戦後、日本人が近現代史を事実上、学ばなくなってから久しい。その結果、「日本が朝鮮半島、台湾、満州で行ったこと」を全く知らない日本人が大量生産されている。
私たち日本人は、朝鮮半島、台湾、満州において欧米の植民地経営と異質の「同化政策」と取り、莫大な予算をその国に投じ、インフラ整備等を行ってきた。その結果、戦後、アメリカが仕掛けた分断統治政策によって恨(ハン)の国、韓国からは恨みを買い、米国がそのような政策をとらなかった台湾からは、それほどの反感を持たれることはなかった。むしろ、現在の台湾は親日国と言っていいだろう。
私たち日本人が忘れてならないことは、英米は、ロシアの南下政策への対応、大英帝国の金融支配(金本位制をすすめるために)の上でも日本の朝鮮半島への進出を明らかに承認していたことである。石原莞爾、板垣征四郎による満州国建国ですら、満鉄の経営を米国の鉄道王ハリマンとの共同経営にしておれば、おそらく認められていただろう。
戦前、北朝鮮の工業地帯をつくり、鉱山を開発していたのも、私たち日本人であったことも忘れてはならないことである。なぜなら、その設備は今も生きているのだから。今、北朝鮮の核問題で大騒ぎだが、彼の地で理化学研究所を中心に戦前、核兵器である原子力爆弾開発に邁進していたのも、私たち日本人なのである。
歴史にイフはないと言われるが、もし、日本が大東亜戦争でアメリカと戦争をしなければ、朝鮮半島は、現在のアメリカにおけるハワイ州のようになっていたことも間違いない。それほど日本の朝鮮半島に対する植民地支配は完璧だったのである。それは朝鮮銀行(中央銀行)による金融支配とメディアコントロール、李王朝の日本の皇室への取り込みにあった。
そのために当時の日本政府は、李王家に150万円も予算をつけたのである。当時、日本の11宮家の総予算が70万円だったことを考えれば、如何に破格の待遇であったか、わかるだろう。この政策によって李王家は、同胞朝鮮民族に対する求心力を急速に失っていくことになる。また、裏では英米にお金儲けをさせることも明治維新以来、英国勢力と共犯関係にある明治の元老の日本は決して忘れていなかったのである。
米国は戦後、このような日本の朝鮮、満州管理政策を詳細に研究し、戦後の日本管理にその研究尽くした日本の手法を応用していった。そしてそれは、今も現在進行形である。その証拠に米国は日本占領後、「日韓併合条約」の原本を本国に持ち帰り、未だに日本に返還しようともしていないのだ。
かつて私たち日本人は、宗主国としていい悪いは別にして、朝鮮半島のことを世界で一番知っていた。今もそうであったなら、現在報道されているような米国の戦争屋=ジャパンハンドラーが創作した北朝鮮:悪の枢軸のような幼稚なプロパガンダがこれ程、日本のマスコミで連日、報道されることはないはずである。(NHKは国際放送では、North Korea airs rocket launch video、「北朝鮮がロケット打ち上げビデオを放送」、それに対して私たち日本人には、「北朝鮮の国営テレビ、ミサイル発射の放送」である。明らかに日本国民に対するイメージ操作が行われているのである!)大体、今回官邸が沖縄等に配置した迎撃ミサイル・システム(:海上自衛隊が運用するイージスBMD,航空自衛隊が運用するPAC-3)ではミサイル?の迎撃は不可能に近いのである。日本政府は無知な国民に対してパーフォーマンスをしているに過ぎないのである。
今回は、北朝鮮を少しでも客観的に見ていただきたいと思い、まとめるレポートである。
まず、はじめにレポートでも時々紹介する元外交官原田武夫氏の「北朝鮮外交の真実」という本のことを知っていただきたい。この本は小泉純一郎氏が北朝鮮外交を展開している時に北朝鮮班長を務めた原田氏の経験から日本外交の問題点を指摘した本である。内容は以下。ただ、北朝鮮外交を巡る内部情報は一つも明かされていないのが物足りないところである。
