7月 072015


→自衛隊の完全な米軍の傭兵化をもたらす→現在米軍は911以降、軍隊の民営化が急展開している→もし、日本が唯一の同盟国である米国に対して集団自衛権を行使すれば、責任の曖昧な米国の巨大民間軍事会社の指揮下におかれる可能性すらある→少子高齢化社会の貴重な日本の若者の命をブッラクウオーターのような企業に差し出すことになる→日本の集団自衛権行使は米国以外の国に国連憲章の敵国条項適用を言い出させる危険性も秘めている

 

現在、マスコミの報道を見ればわかるように、国会は意図せずして政局に入り始めている。すべての根源はアメリカのジャパンハンドラーの「集団自衛権を行使できるようにして、米軍を補完しろ」と、いう意向にある。

そのために属国である日本の内閣は右往左往している。

 

 間違いなく言えることが一つある。第二次世界大戦に負けて米国主導で作られた日本の戦後のシステムは、冷戦という枠組みがあってこそ、有効に機能しているように錯覚できたのであって、その前提が崩れてしまった以上、冷戦構造の上に成立していた砂上の楼閣のような日本の行政、政治、経済の仕組みが、ある意味うまくいかないのは、当然のことだと私たちは、考えるべき時期を迎えたと言うことだ。

 

事実、米国は、冷戦終了間際から、「ジャパンアズナンバーワン」と言われる程の経済大国になった日本を「プラザ合意」、その前後には、中国の元の大幅切り下げを認め、「ジャパンバッシング」と称する日本経済封じ込め戦略を着々と実行。その結果、中国経済の高度成長を演出することとなった。目先の利くユニクロの経営者のような人々はおそらく、米国のその戦略を事前に知っていたはずである。

 

兎も角現在、機能しなくなった日本の戦後システムを見直す時代に入ったことは間違いない。しかしながら、米国と昭和天皇に呪縛された「永久占領」状態を脱しない限り、今回のように一見勇ましいが、本当の意味で日本の未来を切り拓くことにつながらないあまりに愚かな選択を黄昏の覇権国である米国に強要されることになる。このことをある程度の人々が共通の認識として持つべき時代を迎えている。

 

戦後、半世紀以上にわたって、米国の実質上、軍事占領下にある日本では、あらゆる処に米国のソフトパワーの網の目が張り巡らされている。何しろ、そのための情報部隊が2000人も日本に常駐しているぐらいだ。その意味でもう、そろそろ心ある日本人は「帝国以後」の時代(米国の覇権が終焉を向かえようとしている時代)を目前に控えた今、戦後、語られなかった本当の事を多くの人々に知らしめる義務があるはずである。知識人を自負する方々に期待したいところである。

 

 もう、十年以上前の話だが、人生の大先輩に「日本永久占領」片岡鉄哉著(講談社α文庫)を読んでいただき、感想を聞かせていただいたことがある。

 そして、その人生の大先輩は、こう言われた。

「確かにこの本に書いてあることは、真実だと思う。しかし、戦後の貧しさを考えれば、現在の日本は本当に豊かになった。米国との関係で、世界一の債権大国の豊かさを日本人一人一人が享受しているわけではないが、仕方がない。」、と。

 

 果たしてそうだろうか。

日本永久占領1

「日本永久占領」という本のテーマは、日本を狂わせたのは、戦後、米国から押しつけられた「日本国憲法」であり、ゆえに、憲法が作られた過程、そして、日米関係において、本来、進むべき道が、吉田茂とマッカーサーによって、著しく歪められたという事実の論証にある。現在の沖縄の基地問題しかり、自衛隊の問題もしかり、日本政府の国際政治の対応もしかり。全ての問題の根源は、この本で書かれている歴史を知らない限り、何も解決はしないと言っても過言ではないかもしれない。もっともこの本は1990年代の本なので、豊下楢彦氏の指摘する「昭和天皇の二重外交」については触れられていない。

 

おそらく、このままの状態を放置すれば、日本は米国による永久占領状態に止まることになるのだろう。炯眼の三島由起夫氏は今から40年以上前に「このままいけば、自衛隊は米軍の完全な傭兵になるだろう。」と、喝破していた。ところで、米国がすでに現在の状態を維持するだけの覇権力が残っていない(=だからかつての敵国である日本の集団自衛権行使を認め、求めてきたのである。)としたら、私たち日本人はどうすべきなのか、もっと真剣に考えなければならないだろう。

 

 ところで、日本の戦後を形作ったのは、象徴天皇制と平和憲法と日米安保条約(それに付属する日米地位協定、日米原子力協定等)の三点セットである。そして、昭和天皇自身が日本の戦後体制の形成に大きく関与していたというのが、日本人が聞きたくない、語りたくない歴史の真実なのである。さすがに片岡氏は、吉田茂首相の政治行動に関与した昭和天皇の戦後直後の二重外交については、全く触れていない。

 昭和天皇自身は、自らが導いた属国日本が、冷戦終了後、米国に巧みに経済的に収奪され、漂流する日本国となった姿を見ることなく、崩御されたのは、まことに幸運なことではあった。その意味で21世紀になってから豊下楢彦氏やハーバート・ビックスの「昭和天皇」等、多くの読むべき本が出版されていることは喜ばしいことである。

 

それでは、今から約60年以上前である1949(昭和24)年に、米国が日本で一体何をしたのかということについて振り返ってみよう。原田武夫氏が適確な分析をしているので、紹介する。以下。

 

1949(昭和24)年、日本は「主権国家」ではなかった。なぜなら、大東亜戦争における敗北により、GHQ(連合国最高司令官総司令部)による支配を受けることになったからである。そして、そのGHQを事実上仕切っていたのが、かつての敵国である米国であった。不平等条約(吉田茂氏はこの事を熟知していた)である「日米安保」が連呼される今となってはもはや信じがたいことであるが、この時、米国は日本をどうすることもできた全能の勝者であり、日本は、なすがままに身を任せるしかない悲しき敗者なのであった。

 GHQは日本を占領統治するにあたり、「民主化」と「非軍事化」を表看板に掲げ、一斉に日本で構造破壊を始める。しかし、爆撃機B29による連日の空襲で焼け野原となり、工場が崩壊する中、消費財の生産など一切ままならなかったのが、当時の日本の状況である。しかも、戦地からは続々と人々が引き上げてきて、「需要」は急上昇した。その結果、「モノ不足」とそれに伴う「価格の急騰(=ハイパーインフレーション)」が日に日に深刻となり、日本政府の失策も重なって、もはや経済崩壊の危機にまで陥ったのである。

 ところが、GHQは米国本国から「日本の経済復興」を当初、宿題として課されてはいなかったため、インフレを抑えるどころか、逆にそれを加速させるかのように「構造破壊(たとえば財閥解体)」を熱心に進めていった。 しかし、1947(昭和22)年ごろになって状況は一変。それまでも不審な動きを見せていたソ連が北ペルシアでの撤退期限を守らなかったことから、一気に東西冷戦が始まったからである。あわてた米国は世界戦略を練り直す。その中で、日本を一体どうすべきかと、いうことが議題に取り上げられたのである。

 そして、そこで行われた集中的な日本戦略見直しの結果、一人の銀行家が日本に「救世主」として派遣されることとなった。デトロイト銀行の頭取として腕をならしていたジョセフ・M・ドッジである。日本史を学んだことのある方であれば、「ドッジ・ライン」と聞けばピンとくるはずだ。彼が超緊縮型の予算案を日本政府に提示したとき、日本側はこれを「ドッジ・ライン」と呼んだのである。「放漫な財政支出を日本政府がやめることが、極度に進んだインフレを収束させるのにはもっとも有効だ」と考えたドッジによる強硬策であったと、一般の教科書には書いてある。

 そして、朝鮮戦争という僥倖にも恵まれたことも大きいが、このように「苦い良薬」を煎じてくれたからこそ、日本はその後、奇跡と言われる経済復興を遂げたとことになっている。まさにドッジは戦後日本経済にとっての恩人だとも言われる所以だろう。 

しかし、この人のいい日本人的な見方には大きな「落とし穴」がある。なぜなら、米国人から見たとき、とりわけ現代を生きる米国人のエリートたちの目から見ると、ドッジの功績はもっと別のところにあるからである。 

それは何か。 

その頃、米国国内では議会を中心として、多額の対日復興援助が「本当に米国のためになっているのか」という批判が高まっていた。したがって、GHQとしてはこうした批判に応えるべく、何らかの仕掛けをしなければならない立場に置かれていたのである。

 

そこでドッジが考えついたのが、「将来、日本経済が豊かになった暁には、米国が正々堂々とその果実を刈り取っていける仕組みをつくること」なのであった。

 

 ドッジはまず、米国が日本にあたる援助(小麦など食糧支援が主)を日本政府にマーケットで売りさばかせ、それと同額のカネを日本銀行に開設された口座に積ませた。そして、そこに貯まっていく資金を、今度はGHQ、すなわち米国の指示に基づいてだけ日本政府が使うことを許したのである。いわゆる「見返資金」である。

 それでは米国はこの資金を一体何に使わせたのかというと、意外にも「日本人に米国の良さを宣伝する」といったプロパガンダ目的ではほとんど使われていない(総額の2%前後)。それに代わって、もっとも使われたのが、かつて軍国主義の屋台骨として戦争協力をしたために解体されるはずであった「特殊銀行」(当時の日本興業銀行など)を経由する形での、ありとあらゆる日本の企業が復興するための資金提供であった。そして、ドッジによる熱心な指導により、銀行セクターをはじめとする日本経済全体がそれまでの「復興インフレ」による壊滅的な打撃から立ち直ることに成功したのである。

 その後、1952(昭和27)年にGHQは日本から最終的に「撤退」し、日本は、名目上の「再独立」を達成する。例の「見返資金」はどうなったのかといえば、米国に返金されることはなく、そのまま名称を変えて日本の経済発展のために用いられ続けた。そして、やがて日本は高度経済成長を迎えることになる。(引用終わり)

 

おそらく、小泉政権で、米国の手先として「構造改革」を推し進め、米国のために尽力した竹中平蔵氏が特殊銀行の日本開発銀行出身者なのも偶然ではないと考えるべきであろう。

 竹中氏の改革政策というものは、現実には、ほとんど米国の金融資本のためのものだったことは、現在では、かなりの方が理解されているところだと思われる。

結果として下記の様な政策効果がもたらされたのである。

 

小泉・竹中改革は新たな税金略奪者を日本政府に招き入れた

 

・骨太の改革は税金の収奪者を国内の利権団体から欧米の強大資本に移転させる結果になる

 

・国内の利権団体も欧米の強大資本も日本人の税金を私物化しようとしている点においてまったく同じだ。(ただ国内の場合、お金が日本国内で回ることに大きなメリットがある)

・90年代の米国式改革が短期的ではあるが、成功した国は米国だけであり、他の国々には混乱だけが残された。米国においても想定元本5京円というとんでもないデリバティブ金融商品の借金だけが残され、現在、米国はデフォルトするか、戦争をするしかない状況にまで追い込まれている。

