大変な事態が進行しているようである。愛知県豊橋市の中高年の女性からも政府の原子力発電所の事故発表はどうも信用できないという声が上がり始めている。

親戚や知人からいろいろな生の情報がもたらされているせいだろう。

 被災者、退避者たちが、避難所から避難所へ、そして、親戚の家に引き取られている。特に、福島県民は、原発事故の退避(避難)で、何も発言できないまま、福島第一原発から、10キロ圏の双葉町は、埼玉県の加須市に移され、大熊町は、会津若松市に移されている。楢葉町と、浪江町、広野町も、行政機能ともども、仮設住宅の建設とともに、どんどん、散り散りバラバラになりつつある。

 そんななか、菅政権の今回の福島原発の対応に対して重大な疑惑が浮かび上がっている。今回は。その一つを紹介する。

  政府は国民の生命と健康を守るために、万が一にも被害が発生しないように行動する責任を負っていることを肝に銘じて行動してもらいたい。

 愛知県を元気にして被災者、被災地を助けるんだという気概が今、求められている。

*FACT 2011年 4月号より

「菅の大罪「福島原発」判断ミス」

 東電は早くから「スリーマイル以上、チェルノブイリ未満」と報告していたが、100キロ圏内を見殺しにしたのか。

 千年に一度と言われるマグニチュード9.0の「東北関東大震災」は、深く大きな傷を日本列島に残した。しかしこれを「天災」と諦めることはできない。地震、津波の被害は天災と言えるかもしれないが、東京電力福島第一原発1~4号機の爆発または損傷と放射能の拡散は「人災」以外の何物でもない。菅直人首相と官邸スタッフ、そして民主党内閣は、東電から再三の報告があったにもかかわらず、実態を隠蔽し、住民の避難を遅らせて、最小限に防ぎえた被害を拡大させた疑いが浮上している。

100キロ圏内は避難必要

 地震発生から3日目、計画停電初日の3月14日午後、電力ウォッチャーが声を潜めてささやいた。

 「チェルノブイリまでは行かないだろうが、スリーマイル島以上に深刻な状態になっているんだ」

 言うまでもなく、前者は1986年4月26日、旧ソ連(現ウクライナ)のチェルノブイリ原発で起きた事故で、黒鉛炉が炉心溶融(メルトダウン)の後、爆発した。この結果、広島に投下された原爆約500発分の放射性物質が、旧ソ連領ばかりか全北半球に拡散した。被曝などこの事故に原因するとされる死者は、数百人から数十万人までと諸説あるが、史上最悪の原発事故と言われる。

 一方、後者はこれに先立つこと7年前の79年3月28日、米国ペンシルベニア州スリーマイル島原発で発生した事故である。イオン交換樹脂の再生作業中、安全弁が開きっぱなしになり、500トンの冷却水が流出した。このため周辺住民は大規模な避難を余儀なくされた。

 国際原子力機関(IAEA)の8段階の深刻度レベルで、チェルノブイリが7、スリーマイルが5だから、日本が当初、福島を4と発表したのは、明らかに過小だった。

 このウォッチャーが、原発のプロとも言える電力会社OBに聞いたのは12日である。同日午後3時36分、福島第一原発1号機で水素爆発が発生し、建屋が吹っ飛び、東電社員2人と協力企業従業員2人が負傷。炉心溶融の可能性が高いと報じられたからだ。大震災発生以来、日本が、そして世界が危惧していた被災地の原発事故が遂に発生して、その事態が何を意味するかを聞いたのだが、予想以上に深刻な事態(Severe Accident原子力関係者の用語では「過酷事故」と呼ぶ)になっているとの回答が返ってきたのだという。

 IAEAの尺度で7と5の間、つまり6とは、要するに、大規模な住民避難以上の事態は不可避だが、数百人から数十万人という規模の死者には至らない、という意味になる。

 背中が凍りついた。やっぱり、そういうことか。一瞬、13日に計画停電を発表した枝野幸男官房長官の無表情と、対照的になにかに追い立てられるような東電の会見が頭の中で交叉した ― 官邸と東電は連携できているのだろうか。