・1993年4月。桜咲く霞ヶ関に、私(原田武夫)はリクルートスーツに身を包んだ同期たちとともに、外務省に初登庁。東京サミットが過ぎ、在外研修員としてドイツ連邦共和国における研修生活が始まった。
・そこで大物外交官、有馬龍夫駐独大使から、日々厳しい薫陶を受けることになる。
外交官としての立ち振る舞いのイロハは、ここで学んだ。ハーバード大学で政治思想を教える立場から、一転、外務省へと転職した異色の経歴を持つ有馬大使は、何かというと日本の国内政治か、食か酒の話しかできない日本人幹部外交官とは全く違い、その類い稀なる知性と、レスンリング選手であった頃からの強靭な意志で、どんな大物ドイツ人政治家であっても圧倒するほどの迫力を持つ人物だった。
・彼の秘書官として、朝の鞄持ちから、深夜にまで及ぶこともある公邸夕食会の裏方に至るまで、24時間、その仕事ぶりを学び、盗み取った。
・北朝鮮外交だけをとってみても、関係する諸国は皆、それぞれに濃淡はあれど、はっきりとした「経済感覚」をもって、外交の現場に臨んでいる。そうでないのは、悲しいかな日本だけである。北朝鮮問題の本質は、核兵器ではなく、実は鉱山利権を巡る争いである
・外交とは、近代国家に特有の国家の行動である。
その意味で、外交を論じるということ、あるいは外務省を論じるということは、結局は、その国のあり方について論じるということにも通じていく。
・安全保障問題だからこそ、相手国の財界関係者が精通していることも多々ある。
なぜなら、彼らにとってある国や地域の安全保障環境は、すなわち投資環境の状態につながるからだ。こうした相手国財界関係者に「お土産」となる情報をもたらすことで、相手国政府が「作った事実」の真偽や経緯を検証することもできるはずだ。
・企業活動の本当の成否はヒト、モノ、カネといった目に見える資源が決めているのではない。技術開発力、熟練やノウハウ、特許、ブランド、顧客の信頼、顧客情報の蓄積、組織風土といった、目に見えない資源こそが企業の発展のカギを握っている。これらの資源を『見えざる資産』と呼ぶと、それは実はすべてが情報にからんだ資源であることがわかる。
・他者との関係を媒介する力が強い人ほど、そのネットワークで中心的な存在である。
ハブとして強力な媒介中心性を有していれば、そのネットワーク内で流れる情報は、すべて自分を通らなければならない仕組みになっている以上、ハブの人はいわば常に情報の「良いとこ取り」ができる立場にある。
・情報の競争に勝つためには、ひとことで言えば、「ハブ」としての地位を保つために、あらゆる手段を用いるべしということに尽きる。
・今の自分に欠けている情報を得るためには、自分と関係が重複していない人々やメディアを情報源としている人々と接触する必要がある、というわけだ。
・ODAは、武力を持たない丸腰の日本外交が唯一持っている「伝家の宝刀」だ。いかに暴れん坊の国であっても、ODAを供与しない、あるいは減額するといった議論を始めると途端に、日本に対して従順となる。
・外交に求められる発想法、あるいは論理とは何か。私は、非常に単純な整理をした場合、それは次の六段階の発想法だと考える。
1.地理的・時間的に研ぎ澄まされた現状認識を持つ。
2.狙った相手国へ自国に有利な投資条件の整備を飲み込ませる。
3.あらかじめ安値の間に先行投資を行う。
4.軍事力を背景とした工作を展開する。
5.狭義の「外交」によって表面を取り繕う。
6.そこで実際には絶好のタイミングであらかじめ仕込んでおいた先行投資を回収する。
・「本当に勝つボクサーは、アッパーなんて打ち込まないよ。勝利のためには、目立つことでなく、相手が体力を消耗するように地道にボディーブローを繰り返す。外交も同じだよ」(ある老練な先輩外交官)
