少し、歴史を振り返ってみましょう。1987年ソビエト連邦最高指導者ゴルバチョフによって行われたグラスノスチ(情報公開)は、<ノーメンクラトゥーラ>と呼ばれる共産貴族の豪華絢爛な暮らしや汚職なども暴くことにつながっていき、国民の反共産党感情を一気に高め、ソビエト連邦解体への道を推し進めていく大きな原動力となりました。驚くべきことにグラスノスチ(情報公開)からソ連崩壊まで、たった4年の歳月しか要しませんでした。このように情報というものは、大きく社会を動かす力を持っています。
ところで、昨年のアメリカの大統領選挙では、日本のマスコミのほとんどは、ヒラリー・クリントン候補の当選を予想していましたが、なぜでしょうか。
それは日本のマスコミの情報源であるアメリカ三大ネットワーク(ABC、CBS、NBC)をはじめ、グーグル、フェイスブック等のIT産業のCEOがクリントン女史を支持していたために米国内の状況を正確に把握できないことによって、起こった<ねじれ現象>とも言うべきものでした。例えば、日本では、ほとんど報道されませんでしたが、クリントン女史は、22万5000ドル(約2400万円)の講演料で2013年2月にサウスカロライナ州でゴールドマン・サックス社員向けの秘密講演会を行っています。そして、その内容がウィキーリークスによって暴露され、大きな波紋をアメリカ社会に投げかけました。その講演の中でゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン会長の質問に答え、クリントン女史はすでに、2013年の時点で、「米国として可能な限り隠密に、シリアに介入するべきだと考えていた」と明言。さらに、「こういうこと(秘密工作)に関して、この国は昔の方がずっと上手だった。今では、ご承知の通り、みんな我慢できない。みんなして仲良しの記者とかに言わずにはいられないのです。『見て、見てこんなことしているの、自分の手柄だよ』って」と述べ、秘密裏に外交戦略を進められない米国の現状を嘆いています。つまり、米国はシリアという独立した主権国家に介入しようとしている意図をはっきり持っていたことが暴露されたわけです。また、国務長官時代のクリントンメール漏洩事件のFBIによる捜査再開というものもありました。これらの漏洩されたメールによって何が見えてきたのでしょうか。現在、ロシアによってテロ組織ISISの終焉が見えてきましたが、2014年当初のクリントン女史から選対本部長ジョン・ポデスタ宛のメールでは、ISISはサウジアラビアとカタールが設立したと書かれ、クリントン財団には、女史が国務長官時代にサウジアラビアとカタールが資金提供していること、この時に国務省がサウジアラビアの膨大な兵器輸出を承認していることまで明らかになりました。また、クリントン女史からシドニー・ブルーメンソール宛のメールでは、リビアのカダフィー排除は、クリントン女史主導で進められたことも見えてきました。つまり、このような不都合な真実を多くの米国人がネットを通して知ることにより、トランプ氏が大統領選挙に勝利することにつながっていったわけです。
現在、日本では衆議院の選挙が行われていますが、これも5月に加計学園の獣医学部新設を巡り、内閣府から圧力をかけられた文書の存在を「あるものをないとは言えない」と明言し、官邸の意向によって「行政はゆがめられた」と告発した前川喜平前文部科学省事務次官の情報公開によって引き起こされたと考えることもできます。このように情報には世界を動かしていく力があります。
*東愛知新聞に投稿したものです。
Sorry, the comment form is closed at this time.