 

・民間企業の最大の利益は民間人同士のフェアなビジネスにではなく、上手に税金を引っぱり出すことで得られる。これは世界における大財閥の形成の歴史を勉強すれば、明らかである。

 

・日本の政治家や官僚は、米国政府+欧米の強大資本がどうやって日本で金儲けをしようとしているか、金儲けの絵図面が理解できていないか、もしくは自分たちさえよければいいと考えている。

・だから絶好の格好のカモとして狙われているのではないか。

 

 意図するとせざるとにかかわりなく、こういう改革を売国奴的改革というしかないのではないか。

 

構造改革というものの図式

構造改革というものの図式

 

それでは、米国政府から日本銀行・日本政府への要求とは何だったのか。

 

一言で言えば、「ここまで育ててやったのだから、金=富をよこせ」ということだったのである。そのための方法が下記のようなものであった。

量的金融緩和:豊富な円資金を米国に還流させろ=現在のアベノミクスそのもの。

・金融システム安定化(不良債権処理を加速化させ、整理統合)させ、金融機関を米国資本に差し出せ。

・内需を支えるために失業対策などを行え。

・米国にとって都合のよいルールに変えろ=現在のTPPもその流れの一貫である。

・成長のための日米経済パートナーシップ(商法改正等)。

・規制改革(金融改革、司法改革、医療改革、通信改革、etc)。

・市場重視(新自由主義)

・米国の民間人を公的・民間部門のリストラに活用しろ。

 

一言でまとめてしまえば、1985年(昭和60年)のプラザ合意以降の日本の歴史の裏面史は、米国による日本の国富収奪、再占領強化の歴史なのである。

一例を上げるなら、1980年代に「セイホ」と名を轟かせ、米国経済を米国債購入によって支え続けた日本の生命保険会社が、莫大な為替差損を被り、外資に乗っ取られていったことは、まだ、記憶に新しいのではないだろうか。

 

 それでは、1955年の保守合同以降、半世紀以上にわたって日本の政治を担ってきた自民党の戦後政治とは、どのようなものだったのだろうか。

 一言で表現すれば、「自民党政治の終わり」という本で、野中尚人氏が主張しているように

自民党システムは一種のインサイダー政治であったが、その網の目が自民党だけでなく野党のネットワークをも通じて、社会の隅々まで広がっていたのである。「一億総中流」とは、まさにその結果であった。自民党はもちろん、それと協働した行政官僚制が大きな役割を担い、国対政治を通じて野党も暗黙の参加者であった

 

 江戸時代から行政官僚制が先行して確立していた日本においては、権能が、新憲法によって保障された国会が、民主主義が確立された戦後から巧みに行政に融合していった。もちろん、戦後、GHQが軍隊以外の官僚機構をそのまま温存して占領政策を推し進めたことが、このことを決定的にしたことは言うまでもない。そして、大きな政策決定は政府(=米国のジャパンハンドラー)が行うが、日々の細かい政府の仕事は、行政官僚が担う役割分担が確立されたのである。このような官僚が政府と一体となったボトムアップとコンセンサス重視式の政治運営は、冷戦という限られた経済圏の中で、経済成長を追求するには、まことに効率的に機能したのである。

 そして、このシステムは、戦後の冷戦期における経済成長と世界秩序の安定を前提にある意味、議員の後援会活動等を通じて一定の特別行政自冶区としての「草の根民主政治」を具現してきたが、その限界、問題点としては、

①利害による民意吸収の裏腹として利権による腐敗を生じやすく、公共財や政治理念から遠くなりがちであること、

②世界秩序の変動や低成長経済や社会の高齢化による分配の困難化といった大きな環 境変動に対処するには、自民党システムにおけるリーダーシップの欠如が致命的であ ることが挙げられる。

 この戦後の冷戦構造の下で、自民党政治が創りあげてきたのが、日本型の安定した資本主義システムであった。その特色は、

(1)終身雇用と年功序列を機軸とする日本型雇用システム

(2)メインバンクとの金融的な結びつきを背景にした長期的な信用関係(間接金融システム)

(3)ケインズ的経済政策を主体とした政府主導の旺盛な公共投資による有効需要の創出

(4)地域と政治家のインフォーマルな関係によって決定される公共投資を通した所得の再分配システム

 このようなシステムは、日本企業の安定成長をもたらし、所得の再分配を保障し、安定した社会をつくりあげるのに極めて有効に機能した。しかし、政治家や官僚のインフォーマルな関係を通して所得の再分配が決定されたため、投資に関与する人間が利益を掠め取るという腐敗した関係の温床にもなるという欠陥も併せ持っていた。これがいわゆる利権である。

しかしながら、このシステムが、会社村、専業主婦の共同体、学校の共同体というような戦後日本社会の安定した生活環境をもたらしたことは疑いのないところだろう。つまり、冷戦時代はすべての国民が何らかの形で利権の分け前に与ることができたのである。

 

先程から何回も指摘しているが、このような環境に日本が置かれたのは、冷戦という国際社会の構造があったからに他ならない。冷戦が終了したときに、「この冷戦の勝者は日本だ」と、米国に言われたことを思い出していただきたい。

 冷戦の勝者である日本から国富を奪うための米国の戦略が、「ワシントンコンセンサス」であり、「グローバリズム」であり、それを進めるための「構造改革」であった。身も蓋もない言い方をしてしまえば、日本で言われていた「構造改革」とは、1980年代半ばに考え出された米国の対日経済戦略そのものだったのだと言っても過言ではない。いろいろ他のまともな改革も一緒にして、その本質が見えないように「構造改革」と言われたので、多くの国民が勘違いをしてしまったのである。

 その真意は、上記に述べた「将来、日本経済が豊かになった暁には、米国が正々堂々とその果実を刈り取っていける仕組み」(=国家主権を巧みに取り上げてしまった仕組み)それが、あれほど党内、国内に反対の多かった竹中氏が主導した構造改革を推し進めることを可能にしたのである。もちろん、米国の政策に対して意識的に、無意識に協力するような仕掛けが戦後、日本社会のあらゆる処に仕掛けられていたことは言うまでもない。

 その結果、現在、日本の公共圏は、大変な劣化をし、見習うべき?米国のような「格差社会」と言われるようになってしまったのである。現在、安定した社会が失われつつある不安を、いろいろな思惑がある勢力が扇動しようとしているのが、日本の状況である。

 

 評論家の内田樹氏が実に適確な指摘をしていたので、紹介する。以下。

対米従属を通じて「戦争ができる国」へ

 

── 「安倍政権は対米従属を深めている」という批判があります。

 

内田 先日、ある新聞社から安倍政権と日米同盟と村山談話のそれぞれについて、100点満点で点をつけてくれという依頼がありました。私は「日米同盟に関する評点はつけられない」と回答しました。

日米同盟は日本の政治にとって所与の自然環境のようなものです。私たちはその「枠内」で思考することをつねに強いられている。

「井の中の蛙」に向かって「お前の住んでいる井戸の適否について評点をつけろ」と言われても無理です。「大海」がどんなものだか誰も知らないんですから。

そもそも日米が「同盟関係」にあるというのは不正確な言い方です。誰が何を言おうが、日本はアメリカの従属国です。日米関係は双務的な関係ではなく、宗主国と従属国の関係です。現に、日本政府は、外交についても国防についても、エネルギーや食糧や医療についてさえ重要政策を自己決定する権限を持たされていない。年次改革要望書や日米合同委員会やアーミテージ・ナイ・レポートなどを通じてアメリカが要求してくる政策を日本の統治者たちはひたすら忠実に実行してきた。

その速度と効率が日本国内におけるキャリア形成と同期している。

つまり、アメリカの要求をできる限り迅速かつ忠実に現実化できる政治家、官僚、学者、企業人、ジャーナリストたちだけが国内の位階制の上位に就ける、そういう構造が70年かけて出来上がってしまった。アメリカの国益を最優先的に配慮できる人間しか日本の統治システムの管理運営にかかわれない。そこまでわが国の統治構造は硬直化してしまった。

アメリカの許諾を得なければ日本は重要政策を決定できない。しかし、日本の指導層はアメリカから命じられて実施している政策を、あたかも自分の発意で、自己決定しているかのように見せかけようとする。アメリカの国益増大のために命じられた政策をあたかも日本の国益のために自ら採択したものであるかのように取り繕っている。そのせいで、彼らの言うことは支離滅裂になる。国として一種の人格解離を病んでいるのが今の日本です。

 

── いま、日本のナショナリズムは近隣諸国との対立を煽る方向にだけ向かい、対米批判には向かいません。

 

内田 世界のどこの国でも、国内に駐留している外国軍基地に対する反基地闘争の先頭に立っているのはナショナリストです。ナショナリストが反基地闘争をしないで、基地奪還闘争を妨害しているのは日本だけです。ですから、そういう人々を「ナショナリスト」と呼ぶのは言葉の誤用です。彼らは対米従属システムの補完勢力に過ぎません。

 

── どうすれば、対米従属構造から脱却できるのでしょうか。

 

内田 まず私たちは、「日本は主権国家でなく、政策決定のフリーハンドを持っていない従属国だ」という現実をストレートに認識するところから始めなければなりません。

国家主権を回復するためには「今は主権がない」という事実を認めるところから始めるしかない。病気を治すには、しっかりと病識を持つ必要があるのと同じです。「日本は主権国家であり、すべての政策を自己決定している」という妄想からまず覚める必要がある。

戦後70年、日本の国家戦略は「対米従属を通じての対米自立」というものでした。これは敗戦国、被占領国としては必至の選択でした。ことの良否をあげつらっても始まらない。それしか生きる道がなかったのです。

でも、対米従属はあくまで一時的な迂回であって、最終目標は対米自立であるということは統治にかかわる全員が了解していた。「面従腹背」を演じていたのです。

けれども、70年にわたって「一時的迂回としての対米従属」を続けているうちに、「対米従属技術に長けた人間たち」だけがエリート層を形成するようになってしまった。

彼らにとっては「対米自立」という長期的な国家目標はすでにどうでもよいものになっている。それよりも、「対米従属」技術を洗練させることで、国内的なヒエラルヒーの上位を占めて、権力や威信や資産を増大させることの方が優先的に配慮されるようになった。

「対米従属を通じて自己利益を増大させようとする」人たちが現代日本の統治システムを制御している。

 

安倍首相が採択をめざす安保法制が「アメリカの戦争に日本が全面的にコミットすることを通じて対米自立を果すための戦術的迂回である」というのなら、その理路はわからないではありません。アメリカ兵士の代わりに自衛隊員の命を差し出す。その代わりにアメリカは日本に対する支配を緩和しろ、日本の政策決定権を認めろ、基地を返還して国土を返せというのなら、良否は別として話の筋目は通っている。