・日本の「公なるもの」とその延長線上に幸福を描く議論に共感する気持ちは、大方の日本人を大同団結させるものである。この気持ちが後押ししてくれるからこそ、日本外務省の仕事が成り立つのだ。
・外交はひとり政府が行うものでもなく、外務省がすべてを担えるものではないことを率直に吐露したい。その上で、オールジャパンで国際場裏において、「国富を取りにいく」ことの重要性を説くこと。この率直さと、高潔さが外務省に働く人々に備わったとき、「日本のために」を合言葉に寄り集う人々の団結は、もはや他国からのメディア・アプローチへの免疫を十分兼ね備えたものとなる。
・「情報力」によって事実を認識し、「政経合体戦略」によってターゲットの選定とそれを獲得するまでのシナリオを描く。そして狙いを定めた先に、まずは圧倒的な「メディア・アプローチ」をもって、世論を形成させていく。
・外務省に入省した若い省員たちは、古株たちから、「他省庁と話すときには付加価値を付けて話せ」と叩き込まれる。外務省には権限がないため、複数の省庁にまたがる懸案事項について国内調整するとき、郵便屋になってしまうことが多い。しかし、それではナメられてしまうから、何としてでも知恵を出せというわけだ。
・ドイツには「連邦諜報庁(BND)」という機関がある。日本と同じく敗戦国として再生した西ドイツにおいては、日本と異なり、戦後まもなくから諜報機関が活動してきた。BND自身は1956年に設立されたが、その前身はナチス政権下で東欧・ソ連に対する諜報活動を指揮していた。ゲーレン将軍が率いる「ゲーレン機関」であった。
・東欧とソ連を自らの生存圏として定義し、そこへの侵略戦争を展開していたナチス・ドイツにとって、これらの地域への諜報・工作活動は死活的な意味合いを持っていた。
そのため、ゲーレン将軍率いる特殊機関は大きな役割を果たしていたが、ナチス・ドイツの敗北とともに、この機関も消滅するかに見えた。しかし、ゲーレンはこの機関の遺産を、そのまま「東側世界への防塁」として役立てていることを米国に提案し、戦後世界における生き残りをはかることになる。
・日本に本当の「外交」を可能とするために、人的ネットワークを創り上げよ。
・「トータルな発想」では、個別の地域的問題ではなく、世界中のあらゆる地域・国家を対象とした外交政策がリンクされなければならない。
なぜなら、富は常に世界のどこかに集積しているからだ。すべての地域に目を配り、綿密な計算の下、外交政策の全体のポートフォリオが絶えず更新されなければならない。(終わり)
それでは、過去のものになるが彼のブログから興味深い記事を紹介したい。以下。
「北朝鮮は世界最強のファンドビジネス国家?」 2007年 2月12日
今頃になって騒ぎ立てる日本のメディア
2月8日から中国・北京で行われた北朝鮮を巡る六カ国協議。2003年から延々と行われてきたこの協議も最大の山場を迎えた。いや、日本にとっては山場どころか、最大のピンチといった方がいいのかもしれない。なぜなら、とある重大事がはっきりとしてきたからだ。
「封じ込まれているのは北朝鮮ではなく、日本ではないのか」
あれだけ北朝鮮とはサシで話し合いはしないと言っていた米国が、ドイツ・ベルリンで米朝協議を行い、交渉当事者たちがなにやら怪しげな笑みを浮かべた後に行われたのが今回の六カ国協議である。蚊帳の外に置かれた日本政府は、一体何が起きているのか分からないというのが正直なところだろう。
しかし、今回の六カ国協議の直前になって、日本のメディアがけたたましく騒ぎはじめた話がある。それは、よりによって北朝鮮の豊富な鉱山利権を巡って、英国が深く関与する形でファンドが設定されているというのだ。しかも、それは一般に売られており、インターネットで広告すら出されているのだという。いつもは「核兵器の脅威だ!」「拉致問題だ!」としか騒がない初老のコメンテーターたちが、訳知り顔で付け加える。「要するに安い内に買っておいて、米朝が仲良くなって値上がりしたら売り払うということですよ」。
