2020年10月31日号で英国エコノミストが「バイデンでなければならないわけ」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62749)を書いたことに象徴されるように、2020年の米国大統領選挙のマスメディア報道は、米国も日本も反トランプ一辺倒で見事に統一され、挙げ句の果てにツィーターやフェイスブック等のソーシャルメディアも現職大統領であるトランプの発言を封じるという検閲行為に出ることで、はからずもその正体が露わになるという異例の展開になっている。日本の有名評論家のU氏まで、ソーシャルメディアによる検閲行為を称賛していたことには呆れたが、(*さすがにドイツのメルケル首相は、ソーシャルメディアの検閲を批判している。)多様な意見が全く反映されることのないように、現在のマスメディアが画一的、均一的にコントロールされていることを、今回の米国大統領選挙ほど、明らかにしたものはないだろう。

さらに、日本のマスメディアにおいては、先進諸外国のような<クロスオーナーシップ>制度、「電波利用オークション」制度がない。そのため、全国紙の新聞と全国ネットワーク化したテレビ局が、同一資本系列化し、読売新聞、日本テレビ系列のような1,000万部近い発行部数を持つ巨大新聞と全国津々浦々にネット局を持つ放送局が巨大なコングロマリット・メディアを形づくっている。また、日本にはご存じのように諸外国には存在しない<記者クラブ>が、国・地方自冶体・議会・主要経済団体・裁判所などに設置され、形の上では、多数の新聞社、テレビ局が存在しているにもかかわらず、行政や事業者が提供するプレスリリースなどの画一的な情報によって記事が作成されているのが、悲しい現実である。

その結果、マスメディアには、国、地方自冶体などの行政、大規模経済組織などを監視すべき機能を期待されているにもかかわらず、現在、日本のマスコミは、強大な権力、財力を持つ組織の広報機関に成り下がってしまっていると考えても間違いない状況にある。

例えば、2011年フクシマ原発事故においても殆ど、報道検証はされていないが、巨大な広告スポンサーである電力業界に配慮して客観的な報道がされたとは、とても言える状況ではなかったことに現在では、多くの人たちは気がついているだろう。また、現在のソーシャルメディアに幻想を抱いている人も多いが、ツィーターやフェイスブック等のソーシャルメディアとCIA等のアメリカ情報機関との結びつきを私たちは頭に入れておく必要がある。

少々古いが翻訳記事があるので、引用しておく。以下。


ソーシャルメディアはCIAの道具:

人々をスパイするのに使われているフェイスブック、グーグルや他のソーシャルメディア”


Prof Michel Chossudovsky

Global Research

2017年8月28日

2011年に発表された“ソーシャルメディアはCIAの道具。本当だ”と題するCBSニュース記事はCBSを含む主要マスコミが報じ損ねている“語られることのない真実”を明らかにした。

CIAは“人々をスパイするため、フェイスブック、ツイッター、グーグルや他のソーシャルメディアを利用している。”

CBSが公表したこの記事は主要マスコミのウソに反論している。記事はCIAと、検索エンジン、ソーシャルメディアや巨大広告コングロマリットの陰険な関係を裏付けている。“CIAがフェイスブックやツイッターやグーグル(GOOG)や他のソーシャルメディアを利用して人々をスパイしていると考えるのに、アルミホイルの帽子をかぶる必要はない。CIAが、報道発表で、技術投資部門In-Q-Tel経由で出資している全てのソーシャル・メディア・ヴェンチャーの便利なリスト[リンクは無効]を公開してくれているのだ。“

報道は“プライバシー”は広告主に脅かされているが、同時にこうした広告主が“ CIAと結託して”アメリカ諜報機関の代わりに、連係して活動していることを認めている。

(引用終わり)

