってくる。その意味で、これから始まる可能性の高い中東での戦争は、中東のオイル供給能力をそぐ面でも米国に大きな利益をもたらすものである。
つまり、国際金融資本を中心とする欧米のエリートは日本をバブルに追い込むことを狙っているのである。が、本当の勝負は、その後であり、もうすでにそのための戦略もすでに米国はスタートさせていると考えるべきであろう。
原田氏このことを次のように語っている。
「今、起きていること、それは形を変えた戦争なのである。コンピューターという機械が無尽蔵に創りだし、インターネット空間へとばら撒かれているバーチャルマネーの「米ドル」。これに対して生身の人間が汗水垂らして創り出した付加価値を体現したリアルマネーの「日本円」、米ドルは日本人がもはや価値を創れず、日本円を刷れなくなるまで刷り続けられ、日本円と交換されるのだ。アメリカは1971年に金とドルの関係を断ち切った時からこの瞬間を狙っていたのだ。リアルマネーを生み出すことができるという意味で黄金の国ジパングとの最終対決を。」
「今、起きていることは金融メトルダウンが、実のところリアルマネーを創り出す能力を持つ日本を米欧が徹底的に潰すための戦いであることを説明した。」
それでは、われわれ日本人はどうしたらいいのか。
原田氏は、欧米に仕掛けられる日本バブルを逆手にとって、日本国内である意味完結した、「マネーの循環」、「知恵と技術の循環」、「人脈の循環」を創り上げ、21世紀型の新しい日本システム(内需型循環システム)をつくるしかないと提案している。
「世界中からマネーがわが国に流れ込むこの瞬間に、それが日本の中だけでぐるぐる廻り、富が富をつくる循環システムを創ってしまわなければならないのだ。」
そして、
「「バブルの崩壊の帳尻を人と人が殺し合う戦争によって合わせる」このやり方によって保たれてきた平和、それがパックスアメリカーナ(アメリカの平和)なのである。私たちは今こそ、このやり方そのものの妥当性を問わなければならないのである。」とまで彼は言い切っている
そのための「ジャパンシフト」が本当は世界で求められているものだと、彼はこの本の中で主張している。
大きな見取図を描くことにかけてバツグンの才能を持つ元外交官原田武夫氏の「ジャパンシフト~仕掛けられたバブルが日本を襲う~」(徳間書店)(幸いなことにこの本はあまり売れていないようだ!)は大変興味深い内容なので、是非読んでいただきたい。
ところで、以下のエピソードも大変おもしろのではないか。
(引用始め)
「この人物(仮にR氏としておこう)は現在もなお金融マーケットに携わられる一方で、フィランソロフィー(社会奉仕活動)にも力を入れられている。決して目立つことはされない人物であるが、その世界では知らぬ者はいない人物である。人づてに知り合ったこのR氏は、聞くところによるとロスチャイルド系金融機関の中でもとりわけ重要な機関の幹部であったのだという。前章(第2章)で書いた世にいう「グローバル人財」としては大先輩というわけだが、世間でよく言われているような自己主張の激しい「グローバル人財」では決してない。紳士然とした白髪で常に笑顔を絶やさず、むしろ相手の話をきっちりと聞く姿勢を崩さない人物だ。
R氏が言う。
「私がね、原田さん、ロスチャイルド系の門をくぐったのはまったくの偶然なのですよ。しかも入る時にはテストがあった」
国際金融資本の根幹に入るにはテストがある。根拠なき感情的な「陰謀論」ばかりが横行している我が国では普通にはまったく聞くことのできない話だ。思わず私は「えっ! テストがあるのですか」と大声を出してしまった。
「テストといっても1問だけなのです。日本でいちばん裕福な人物の資産表を持ってこいというのですよ。色々と工夫して入手し、これを英訳して持っていきました」
宿題の回答を持っていった先はスイスの古城であったのだという。大きな城の中は薄暗く、たくさんの扉があった。これらをいくつも開けた先には大きな机があり、1人の老人が椅子にかけて座っていた。
それが……ロスチャイルド家の当主であった。あの国際金融資本の雄の頂点に立つ人物である。
「彼はどんな表情をしていたと思いますか。大金持ちだからさぞ愉快な顔をしていたのではないかと思うでしょう? それがまったく違うのですよ。むしろ逆で、言ってみればこの世の苦しみのすべてを引き受けたかのような苦渋の表情をしていました。びっくりしました」