でも、安倍首相はそんなことを要求する気はまったくありません。

彼の最終ゴールは「戦争ができる国になる」というところです。それが最終目標です。「国家主権の回復」という戦後日本の悲願は彼においては「戦争ができる国になること」にまで矮小化されてしまっている。「戦争ができる国=主権国家」という等式しか彼らの脳内にはない。アメリカの軍事行動に無批判に追随してゆくという誓約さえすればアメリカは日本が「戦争ができる国」になることを認めてくれる。

それが政府の言う「安全保障環境の変化」という言葉の実質的な意味です。そこまでアメリカは国力が低下しているということです。もう「世界の警察官」を続けてゆくだけの体力もモチベーションもない。けれども、産軍複合体という巨大なマシンがアメリカ経済のエンジンの不可欠の一部である以上、戦争は止められない。でも、アメリカの青年たちをグローバル企業の収益を高めるために戦場に送り出すことには国民の厭戦気分が臨界点を超えつつある今はもう無理である。だから、アメリカは「戦争はしたけど、兵士は出したくない」という「食べたいけど、痩せたい」的ジレンマのうちに引き裂かれている。

そこに出て来たのが安倍政権です。アメリカがこれまで受け持っていた軍事関係の「汚れ仕事」をうちが引き受けよう、と自分から手を挙げてきた。アメリカの「下請け仕事」を引き受けるから、それと引き替えに「戦争ができる国」になることを許可して欲しい。

安倍政権はアメリカにそういう取り引きを持ちかけたのです。

 

もちろん、アメリカは日本に軍事的フリーハンドを与える気はありません。アメリカの許諾の下での武力行使しか認めない。それはアメリカにとっては当然のことです。

日本がこれまでの対米従属に加えて、軍事的にも対米追随する「完全な従属国」になった場合に限り、日本が「戦争ができる国」になることを許す。そういう条件です。

しかし、安倍首相の脳内では「戦争ができる国こそが主権国家だ」「戦争ができる国になれば国家主権は回復されたと同じである」という奇怪な命題が成立している。自民党の政治家たちの相当数も同じ妄想を脳内で育んでいる。

そして、彼らは「戦争ができる国」になることをアメリカに許可してもらうために「これまで以上に徹底的な対米従属」を誓約したのです。

かつての日本の国家戦略は「対米従属を通じて、対米自立を達成する」というものでしたが、戦後70年後にいたって、ついに日本人は「対米従属を徹底させることによって、対米従属を達成する」という倒錯的な無限ループの中にはまりこんでしまったのです。

これは「対米自立」を悲願としてきた戦後70年間の日本の国家目標を放棄したに等しいことだと思います。

 

── どうして、これほどまでに対米従属が深まったのでしょうか。

 

内田 吉田茂以来、歴代の自民党政権は「短期的な対米従属」と「長期的な対米自立」という二つの政策目標を同時に追求していました。

そして、短期的対米従属という「一時の方便」はたしかに効果的だった。

敗戦後6年間、徹底的に対米従属をしたこと見返りに、1951年に日本はサンフランシスコ講和条約で国際法上の主権を回復しました。その後さらに20年間アメリカの世界戦略を支持し続けた結果、1972年には沖縄の施政権が返還されました。

少なくともこの時期までは、対米従属には主権の(部分的)回復、国土の(部分的)返還という「見返り」がたしかに与えられた。その限りでは「対米従属を通じての対米自立」という戦略は実効的だったのです。

ところが、それ以降の対米従属はまったく日本に実利をもたらしませんでした。

沖縄返還以後43年間、日本はアメリカの変わることなく衛星国、従属国でした。けれども、それに対する見返りは何もありません。ゼロです。

沖縄の基地はもちろん本土の横田、厚木などの米軍基地も返還される気配もない。そもそも「在留外国軍に撤収してもらって、国土を回復する」というアイディアそのものがもう日本の指導層にはありません。

アメリカと実際に戦った世代が政治家だった時代は、やむなく戦勝国アメリカに従属しはするが、一日も早く主権を回復したいという切実な意志があった。けれども、主権回復が遅れるにつれて「主権のない国」で暮らすことが苦にならなくなってしまった。その世代の人たちが今の日本の指導層を形成しているということです。

 

── 日本が自立志向を持っていたのは、田中角栄首相までということですね。

 

内田 田中角栄は1972年に、ニクソン・キッシンジャーの頭越しに日中共同声明を発表しました。これが、日本政府がアメリカの許諾を得ないで独自に重要な外交政策を決定した最後の事例だと思います。

この田中の独断について、キッシンジャー国務長官は「絶対に許さない」と断言しました。その結果はご存じの通りです。アメリカはそのとき日本の政府が独自判断で外交政策を決定した場合にどういうペナルティを受けることになるかについて、はっきりとしたメッセージを送ったのです。

 

── 田中の失脚を見て、政治家たちはアメリカの虎の尾を踏むことを恐れるようになってしまったということですか。

 

内田 田中事件は、アメリカの逆鱗に触れると今の日本でも事実上の「公職追放」が行われるという教訓を日本の政治家や官僚に叩き込んだと思います。それ以後では、小沢一郎と鳩山由紀夫が相次いで「準・公職追放」的な処遇を受けました。二人とも「対米自立」を改めて国家目標に掲げようとしたことを咎められたのです。このときには政治家や官僚だけでなく、検察もメディアも一体となって、アメリカの意向を「忖度」して、彼らを引きずり下ろす統一行動に加担しました。

 

── 内田さんは、1960年代に高まった日本の反米気運が衰退した背景にアメリカの巧みな文化戦略があったと指摘しています。

 

内田 占領時代にアメリカは、日本国民に対してきわめて効果的な情報宣伝工作を展開し、みごとに日本の言論をコントロールしました。しかし、親米気運が醸成されたのは、単なる検閲や情報工作の成果とは言い切れないと思います。アメリカ文化の中には、そのハードな政治的スタイルとは別にある種の「風通しのよさ」があります。それに日本人は惹きつけられたのだと思います。

戦後まず日本に入ってきたのはハリウッド映画であり、ジャズであり、ロックンロールであり、レイバンやジッポやキャデラックでしたけれど、これはまったく政治イデオロギーとは関係がない生活文化です。その魅力は日本人の身体にも感性にも直接触れました。そういうアメリカの生活文化への「あこがれ」は政治的に操作されたものではなく、自発的なものだったと思います。

同じことは1970年代にも起こりました。大義なきベトナム戦争によって、アメリカの国際社会における評価は最低レベルにまで低下していました。日本でもベトナム反戦闘争によって反米気運は亢進していた。けれども、70年代はじめには反米気運は潮を引くように消滅しました。それをもたらしたのはアメリカ国内における「カウンター・カルチャー」の力だったと思います。

アメリカの若者たちはヒッピー・ムーブメントや「ラブ・アンド・ピース」といった反権力的価値を掲げて、政府の政策にはっきりと異を唱えました。アメリカの若者たちのこの「反権力の戦い」は映画や音楽やファッションを通じて世界中に広まりました。そして、結果的に世界各地の反米の戦いの戦闘性は、アメリカの若者たちの発信するアメリカの「カウンター・カルチャー」の波によっていくぶんかは緩和されてしまったと思います。というのは、そのときに世界の人々は「アメリカほど反権力的な文化が受容され、国民的支持を得ている国はない」という認識を抱くようになったからです。「ソ連に比べたらずっとましだ」という評価を無言のうちに誰しもが抱いた。ですから東西冷戦が最終的にアメリカの勝利で終わったのは、科学力や軍事力や外交力の差ではなく、「アメリカにはカウンター・カルチャーが棲息できるが、ソ連にはできない」という文化的許容度の差ゆえだったと思います。

統治者の不道徳や無能を告発するメッセージを「文化商品」として絶えず生産し、自由に流通させ、娯楽として消費できるような社会は今のところ世界広しと、いえどもアメリカしかありません。

アメリカが世界各地であれほどひどいことをしていたにもかかわらず、反米感情が臨界点に達することを防いでいるのは、ハリウッドが大統領やCIA長官を「悪役」にした映画を大量生産しているからだと私は思っています。アメリカの反権力文化ほど自国の統治者に対して辛辣なものは他国にありません。右手がした悪事を左手が告発するというこのアメリカの「一人芝居的復元力」は世界に類を見ないものです。

アメリカの国力の本質はここにあると私は思っています。

これはアメリカ政府が意図的・政策的に実施している「文化政策」ではありません。国民全体が無意識的にコミットしている壮大な「文化戦略」なのだと思います。

 

── 長期的にアメリカの国力が低下しつつあるにもかかわらず、親米派はアメリカにしがみつこうとしています。

 

内田 アメリカが覇権国のポジションから降りる時期がいずれ来るでしょう。その可能性は直視すべきです。

直近の例としてイギリスがあります。20世紀の半ばまで、イギリスは7つの海を支配する大帝国でしたが、1950年代から60年代にかけて、短期間に一気に縮小してゆきました。植民地や委任統治領を次々と手放し、独立するに任せました。その結果、大英帝国はなくなりましたが、その後もイギリスは国際社会における大国として生き延びることには成功しました。いまだにイギリスは国連安保理の常任理事国であり、核保有国であり、政治的にも経済的にも文化的にも世界的影響力を維持しています。

60年代に「英国病」ということがよく言われましたが、世界帝国が一島国に縮減したことの影響を、経済活動が低迷し、社会に活気がなくなったという程度のことで済ませたイギリス人の手際に私たちはむしろ驚嘆すべきでしょう。

大英帝国の縮小はアングロ・サクソンにはおそらく成功例として記憶されています。ですから、次にアメリカが「パックス・アメリカーナ」体制を放棄するときには、イギリスの前例に倣うだろうと私は思っています。

帝国がその覇権を自ら放棄することなんかありえないと思い込んでいる人がいますが、ローマ帝国以来すべての帝国はピークを迎えた後は、必ず衰退してゆきました。そして、衰退するときの「手際の良さ」がそれから後のその国の運命を決定したのです。

ですから、「どうやって最小の被害、最小のコストで帝国のサイズを縮減するか?」をアメリカのエリートたちは今真剣に考えていると私は思います。

それと同時に、中国の台頭は避けられない趨勢です。この流れは止めようがありません。これから10年は、中国の政治的、経済的な影響力は右肩上がりで拡大し続けるでしょう。

つまり、東アジア諸国は「縮んで行くアメリカ」と「拡大する中国」という二人のプレイヤーを軸に、そのバランスの中でどう舵取りをするか、むずかしい外交を迫られることになります。

フィリピンはかつてクラーク、スービックという巨大な米軍基地を国内に置いていましたが、その後外国軍の国内駐留を認めないという憲法を制定して米軍を撤収させました。けれども、その後中国が南シナ海に進出してくると、再び米軍に戻ってくるように要請しています。韓国も国内の米軍基地の縮小や撤退を求めながら、米軍司令官の戦時統制権については返還を延期しています。つまり、北朝鮮と戦争が始まったときは自動的にアメリカを戦闘に巻き込む仕組みを温存しているということです。