如何だろうか。

CIA、NSA、国土安全保障省と契約しているソーシャルメディア企業にとって、個人をスパイするのは大いに儲かる商売になっているから、私たちが無料でサービスを使うことができる仕組みになっていると考えても間違いないと言うことだろう。このCBS報道は、世界最大の広告代理店の一つが収集した何百万人ものアメリカ人の個人情報が、CIAに販売されていることを明らかに示唆しているものである。

今、私たちは、このような私企業が、個人の発言を制限する権限を持つことをどう、考えるのかが、本当は問われている。

 

トランプは普通の職業政治家ではない

 ところで、日本人は、この4年間、マスメディアによるトランプ批判ばかりを聞かされていたので、トランプは、どうしようもない政治家だと思わされているが、本当だろうか。


例えば、私の周囲の人々は、トランプがこの4年間、無償で大統領職を務めていることを殆ど知らない。選挙資金も殆ど自前で賄ったはずである。4年前の選挙では、共和党支持者で有名なコーク兄弟からも献金を受けてないほどだ。(*参考「アメリカの真の支配者 コーク一族」ダニエル・シェルマン著 講談社2015年)

コーク一族

もちろん、これはトランプが大金持ち(*フォーブスが実施した調査によると、トランプ氏の推定資産総額は2017年10月現在31億ドル(約3500億円))、トランプ本人は1兆円だと公言している。)だからできることだが、利権に縛られた日本の政治家のイメージとは大きく異なるものではないだろうか。

ここ日本でも、市長や知事を目指す人が、報酬も貰わず、選挙資金も自前で賄って市民や県民には大きな減税のような政策を実行したら、多くの庶民は、その政治家を熱狂的に支持するのではないだろうか。その意味でトランプが選挙で多くのアメリカ人の支持を集めるのも当然だと考えるべきなのである。日本の経営コンサルタントの立花 聡氏が、トランプがなぜ、無償で大統領務めているかについて、興味深い分析をしているので、簡単に紹介する。これを読めば、トランプが普通の職業政治家でないことがよくわかるはずだ。以下。


立花 聡 (たちばな・さとし)エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。


恥を知らない人と金銭欲のない人

 世の中で手ごわいのは、恥を知らない人、または金銭欲のない人。一番手ごわいのは、その両方を併せ持つ人だ。というのが私の持論だ。金銭欲故に恥を捨てる人はたくさんいるが、無恥故に金銭の無欲者になる人はほとんど見ない。しかし、金銭欲を超えた欲求になると、話は別だ。超越的な自己実現という第5段階の欲求の頂点に立つために、恥を捨てる必要が生まれる、そういう場面もあるからだ。そこで恥の価値と自己実現の価値を天秤にかけて後者に傾いた場合、恥を捨てることになる。これは「恥を知らない」と「金銭欲がない」という二項共存現象として表出する。

 もう1つの側面は神という次元で、神には恥も欲(5段階すべて包羅する)も存在の必要がない故に、「無」という絶対的純潔さから神の存在に至高の価値を付与され、聖化されるのである。

 トランプ氏を見る限り、一般人特に日本人の常識としての「慎み」や「恥」の概念に照らしてみると、少なくとも肯定的な評価は得られないだろう。だとすれば、彼は政治家としてある種の二項共存者であると言わざるを得ない。プラス思考的にいえば、神に近い存在、あるいは神とはコインの裏表の関係にある、という類の仮説が生まれてもおかしくない。

 政治家の清廉とは、清貧ではない。清貧だからこそ金銭欲に駆られることも珍しい現象ではない。国家統治の観点からして、民主主義の多数決よりも、金銭的個益を度外視する賢君の独裁が合理性を有する。言い換えれば、最上段の超越的な自己実現の欲求の元で、安易にポピュリズムの罠に陥ることなく国家の全体的利益を追求する姿勢はむしろ理性的であって、為政者の「歴史に名を残す」欲求も健全な源泉と原動力になる。