今になって「したり顔」でコメントする彼らの似非コメンテーターぶりに、正直、怒りを超えて、呆れてしまった。なぜなら、北朝鮮問題の本質は、核兵器ではなく、実は鉱山利権を巡る争いであることは、一昨年4月に出した拙著『北朝鮮外交の真実』でも既に明らかにしたとおりだからである。そうした真実をこれまで語ることなく、今頃になって「したり顔」で騒ぎ立てる日本のメディアの罪は重い。
ドイツとスイスの新聞だけが明かす真実
豊富な鉱物資源を抱える北朝鮮は、実は世界でも有数の「ファンドビジネス国家」でもあるのだ。英国、そしてスイスといった欧州諸国、あるいは中国を経由して、それに目をつけた資金が既に大量に流れ込み、鉱山開発が着々と進められている。その一方で、これからは資源、とりわけ鉱物資源の時代である。特に、来年の北京オリンピックを控えた中国は、大量の金属、石炭、そしてウランや金を必要としている。隣国でこれだけ巨大な需要が生まれるのだから、北朝鮮は笑いが止まらないだろう。そこにファンドを設定した欧州各国の投資家たちも、北朝鮮と同じ思いに違いない。しかし、どうやら米国はこの利権にありつき損ねたようなのだ。だからこそ、何かというと北朝鮮を悪者扱いし、挙句の果てには経済・金融制裁まで課してきた。そして、「米ドルの偽造疑惑」まで持ち出しては北朝鮮をたたき続けている。
しかし、今年の1月7日。世界中の北朝鮮ウォッチャーたちを大いに驚かせる報道が、ドイツの最有力紙「フランクフルター・アルゲマイネ」に掲載された。それは何と、「ニセ米ドル」は米国自身がアフリカの独裁政権を維持するために刷ったものであり、これが巡りめぐって北朝鮮に渡されたに過ぎないというのである。同じような内容はスイスでも最有力紙「ノイエ・チューリッヒャー・ツァィトゥング」が昨年11月19日付で報じている。
これらは、日本の「似非コメンテーター」たちが話すのとは訳が違う。なぜなら、米ドルの輪転機をつくっているのはドイツであり、そのインクはスイス製だからである。したがって、北朝鮮に関する米国の主張や政策と真っ向から反対するこれらの記事にはすさまじい重みがある。それなのに、日本の大手メディアは一切このことを報じてはいない。
世界をウォッチする個人投資家だけが生き残る
賢明な読者は既にお分かりであろうが、金融資本主義のイロハを知っていれば、ここで一体何が起きているのかを想像するのはそれほど難しいことではない。ドイツやスイスの激し方からいって、要するに彼らが北朝鮮で展開するファンドビジネスの取り分に米国が手を出してきたのであろう。だからこそ、米国と「ガチンコ勝負」に臨んだというわけだ。
その結果、どうなったのか。―――1月16日、ドイツのベルリンで米朝協議が行われた。ドイツのお膝元で米国は北朝鮮とあえて話し合いをもったのである。要するにブッシュ大統領は完全に「白旗」をドイツに振ったのである。その後に行われた今回の六カ国協議で話し合われる「本当の問題」が一体何であるのかは、この段階で既に明らかだったといえよう。
それなのに、日本の大手メディアやそこに巣食う言論人たちは、「北朝鮮問題を経済問題で片付けるのはけしからん」などと訳の分からない主張を繰り返し、無策な安倍晋三総理もその尻馬に乗ってしまっている。拉致問題の解決のためには、それこそ日本の国富で北朝鮮ファンドを買占め、胴元である北朝鮮にいうことを聞かせるべしといった、金融資本主義の鉄則にかなった外交を主張する政治家・外交官はこの国に全く見当たらない。(終わり)
もう一つ、彼の興味深い指摘を紹介する。
「“朝鮮統治”という1つのビジネス・モデル」