R氏がややひるんだのを見ながら、当主は手を伸ばし、持ってきた宿題の回答を受け取った。1つ1つ、丹念にその上の数字を見ていく当主。ところが問題はそこから先だった。
「もっとびっくりしたことがありました。折角、日本で入手して英訳までしたその一覧表の上に、赤鉛筆でサッ、サッと横線を引き始めているのですよ。しかも数字の上から。これは一体何だろうか、何事だろうかと心底驚きました」
驚く日本人バンカーにようやく気付いた当主の翁は、ゆっくりと顔を上げ、こう言ったのだという。
「ここに書いてあるのは、資産(asset)じゃない」
R氏にとっては青天の霹靂であった。いや、そんなことはない。あれだけ一生懸命探した資料なのであるから。嘘が書いてあるはずもないし、数字に間違いもないはずだ。
「いや、それは……」
そう言いかけたR氏にかぶせるように当主はこう言った。
「君、不動産は資産じゃないのだよ。なぜならば持って逃げることができないじゃないか」
後から周囲に聞くとこういうことであったらしい。欧州の国際金融資本の中でもユダヤ系のロスチャイルド家にとって、持って逃げることができないものは資産ではない。なぜならばユダヤ人の歴史は「逃亡に次ぐ逃亡の歴史」だったからだ。
したがって欧州系国際金融資本、特にロスチャイルド家にとって資産とは「貴金属・鉱物資源」と「通貨」だけなのだという。これに対して持って逃げることのできないものの典型である不動産は「資産」には入らないということになる。
「欧州の国際金融資本、特にロスチャイルド家から見ると、今の金融メルトダウンは本来、金融資産ではない不動産を、証券化を通じて金融マーケットに無理やりつなげてしまったアメリカ人の大失敗ということなのですよ。欧州における伝統的な金融マーケットでは決してこんなことにはならなかった」
R氏は笑いながらそう私に教えてくれた。確かに今の金融メルトダウンは、サブプライム証券というかなり無理やりな金融商品をアメリカ人たちが考えついたからこそ始まったのだ。
「なるほど!」と私が膝を叩いていると、R氏はこうも教えてくれた。
「ところで原田さん、ユーロって何でユーロと言うのか知っていますか?」
面と向かってそう尋ねられて、正直やや戸惑った。ユーロはEURO、ヨーロッパだからユーロなのだろうといったくらいにしか考えていなかった私は素直に降参した。プロには素直に尋ねるに限る。
「あれはですね、石油ショックの時に産油国が稼いだ大量のマネーを欧州に預けた。これをユーロ・ダラーと言っていたわけですが、これを担保にして発行された通貨だからユーロって言うのですよ」
前節で述べたビッタリッヒ元ドイツ首相補佐官の話もそうであったが、「本物たち」の発想はやはり違うのである。そしてその奇抜な発想によって本当の歴史は織り成され、その上で普通に広められるストーリーが創られる。この手の話を当事者であった人物から聞く度にワクワクする。
「実はこの点がこれからの世界を考えるにあたってとても大切な意味合いを持っているのです。なぜならば中東の産油国がそのあり余るマネーを一体どこに預けたのか。それがこれから世界で起きることの本当の焦点なのですから」
本当のバンカーはこういうものなのかとつくづく思った。無論、細かなカネの計算もできるのだろうが、どこかしらその考え方には奥深い歴史観がある。聞いている方は知的好奇心からぐいぐいその話に引っ張られていく。
いつしか私の脳も地球儀の上を歩き始めていた。」
(引用終わり)
もう一冊は、内閣参与に抜擢された浜田宏一氏の「アメリカは日本経済の復活を知っていた」(講談社)(不思議なことに2013年1月8日発行の本が、もう書店の店頭には全く並んでいない!)である。
ここに書かれていることは、以前のレポートでも紹介した日銀の金融政策に関する批判である。以前のレポートでも解説させていただいた「なぜ、日本銀行は金融政策によって日本経済が、デフレ経済から脱することができるのに放置しているのか」というまっとうな指摘である。米国在住のエール大学名誉教授の本が、昨年末に出版されたことの意味を考えてみるのもおもしろいかもしれない。(私には米国エリートによるシナリオの一部披露に思えるのだが、なぜなら、ここに書かれていることは、小生のレポートでもとっくに指摘していることである。やはり、この時期がポイントなのであろう。)