 God Bless America!「アメリカに神のご加護あれ」と唱えるトランプ氏。その瞬間、彼は神の代理人地位をひそかに自認している。私にはそう見えてしまうときがある。

(引用終わり)

*参考:「How common is Trump’s $1 salary?」BBC https://www.bbc.com/news/election-us-2016-37977433

それでは、普通の職業政治家でないトランプは、何をしようとしていたのか。

これは以前にも書いたが、以下のことである。

彼が何をしようとしていたかを理解するためには、第二次世界大戦以降の世界経済の変遷を振り返る必要がある。大戦後、すべての技術、お金、金(ゴールド)、インフラがアメリカ合衆国に集中していた。そのため、西側諸国の経済は、米国が共産圏であるソ連に対抗するために豊富な資金、技術を、提供をすることによって離陸し、成長してきた。そして1965年以降、西ドイツ、日本が経済的に頭角をあらわすとともに、米国はベトナム戦争等の巨額の出費もあり、いわゆるドルの垂れ流し状態に。その結果、起きたのが、1971年のニクソンショックで、彼は金とドルの交換の停止、10%の輸入課徴金の導入等の政策を発表し、第二次世界大戦後の通貨枠組み:ブレトン・ウッズ体制を解体、世界の通貨体制を変動相場制に移行させたが、その後も米国の赤字基調は変わらず、1985年にはプラザ合意による大幅なドルの切り下げという事態に陥る。

貿易黒字を貯めこむ日本は、内需拡大を迫られ、その後、バブル経済が発生。1965年以降、日米貿易摩擦が発生し、製造業間の調整交渉が日米両政府によって重ねられてきたが、80年代後半以降、米国はトヨタの負け(製造業)をソロモン(金融業)で取り返す戦略に転換していく。日本が貯めこんだドルを米国債、株式に投資させることで儲けることにしたわけだ。この方式を新興国に当てはめ、始まったのが、資本の移動の自由を保障する現在のグローバル金融である。そして、グローバル金融を支えたのが、IT革命。つまり、賃金の安い新興国に米国企業が工場を作る投資をし、その製品を米国に輸出させた儲けは、米国の金融機関が吸い上げるという仕組みである。この仕組みを円滑に機能させるためには、米国のルール:新自由主義と新保守主義の思潮から作り出された価値観(ワシントンコンセンサス)をすべての国に受け入れさせる必要がある。

これが現在のグローバリズムの仕組みである。ここで、軍需産業維持のための戦争と価値観の押し付け外交が密接に結びついていくことになる。ルールを押し付けるためには、米軍が世界展開している必要があるからだ。しかしながら、2008年のリーマンショックでグローバル金融がうまく、機能しないことが露呈し、中央銀行による異常な金融緩和が始まったが、各国中央銀行の資産の異常な膨張を見れば、一目瞭然だが、現在、それもすでに限界に達している。

一番のポイントは、湾岸戦争以降、多くの「プアホワイト」という白人を含むアメリカの若者が戦死しているという事実であろう。(*不法移民は戦争に行かない。)トランプは米国の設立メンバーの子孫でありながら、貧しい生活に甘んじている、星条旗を愛している、息子たちが戦死した人たちに向けて本音で語っていることを私たち日本人も理解する必要がある。彼は、自分を支持する人々に仕事を取り戻すためにもう、海外からモノを買わないと宣言している。要するにもう、世界を席巻するメイドインチャイナは、買わないということだ。これが米中貿易摩擦である。

トランプは、国内問題を優先(アメリカファースト)する反グローバリズムの政治家なのである。

家族、宗教心に根ざす倫理がなければ資本主義は効力をなくし、腐敗していく

「今だけ、自分だけ、お金だけ」を優先する現在の新自由主義を基調とするグローバリズムは、起業の自由や資本主義というものは、宗教あるいは家族から発生する倫理を基盤としなければ機能しないという歴史的事実を無視している。このことは、有名なマックス・ウエーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」という本を読めば、よくわかるはずだ。日本でも<一生懸命働く勤勉さ>と<私より公を尊重する協調性>の根源を石田梅岩の石門心学に求めた山本七平氏の「日本資本主義の精神」とい
う本が資本主義と倫理の関係を明らかにしている。その意味でトランプが米国のキリス
ト教原理主義にきわめて近い人物であることも偶然ではないだろう。