どちらも中国とアメリカの両方を横目で睨みながら、ときに天秤にかけて、利用できるものは利用するというしたたかな外交を展開しています。これからの東アジア諸国に求められるのはそのようなクールでリアルな「合従連衡」型の外交技術でしょう。

 

残念ながら、今の日本の指導層には、そのような能力を備えた政治家も官僚もいないし、そのような実践知がなくてはならないと思っている人さえいない。そもそも現実に何が起きているのか、日本という国のシステムがどのように構造化されていて、どう管理運営されているのかについてさえ主題的には意識していない。それもこれも、「日本は主権国家ではない」という基本的な現実認識を日本人自身が忌避しているからです。自分が何ものであるのかを知らない国民に適切な外交を展開することなどできるはずがありません。

私たちはまず「日本はまだ主権国家ではない。だから、主権を回復し、国土を回復するための気長な、多様な、忍耐強い努力を続けるしかない」という基本的な認識を国民的に共有するところから始めるしかないでしょう。(終わり)

 

<内田樹氏プロフィール>

1950(昭和25)年東京都生まれ。東京大学文学部仏文科卒。現在、神戸女学院大学文学部総合文化学科教授。専門はフランス現代思想。ブログ「内田樹の研究室」を拠点に武道(合気道六段)、ユダヤ、教育、アメリカ、中国、メディアなど幅広いテーマを縦横無尽に論じて多くの読者を得ている。『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)で第六回小林秀雄賞受賞、『日本辺境論』(新潮新書)で第三回新書大賞を受賞。二〇一〇年七月より大阪市特別顧問に就任。近著に『沈む日本を愛せますか?』(高橋源一郎との共著、ロッキング・オン)、『もういちど村上春樹にご用心』(アルテスパブリッシング)、『武道的思考』(筑摩選書)、『街場のマンガ論』(小学館)、『おせっかい教育論』(鷲田清一他との共著、140B)、『街場のメディア論』(光文社新書)、『若者よ、マルクスを読もう』(石川康宏との共著、かもがわ出版)などがある

 

 ポイントは、日本という世界最大の債権大国をいいようにコントロールするメリットの大きさである。現在米国は、日本という属国が存在しなかったら、覇権を維持することができない経済状態である。そのために戦後70年にわたって米国はあらゆる手を打ってきた。その成果が現在の日本社会である。

 

 

<参考文献>

・「安保条約の成立―吉田外交と天皇外交」(岩波新書)豊下楢彦

・「昭和天皇・マッカーサー会見」(岩波現代文庫) 豊下楢彦

・「昭和天皇とワシントンを結んだ男~「パケナム日記が語る日本占領」(新潮社)青木冨貴子

・「ブラックウォーター――世界最強の傭兵企業」ジェレミー・スケイヒル

 イラクでは現在10万人以上の「民間軍事会社」従業員が活動をしている。そのうちの多くの部分が、「傭兵」である。頼まれればどこにでも傭兵を派遣する民間軍事産業は、911以降の政治情勢を背景にして大きく成長。ブラックウォーターUSAは、そういった民間軍事会社の最大手、まさに「世界最強の傭兵軍」という呼び名がふさわしい存在である。ブラックウォーターが登場してきた背景と、戦争の民営化が巻き起こしている問題をジェレミー・スケイヒルが鋭く提起している。

6月 152015

日本政治を図らずも30年近く見てきて、いつも不思議に感じてきたことがある。それは、「地方分権」と言われながら、いまだにすべての情報は中央、東京に集中し、内政における大枠の情報がほとんど東京に集中していることである。しかも国家主権にわたる外交、安全保障、国の経済政策、教育政策、福祉政策、医療政策、その他の分野でも大きな方針、政策は、すべて霞ヶ関から、国会議員に「勉強会」という形で官僚から卸されてくるのである。

そこで国会議員になった人間は、その中の一つか二つの分野に精通し、期数を重ねることによっていわゆる族議員というものになって、その内政の利権のお裾分けに預かる。この仕組みが、今も続く戦後の日本政治である。

さらに不思議なことは、その霞ヶ関に大きな政策を棚卸ししてくるのが、戦勝国であるアメリカなのである。

今回は、その大きな役割の一つを担っている「日米合同委員会」なるものを改めて紹介したい。不勉強の小生はこの組織のことを知ったのが、十年ちょっと前である。2011年の311以降、ネットや一部の本でもやっと言及されるようになったが、多くの日本人はマスコミがほとんど報道しないので全く知らないのではないだろうか。

そのためにいまだに一般の日本人には、認識されていないが、「日米合同委員会」というものが、戦後日本政治をコントロールしてきた最重要会議であることは間違いないのである。憲法で規定された国権の最高機関である国会を現実には超越していると言っても過言ではない。今回の安保法制を巡ってもテレビのニュース等で、あたかも日本が独立国としてこの法制を審議しているかのような報道がなされているが、残念ながら、このような報道は戦後に創られた共同幻想を維持するためものでしかない。

 

ところで、話題の書である矢部宏治氏は『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』で、矢部宏治氏は、「日米合同委員会」についてこう書いている。

 日本はなぜ帰途と原発を止められないか


「官僚というのは法律が存在基盤ですから、下位の法体系(日本の国内法)より、上位の法体系(安保法体系)を優先して動くのは当然です。裁判で負ける側には絶対に立たないというのが官僚ですから、それは責められない。しかも、この日米合同委員会のメンバーがその後どうなっているかを調べてみると、このインナー・サークルに所属した官僚は、みなそのあと、めざましく出世している。とくに顕著なのが法務省で、省のトップである事務次官のなかに、日米合同委員会の元メンバー(大臣官房長経験者)が占める割合は、過去17人中12人。そのうち9人は、さらに次官より格上とされる検事総長になっているのです」


 

日米合同委員会の構成メンバーを見ると、米側がほとんど軍人である。米側代表は在日米軍司令部副司令官である。代表代理として在日米大使館公使、在日米軍司令部第五部長、在日米陸軍司令部参謀長、在日米空軍司令部副司令官、在日米海軍司令部参謀長、在日米海兵隊基地司令部参謀長である。在日米軍の軍人が威嚇するかのごとく居並んでいる。

日米合同委員会の日本側代表は外務省北米局長である。代表代理は、法務省大臣官房長、農林水産省経営局長、防衛省地方協力局長、外務省北米局参事官、財務省大臣官房審議官である。選挙で選ばれた政治家は一人も入っていない。

これは極めて象徴的な演出で、米国側は意識的に軍人を出している。現在も日本が米国の軍事占領下にあることの象徴なのだろう。わかりやすく言えば、日本官僚はネイティブの日本支配者であり、在日米軍の意向を受けて官僚の利権を維持拡大しているというわけである。

そして、日米合同委員会から多くの検事総長を出す。そして日本の対米隷属に異を唱え、真の独立を目指す人間を裁判にかけて攻撃する。その対象になったのが、最近では小沢一郎氏であった。

また、日米合同委員会で決まったことが公表されることはない。記録として残されることもない。いわば密約である。それが日本官僚を通じて政権与党である自民党に降ろされている。前回のレポートでも指摘した覇権国である米国経済の実情を考えると、もっと多くの日本人がこのことを知るべき時を迎えている。

日米合同委員会1日米合同委員会2

下記の参考資料を読んでいただければ、総理になった人間ですら、日米合同委員会のことを知らなかったことがわかる。日本の政治は見事なまでに空洞化しているのである。

<参考資料>

(*週プレNews  20141216日より)

「日本はなぜ基地と原発を止められないのか」で話題の矢部宏治が鳩山友紀夫と“日本の真の支配者”を語った!

矢部宏治

鳩山友紀夫元首相(右)と矢部宏治氏が日本が「真の独立国」として新しい戦後を歩むための方法を議論

民主党・鳩山政権の崩壊と沖縄の基地問題を出発点に、日本の戦後史を振り返った話題の新刊『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(集英社インターナショナル)の著者・矢部宏治(やべ・こうじ)氏。そして、まさにこの本を執筆するきっかけとなった鳩山友紀夫元首相。このふたりが、辺野古移設反対派の圧勝に終わった11月の沖縄県知事選や総選挙を踏まえ、事実上、今も米軍の占領状態が続いているこの国の姿と、日本が「真の独立国」として新しい戦後を歩んでいくためにはどうすればいいのか、その方法を考えた!>

首相の時はわからなかった「見えない敵」の正体

―まずは鳩山さんに、矢部さんの本を読まれた率直な感想から伺いたいのですが?

鳩山  正直申し上げて“ぶったまげた”というか、矢部さんがここまで勇気を持って取材され、この本を書かれたことに敬服しました。先にこの本を読んでいれば、私も総理を辞めずに済んだかもしれない、と(笑)。
もちろん、私は自分の非力について言い訳する気はありません。総理として一度は沖縄県民に期待感を与えながら(県外移設を)実現できなかったのは私に大きな責任があります。
ただ、この本を読んで、当時、自分がもっと政治の裏側にある仕組みを深く理解していれば、結果が違っていた部分もあるのかなとは思いました。それだけに、自分が総理という立場にありながら、この本に書かれているような現実を知らなかったことを恥じなきゃいかんと感じるわけです。

矢部  鳩山さんは以前、インタビューで「官僚たちは総理である自分ではなく『何か別のもの』に忠誠を誓っているように感じた」と言われていましたが、その正体がなんであるか、当時はわからなかったのでしょうか?

鳩山  物事が自分の思いどおりに進まないのは、自分自身の力不足という程度にしか思っていませんでした。本来ならば協力してくれるはずの官僚の皆さんには、自分の提案を「米軍側との協議の結果」と言って、すべてはね返されてしまって。分厚い壁の存在は感じながらも「やっぱりアメリカはキツイんだなぁ」ぐらいにしか思っていなかった。その裏側、深淵の部分まで自分の考えは届いていなかったのです。
 しかし、矢部さんのこの本はもっと深いところで米軍と官僚組織、さらには司法やメディアまでがすべてつながって一体となった姿を見事に解き明かしてくれて、いろんなことが腑(ふ)に落ちました。この本を読んで、目からうろこが何枚落ちたかわからないくらい落ちましたね。

矢部  在日米軍と日本のエリート官僚で組織された「日米合同委員会」の存在は、当時ご存じなかったということでしょうか?

