1月 132009
「国家あげての巨大詐欺 」
ビル・トッテン
~いつの時代にも、反論をすれば何を言っているのか、といわんばかりに一蹴されてしまうものがある~
先の戦争で、日本が米国に勝てるはずがないなどと言おうものなら非国民扱いされたように、現在においては、メディアの喧伝がさらに激しくなっているがゆえに、人々の検討や精査の猶予も与えないほど、それ以外は論外とでもいわんばかりのものに「規制緩和」と「民営化」がある。
1990年以降、日本政府がとってきたさまざまな政策が国民にとって改革なのか改悪なのか、それは政府の債務残高、企業倒産件数、民間負債額、または自殺率、犯罪、政府の汚職、といったデータをあわせて見ればよい。日本という国が健全な方向に向かっているのか、それとも、より多くの借金をかかえ、国民が希望を持ちにくくなっているのか、それが明確にわかるはずだ。しかしそれでも、まだ日本政府もそのおかかえエコノミストたちも、民営化、規制緩和の筋書きを改めようとはしない。
これもすべて、日本が手本として仰ぐ米国からの言われるがままの行動なのだ。つい先日も新テロ特措法が強行採決され、中断していたインド洋給油を再開させることになった。これで日本政府はブッシュ政権から頭をなでてもらうのかもしれないが、冷静に米国という国をみれば、このまま隷属していくにはさまざまな意味で危険な国だ。
米国の金融システムはいま、危機的状況にある。明確にいうと、サブプライム住宅ローンの借り手の巨額のデフォルト(債務不履行)と、それが組み込まれて証券化されたさまざまなローンがもたらす損失において、その派生的な性質のために実際の金額が計り知れないほどの巨額の損失が出ている。2008年が大きな変化の年になるとしたら、この危機が表面化し、損失の大きさが人々の知るところ、それどころか日本という国にも影響を及ぼすようになることかもしれない。
米国でエンロンやワールドコム事件などの不正会計問題が頻発したのは、1990年代末から2000年代初頭だった。それに対処するため、2002年にはSOX法なるものが制定され、それは企業会計や財務報告の透明性・正確性を高め、またコーポレートガバナンスの在り方と監査制度を改革し、投資家に対する企業経営者の責任と義務・罰則を定めるという法律だった。しかしその米国で、世界の金融業界をも握る米国最大の金融機関が、あまりにも軽率な行為により巨額の損失を生み出すことを行って世界に金融危機をもたらしたのである。
エンロンと今回のサブプライムローンに共通する点は、米国企業経営者の報酬の仕組みが、彼らの貪欲さを煽っているということだ。その仕組みと大きなインセンティブによって、経営者は企業所得を大きくみせるための行動をとる。それがサブプライムローンのように、企業リスクを大幅に増やすようなやり方をとらせる。そしてそれによって企業経営者自身は巨額の報酬を手にすることができる。こうして、シティーコープ、メリルリンチといった企業の経営者は責任をとって辞任したが、しかしすでに彼らは巨額のボーナスを手にしているはずだし、退職に際してもおそらく痛くない条件がついていたことは想像に難くない。
日本政府や企業に『透明性』を説教する米国とはこんな国なのだ。そして元財務長官だったロバート・ルービンは、自分がボードメンバーだったにもかかわらずこのような事件を防げなかったシティコープの新しいCEOになる。究極の格差社会米国では、勝者は常に勝ち、敗者は常に一般国民なのかもしれない。つまり規制緩和された米国では、ルールなきジャングルにも等しく、ごく少数の企業経営者が不正な会計操作によって自分だけが儲かるような仕組みがあり、それによって一般大衆が被害をこうむろうとも関係ないといわんばかりの社会なのである。
政府与党、そしてそのお抱えエコノミストたちは、いまだに米国の言いなりで、さらなる規制緩和、民営化を進めようとしている。日本を米国のような国にしないためにも、その逆、国民を、日本国を米国から守る規制を政府はいまこそ強化するべきなのだ。国家をあげての大規模詐欺から身を守るにはそれしかない。
(私のコメント)
現在の毒入りギョーザ事件は日本の「食の実情」を一般の人々にも知らしめたのではないだろうか。もともと、中国の安い労働力に眼をつけた日本の商社が農産物や加工食品を中国で作らせて輸入するシステムを作り上げたのだが、では、なぜ、日本はそう言った経済行動を取るように仕向けられたのか、あまりに日本人は理解していない。
すべてはプラザ合意における購買力平価から見れば異常な円高を米国に強要されたことに始まっているのである。そして、この時から中国経済の急成長が始まったのである。
人の良い日本人は実際に被害が生じないと分かろうとはせず、米国のような国の根本的な戦略に対しては全く思考することができない。そのために食料だけではなくエネルギー問題や軍事や情報問題などすべてをアメリカに依存する政治をしている。
頼りにするアメリカが日本を我が子のように扱ってくれると勘違いしているかのようである。