たとえば、過去における朝鮮統治の問題を考える時、次のような質問をされたならば、読者の皆さんはどのように答えるだろうか。
「日本による植民地統治下にあった朝鮮半島で、石油を売っていたのは誰なのか。そこにも日本人による現地住民に対する“搾取”という絵柄が見て取れるのか」。
恐らく答えに窮する読者が多いに違いない。「第2次世界大戦へと突入する直前まで、朝鮮半島で石油を独占的に販売していたのは、日本勢ではなく、英米勢だった」というのが、この問いに対する正解なのである。
朝鮮統治が行われた1910年以降の大部分の時期において、現地での石油販売を独占していたのは米系のスタンダード社、そして英系のライジングサン社(後のシェル)なのであった。
なぜこれら2社が朝鮮マーケットを独占できたのかといえば、これらいわゆる「外油」に対しては、輸入に際して特例関税が課されていたからである。具体的には、当時、日本のいわゆる「内地」に石油を輸入するにあたっては高額の輸入税が課せられていたのに対し、朝鮮という「外地」については消費者に安い石油を使わせるべしという理由で、無税に近い税率が設定されていたからである。そのため、外国から輸入した石油を朝鮮へと転売する日本の石油企業は著しく不利な立場に置かれていたわけなのだ。
満州(現在の中国東北部)における鉄道などについてもいえるのだが、日本の大陸進出を巡るビジネス・モデルには、常にこれと全く同じ1つのパターンが見え隠れする。すなわち、表向き「進出」していくのは紛れもなく日本である。だが、その一方で目立たないが重大なセクター(インフラストラクチャー)で広く、着実に収益を上げていたのは米国勢、そして英国勢なのであった。
もちろん、第2次世界大戦の足音が響き始めると同時に、これら英米勢は駆逐され、日本勢が代わりに入っていくことにはなる。しかし、だからといって「朝鮮統治」というビジネス・モデルは日本が単独で担ったものではなく、むしろステルス(透明)で、より狡猾な形でそれによって莫大な利益をあげていたのは他ならぬ英米勢だったのである。そして問題なのは、こうした単純な「史実」であっても、私たち=日本人が学校で学ぶ機会はほぼ100パーセント無いという現実なのである。
確かに、過去の一時期において「不幸な出来事」が日朝間で生じたことは否定できない。しかし、だからといって朝鮮統治というビジネス・モデルの展開によって現地が被った全ての償いを日本に対して求める一方、いわば“本当の黒幕”だった英米に対しては何も問わないという主張は、全く肯んずることはできないのである。そして、こうしたダブルスタンダード(二重の基準)自身に見え隠れする虚構こそ、今の日本、そして東アジア・マーケットを見る私たち日本人の眼を曇らせる最大の要因でもあるのだ。(終わり)
それでは「行政調査新聞」が今回の核実験を巡る北朝鮮の動きについてなかなか適確な分析をしているので紹介する。
http://www.gyouseinews.com/p4_naigaijousei%20kokunaitenbou/p4_2_naigaijousei_kaigaijousei.html
「東アジアの枠組みを激変させる北の核ミサイル発射実験!」~日本が核武装する日~ (2016年2月6日)
今年(2016年)1月6日に北朝鮮は4度目となる核実験を行った。「地球観測衛星」という名目で長距離弾道ミサイルの発射実験を行うと通告しており、早ければ今日明日にでも発射実験が行われるかもしれない。国際世論に逆らう暴挙は、北朝鮮のますますの孤立化を招くと思われる。だがいっぽうでは、北朝鮮の「綱渡り外交」が着々と成果をあげているとの分析もある。この先、北朝鮮がさらに暴れ出せば、東アジアは激変する。それが禁断の「日本核武装論」に火をつける可能性がある。
「休戦協定」により休戦中の朝鮮戦争