鳩山  お恥ずかしい話ですが、わかりませんでした。日米で月に2度も、それも米軍と外務省や法務省、財務省などのトップクラスの官僚たちが、政府の中の議論以上に密な議論をしていたとは! しかもその内容は基本的には表に出ない。
 私が総理の時にアメリカから「規制改革をやれ」という話があって、向こうからの要望書に従って郵政の民営化とかがドンドンと押しつけられた。そこで「この規制改革委員会はおかしいぞ」というところまでは当時もわかっていたのですが。

矢部  日米合同委員会は基本的に占領以来続く在日米軍の特権、つまり「米軍は日本の国土全体を自由に使える」という権利を行使するための協議機関なのですが、この組織が60年間続いていくうちに、そこで決まったことには、もう誰も口出しできないという状況になってしまった。
 なかでも一番の問題は、日米合同委員会のメンバーである法務官僚が、法務省のトップである事務次官に占める割合は過去17人中12人、そのうち9人が検事総長にまで上り詰めている。つまり、米軍と日本の高級官僚をメンバーとするこの共同体が、検察権力を事実上握っているということなんです。
 しかも、在日米軍基地の違憲性をめぐって争われた1959年の砂川裁判で、当時の駐日米国大使だったダグラス・マッカーサー2世が裁判に不当な形で介入し、「日米安保条約のような高度な政治性を持つ問題については、最高裁は憲法判断をしない」という判例を残してしまった。ですから日米合同委員会の合意事項が仮に憲法違反であっても、日本国民にはそれを覆(くつがえ)す法的手段がない。

鳩山  それはつまり日米合同委員会の決定事項が、憲法も含めた日本の法律よりも優先されるということですよね。そのことを総理大臣の私は知らなかったのに、検事総長は知っていたし役人も知っていたわけだ。

矢部  ですから、鳩山さんの言う「官僚たちが忠誠を誓っていた何か別のもの」、つまり鳩山政権を潰(つぶ)したのは、この60年続く日米合同委員会という米軍と官僚の共同体であり、そこで決められた安保法体系だというのが現時点での私の結論ですね。

 

―そうした仕組みの存在を知った今、鳩山さんはどのような思いなのでしょうか。

鳩山  日米合同委員会に乗り込んでいきたいぐらいだね。「何をやってるんだ、おまえら!」みたいな感じで。
 ただ、そういうものが舞台裏で、しかも、憲法以上の力を持った存在として成り立っていたとしても、決してメディアで報道されることもないし、このメンバー以外にはほとんど知られないような仕組みになっているわけですよね。

矢部  このような「見えない力」の存在は、政権内にいないと、野党の立場ではまったく知り得ないものなのでしょうか?

鳩山  私も自民党時代がありましたので、8年は政権党にいたわけですが、当選1回や2回の新人議員の間は、官邸内部で何が動いているか知りようもありませんでした。でも与党の一員としては扱ってもらっていたと思います。
 それが野党となると、与党、特に与党の中枢の方々とは情報量が圧倒的に違う。官僚も野党に話す場合と与党に説明に行く場合では、丁寧さも説明に来る人の役職も全然違う。そのぐらい野党に対しては、官僚は区別し、冷たい対応をしていました。
 つまり、自民党政権と官僚機構が完全に一体化していたということです。野党は圧倒的に情報過疎に置かれているのは事実で、国民はその野党よりも情報が少ない。
 この先、特定秘密保護法によって、ますます国民には何も知らせない国になるわけで、非常に恐ろしいことだと思います。

 

日本全土が「米軍の基地」という現実

矢部  「横田空域」という、1都8県の上に米軍が管理している広大な空域がありまして、日本の飛行機はここを飛べない。これなんか典型的な「米軍が自由に日本の国土を使える」事例ですね。

鳩山  私も横田空域のせいで、日本の航空会社が非常に不自然な飛行ルートで飛ばされていることは知っていましたが、「沖縄と同じように、米軍の優位性というのが東京や関東周辺にもあるんだな」という程度にしか理解していなかった。
 しかし、具体的に図を見ると、関東上空がこれほど広範囲に米軍に「占領」されているという事実に仰天しますよね。沖縄だけではなくて、実は日本全体がアメリカに今でも支配されているも同然ですから。

矢部  飛行ルートの阻害もありますが、それより問題なのは、米軍やCIAの関係者が日本の国境に関係なく、この空域から自由に出入りできる、入国の「裏口(バックドア)」が存在することです。これはどう考えてもおかしな話で、こんなことは普通の主権国家ではあり得ません。
 この問題なんて国際社会にアピールしたら、みんなすごく驚くと思うんです。これは今、日本で起きているほかの問題、特に原発の問題にも絡んでくる話ですが、日本という国が置かれている状況の歪(ゆが)みやおかしさを伝えるいい事例になると思っています。
 結局、日米安保条約とは、米軍が「日本の基地」を使う権利ではなく、「日本全土」を基地として使う権利を定めたものなのです。
 旧安保条約の第1条で米軍にその権利が認められ、60年の安保条約で文言は変わっていますが、その権利は残されている。これを「全土基地方式」というのですが、これはなんとしても国際社会にアピールして変えていかないといけない

 

鳩山  矢部さんの本だと、米軍がそんなことをできる根拠は、敗戦国である日本を今でも「敵国」と見なした、国連憲章の「敵国条項」があるから、という話でしたが。

矢部  そこの説明は少し複雑で、旧安保条約第1条には、そうしたメチャクチャな軍事利用のあり方は、日本側が望み、アメリカ側がそれに応えたものだということが書かれている。そうした戦後処理を日本が望んだ以上、日本の主権や国民の人権がいくら侵害されていても、国連は口を出せないというロジックになっているんです。一種の法的トリックと言ってもいい。
 ですから、日本にちゃんとした政権が誕生して、国際社会で堂々と議論し、「全土基地方式はやめてくれ」と言ったら「それは敵国条項があるから無理だ」とは絶対ならないと思います。

米軍の占領状況を米国民に訴えろ!

鳩山  矢部さんのような方の努力もあって、私もようやく目隠しが外れて真実が見えてきたわけですが、問題はそこから先をどうするかです。やはり一部の人たちだけが目隠しを外すんじゃなくて、日本の国民の多くに触れられるPR戦術というか、日本の戦後の背後には何があるのかをきちんと解き明かす手段が必要だと思いますね。
 それと、日米関係に関わっている米軍関係者を除けば、アメリカの議会や国民は日米合同委員会なるものがどういう役割を果たしてきたのか、それが今も日本の主権をさまざまな形で侵害している事実も知らないと思います。しかし、こうした状況はアメリカの国民から見ても「異常なこと」だと映るはずですから、われわれが海外、特にアメリカの議会や国民に対して「日本は今も事実上、米軍に占領されているけれど、本当にこれでいいのか?」と訴えることが重要です。

矢部  情報発信という意味では、今、ドイツなど多くの国が日本の原発汚染に対して「何を考えてるんだ!」って相当に怒っている。基地の問題だけだと「勝手にやっててくれ」となるかもしれないけれど、原発の問題はそうはいかない。全地球的な問題です。
 あれだけ深刻な原発事故を起こした日本がなぜ、今再び原発推進への道を進もうとしているのか? その背景には「日米原子力協定」という、自国のエネルギー政策すらアメリカの同意なしには決められないという、客観的に見ても非常に歪(いびつ)な構造がある。それをうまく国際社会にアピールできたら、こうした日本の歪んだシステムに世界の光が当たる可能性はあります。

鳩山  そうですね、日本のメディアも完全に取り込まれてしまっているのであれば、基地の問題だけではなく、原発も併せて海外に訴えるほうが、圧倒的に意義があると思います。

ただし、そうした「外圧」に頼るだけでなく、結局はこの国の政治を変えない限り、そして多数派にならない限り、こうした流れは大きく変えられません。

 

2015.03.16 NEWSポストセブンより 

「米軍幹部と日本の官僚が進路決める「日米合同委員会」の存在」

 

東京都港区南麻布。都内屈指の閑静な高級住宅地も、そこだけは異空間が広がる。入り口には屈強なガードマンが立ち、脇には「100%、IDチェック」と書かれた案内書きがある。米軍施設の「ニューサンノーホテル」である。

 在日米軍関係者は、「ここは赤坂の米国大使館以上に、米国にとって重要な施設。表向きは来日した米軍関係者の宿泊施設ですが、米海軍情報部やCIAの拠点が置かれていて、日米のインテリジェンスの集積地です」と説明する。

 日本のメディアどころか、政治家も立ち入れない。そんな場所で、日本の高級官僚と在日米軍関係者は、定期的に会合を重ねていた。それが日米合同委員会後述するが1960年に締結された日米地位協定(※注1)をどう運用するかを協議する実務者会議だ。

 

※注11952年に旧安保条約と同時に発効した「日米行政協定」が前身。1960年に日米安全保障条約を締結した際に改めて交わされた。 そこでは、日本の安全保障の根幹に直接かかわる問題から、米軍基地と周辺住民の諍いまで協議される。 前者は在日米軍基地の移転・縮小、米海兵隊の新型輸送機オスプレイの配備といった問題、後者は基地内のゴミ処理、航空機の騒音問題などだ。かつては、米兵の犯罪並びにその処遇も、開かれた法廷ではなく、密室の話し合いによって、解決がなされたこともあった。 日米合同委の組織は、米国側は在日米軍司令部副司令官、在日米大使館公使など、日本側は外務省北米局長を代表として法務省大臣官房長、防衛省地方協力局長といった面子だ。

 日本側の代表者及び代表代理は、将来的に事務次官を狙えるポストにある。そんな高級官僚が、在日米軍や米大使館の有力者と密議を交わすことから、日米合同委は「影の政府」との異名もつく。

 ただし、彼らが一堂に会するわけではない。同委員会は、基地問題、刑事、環境な35の分科会や部会に分かれ、担当ごとに参加者が決まる。実際に出席したことのある官僚が明かしてくれた。

 

「日米の責任者(担当者)が最低一人、書記および通訳などの職員が最低二人は出席する。対話は基本的には日本語で行なわれますが、日本側も英語の話せる通訳を連れているため、微妙なニュアンスで日米の解釈が異なるという事態は生じない」

 

 関係者らの話をまとめると、毎月2回ほど開かれ、開催場所は米国と日本で持ち回りとなる。米国ならニューサンノーホテル、日本の場合は外務省を中心に、分科会や部会ごとに代表者の所属する官庁内で開催されているという。

 だが、会合の中身は一切明かされない。合意の一部は外務省、防衛省のホームページに公表されているが、それも簡潔に記されているだけだ。

 同委員会を所管する外務省北米局に日米合同委の詳細を問い合わせても、「回答できるのは、既に公表しているものだけ」の一点ばりで、防衛省広報課に問い合わせても、「外務省が所管なので、外務省に聞いてください」という堂々巡りだった。

 

 元琉球新報論説委員で、在日米軍基地問題に詳しい沖縄国際大学大学院教授・前泊博盛氏は語る。

 

「日米合同委に合意内容を公表する義務はない。日米双方の合意がない限り公表しない取り決め(※注2)になっているからです。」

 

※注219962月に、日米両政府は日米地位協定の9項目についての運用改善で合意。「日米合同委員会の公表」もそこに含まれた。しかし、結果的に「合意内容」の公表こそ一部改善はされたものの、会合内容が公表されることはなかった。

 

