6年前の事故により破損した福島第一原子力発電所の第二号機格納容器内の放射線レベルは、今まで専門化が解説していたより格段に高い530SV/hにまで達していることを東京電力は、2017年2月に明らかにしました。この530SV/hは、人が近くにいれば1分足らずで死に至る放射線量です。
二号機内格納容器の中の散乱するデブリの様子も画像公開され、福島第一廃炉の困難さを強く印象付けています。この公開写真を見ていると、小嶋稔東京大学名誉教授<地球惑星科学>が書いていた文章を思い出さずにはいられません。
「福島原発事故は放射性物質の流出で環境へ甚大な災害をもたらした。さらに私を含む同位体地球科学者を専攻する者の多くは、福島第一原子力発電所一号炉のメルトダウンした核燃料が再臨界を起こし、大規模な核分裂反応を起こすのでは、との危惧を払拭し切れない。もしそのような事態になれば、東日本が壊滅するとの菅元首相の警告が現実のものになってしまう。~(略)~過去2年、放射射能汚染の議論・報道がマスコミを賑わしている反面、さらに深刻な再臨界の議論が専門家の間ですら皆無に近い。しかし、1972年9月フランス原子力庁が発表したガボン共和国(アフリカ)での「オクロ天然原子炉」発見は、再臨界は原子炉内に限らず自然界でも起きる事を証明した。福島第一原発一号炉のメルトダウンしたウラン核燃料が現在どのような状態なのか、よくわかっていない。しかし、メルトダウンの現状は、きわめて厳格なコントロール下で正常運転の原子炉より、「オクロ天然原子炉」の「火元」になったオクロ・ウラン鉱床の状態に近い可能性も否定できない。」(岩波書店 「図書」2013/7号)
また、日本のマスコミが詳細には取り上げなかった「ゴールドシュミット地球国際会議2016」(2016年6月末に開催)で九州大学など国際研究チームが発表した研究成果について、フランスのルモンド(2016年7月6日電子版)は詳報し、国際社会に大きな波紋を投げかけています。その記事のタイトルは、「フクシマの事故は東京まで、放射性セシウムの「ビー玉」を拡散(*2011年3月15日に拡散した)」というものです。「それはフクシマでの核惨事の特殊性をさらに際立たせ、環境および健康への影響に関する研究のあり方を変えるものだ」「このような現象は、1986年の「チェルノブイリ」事故時にも観察されていない」とし、「ビー玉」化した放射性セシウムは、人間の体内で水によって流されず、それだけ体外排出されにくいものになって、より長期間、体の中に留まり、その分、内部被曝を持続させるのではないかという懸念を指摘しています。また、オーストラリアABC放送のインタビュー(2016年5月24日放送)では、東電の増田尚宏氏(東電福島第一廃炉推進カンパニー最高責任者)がコンクリートやその他金属が混じった溶融した核燃料は、約600トンあり、それを取り出す技術が現在、開発されていないことを明言しています。
2015年ノーベル文学賞を受賞したベラルーシの作家、スベトラーナ・アレクシエービッチさんが「私たちはチェルノブイリ破局への、想像力、類推、言葉、経験の体験を持ち合わせていなかったのです」(「トーチレポート2016」序文)と語っています。現実を直視し、その事実が起こし得る未来を想像し、言葉にする、行動する勇気が今、求められています。
*東愛知新聞に投稿したものです。