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は国土面積約12万平方キロで日本の3分の1。ここに日本の5分の1以下の2450万人の人々が住む。建国は1948年(昭和23年)9月9日。(日本の敗戦後約3年間はソ連が占領していた。)
建国2年後の1950年6月25日未明、北朝鮮軍は国境線を突破して大韓民国に侵攻。朝鮮戦争が勃発した。この戦争は「米軍・韓国軍を中心とする国連軍」と「北朝鮮・中国軍(ソ連が物資支援)」との戦争で、朝鮮半島全域が戦場となった。開戦1年後には38度線を挟んで膠着状態となり休戦が模索され始めた。1952年1月には実質的休戦となり、1953年7月に「休戦協定」が締結された。戦死者数は不明だが、一般的に双方の兵戦死者100万人以上、民間人犠牲者も100万人以上200万人に近いとされる。
国連軍と北朝鮮、中国軍との間に交わされたのは「休戦協定」である。「停戦協定」ではない。協定に明白な違反があれば、通告不要で直ちに攻撃が可能となる。違反はすぐに出現した。協定では、両軍は「新たな武器兵器」を導入しないことになっていたが、米軍の説明によると北朝鮮がこれを破って新規の武器兵器を導入したという。これに対抗して米国は1957年に休戦協定の一部を一方的に破棄すると通告。1958年1月には核武装したロケット弾オネスト・ジョンを韓国に配備した。米軍はその後、ソ連や中国を射程に収める核弾頭ミサイルを配備している。
当初、北朝鮮はこれに対抗して地下要塞の建設を進め、米軍による核攻撃の被害を最小限にとどめようと努めた。その後北朝鮮は、米韓軍事演習を「北朝鮮への侵攻を企図する大規模軍事演習」と断定し、「もはや休戦協定は機能していない」、「失効している」と主張。1994年以降2013年までの間に何度も「北朝鮮は休戦協定に束縛されない」と宣言している。
北朝鮮は米韓連合軍(国連軍)の攻撃を非常に恐れている。
「休戦協定」を破棄し、新たに「停戦協定」を結びたい。それが北朝鮮の本音である。「停戦協定」を結ぶためには、戦力対戦力、武力対武力で互角でなければ対等の条約を結べない。その怖れを北朝鮮は感じている。
北朝鮮の核は世界一流
昨年(2015年)6月に米国大統領補佐官・国家安全保障担当のスーザン・ライスが極秘裏に韓国を訪問し、韓国軍と協議を行っている。その直後、米国DIA(国防情報局)が以下の情報を発信した。
「北朝鮮の核は非常に高度で、北朝鮮が韓国に対し軍事行動を起こす『根拠ある判断』を所有している」
米国の統合参謀本部偵察作戦を担当する部署の情報である。じつに衝撃的で、一般常識を覆す内容である。「北朝鮮の核は非常に高度」とはどういう意味か。そして「韓国に対し軍事行動を起こす根拠ある判断」とは何を意味するのか。
大多数の国民が飢え、エネルギー不足、電力不足、灯油すら満足に求められず、科学技術も劣る最貧国が「高度な核技術」など持てる訳がない。これが多くの日本人の本音であり、世界中もそう考えていると勝手に推測している。しかし現実はそうではない。米DIAの分析によると、北朝鮮の核開発物資、開発作業員はソ連崩壊(1991年12月)直後にウクライナから持ち込まれたという。旧ソ連は米国と肩を並べる核大国だったが、ソ連の核兵器はウクライナで生産され貯蔵されていた。ウクライナはソ連の核開発、核技術の本拠地だった。それがソ連崩壊と同時に北朝鮮に流れたのだ。
さらに北朝鮮にはヨーロッパの最先端核技術が導入されている。