 「基本的に軍事関係の取り決めなので米軍側は、情報を出したくない。また、米軍に有利に推移した合意内容を表に出して、日本人の神経を逆なでしたくないという思いもある。日本側としても、米国との交渉に負けた、との誹りを避けるために、できるだけ隠密に事を収めたい」

 

 必然的に日米合同委は「密約の温床」になってしまう。(終わり)

日米合同委員会組織図

日本人だけが知らない?世界の日本食品事情

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5月 222015

日本人だけが知らない世界の食品事情

*図はホワイトフードhttp://www.whitefood.co.jp/radioactivitymap/forign-government/3419/より転載



赤色:日本食で輸入禁止措置の項目がある国

オレンジ:輸入される日本食に対して放射能検査を要求、あるいは、自国で放射能検査を実施

 

諸外国・地域の規制措置(平成27年 51日現在)農林水産省のホームページより

http://www.maff.go.jp/j/export/e_info/pdf/kisei_all_150501_2.pdf

 

*現在のフクシマ第一原発の状況を考えると上記の世界地図にすべて色が付くのも時間の問題。多くの日本人にはそのことが全く知らされていない。上記の一覧表を見れば、「フクシマを食べて応援というキャンペーン」が如何に不自然なものかは、一目瞭然。

また、米国は日本食品について台湾以上に厳しい規制をしているが、日本政府は抗議すらしたことがない。



「日本という国家が崩壊するわけですよね。かなり大きな県ですけれども。無人にするということですから。国家の方はそのことが分かっているので、もう駄目だと、もう人々に被曝をさせるしかないというそういう作戦に彼らは打って出たということになります。」(小出裕章)

 

(このことは、船橋洋一氏の「カウントダウンメルトダウン」という本を読めば、よくわかります。避難基準をチェルノブイリ事故のあったロシアと同じ年、5ミリシーベルトにして試算すると、福島県がなくなってしまうために20ミリシーベルトにせざるを得なかったことが淡々と書かれています。)

 

*日刊ゲンダイより

 

「米国の輸入規制に黙る安倍政権…台湾には“脅し外交”のア然」  2015515

 

台湾が福島第1原発事故後に導入した日本食品の輸入規制を、15日から強化することについて、日本政府が大騒ぎしている。14日、産経新聞は1面で「台湾、日本食品全て輸入停止」と大見出しで報じたが、これが大間違い。

 もともと、台湾は原発事故以降、福島など5県産の食品の輸入を停止。今回はそれに加えて、全ての食品に都道府県別の産地証明を、乳幼児用食品など一部製品には放射線検査証明を義務付けたにすぎない。

 

 産経の記事を読むと、まるで台湾が輸入を全面停止するような印象を受けるが、実際には産地証明書などがそろえば、日本から輸出可能だ。ところが、台湾の規制強化に敏感に反応したのが安倍政権である。

 

 菅義偉官房長官は定例会見で「科学的な根拠に基づかない一方的な措置で、極めて遺憾だ」と怒りをぶちまけ、林芳正農相も「WTOへの提訴を含めしかるべき対応を検討したい」と吠えた。

 

しかし、台湾に限らず他国でも、日本食品に関する規制は現在も続いている。とりわけ、顕著なのが米国だ。岩手や宮城、福島など14県産を対象に、特定品目を輸入停止した上で、他の都道府県の食品全てに、米国内でのサンプル検査を義務付けている。そんな米国に、安倍政権は文句ひとつ言ったことはない。

 農林水産省の食料産業局輸出促進グループの担当者は「米国は幅広く規制しているように見えますが、規制を緩和する方向に動いていて、徐々に規制品目も減ってきています。台湾はなぜ今、規制を強化するのか、科学的な根拠が示されていません」と説明する。

 

 台湾では今年3月、輸入を禁止していた福島などの5県産の食品が、密かに輸入されていたことが発覚。これを機に台湾国内で食の安全への関心が高まったことが、規制強化につながっている。

 こうした現状を踏まえ、交渉するのが政府の務めだが、安倍政権は“格下扱い”の台湾には提訴をちらつかせる“脅し外交”で、米国にはひたすら沈黙の隷属路線だ。

 これでは国際的にますます孤立を深めるだけだろう。(引用終わり)

 

今、本当は何が起きているのかを考える

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3月 212015

・アベノミクスによって、株価はある程度円ベースで上がったが、それによって一般の日本人が大きな利益を得ているとは全く感じられず、むしろ社会階層の二極化が露骨になり始めている。

日銀のマネーばらまき

生活保護受給者数

・今回の中東歴訪という安倍首相による「イスラム国」挑発行動によって、残念ながら、私たち日本人全員が世界中どこにいっても「イスラム・テロ」の標的になることが確定されてしまった。

 

・マスコミに対する「言論統制」が厳しくなっている。インターネット上を越えてマスメディアで語っている評論家等は、<政府に指示されたある一つのコード>に従って発言をして糊口をしのいでいる。

 

・総理大臣自身は、世界中を<何物かの指示?>によって飛び回っているが、そのことによって国際政治経済の大きな流れの中で我が国が主導権をとるに至ったのかというと全くそうではなく、完全に受け身であり、米国ネオコン派の完全なコントロール下に入っている。

ネオコン指図の図

・決定的なのが「普通の国・美しい国」にすると言いながら、我が国を根底から変える(本当の付加価値創出である)本質的なイノベーションは一切顧慮されず、米国では飽和状態になっているカジノによる経済活性化を言い出していることである。意識している、いないは別として「金融バブル」を起こすことだけに専心している状況である。

 

・2013年から始まった「アベノミクス」は、ロシアや中国が米国債を売却しているので、それを補完するためのもの政策。その結果、株価は上がったが、円の購買力は、大幅に落ちている。(80万円出せば買えたものを120万円で買うのは、誰が考えても得策ではない。)また、美辞麗句に飾られているTPPは、「日本から米国への国富の移転のための仕組み作りでしかない。また、多国籍化した日本の大企業がアジア市場で金儲けをするためでもある。

 

・これから地球には、「太陽活動の大きな変化」によって、大規模な気候変動がもたらされる。その結果、マクロな視点で見れば、<世界経済は、デフレ縮小化>していく。1800年~2000年の世界経済の爆発的な経済成長が終焉する時代に入りつつある。

デフレに向かう世界

・長期的なデフレ縮小化の中で、「エネルギー革命」が水面下で進行している。その結果、長期的な視点で見れば、エネルギーコストが信じられない程、安価になる時代が来ようとしている。

 

・日本人として一番悲しむべきは、フクシマ原発事故による放射線による人体への影響が首都圏を中心に誰の目にも明らかになる時が迫りつつあることである。政府が真実を隠している状況下では「自己防衛」が求められる。

フランス 福島原発事故 風刺画

<フランス連続テロ事件で襲撃された「風刺紙シャルリエブド」318日発売の最新号に東京電力福島第1原発事故を揶揄する風刺画を掲載>

・落ち込む世界経済を活性化するために「戦争経済」に持ち込もうとするネオコン派の動きが活発である。現在の「イスラム国」騒ぎ、ウクライナ情勢の緊迫化は、その現れである。日本の安倍政権は、米国ネオコン派と共に戦争経済に突き進むしか、日本の生きる道はないと盲信している。 

 

*今起きていることは、いまだに、あの「1945815日」という敗戦の日から米国によって、日本に課せられた枠組みを前提にしている。そして、その対立軸の中で、議論が展開されているが、本当に大事な真実はそこにはない。一般人の目には触れないところで、その枠組み事態を変えてしまう動きが起きはじめているとも言われている。 

 

*一番のポイントは、真実に近づけば近づくほど、創られている「常識」からかけ離れていくことになることを覚悟する必要があることだ。多くの人が「常識」そのものが創られていることを知らず、それを尺度にするように馴致(じゅんち)されているので、真実を知る者は少数派になるように運命づけられているからだ。しかし、平常時には巧みに隠されていた真実を垣間見る機会が、マスメディアが言論統制されているにもかかわらず、増えたということは、大きな時代の変化を予兆させるものである。そうは言っても、少数派であることに耐えられない人には、真実を知ることはできないということだ。

先進国中央銀行の国債購入量

原油在庫

悪化が続く米国経済

コントロールできなくなりつつある国債市場

日本国債は、日銀の購入によって金利は安定するだろうと思われていたが、最近、入札の度に10年債の金利が上昇している。日銀の購入額以上に売却する機関投資家や金融機関が存在するのが、次第に明らかになっている。日本の財政は、低い国債金利によって何とか回っているが、金利が上昇すれば、財政危機に見舞われる可能性が非常に高い。国債市場は、既に日銀がコントロール出来る状況ではなくなっており、日本の国家財政は、アベノミクス論者が唱える楽観論とは真逆の危機的な状況となっている。

・上海をアジアの金融拠点にするとロンドンシティが2008年の時点で計画していたことが動き始めている。

 

<中国主導のアジアインフラ投資銀行に加盟希望国が続出=英国が表明、韓国・豪・独・伊・仏・加も追随か―迫られる日本の判断>(レコードチャイナ)314() 

中国主導で今年末にスタートするアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英国が参加することになった。主要7カ国(G7)で参加するのは初めて。これにより国際金融機関として信認が高まることになる。この結果、発行債券などの格付けが上がり、低金利での資金調達が可能となる。イタリアはじめとする他の欧州諸国やカナダやオーストラリア、韓国なども追随する可能性がある。

 

経済成長が著しいアジアでは、成長を支えるために、毎年少なくとも7500億ドル(約95兆円)に上るインフラ投資が必要とされている。このニーズを狙って、中国が「新興国による新興国のための国際投資機関」を標榜して主導したのがAIIBだ。上海に本部を置き資本金は1000億ドル(約12兆円)。出資比率はGDP(国内総生産)に基づいて決まるため、参加国中最大の経済大国、中国が半分以上の出資比率を確保、大きな発言権を握ることになる。総裁に中国の金立群・AIIB設立準備委員長が就任する見通しだ。

 

この投資銀行には、東南アジア10カ国、インドをはじめ27カ国の参加が既に決まっており、英国で28カ国目。先進国ではニュージーランドが参加。南シナ海で中国と対立するフィリピン、ベトナムも加わっている。アジア専門家によると、深刻な投資資金不足にあえぐアジア諸国にとって、立ち遅れたインフラ整備を支援するという、中国の提案を拒否する理由は見当たらないという。先進国のインフラ開発会社や商社などは「参加しないと21世紀の有望市場・アジアの事業などで不利になるのでは」と懸念しているという。

 

AIIBと役割が似た国際機関としては、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)がある。それぞれ米国と日本の発言力が強く、歴代総裁ポストは世銀が米国人、ADBは日本人が就任する。中国をはじめとする新興国が発言権の増大(出資分担金増)を求めるIMF改革は米議会が承認せず実現していない。現状に不満を抱くブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国(BRICS)は147月、「BRICS開発銀行」の設立でも合意に至った。AIIBBRICS開銀に加えて、習近平国家主席は1411月、400億ドル(約48000億円)を拠出して、シルクロード沿いの各国のインフラ整備などを支援する基金創設を表明した。

 

◆中国の世界戦略に組み込まれる?