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 日本資本主義の精神

ところで、トランプは4年間で成果を上げたのか

興味深い調査があるので、紹介する。

それは、2020年10月に公表されたギャラップの世論調査「2020大統領選概観」である。調査によれば、「4年前よりも今の方が暮らし向きは良い」と回答したアメリカ人は、56%にも及んでいる。これは、オバマ(2012年、45%)、ブッシュ(2004年、47%)、レーガン(1984年、44%)といった歴代大統領の再選時の数字を大きく上回っている。また、「大統領としてどちらに適性があるか」との問いにはバイデン49%、トランプ44%であったが、「どちらの政策に同意するか」の問いではトランプ49%、バイデン46%と、評価がまったく逆転していることにも注目すべきだ。

要するにトランプ政権は、「アメリカ国民の雇用の拡大」という、当初から最優先のものとして掲げていた公約を十分に達成していたということである。コロナ禍が顕在化する直前の2020年1月時点では、アメリカの就業者数はトランプ政権下で約700万人増加し、失業率は3.5%という、アメリカ経済の黄金時代であった1960年代末以来の水準にまで改善している。アメリカはトランプ政権の最初の3年間で、歴史上稀に見る「高雇用経済」を実現していたのである。その結果、巨大な財政赤字をさらに膨らませたことは事実だが、そんなことを一般有権者は気にかけるだろうか。

また、トランプは、公約通り世界に展開する米軍の規模を縮小させている。以下。

 

米軍、海外70基地を削減 世界41カ国に517 最多は日本の121

沖縄タイムズ2018年9月7日

【平安名純代・米国特約記者】米国防総省がこのほど公表した2017米会計年度基地構造報告書(16年9月末時点)によると、米国外にある米軍基地・施設数は計517で、前年度に比べて70削減されていることが5日までに分かった。07年度の米軍基地・施設数は計823で、10年間で37%減少したことになる。

同省が所有する基地・施設数は、米国内50州に4166(陸軍1588、海軍787、空軍1528、海兵隊172、ワシントン本部管理部91)、グアム準州など八つの米領に110(陸軍39、海軍62、空軍9)だった。

 海外の基地・施設数は、41カ国に517(陸軍199、海軍125、空軍170、海兵隊23)で、陸軍は前年度比で56減り、海軍は3減、空軍は12の減少となった。海兵隊は1増となった。

 海外で最も多いのは日本の121(前年度比1減)で、資産評価額は775億7270万ドル(約8兆6114億円)。

 次いでドイツの120(同61減)で評価額は517億8460万ドル(5兆7486億円)、韓国の78(同5減)で229億1140万ドル(2兆5434億円)などとなり、日本が数・資産価値ともにドイツを大きく上回っている。

 報告書は、米国防総省が会計年度ごとに米議会へ提出していたが、トランプ政権発足後は作業が遅れ、2年半ぶりの公表となった。

(引用終わり)

トランプが米軍を世界から引き揚げるという公約を忠実に守っていることがわかるだろう。

トランプ陣営が主張したバイデン陣営による大統領選挙不正とは

トランプ陣営は、民主党のバイデンが今回の大統領選挙で大規模な不正選挙を行ったと主張し、選挙の無効を訴えていた。その集大成と言えるのが、「選挙不正」徹底調査した「ナヴァロ報告書」である。経済学者・公共政策学者であるナヴァロ氏は2020年12月17日、記者会見を開き、「徹底した欺瞞 選挙違反の6つの局面」と題する合計36ページの調査報告書を公表している。(https://bannonswarroom.com/wp-content/uploads/2020/12/The-Immaculate-Deception-12.15.20-1.pdf