もちろん、そんなことがあるはずがない。米国は20世紀初頭にオレンジ計画War Plan Orangeという対日戦略を立て、その通り、1945年に日本を占領した国なのである。国際法上、使用してはいけない原爆を一般市民に対して使い、大虐殺を断行した国なのである。
人の良い日本人は戦後、米国が日本の経済復興を助けたくれた素晴らしい国のように思っているが、彼らは自国の国益のためにそうしただけなのである。なぜ、こんな当たり前のことを日本人は理解しないのだろうか。(もっとも小生はそんな人の良い日本人が好きですが、)
食料に関して言えば、ここ二、三十年でヨーロッパなどは食料自給率を上げてきているのに日本は下げている。金があれば食料は買えるとこれも勘違いしているのである。バイオ燃料などの影響で小麦や大豆が高騰して食料の輸出余力のある国が減ってきている。自分の企業の利益しか考えていない財界の一部の経営者が言うように経済効率を優先すれば安い外国産を買えばいいのだろうが、ほんとうは安全や品質などを考えて国は対策を打つべきなのだ。毒入りギョ-ザ事件では中国からの冷凍食品だけでなく野菜なども買い控えが起きているが、まだ、高濃度の農薬が含まれた中国産野菜を日本は輸入し続けている。
たしかに現在の国会議員や高級官僚といったエリートにとっては、アメリカや中国などの言いなりになっていたほうが摩擦が少なくて殺される心配もないし、お金も入ってくるから都合がよいのだろう。だが、国民の安全、安心と言った国益を考えるのが彼らの仕事ではないか。
アメリカからは毎年「年次改革要望書」を突きつけられて日本政府は粛々とそれに従っている。そのような国を独立国と言う事は到底できない。
<どうして日本政府はアメリカに対して自己主張できないのだろうか?>
終戦直後なら仕方がないが、戦後半世紀以上たってもアメリカ従属体制に変わりがないのは、自分で自分の事を考える能力を失ってしまったからではないか。
韓国では2012年に米軍が完全撤退し、軍の指揮権が返還される。日本よりも韓国の方がアメリカ離れがはるかに進んでいると言えよう。それに対して日本は自衛隊と米軍との一体化が進んでますますアメリカ従属が強まってしまっている。
戦後、唯一、田中角栄氏が自主独立の道を模索したが、米国に踊らされた官僚とマスコミのスキャンダル攻勢で田中氏は辞職に追い込まれてしまった。
最近では戦後政治からの脱却を訴えた安倍晋三氏が同じように官僚とマスコミ攻勢で辞職に追い込まれた。政治家が米国からの自主独立を模索すると官僚、米国からマスコミに情報がリークされてスキャンダルにされて政治的に抹殺されてしまうのが日本である。当たり前だが、マスコミも国民全体の利益を考えていないのである。彼らもスポンサーと自分たちの利益しかかんがえていないのである。
その意味で、「サンディプロジェクト」という田原総一郎氏の番組には外資の手先ばかりが出演してくるのもマスコミの本性を表していると言えよう。もちろん、国益を主張する評論家は出演することはできない。そう言った心ある人はテレビに出られないから本を書いたりインターネットで情報発信するしかない。日本では評論家は、アメリカバンザイ、中国バンザイと言っていなければテレビに干される。
見えない形で情報規制が確実に行なわれている証拠だと言えよう。
そう言えば、北朝鮮による核武装問題も、ブッシュ政権は北朝鮮を悪の枢軸と呼んでいたが、裏ではずっと対話路線だったが、表もいつの間にか対話路線に切り替えたようだ。核施設は廃棄しても数発の核爆弾は隠し持ったままの北朝鮮をアメリカは容認する。どうせ北朝鮮のミサイルはアメリカには届かないからだ。そして日本に対して役に立ちそうにもないMDを数兆円で売り込もうとしている。しかしMDでは巡航ミサイルも落とせない。
本当のことを言えば、現在、まともな防衛を考えるならばミサイルでミサイルを打ち落とすような高価なシステムよりも、日本も核武装を考えるか、世界が持つ核兵器を無力化させる兵器を開発するしかない。六者協議の本当の目的は日本や韓国を核武装させない為のものであり、必然的にアメリカと中国による日本を共同管理する体制をもたらす。
台湾の独立問題に対するアメリカの不可解な動きも中国の協力が必要だからである。
思考能力を失った日本の政治家はアメリカと中国による日本への共同管理体制に気がついていない。六者協議のシステムは米中による日本管理のシステムなのだ。
「政府与党、そしてそのお抱えエコノミストたちは、いまだに米国の言いなりで、さらなる規制緩和、民営化を進めようとしている。日本を米国のような国にしないためにも、その逆、国民を、日本国を米国から守る規制を政府はいまこそ強化するべきなのだ。国家をあげての大規模詐欺から身を守るにはそれしかない。」とビル・トッテン氏が書いているが全くその通りである。
田原総一郎氏のような人たちは、自分にお金をもたらす勢力のために一生懸命、喋っているのである。 くれぐれも番組を見ている一般大衆の為でないことを肝に銘じるべきである。
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