 ちょうどその時、携帯が鳴った。15日に会食の約束をしていた東電に近い関係者からである。耳にしたばかりの「スリーマイル島以上、チェルノブイリ未満」のココロを聞いた。驚いたことに、この関係者はあっさり事態を認めた。

「その通りです。福島第一原発は極めて危険です。すでに制御不能状態にあります。周辺の住民はすぐに100キロ圏内立ち入り禁止にしなければならないような状態です」

 耳を疑った。菅首相や枝野官房長官はそんな危険な状態であることを一言でも漏らしたろうか。100キロ圏内の住民に避難勧告をしていただろうか。

「その情報は官邸にあがっているんですか?」

「過去に原発事故を起こし、糾弾を受けた東電は、データを隠すことなどできないガラス張りになっています。情報はすべて官邸にあげています」

 帰宅の道すがら、旧知の民主党閣僚、議員にメールを打ちまくった。

「真偽はとにかく、福島原発はスリーマイル島以上との情報あり。外れなら幸い、大規模な避難を実施しなければ民主党は償いきれぬ罪を負います」

「福島原発事故の真相を一刻も早く明らかにし、直ちに避難を進めないと民主党は国賊、未来永劫償っても償いきれぬ罪を負う。信頼できる消息筋からの情報」民主党閣僚、議員からは何の返信もなかった。自宅でテレビをつけても、どの番組でも福島第一原発がすでにコントロール不能の深刻な状態にある、という報道はなかった。

 深夜に何かあったらいけないと思い、節電の呼びかけもものかは、テレビをつけっぱなしで寝ていたところ、15日午前8時過ぎ、NHKのアナウンサーが深刻な表情で「福島第一原発2号機から午前6時14分に爆発音がした」と伝えた。周辺に最大400ミリシーベルトという高濃度の放射性物質が漏れ出したと指摘され、4号機の火災や2号機で格納容器が破損した可能性など、一気に事態が拡大した。政府は避難を指示していた範囲を周辺20キロから10キロ拡大して、30キロ圏内の住民に屋内退避を呼び掛けた。

 まさにスリーマイルを超えたのだ。運転停止中だった4~6号機の使用済み核燃料も貯蔵プールの温度が上昇、原発から遠く離れている東京、横浜でも通常以上の放射線値が記録される。在日中国人は一時帰国のために航空券を買い漁り、15日以降の中国路線は連日満席となった。

東電本社で怒鳴り散らす

 

 菅首相は号外が発行される前後の15日午前、東電本社(東京・内幸町)を訪ね、福島第一原発の爆発事故の連絡が遅れたと怒鳴りちらした。「一体どうなっているんだ。テレビで爆発が放映されているのに、首相官邸には1時間くらい連絡がなかった」

 そして新聞やテレビの記者を前に「東電の撤退などあり得ない。覚悟を決めてほしい。撤退したときには東電は100%つぶれる」と、大見得を切ったという。東電に近い関係者の情報が事実なら、菅首相は福島第一原発が制御不能な状態との報告を受けていながら、何の措置を取ろうともせず、事故が起きてから東電本社に乗り込んでカメラの前でパフォーマンスを演じたことになる。

 これが「政治主導」なのか。

「官邸には発表するタイミングもあることでしょうから、隠蔽という表現が適切かどうかわかりません。しかし、東電は計画停電にせよ、避難にせよ、すべて官邸におうかがいを立てるだけです。原発事故という国を揺るがす大事故すら、官邸はショー化して自らの人気取りにしようとしているとしか思えません」

 東電に近い関係者は、力なくこう悟った。福島第一原発の爆発が近いという重大情報を入手していながら、これを故意、もしくは無作為に放置して、避難命令を遅らせた菅内閣、官邸は国民を見殺しにしたに等しい。不幸にして被曝による犠牲者が出た場合、千古の罪人として菅首相は償っても償いきれまい。東電も対処を誤った責任は免れないが、政府はすべてを東電に押しつけて済まそうとしている。世界を実撼させた原発事故に彼らがどんな報道管制を敷いたのか、復興支援の一方で激しく追求しなければならない。

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