http://www.venus.dti.ne.jp/~inoue-m/el_2020pe_na.html#ny

今回の選挙の勝敗を分けたとされるアリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ペンシルベニア、ウィスコンシン計6州に焦点を絞り、いずれの州でも選挙運動から投票、開票、集計に至る各プロセスでバイデン氏を有利にする組織的な不正工作があったと断定し、不正の調査を求めたものである。トランプ陣営は米大統領選について多数の訴訟を提起し、多数の証拠(宣誓供述書など)を提出。しかし多くの裁判官は証拠を見ようともせず、当事者適格などの形式的要件で却下している。本来なら選挙の不正は、民主主義の根幹を支える一番重要なプロセスなのだから、マスメディアは、検証報道すべきだが、黙殺している。もし、ここに書かれていることが真実なら民主主義のプロセスそのものが死んでいると言えよう。

ところで私たちは、民主主義社会の概念を正しく理解しているのだろうか

 そもそも私たちが理解している民主主義社会の概念は、一般の人々が自分たちの問題を自分で考え、その決定にそれなりに影響を及ぼせる手段を持っていて、情報へのアクセスが開かれている環境にある社会ということであろう。今、私たちが知らなければならないのは、もう一つの社会を支配しているエリートが考えている民主主義社会の概念である。そこでは、一般の人々を彼ら自身の問題に決してかかわらせてはならず、情報へのアクセスは一部の人間のあいだだけで厳重に管理しておかなければならないとするものである。このような民主主義社会の考え方が17世紀に起きた英国の初期の民主主義革命との時から実行されてきたし、現在まで通用してきたことを私たちは、しっかりと理解すべき時を迎えている。このことを端的に説明しているのが、自由民主主義の思想家であったW・リップマンの名著「世論」(岩波文庫)である。是非、読んでいただきたい。

それでは、リップマンの考えを簡単に説明しよう。

彼は、社会における公益を理解して実現できるのはそれだけの」「知性」を持った「責任感」のある「特別な人間たち」だけだと考えていた。そこから彼は正しく機能している民主主義社会には、複数の市民階級が存在すると主張したのである。

第一の市民階級は、総体的な問題の処理に積極的な役割を担わなければならない。これは専門知識をもつ特別階級である。政治、経済、イデオロギーのシステムにおける諸問題の分析、実行、意思決定、管理する人々は人口の一部でしかない。彼は、それ以外の人々を「とまどえる群れ」と呼んだ。エリートは「とまどえる群れ」の横暴や怒号から身を守らなければならない。この「とまどえる群れ」である大衆の役割は、「観客」になることであって行動に参加することではない。これが<観客民主主義>というものである。

そうは言っても民主主義を標榜している以上、彼らの役割をそれだけに限るわけにはいかない。そこで彼らには特別階級の誰かに支持を表明することが許される。「私たちはこの人をリーダーにしたい」、「あの女性をリーダーにしたい」というような発言をする機会を与えられる。これが民主主義社会における選挙であり、それが終わったら、あとは観客に戻って傍観していればいいというのが、彼が考える正しく機能している民主主義社会の姿なのである。

そこには一般大衆の大部分は、愚かで何も理解できないという冷徹な認識がある。

そこで必要になるのが、「合意のでっち上げ」、「納得の創造」である。

そのためにメディアと教育機関と大衆文化は切り離しておかなければならない。政治を動かす階級と意思決定者は、ある程度、そうしたでっち上げに現実性を持たせなければならず、それと同時に大衆がほどほどにそれを信じこむようにすることも必要だ。

