ご存じのように、財務省は消費税の社会保障目的税化にまい進しています。

財務省のホームページには、次のような説明が掲載されています。 

「今後、少子高齢化により、現役世代が急なスピードで減っていく一方で、高齢者は増えていきます。社会保険料など、現役世代の負担が既に年々高まりつつある中で、社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中することとなります。特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいと考えられます。」 

その裏には、どのような意図が隠されているのでしょうか。それには消費税について基本的なことを考えてみる必要があります。消費税は1954年にフランス大蔵省の官僚モーリス・ローレが考案した間接税の一種です。消費税を定義すると次のようになります。「消費税は、財貨・サービスの取引により生ずる付加価値に着目して課税する仕組みであることから、欧米では、VATValue Added Tax/付加価値税、もしくは、GSTGoods and Services Tax/物品税と呼ばれる。」

サービスの対価として課せられる「応能税」的な性格を持つ消費税は、細かなところまで住民へのサービスが行える地方に納められ、地方の財源にするのが、海外では常識となっています。(日本でも1.7%が地方消費税となっています。)つまり、市民に対して基礎的なサービスを提供しているのは、地方なので、地方税にするのが合理的だという考えが根底にあるわけです。ところで、本当に地方分権を実現するには、1520兆円程の国から地方への財源委譲が必要だと試算されています。これほどの巨額の財源委譲を可能にするものは、消費税以外には考えられません。つまり、真の地方分権を実現するためには、地方自冶体の基幹税として消費税を国から地方へ財源委譲すべきだということになります。しかしながら、民主党政権から自民党政権に変わっても消費税の社会保障目的税化が財務省主導で着々と進んでいます。たしかにそうすることによって、将来税率を上げるときに社会保障の財源が足りないことを理由にできるので税率を引き上げやすいということ、何よりも消費税を国税として固定できるという財務省にとっては大きなメリットがあります。

 現在、日本の税金は、個人所得・法人所得・消費のいずれも、国と地方で分割しています。これは、国が地方の税率まで決める中央集権体制を採っているからこそできていることであり、本当に政府が地方分権を進め、地方に自主課税権を与えるつもりがあるのなら、課税対象を線引きしなければなりません。現在、地方と国の行政サービス比率は64ですが、その財源比率は、46と逆転しています。つまり、現在の国税を地方へ、その分委譲する必要があるということです。その意味で現在、進められている消費税の社会保障目的税化は、地方の時代を実現するための大きな障害になる可能性が高いものです。地方分権を進める意思があるのかが、本当は現在、問われているのです。

*東愛知新聞に投稿したものです。

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