一方、中国はAIIBへの参加を日本、米国にも要請。「日本はアジアの重要な国である日本もアジアの発展に向けてAIIBで重要な役割を担ってほしい」と伝えてきたという。

日米両国はAIIBが既存のアジア開発銀行(ADB)と業務が重複し、組織運営も不透明だと指摘して慎重な姿勢を示してきた。AIIBは中国の巨額資金が拠りどころ。中国の国益を優先する「世界戦略の先兵となるのでは」との懸念は拭えない。AIIBは理事会を常設せず、総裁以下の事務方に大きな権限を与える方向で、総裁の権限が大きく、チェックが効きにくい。

 

しかし、英国に続いてドイツ、イタリア、フランスなどの欧州諸国やカナダ、オーストラリア、韓国なども追随する可能性がある。米国も参加国増加は止められないと見AIIBを容認する姿勢に転じている。シーツ財務次官は、「国際通貨基金(IMF既存の国際金融機関を補完し、(1)透明性とガバナンス重視、(2)借金国の返済能力への配慮、(3)環境重視、(4)高水準の調達基準―などを順守すれば歓迎する用意がある」と表明している。カート・トン米首席国務次官補代理(経済担当)も2月、開発銀行研究所(東京・霞が関)で講演し、「米国はAIIB設立に反対していない。中国が責任あるステークホルダーとなり、国際社会にさらに多くの公共財を提供することを望む」と踏み込んだ。

 

世界一の成長センターであるアジアのインフラ整備を商機とみてAIIBに関心を示す国が続出しているという。「AIIB構想が具体化するにつれ、新たな対応を迫られているのは日米の側」(日本の有力大教授)との指摘もある。中国主導の構想にあえて関与し、「内側から日本の立場を反映すべきだ」との意見もあり、日本は難しい選択を迫られそうだ。(八牧浩行)

 

 

語りたくないフクシマの恐るべき現実

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3月 112015



昔、読んだラ・ロシュフーコーの箴言集に「太陽と死は直視できない。」というのがあった。どうも人間というものは、本当に根源的なものを見ようとしない習性を持つものらしい。もちろん、原子力は<ミニ太陽>と言ってもいいものだし、そこから出てくる人工放射線は、人間に大きな影響を与え、その量によって速さに違いがあるが、確実に死をもたらす(スローデス)ものである。私たちはそのことから目をそらしたいし、為政者たちもあまりに不都合な真実はパニックになるから、大衆には知ってほしくないという内部事情がある。

 

<ところで、原子炉の100トン近い核燃料が圧力容器から格納容器の外にメルトアウトした後はどうなるのだろうか。>

 

メルトアウトした核燃料は、地圧によって団子状になって、メルトクラッシングという小爆発を繰り返し、そのたびに猛烈な蒸気を地上に噴き上げる。この「間欠蒸気温泉」みたいな蒸気の噴出の様子は、フクシマライブカメラで何回も放映されているので、見ている方も多いはずだ。今までに大変重要な事実が明らかにされている。2011716日の常陽新聞によると、「つくば市の気象庁気象研究所が、モリブデンとテクネチウムを大気中で検出した」ということである。これは、モリブデンとテクネチウムが、東電福島から170kmも離れた筑波まで飛んできたということを意味している。

フクシマ トリチウウム水蒸気

https://www.youtube.com/watch?v=LmPXnKWuphg

モリブデンとテクネチウムという核種が、東京電力の福島第一原発から筑波まで飛んできたという事実には大きな意味がある。モリブデンの融点は2623℃で、沸点は4639℃。テクネチウムの融点は2157℃で、沸点は4265℃。両核種とも、融点、沸点が非常に高い。沸点とは沸騰点のことで、原子炉内の温度が5000℃!近くになって、テクネチウムやモリブデンが液体化して、さらに沸騰して蒸気になったことを意味しているからだ。

つまり、気体になったから、風に乗って、筑波まで飛んでいったと言うわけである。ちなみに、プルトニウムの融点は640℃、沸点は3228℃。プルトニウムも、当然、気化して気体になっている。そうして偏西風に乗ってアメリカ大陸まで飛んでいったのである。

これは、原子炉からメルトアウトした核燃料が大変な高温になったことを示している。太陽の表面温度は6000℃だから何基かの原子炉の地下部分が「ミニ太陽」ようになっているということだ。そのため、テクネチウムが融けて、沸騰して、気化して、気体になって筑波はおろか、アメリカまで飛んでいったのである。

 

<どうして太陽のような超高温の状態になったのか?>

 

原子炉からメルトアウト(脱落)した核燃料が丸い塊、団子になったからだ。そうして「自発核分裂」が起こった。この反応が連続的に発生し超高温になったわけである。今後、100数十トン(合計400トン~500トン)ものデブリ(溶けた核燃料)が、岩盤をくり貫き始め、団子状になって圧縮凝塊したときに何が起きるかである。大爆発(核爆発)が起きないことを祈るばかりである。

 

 先日(平成27319日のニュースによると福島第一の1号機の原子炉内が空であることが、確認されたようである。

 

<炉内燃料、ほぼ全量溶融 福島第1原発1号機 調査で初の確認>(北海道新聞)

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/science/science/1-0113551.html

 東京電力は19日、宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線から生じる「ミュー粒子」を利用して福島第1原発1号機を調査した結果、原子炉内の核燃料がほとんど溶け落ちていることを確認したと発表した。燃料溶融を調査により確認したのは初めて。

 東電は1号機について、事故時のデータ解析などから、ほとんどの燃料が溶融して格納容器に落下したとみており、今回の調査結果はこれを裏付ける内容。

 東電は、廃炉工程で最難関となる溶けた燃料(デブリ)の取り出しに向け、具体的な取り出し手法の検討に活用する。(引用終わり)

bedrock

おそらく、福島第一の1号機~4号機すべてがメルトダウン→メルトスルー→メルトアウトしているのだろう。驚くべき事実があまりにも淡々と報道されていることに驚愕せざるを得ない。「日本のすべての原子力発電所が、格納容器が壊れるような重大事故は、絶対に起こらない」という大前提で建設されていることをマスコミ人は、忘却のかなたに押しやってしまったとでも言うのだろうか。また、デブリ(溶けた核燃料)を本当に取り出せると思っているのだろうか。あまりに大衆を愚弄する言動が平然と報道されている日本という国は、現在、脳死状態に陥っているとしか思えない。おそらく、今の日本政府、東電は、心秘かに元寇の時のように神風が吹くのを待っているのでないか。

 いずれにしろ、地方統一選挙のために公的資金を前倒しして演出された株高が一段落したときに何が起こるか、細心の注意が必要だろう。

 

 *フクシマの現状を知るための適確な記事をそれでは、紹介させていただく。

 

「我々が福島の最悪を恐れるべき50の理由」     ハーヴィ・ワッサーマン    201422

 

福島の行方不明の溶けた炉心と放射性を帯びた噴出物は秘密裏に悪化し続けている。日本の厳しい独裁的検閲は、まんまと福島を世間の目から隠し続けることを狙った世界的大手マスコミによる報道管制と対になっている。だからといって、実際の放射能を、我々の生態系や、我々の市場…あるいは我々の体の外においたままにしておけるわけではない。

究極的な影響についての推測は全く無害から極めて終末論的なものに到るまで様々だ。

だが基本的な現実は単純だ。この70年間、政府の核爆弾工場と民営原子炉は監視されない莫大な量の放射能を生物圏に放出してきたのである。

人と生態系の健康に対するこうした放出の影響がわかっていないのは、そもそも原子力産業が、それを研究することを断固として拒否している為でもある。

実際、公式推定では、核実験商業原子炉による被害の証明を示す責任は、加害者ではなく、常に被害者におかれている。しかも、どのような場合でも、原発業界は事実上、常に損害を受けずに済んでいる。

このまずいことは見ずにおく、被害は賠償しないという考え方は、広島の原爆投下にさかのぼり、福島や、…読者がこの記事のお読みになっている間にも起こるかもしれない、来るべき大災害にも及ぶ。一体なぜ、この伝来の放射能遺産が、我々が、海に対して、地球に対して、アメリカ経済に対して…我々自身に対して、最悪に備えることを要求しているのかという50の前置き的理由は下記の通りだ。

 

1.広島と長崎で(1945)、アメリカ軍は、そこでのいかなる放射性降下物の存在も、あるいはそれが何らかの被害を与えうることも、当初は否定していた。意味あるデータが存在しないにもかかわらず、犠牲者達(アメリカ人戦争捕虜の集団を含め)や支持者達は、公式に信用をおとされ、軽蔑された。

 

2.同様に、ノーベル賞受賞者のリーナス・ポーリングとアンドレイ・サハロフが大気中核実験による、世界中の膨大な死亡者数について正しくも警告した際、彼等は公式に軽蔑され、はねつけられた彼等が世論という裁判所で勝利するまで。

 

3.核実験の間と後(1946-63)、南太平洋やアメリカ西部の風下の住民達は、何千人ものアメリカ人“被爆兵士”と同様、彼等が受けた放射線に誘発される健康問題は想像上のものだと言われた彼等には全く反論の余地がないことが確認されるまで。

 

4.イギリス人のアリス・スチュワート博士が(1956) 妊婦に対するごくわずかなX線線量でさえ、小児白血病の率を倍増させうることを証明した際、彼女は30年間、潤沢な資金を得た原子力とマスコミ既成権力による嫌がらせで攻撃され続けた。

 

5.しかし、スチュワート博士の所見は悲劇的なほど正確であると判明し、放射能に“安全線量”はなく妊婦は、X線検査を受けたり、同様な被曝を受けたりしてはならないという保健物理学の合意を確定するのに役立った。

 

6. 400基以上の商業原子炉が、その潜在的な健康と環境に対する影響を測定する意味あるデータ無しに、我々の生態圏に投入されているが、いかなる体系的な世界的データー・ベースも、設立も維持もされていない。

 

7.商業原子炉用の“許容線量”標準は、広島から5年後に始まった不完全な原爆研究から生み出されたものであり、福島や他の原発では、業界の金を節約すべく、常に一層手ぬるいものにされてきた。

 

8.原子爆弾/原子炉放射性降下物は、体内に入って長期的被害を及ぼすα線とβ線放射体を生み出すが、原子力産業の支持者達は、それを、さほど致命的でない外部γ線/X線線量、飛行機での旅行や、デンバーでの生活等と、不当に同一視することが多い。

 

9.長期的な排出評価の蓄積を拒否することで、業界はスリーマイル・アイランド (スリーマイル・アイランド)、チェルノブイリ、福島等々の健康に対する影響を、組織的に隠蔽し、業界が自動的に“疑問視されたもの”と見なす個別の独自研究に、被害者達が頼ることを強いている。