北朝鮮は現在世界の160カ国と国交を樹立しており、豊富な地下資源を輸出している。「貧困な北朝鮮」とは日本のマスコミが作ったイメージで、鉄鉱石、無煙炭、マグネサイトなどの輸出でかなり潤っているのだ。EU諸国では、アイスランドとフランス2国以外とは国交を持ち、イギリス、ドイツとの関係が深く、英・独とも平壌に大使館を置いている。ドイツは北朝鮮の羅先経済特区支援のために1兆9000億円投入を決定したばかり。第二次大戦以前から北朝鮮の医薬品、医療器具はドイツ製のものが使われ、両国の親密な関係が理解できる。そして北朝鮮の最先端核開発にはイギリスとドイツの科学者が深く入り込んでいる。
「核抑止論」から「実戦核兵器」へ
これまで核兵器は「使用されない兵器」と考えられてきた。対立する国が核兵器を使用すれば相手も報復攻撃を行い、両者が国土、国民すべてを失う大ダメージを受けるばかりか、全世界が放射能汚染され、地球そのものが破壊されると考えられてきた。だから核兵器とは、「実戦に使用されることのない『抑止兵器』」とされてきた。しかし……。
第二次大戦から70年の歳月が過ぎた。その間、科学は途轍もなく進歩した。第二次大戦時最速の戦闘機は時速700km程度。現在の最速は約5倍のマッハ2.5超。時速3500km近くになる。ビル1棟分も必要だったコンピュータは机の片隅に置けるようになった。科学技術の進歩は想像を絶している。では広島・長崎に落とされた原爆は70年前からどれほど進歩したのか。
軍事兵器に関して正確なことはわからない。かつて戦略核、戦術核と分類されていたが、1961年に旧ソ連が行った「世界最大の核実験」以降、米ソを含め核保有国は核の小型化を目指した。小型化、超小型化、超々小型化……。それが意味するところは何か。「実戦核兵器」である。北朝鮮が核兵器の小型化に挑戦していることは2006年の最初の核実験から一貫している。米DIA(国防情報局)は2013年4月に「北朝鮮は弾道ミサイルに搭載可能な小型核弾頭を開発した」とのコメントを発表。その後核の小型化はさらに進化し、実戦配備可能な状態になっていると思われるのだ。また、科学者には、作った武器兵器を試してみたくなる心情が存在する。ヨーロッパの科学者にとって極東で超々小型核を実験することを期待する気持ちが働いていることも事実だ。さらに超々小型核による放射能汚染をどうすれば除去できるのか……。
昨年6月、米DIAは「北朝鮮が韓国に対し軍事行動を起こす『根拠ある判断』を所有している」と発信している。その直前にライス大統領補佐官(国家安全保障担当)が韓国軍中枢と秘密裏に会談した理由は、北が単なる南進(韓国への侵攻)だけでなく、実戦核を使用する可能性に踏み込んだものと推測できる。
米国の「核の傘」が期待できない韓国
北朝鮮は2月8日から25日までの間に「地球観測衛星を打ち上げる」と公表している。金正日総書記の誕生日である2月16日直前の発射実験との見通しが強かったが、2月5日には燃料注入を開始した模様で、天候次第では8日、9日にも打ち上げるかもしれない。場合によると不具合の調整などで、実験が月末になる可能性もある。
北朝鮮が超々小型核兵器の開発に成功し、攻撃力をバックに南進を開始したら韓国はひとたまりもない。頼りは米国の「核の傘」だが、今回の北朝鮮の実験で使用されるミサイルは明らかに米本土到達能力を持っている。米国の「核の傘」には頼れない。韓国内では以前から核武装論がくすぶっていたが、今年1月の北朝鮮の核実験以降、与党セヌリ党の元裕哲(ウォン・ユチョル)院内代表や金乙東(キム・ウルドン)最高委員が「核兵器独自開発」を口にするなど、その声が一気に高まってきている。ミサイル発射実験が行われれば、その声はさらに高まるだろう。
韓国が核武装の検討を真剣に始めれば台湾も動くと考えられる。かつて中国の核実験(1964年)以降、蒋介石が核開発を開始し、米国がこれを制止したという経緯がある。1980年代には蔣経國政権下で本格的な核開発が進み、1987年にプルトニウム抽出まで行っている。この計画は李登輝政権時代に米政府の圧力で施設を閉鎖したが、蔡英文政権下で復活する可能性はある。韓国が核開発をすればその可能性は一気に高まる。そしてそれは中国との激しい摩擦を生む。