いづれにしても、一人でも多くの日本人が、自分の頭で考えることを取り戻し、本当の事を知れば、新しい21世紀社会の扉を開くことができる可能性は、まだ、残っている。
*参考:http://www.yamamotomasaki.com/archives/997
http://www.yamamotomasaki.com/archives/1004
<浜田 宏一氏プロフィール>
浜田 宏一(はまだ こういち )1936年、東京都に生まれる。イェール大学名誉教授。経済学博士。国際金融論、ゲーム理論の分野で世界的な業績をあげる。日本のバブル崩壊後の経済停滞については金融政策の失策がその大きな要因と主張、日本銀行の金融政策を批判する。1954年、東京大学法学部に入学し、1957年、司法試験第二次試験合格。1958年、東京大学経済学部に入学。1965年、経済学博士取得 (イェール大学)。1969年、東京大学経済学部助教授。1981年、東京大学経済学部教授。1986年、イェール大学経済学部教授。2001年からは、内閣府経済社会総合研究所長を務める。法と経済学会の初代会長。著書には、『経済成長と国際資本移動――資本自由化の経済学』(東洋経済新報社)、『モダン・エコノミックス(15)国際金融』(岩波書店)、『エール大学の書斎から―経済学者の日米体験比較 』(NTT出版)などがある。また共著には、『金融政策と銀行行動』(東洋経済新報社)、『マクロ経済学と日本経済』(日本評論社)、『伝説の教授に学べ! 本当の経済学がわかる本』(東洋経済新報社)などがある。
<参考資料> *現代ビジネスより
2012年11月29日
「浜田宏一(イェール大学教授)×安倍晋三(自民党総裁)「官邸で感じた日銀、財務省への疑問。経済成長なしに財政再建などありえない」
小泉政権時代に福井日銀総裁に直談判した
浜田: このたびは、元総理大臣である安倍晋三先生にお話を伺えるのは大変光栄です。自民党総裁という実力者の方が、デフレの問題点をちゃんと理解してくださり、日銀法改正の可能性まで政策の骨子としてあげていただけるのは、われわれを力づけてくれます。 しかも、そのことがウォールストリートジャーナルを通じて世界に報道されるのは画期的なことです。金融に関して今のようなお考えをもたれるようになったのは、何時からのことですか?
安倍: もともとは社会保障を専門にしており、正直申し上げて金融については特別詳しくはなかったのです。しかし(小泉政権で)官房長官に就任するといろんな政策について説明を受ける立場になり、いろいろ教えていただく機会は多くなり、その中で勉強させていただきました。
ちょうどその直前、森喜朗首相、宮沢喜一財務大臣の時代に、日本銀行の速水優総裁が、政府側からしばらくゼロ金利体制を続けてほしいという要請があったにもかかわらず、それを止めてしまったということがありました。
浜田: ああ、そうでした。
安倍: その1年後、結局、景気は厳しくなりました。最近、当時の議事録が新聞記事にもなっていますから、読むと面白いですね。そこで彼らは当座預金にお金を積むという量的緩和をしたのです。 しかしその後、小泉政権になり、日銀総裁も速水さんから福井俊彦さんに代わったのですが、そこで量的緩和を止めてしまいました。
浜田: はい。
安倍: その時、小泉総理と私と日銀の福井総裁、武藤敏郎副総裁さんの4人で昼食をともにする機会がありました。そこで福井総裁に内閣側からお願いしようとしたのです。小泉総理から直接ではなくて、私が言ったほうがいいだろうということで、「もうしばらく量的緩和を続けてもらえないだろうか」という話を私がしたのです。
ただ、当時は私も、「そうはいっても、この人たちはみんな金融の専門家だから、日銀の言うことが正しいのかもしれない」ということが頭にありました。しかし、その後、自分が総理になり辞めてしばらく経って、これまでのファクトの積み重ねをふりかえって見ると、必ずしも彼らが正しくなかったということが分かってきました。
浜田: そう正直に言っていただき、とてもうれしく思います。
財務省は政策を誤っているのではないか