そのために考え出されたのが組織的宣伝であり、プロパガンダの手法だ。

冷戦後、元々、軍事技術であったインターネット技術の公開によって情報機関等は、個人情報を安易に収集することは可能になったが、その一方でいろいろな個人が、自由に情報発信ができるような環境が整備された結果、マスメディアによる「納得の創造」が以前に比べると格段に難しくなってしまったのである。そのことを物語っているのが既存メディアに対する信頼度の低下である。以下の資料を見ていただきたい。

*メディアへの信頼度が高いだけに世論誘導されやすい日本


<新聞・雑誌やテレビといった主要メディアへの信頼度は、欧米諸国と比較して格段に高い>2015年10月27日舞田敏彦(教育社会学者)(ニューズウイーク)より引用。

日米メディア信頼度2015年(ニューズウイーク)

少々古い資料だが、アメリにおいてはマスメディアを使って世論をコントロールすること自体がもはや、難しくなっていることが一目瞭然である。

ここで少し考えていただきたい。

マスメディアを使って、大衆に対して、W・リップマンのようなエリートが考えた「納得の創造」ができないなら、彼らはどのように考え、行動するだろうか。

ある意味、今回の大統領選挙で暴露されてしまった大規模な選挙不正は、大衆に対する「納得の創造」に失敗すれば、次に彼らが取る必然の手段だと考えるべきではないだろうか。

エリートを自称する人々は、大衆、すなわち、「とまどえる群れ」に本当の決定権を持たせてはいけないと確固たる信念を持っているのだから、そう行動すると考えるのが自然である。その意味で、トランプはアメリカ政治史に時々、登場する、エリートが毛嫌いする、ヒューイ・ロング(ルイジアナ州において絶大な人気と権力を集中させ、ルイジアナ州知事と連邦上院議員を務めた(1893~1935))のような民衆の味方であるポピュリストの政治家なのである。

<参考資料>


*現代ビジネス2021年2月14日号

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/80172

「アメリカ人だからこそ言いたい、この大統領選挙には納得できない」

~真の問題はメディアとの深すぎる癒着~ロバート・D・エルドリッヂ政治学者


フェイスブックやツイッター がトランプ陣営の発信を制限した結果、「検閲なし」SNSが大盛況に

「パーマー」と「ランブル」は、アメリカの保守派の間でツイッターやYouTubeに代わるソーシャルメディアとして現在、急速に人気が高まっており、トランプ陣営の発信を掲載し、その視聴回数は数百万回にものぼっている。まだ、大きな変化はこれからだろうが、ソーシャルメディアのプラットフォームもこれから大きく変化しそうな兆しが見えている。トランプ自身も独自のメディアを立ち上げると明言していることにも注目すべきであろう。現在、クラブハウスというSNSがブレークし始めているが、今回の大統領選挙でグーグル、フェイスブック、ツィーターの一人勝ちの時代は、意外に早く終わるかもしれないという現象が起きたことも興味深い。

何れにしても今回の米国大統領選挙の一連の出来事が明らかにしたことは、大きく社会が変化する時には、すでに既得権益者に組み込まれてしまっているマスメディアもソーシャルメディアも機能しないということである。

たしかにトランプは一端、その戦いからは、身を引いたが、今も米国では、大衆とイスタブリシュメントとの戦いは、続いていることも忘れてはならないだろう。それは、上述した、大衆が自分たちの問題を自分で考え、その決定にそれなりに影響を及ぼせる手段を持っていて、情報へのアクセスが開かれている環境にある、本当の民主主義社会を実現するための戦いでもある。

 また、リーマンショック以後のグローバル金融を世界各国の中央銀行が異常な金融緩和で支え続けてきたが、それも限界にきていることを再度、指摘しておきたい。

 そう言えば、ソビエト連邦崩壊前の東ドイツ国民は、自国がなくなってしまうことを想像することもできなかったようである。

偽りの現実の賞味期限が迫っている。


*一年前には、誰も予想できなかったベルリンの壁崩壊

ベルリンの壁崩壊

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