韓国、台湾で核武装論、核開発が進めば、当然ながら日本にも影響が出てくる。米国にも日本の核武装を求める声があり、とくにネオコンは日本にNPT(核不拡散条約)からの脱退を奨励している。この場合の日本の核とは、「米国製の核を日本が預かる」というものではあるが。
2016年、東アジアは大暴風雨を迎えようとしている。予想をはるかに超えた事件が勃発する可能性がある。政治的、経済的、軍事的なすべての面が凋落し、大統領選を迎えて国内論議に終始している米国は頼れる状況にない。安倍晋三政権の改憲議論も念頭に、本気で10年先、20年先の日本を見つめていく時が来た。(引用終わり)
如何だろうか。北朝鮮は、決して日本のマスコミが報道しているような国ではないのである。ただ、朝鮮戦争以来、現在も米国と戦争中であり、日本は北朝鮮が戦っているアメリカの同盟国(属国)であるために極端なネガティブキャンペーンをやらされているというのが現実である。上記の記事では全く指摘していないが、以前のレポートでも解説したように現在、宇宙、軍事技術で圧倒的に優位に立っているのがロシアである。だから、これからのロシアのプーチンの動きによって、韓国、台湾、日本の核武装問題は大きく変わるはずである。現在、ユダヤネットワークと密接に関係していたグローバーリスト、ロシア革命の立役者であるレーニンをプーチンが痛烈に批判し始めていることにも注目すべきだろう。その意味でプーチンが従来のネオコン:戦争屋を利する大きな戦争を望んでいないことだけは間違いないところだ。
その意味で2016年もロシアのプーチンの動きから目が離さないのである。
*参考資料
「米国人専門家「ロシアの最新鋭対空防衛システムが中国の手に入れば、アジアの状況は変わる」 2016年01月27日
http://jp.sputniknews.com/politics/20160127/1499873.html#ixzz3zxeCSdZp米国のランド(RAND Corporation)研究センターのティモシー・ニース主任分析員は、今後予想されるロシアの最新鋭地対空ミサイル・システムS-400(トリウムフ)の中国への供与、それがアジアの安全保障システムにもたらす影響について自身の見解を述べている。
以下、ニース分析員の見解を、要約して御紹介する。
<ロシア航空宇宙軍 新たなS-400連隊をモスクワ郊外に配備>
S-400(トリウムフ)について、マスコミが取り上げ始めたのは昨年末で、ロシアが、スホイ24戦闘機がトルコ空軍機に撃墜された事に対抗する措置として、シリアにそれを配備した時の事だった。そうした対空防衛システムの出現により、トルコは、空での作戦を一時中止せざるを得なくなり、また米国とその同盟国の作戦に本質的な影響を及ぼした。このエピソードは、S-400(トリウムフ)が持つ幅広い可能性と、軍部隊の配置に対する影響力を示すものである。
そして近い将来、このシステムを入手する中国も、そうした可能性と影響力を持つことになるという事実は、極めて注目される。中国が、このシステムをどこに展開する計画なのか、現在に至るまで明らかではない。
S-400は、現在存在する地対空ミサイル・システムの中で最も効果的なもので、その射程は400キロだ。伝えられているところでは、このシステムは、100の標的をとらえ、そのうち6つを同時に攻撃できる能力を持っている。射程400キロと言えば、台湾全島や北朝鮮のほとんど、さらには尖閣諸島のすぐ近くまで網羅できる。そうなれば、中国は、危機的状況になれば、米国及びその同盟国の行動を本質的に抑える事が出来、反応する手段の選択において、彼らを狼狽させることになる。(引用終わり)