安倍: それから、財務省の財政規律に重点を置き過ぎた、あの姿勢も、やはりちょっと違っているのではないかと気がついたのです。彼らの姿勢というのは、政治家に対し、もっと責任感を持てというか、そういう気持ちに訴えるところがあるんですよ。使命感を呼び起こす的なところがある。それで、やはり財政規律はちゃんとやらなければいけないということに傾いていくことになるのです。
世の中には、政治家は選挙が怖いからバラマキに陥りがちで、財政の引き締めなどできないというイメージがあります。それに対し、「自分は違う」ことを証明したいという気持ちが政治家には生まれてくる。その気持ちと相まって、専門家集団を集めている財務省の裏付けがあることが、政治家を後押しするのです。
しかし旧大蔵省、財務省というと専門家集団で政策にくわしいという固定観念があるんですが、事実をずっと見てくると、むしろ肝心なところで政策を誤っているんではないかという疑念が芽生えてきます。
安倍政権のとき、平成19年の予算編成では54兆円くらい税収があったんです。これは成長の成果です。もしあの段階でデフレから脱却していれば、これは一気にプライマリーバランスの黒字が出るまでいったんではないかと思うわけです。
浜田: そうですね。少なくともこんなに大努力をして、デフレ脱却を阻止なければならない事態に追い込まれる必要はなかったと思います(笑)。
失礼ですけれども、安倍先生にお会いしたのは、たぶん私が内閣府の・・・。
安倍: 諮問会議のメンバー、というかオブザーバーでしたね。
浜田: 諮問会議にメンバーではなく、オブザーバーとして補佐していました。会議に出させていただき、速水総裁にも意見を述べさせていただいたこともあります。そのときに安倍先生をはじめ、いろんな方に会議でお会いすることができて、しかも議論にも一部分参加させていただけたというのは、大変貴重な記憶となっております。
福井さんが日銀総裁になったとき、消費者物価がゼロよりもすこし上がっただけで、デフレは回復したという、引き締め基調に転じました。その結果、財政黒字がどこかに飛んでしまった。その時期のことに関しては、中川秀直先生に先日、インタービューをしてお聞きしました。
安倍: そうですか。
「デフレにも『いいデフレ』がある」と言い切った日銀総裁
浜田: 実は、私がエール大学に帰米するとき、小泉首相が送別会を開いてくれました。そこで小泉首相に「デフレを撲滅する人を日銀総裁にしてください」と、個人的にお願いしたことがあります。なぜ、福井総裁があれだけ長くデフレ政策をとられたのかというのが当時はさっぱり分かりませんでした。
財政規律というのは、たとえば地震のような災害があったとき、政府がそれに対処するためには財力がないと困るので、必要だとは思うんです。けれども、現在のような金融引き締めのままで、ただ税率だけを引き上げるという形では、財政再建は達成できないことは明らかです。
安倍: 福井総裁と議論をしたときに、それは官邸の昼食会という形だったのですが、メンバーとしては総裁、副総裁と、総理と、官房長官である私と、あと丹後(泰健首相秘書官、後に財務次官)さんが入っていました。その時の印象で言えば、現状をどう認識しているか、日銀と政府とで擦り合わせができていないと感じました。
そのとき聞いたら、福井さんはいまのデフレ状況はある程度やむをえないという考え方なんです。日銀がいろんな様々な政策を打ったところで、そう簡単に変えることはできないというのです。彼は「いいデフレ」と「悪いデフレ」があるという言い方をしていました。
浜田: そうですか。
安倍: 「いまはいいデフレに近い」という話をされたわけです。そのとき素人の私として素朴に思ったのは、ではそれをコントロールできないというのなら、日銀の存在とは何なんだということですね。
浜田: そういうことにもなりますね。
目的の独立性まで日銀に与えてしまった
安倍: ですから、問題点としては、政府が、経済の現状を認識して目標を立てて、あとの手段を日銀が選ぶという仕組みには、そもそも最初からなっていないということです。
浜田: そうですね。
安倍: 政府と日銀で、認識と目標が共有されていない。
浜田: それが日銀法の問題点だと思うのです。日銀法ができたのは、大蔵省不祥事とかいろんな政治的きっかけがある。中央銀行の独立性がある国のほうが上手くマクロ政策をやっていたような例もありました。
