*原田武夫氏のブログから2009年を考える。 2009/01/05
「2009年 これから起きる5つの本当の焦点」
2009年もいよいよスタートを切った。昨年秋過ぎ頃から「100年に1度の大転換の年」と麻生太郎首相が言い始めて久しいが、いったい何が大転換するのか。
今年これから起きる“5つの本当の焦点”は以下のとおり。
(第1の焦点)
「米国がオバマ政権の下、デフォルト(国家債務不履行)を宣言する」
米国は連邦政府と地方政府とを合算すると昨年(07年)5月末の段階で邦貨換算すると約5500兆円ほどの累積債務を抱えてしまっている。「冷静に考えればオバマ政権が“CHANGE(変革)”を叫ぼうとまずはこの問題を片づけないと何も始められない」(独立系ファンド・マネジャー)というのがマーケットにおける評価。 オバマ大統領にとって自らが一番無傷で済むのは人事について議会承認も終わり、政策がほぼ確定する今秋までの間にこれまでの累積債務を無かったことにする、すなわち「デフォルト宣言」を行うことだ。これがあまりにも刺激的というのであればハイパーインフレーションによる、事実上の債務縮減というやり方もある。いずれにせよ、新通貨への切り替えと絡め、オバマ新政権が手を打つのは時間の問題となっている。
(第2の焦点)
「ブッシュ大統領が訴追され、米国の戦争ビジネスが大転換する」
先月、米大手テレビ番組に出演したバイデン次期副大統領が「イスラム系原理主義者の掃討作戦により捕らえた捕虜たちをグアンタナモ収容所などで虐待した件について、関係者を訴追するか否かは連邦司法省に委ねられている」と発言したことが大きな波紋を呼んでいる。なぜならこれら一連の作戦について最終的に責任を追うのはブッシュ大統領であり、チェイニー副大統領だからだ。とりわけ「デフォルト宣言」など、人心が大いに動揺する政策を実施するのであれば、それと“合わせ技”で過去を一掃するキャンペーンを展開する必要がある。すでに一部の地方裁判所はチェイニー副大統領に対する召喚命令を出すなどの動きに出ている。
前職大統領が戦争犯罪で訴追されるという前代未聞の出来事が待ち構えている可能性が高い。
(第3の焦点)
「米国が気候変動問題に前のめりとなり代替エネルギーへの転換が大いに前進する」
オバマ大統領は選挙戦当時の公約で代替エネルギーへの転換による500万人分の雇用創出を約束してしまっている。したがってあとはこれを実施するタイミングが問題となっているわけだが、その際にカギを握るのが今年11月末から行われる気候変動枠組条約第15回締約国会合(COP15 デンマーク・コペンハーゲン)だ。
この場では2012年で失効する京都議定書に代わり、よりきつい温暖化効果ガス削減義務を定めた付属文書が合意される見通しであり、何よりも米国勢がここにきて前向きになっている。京都議定書の削減義務(1999年排出量を基準にして6パーセント減)を全く満たしていない日本はこれによって完全に追い詰められるはずだ。政府主導で「モーダルシフト」を進め、とりわけ物流セクターにおける自動車輸送から鉄道・内航海運輸送への転換が大車輪で進み、それがマーケットを大いに揺さぶっていくことになる。
(第4の焦点)
「イスラエルが窮地に陥り、領土縮小を余儀なくされる」
年末年始にかけてパレスチナ・ガザ地区への空爆、そして陸上戦へと進めたイスラエル。強腰の姿勢を崩していないが、彼らの狙いが2月10日に行われる国会(クネセット)の総選挙であることは明らかだ。実際、戦闘開始からリヴニ外相とバラク国防相という二人の首相候補が支持率を急騰させている。他方、安保理での作業を事実上ブロックしている米国に対し、ロシアやEUなどから非難は高まる一方であり、ドイツは国連平和維持軍の派遣まで提案したとの報道がある。
しかし、米海軍の展開動向、あるいは米陸軍における内部分析レポートなどを見る限り、米国がイスラエルをあらかじめ支持していたとは全く考えられない。むしろ、連邦上院における「外交族」の大物・バイデン次期副大統領がかねてより支持していた「中東における国境変更プラン」のタネとして、オバマ政権発足早々、米国がイスラエルの梯子を外す可能性が高い。最悪の場合、制裁決議まで含む安保理決議案が採択されれば、イスラエルは窮地に陥り、領土縮小すら視野に入ってくる。その間、原油マーケットは高騰し、他方で各国に散らばる親イスラエル勢力への風当たりが強くなるであろう。
(第5の焦点)
「今年前半に衆院総選挙が行われ、麻生政権が延命する」
目先のドル高の向こう側には“よりマシなマーケット”としての日本を狙う外資勢、とりわけ欧州系のファンドや投資銀行など“越境する投資主体”による動きが目立つようになっている。この年末にかけて、ドイツ勢、その次に英国勢がそれぞれ「日本」「北東アジア」の“買い”を突然、推奨し始めた。第1の焦点で述べた米国における激変の裏番組として日本の金融マーケットが実体経済の回復を伴わない形であれ高騰局面に入る可能性の高い今春、麻生太郎首相は解散総選挙に出るはずだ。その結果、野党勢力の奮闘も空しく、自民党が勝利する。もっともこのことは一部勢力が民主党と糾合するという意味での政界再編を妨げるものではないが、大勢には変わりはないだろう。いずれにせよ、にわかに始まる「選挙相場」で日本株マーケットは活況を呈することになる。
あらゆる出来事が「想定外」の展開を見せる可能性がある。くれぐれも「バカの壁」に入り込んで、「潮目」を外した対応をしないよう心掛けたいものだ。
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