 

10.業界が何十年も容赦なく否定してきたにもかかわらず、時計盤数字のラジウム塗布、原爆製造、ウラン採鉱/精錬/濃縮、廃棄物管理や、他の放射能にまつわる作業において、非常に多くの健康被害を受けてきた。

 

11.アルバート・アインシュタインと共に働いていたアーネスト・スターングラス博士が、原子炉放出物が人々に害を与えていると警告すると、不思議なことに、彼の何千部もの低レベル放射能に関する論文(1971)が主要倉庫から消えた。

 

12.原子力委員会(AEC)の最高医務責任者、ジョン・ゴフマン博士は、原子炉の線量レベルを、90パーセント低下すべきだと強く主張して、AECから追放され、公的に攻撃された。産業の創設者という立場にもかかわらず。

13.マンハッタン・プロジェクトのメンバーで、LDLコレステロールの先駆的研究の貢献者である医師のゴフマンは、後に原子炉産業を“周到に準備された大量殺りく”の担い手と呼んだ

 

14.スリーマイル・アイランド(1979)では、排気筒モニタや他の監視装置が故障し、どれだけの放射能が放出されたのか、どこへ行ったのか、あるいは、誰に、どのように影響を与えているのかを知るのが不可能になっている。

 

15.だが約2,400人のスリーマイル・アイランド風下被害者と家族は、放射能がどれだけだったのか、あるいは放射能がどこに行ったのかを言うことができなかったにもかかわらず、彼等に損傷を与えるのに“十分な放射能”は放出されていないと述べた連邦裁判所判事によって、集団訴訟陪審裁判を拒否された。

 

16.スリーマイル・アイランド・メルトダウンの際、業界の広告は、そのような線量が、不本意に放射線を浴びた母親に生まれた子供の白血病の率を倍増させうるという事実を無視して、放射性降下物を、風下にいた全員に対する一回の胸部X線と同一視していた。

 

17.スリーマイル・アイランド風下での広範な死亡と損傷は、何百もの事例報告と共に、スティーブン・ウイング博士、ジェーン・リーと、メリー・オズボーン、修道女のロザリー・バーテル、スターングラス博士、ジェイ・グールド、ジョー・マンガーノ他によって確認されている。

 

18.スリーマイル・アイランド風下の農場や野生動物への放射能被害は、バルチモア・ニューズ、アメリカ農務省、ペンシルバニア農業省によって確認されている。

 

19.スリーマイル・アイランドの所有者は、少なくともダウン症を持って生まれた子供がいる一件を含む、被害を受けた家族の箝口令と引き換えに、損害賠償として、こっそりと少なくとも1500万ドル支払った。

 

20.チェルノブイリの爆発は、膨大な放出物が、何百キロも離れたスウェーデンの原子炉上まで到来して初めて、世間一般に知れ渡った。つまり、スリーマイル・アイランドや福島と同様、一体どれだけ放出されたのか、あるいは一体どこに行ったのかは誰も正確には知らない。

 

21.福島で継続している放射性降下物は、既に、スリーマイル・アイランドからのものを遥かに上回るチェルノブイリからのものを、遥かに上回っている。

 

22.チェルノブイリの爆発(1986)から間もなく、ゴフマン博士は、その放射性降下物で、世界中で少なくとも400,000人が亡くなるだろうと予想した。

 

23. 2005年に、5,000以上の研究をまとめあげた三人のロシア人科学者は、チェルノブイリ事故は、世界中で既に約100万人を死亡させたと結論づけた。

 

24.様々な政府、科学、人道団体によって確認された通り、ウクライナとベラルーシの風下で生まれた子供達は、いまだに突然変異や病気の膨大な被害をこうむっている。

 

25.故意に低く見積もった主要なチェルノブイリによる推定死亡者数は、世界保健機関(WHO)からのものであり、数値は、原子力産業を推進する為に作られた国際連合の組織である国際原子力機関に監督されている。

 

26.十億ドルもつぎ込まれたにもかかわらず、28年たっても原子炉業界は未だに、爆発したチェルノブイリ4号炉に対する最終的な石棺の設置に成功していない。

 

27.福島の1-4炉が爆発した際、オバマ大統領は、我々全員に、どちらの主張にも証拠皆無にかかわらず、放射性降下物はアメリカに来ないし、誰も傷つけないと言った。

 

28.オバマ大統領がそうして以来、アメリカは、福島の放射性降下物を監視する統合システムも、その健康に対する影響を追跡する疫学的データー・ベースも設置していないが、太平洋の海産物内の放射線レベル検査は中止した。

 

29.福島の風下と、北米の子供達の甲状腺異常に関する初期の報告は、それが一体どれほどか知らないが“十分な放射”は放出されていないと語る原子力産業支持者連中によって再び否定された。

 

30.福島に接近した米空母ロナルド・レーガン艦上にいた海軍軍人が報告した健康に対する衝撃的な影響は、放射線量は、それが一体何だったのか全くわからないまま、害を生じるには少なすぎると、業界と海軍により否定された。現在、裁判中。

 

31.福島のメルトダウン時に、沖で吹雪の中にいた海軍軍人達は、熱い雲がレーガン艦上を通りすぎ、スリーマイル・アイランド風下の死の灰による被爆者や、原爆を広島に投下した空軍兵が語っているものに良く似た“金属的な味”がしたと報告している。

32.レーガン艦上の海軍軍人は、被害を生じるのに十分な福島の放射能に被曝していないと否定されているが、余りに放射能が高すぎるということで空母入港は拒否された(現在サンディエゴのドックに入っている)

 

33.レーガン艦上の海軍軍人は、海軍を訴えるのは禁じられたが、全ての責任を拒否して、スリーマイル・アイランド、核爆弾工場、ウラン鉱山等の所有者達に加わった東京電力に対し、集団訴訟を起こした。

 

34.福島でのオペレーション・トモダチ除染作戦でアメリカ軍が“学んだ教訓”報告は、“一般住民に不安を抱かせずに、航空機と要員の除染を行なうことが、新たな課題となった”と書いている

 

35.報告は‘許可’の為の“本当の除染作業標準が設定されておらず”その為“軍関係者や地元住民への放射能汚染拡散の可能性”の危険を冒しているとして、除染を疑問視している。

36. にもかかわらず、除染の際“放射性粒子を除去する上で、粘着テープと赤ちゃん用おしり拭きの利用は効果的だった”と報告している。

 

37.東京電力は組織犯罪とぐるになって、危険な現場作業の為に、貧窮化したホームレスや高齢者を採用して、自身の除染活動を行っているが、彼らの作業品質や、彼等の被曝状況は今や国家秘密になっている。

 

38.このようなデータが国家秘密とされる前に行われた公式推計によると、福島では毎日少なくとも300トン以上の放射能を帯びた水が海に注がれ続けている。

 

39.知りうる限りの福島外部に流れ出る放射能の量と組成も今や国家秘密であり、独自の測定や、大衆の憶測は、禁固10年以下の刑を課される可能性がある。

 

40.同様に、カリフォルニア大学(バークレー校) 核工学のエリック・ノーマン教授によると、“アメリカには、大気、食べ物や水の放射能の体系的な検査はない”。

 

41.大気や水に放出される多くの放射性同位元素は濃縮する傾向があり、福島の放射能の極めて有害な塊は、拡散する前に、今後何世紀にもわたって、海全体に移動する。例え拡散したとしても、無害にはなっていない可能性がある。

 

42.益々汚染されつつある生物圏の中で、既存の毒素との相互作用が、あらゆる生物に対する損傷を幾何学級数的に促進する可能性が高い相乗効果を生みだす為、放射能の本当の世界に対する影響は一層測定が困難になっている。

 

43.ヒトデ、イワシ、鮭、アシカ、シャチや他の海の生き物に起きている惨状として報じられているものは、存在しておらず、設置されようともしていない過去の実験に関する信頼に足るデーター・ベースや観測無しに、必ずしも断定的に否定することはできない。

 

44.X線の“わずかな”線量が人間の胚細胞を傷つけるという事実が、致死的な放射性同位元素の生物圏へのいかなる不自然な導入も、どれほど“拡散したとて”現在我々には分からない形で、入り組んだ地球生態に影響を与えうることを警告している。

 

45.既に福島から広がりつつあるわずかな線量が、既に海にある他の汚染物質によって強化された致死的な影響力で、イワシから、ヒトデやアシカに到る生物の極めて小さい卵に、徐々に影響を与える。

 

46. 原子炉放射性降下物からの無数の同位元素が、様々な生態学的環境の中で、今後何世紀にもわたって、全く異なる生物学的影響を与えるだろうから、バナナや他の自然源との線量比較は、ばかげたており、誤解を招く恐れがある。

 

47.黙示録さながらのものであれ、あるいは他のものであれ、人間や生態系に対する全体的影響に対する現在の否認は、福島が現在、生物圏に放出している放射性同位元素の極めて長い半減期の説明責任を、長期間、負うことなどできない。

48.福島の影響が何世紀も広がる中、どのような証拠が現れようと、原子力産業は決して、いかなる被害を起こしていることも認めず、決してその被害に対する弁償を支払わされることはないことだけは確実だ。

 

49.原子力海軍の父ハイマン・リッコーヴァーは、地球の必須な外皮内の放射線レベルを上げるのは、ある種の自殺だと警告し、できることなら自分が開発を支援した全ての原子炉を沈めたいと述べた。

 

50.原子力の利用を振り返ると“私には人類は自ら破滅しようとしているように思え、この恐ろしい力を我々が制御し、廃絶しようとすることが重要だと1982年に彼は語っていた。”

  

秘密と欺瞞という鉄のカーテンの背後で福島が悪化する中、それが一体、我々やこの地球に何をしているのかを、我々は是非とも知る必要がある。

真実は、業界の嘘と、「具体的な黙示録状態」に対して高まりつつある恐怖のどこか中間にあると、つい言いたくなる。

実際は、答えはその先にある。

我々にとって害がないという、この70年間の欺瞞、否認、悪から目をそらすことや、意味ある科学的研究の不足を特徴とする、原子力関連大企業による口先だけの保証は、最新の原子炉災害で、ばかばかしさへと色あせてしまった。

福島は毎日、膨大な法外な量の致死的な放射能を、我々の脆弱な生態圏に注ぎ込んでおり、これから何十年間もそうし続けるだろう。

5基の発電用原子炉が地球上で爆発したが、他に400基以上もあり、依然稼働中だ。

我々を最も脅かしているのは、不可避な次の大災害だ…そして更にその次の…そしてまた更に次の…否認と、大企業特権による保護によって、前もって覆われた原発は、究極的な世界的テロのエンジンだ。

 

*ハーヴィ・ワッサーマンは、www.nukefree.orgを編集しており、サイトには、日本の国家秘密法廃止と、世界的な福島接収を呼びかける請願のリンクがある。また、彼はSOLARTOPIA! Our Green-Powered Earthの著者である。

元素の融点および沸点

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