独立性自体はいいんでしょうが、困ったことに、日銀法では手段の独立性だけではなくて、目的の独立性まで日本銀行に与えてしまった。ですから、国民に対して政治責任を負っている政府が考えるべき、国民生活の雇用とか国民所得などに対して、どの辺まで政策が努力したらいいのかを日本銀行が決めるかのようになってしまったのです。
確かに細かい手段について、日本銀行の人が一番統計や実務を知っていて、経験も豊かなことは事実かもしれません。しかし非常に緊縮的な失業が多いような状態を日銀が目標とするようになってしまったのは、明らかにおかしい。日本銀行が手段だけでなく、目標まで自分で決めているというところが現行法の問題だと思います。
安倍: 今度、山本幸三氏が、この震災復興に対する予算を増税で賄うのは間違いではないか、と私のところに説明にきました。現下の最大の問題はデフレであり、このデフレから脱却するべきだという。
私は最初に申し上げたように、この問題をずっと専門家としてやってきたわけではないので、会長をやるというつもりはなかったんです。しかし、民主党政権がデフレ容認、金融政策軽視の傾向が強いので、それだったら私もいっちょうやってやろうかということになったのです。
デフレ下の増税は間違っている
浜田: 僕は世界に通ずる普通の、標準的な経済学を信じています。そこでは貨幣も重要だし、モノ(実体)も重要だし、その両方を含んだ体系が必要です。しかし、不況や株価下落の原因は実体が悪いからだと、一方しか見ない人たちが多い。
最近は少し孤軍でもなくなりましたが、どちらかと言えば、少数派で、貨幣面も重要だと頑張ってきました。今回、先生のように経験も、それから将来の日本全体を担うのを国民から託されている方に共感していただくと、非常に心強く思います。
安倍: 景気はまだまだ厳しいでしょう。これから財政出動しますが、デフレ下で増税をするので、景気を冷やしていく危険性もある。よりデフレが進んでいく危険性もあるでしょう。これは明らかに間違っています。
世論調査で5割が増税を支持するというのはね、不思議なことですよ。これではもう、この機会は絶対に逃したくないと財務省は思ってしまう。
浜田: 財務省の人には悪いけれども、地震があったからみんな支持してくれると、天災を増税の口実にしているかたちです。
安倍: これを機に財務省は増税を進めようとする。しかも日経新聞や、かなりの経済学者もそれを支持している。われわれは相当頑張らないと飲み込まれてしまって、結局財政赤字はさらに悪化していく危険性すらある。税収はそんなに伸びないどころか、ダウンするかもしれません。
浜田: そうですね。橋本龍太郎先生が総理だった時もまったく同じです。
安倍: あのときも増税で、景気が底割れしました。
浜田: 結局、景気が悪くなり、税収も減収した。法人税、個人所得税まで減収していくという状態でした。それにしても政治家のがみなさんが、先生のように理解してくだされば日本もずいぶん良くなるんですが。
成長なしに財政再建などはありえない
安倍: 財政規律ばかりが強調されているんですが、これはわれわれにも責任があります。
消費税を橋本政権下で上げたときに、財政危機を非常に強く国民に訴えたわけです。このままでは大変なことになりますよという、不安を喚起した。ある意味、これが効き過ぎてしまった。最近はギリシャ危機があったので、ギリシャと日本を同一視する人がいる。でもそれは間違った考え方です。
浜田: そうですね。
安倍: かなりの人がそれを平気で言うようになってしまった。財務省も違いを分かっていながら、間違いを指摘しない。たとえば与謝野馨さんはよく「成長ですべては解決しない」という言い方をするんですが、すべてを解決するなんては誰も言っていない。ただ成長せずに財政再建できるかというとそれは無理です。
浜田: とんでもない話ですよ。
安倍: 絶対に有り得ない。
浜田: 経済学者も悪いのです。ギリシャは国も民もみんな借金しているわけですが、日本の場合は、国のほうは富んでいます。世界で見ても、中国には負けるかもしれませんが、日本は今のところ世界の最大債権国です。だから円が下がらないで上がってしまうわけです。
安倍先生には、私から経済メカニズムについて補足なり、申し上げることはほとんどありません。みんなが今日の話を理解してくれれば、日本は変わります。
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