*高橋清隆さんという方の指摘です。大変興味深い内容ですので、是非、ご一読下さい。
「偽装事件という偽装報道」
近年、偽装事件が騒がれている。昨年は食品偽装事件が相次いだことから、日本漢字能力検定協会は一年を表す漢字に「偽」を挙げた。的を射た表現として各マスコミが紹介したが、わたしには事件を宣伝するマスコミ報道こそ最大の偽装行為に見える。食品偽装騒ぎの始まりは2007年1月、不二家で期限切れ牛乳の使用が発覚したことだった。マスコミの大報道により工場は操業を停止、全国の店舗は休業を余儀なくされた。事件発覚前、ゴールドマンサックス証券が不二家株を大量取得したことが有価証券報告書でわかっており、空売りで莫大な利益を上げたことが指摘されている。不二家本社のあった銀座の土地と建物は米シティーグループのものになった。
同年8月には「白い恋人」で賞味期限の改ざんが見つかり、マスコミが一斉にバッシング。これを受け、製造・販売元の石屋製菓は創業家一族が会社を明け渡し、北洋銀行の常務が社長に就任した。持ち株会社の札幌北洋ホールディングスをめぐっては2007年初め、バークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行ら8人の共同保有者が大量保有報告書を提出している。
同年10月には赤福で製造日の改ざんが見つかり、連日のニュースで悪者にされた。そのため、社長以外の創業家出身役員は退任し、会長にはゴールドマン・サックス系列の元住友銀行副頭取が就任した。それでもマスコミはまだ一族の社長が控えていることを許さず、「企業体質刷新の印象とはほど遠い」(読売新聞中部版)などと手ぬるさを批判する。
冷凍食品最大手の加ト吉は、架空売り上げと北海道加ト吉がミートホープ社の偽装ミンチを使用していたことが発覚。大きく報じられたため、上場を廃止し、提携先の日本たばこ産業(JT)が株式の49%を日清食品に譲渡する計画が浮上。1月末に毒ギョーザ事件でJTがたたかれると、日清側は全株の取得を要求した。JTがこれを認めなかったため提携は解消されたが、JTが打撃を食らうことで食品産業への外資参入の余地が広がった。日清食品の筆頭株主はスティール・パートナーズである。
そもそも食品偽装事件も、毒ギョーザ事件も、米国の農産物や食品の一層の輸入を促す布石になっている。単に中国製品への風評被害という意味だけではない。2007年10月に米国から突きつけられた『年次改革要望書』には、輸入食品の添加物審査の軽減や、残留農薬政策の修正が明記されている。いずれも「消費者保護」の観点から国際基準の採用を求めているが、要求の目的は「貿易の促進」である。わが国の安全基準のほうが厳しく、複雑だからである。
ところが新聞は、わが国の食品行政には日本農林規格(JAS)法や食品衛生法などがあり、監督官庁も農林水産省や厚生労働省などに分かれていることや、三重県の保健所がJAS法違反を見抜けなかったことなどを挙げ、縦割り行政を批判。既存の規制体系もろとも吹き飛ばすのを後押ししている。
毒ギョーザ事件報道の挙げ句に活発化したのが、消費者行政一元化の動きである。福田首相が施政方針演説で掲げたもので、消費者行政の窓口を一元化し、各省庁への「司令塔」的役割をもたせる。食品の成分をまじめに審査する厚生労働省では、米国が輸入を求める危険な食品化学物質を迅速に認可できないと考えたのだろう。ところがマスコミは「皮肉にも『消費者行政の一元化』を掲げた福田康夫首相の着眼点の正しさを裏付けた」(毎日新聞)などと称賛している。
「偽装」という言葉が使われ始めたきっかけは、2005年秋の耐震偽装事件である。マスコミは偽装物件を担当した設計士やマンション販売会社などをやり玉に挙げたが、問題の根本にある1998年の建築基準法改正の経緯に触れることはない。米国は自国製の建材を売りつけるため、仕様規定から性能規定への変更を求めてきた。検査の民間開放もその一環として始まった。ところが、マスコミはこの事態から目を背け、国内の悪者さらしに徹する。
偽装事件を大々的に取り上げたため、2007年6月20日の同法改正では、建築確認・検査の厳格化や監督の強化が盛り込まれ、建築許可が下りにくくなった。新設住宅着工戸数は激減し、昨年は40年ぶりに110万戸を下回る見通し。住宅販売会社や建設業の倒産も始まっており、アパート建築請負最大手の大東建託も収益が悪化。米大手証券のゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーとリーマンブラザーズの2社連合、米ファンドのエートスキャピタルを中心とする連合が同社株の買収に名乗り出ている。
今年に入ってから、製紙業界の「環境偽装」や溶融亜鉛メッキ鋼板の品質偽装事件が報道されている。これらの宣伝もどのみち、外資に利益をもたらすだろう。「偽装」が発覚した大手製紙メーカーの製品納入を拒否する声明を最初に出した複写機大手5社はいずれも大株主が外資だし、カルテルの排除は『年次改革要望書』のレギュラー項目である。
ニュースはいつも事件の背景にある真相を隠し、国民生活を守る秩序の一角を攻撃する。「消費者の利益」を語って外国の侵略を後押しするマスコミこそ、最大の偽装集団ではないか。マスコミを表す漢字は、毎年「偽」である。
(私のコメント)
現在の食品問題は、不思議なことに「おいしくて売れる食品会社」=「儲かっている会社」に集中して起こっている。“赤福”や“白い恋人”が好きな人は、これは何か変だと思わなければいけない。
「白い恋人」の事件も、考えてみれば、突然の出来事だった。
もし、大変人気のある名物お菓子をもつこのお菓子屋を乗っ取りたいお金持ちがいたら、どういう策略を考えるだろうか。想像してみよう。
あまり上出来なシナリオではないが、アルバイトでも潜入させて、そこに意図的に大腸菌を入れさせてから自分自身で、「この会社の製品はおかしい。問題がある。」と騒ぎ立てるのではないか。監督官庁が事件として取り上げないと今度はもっと大規模にマスコミに言うぞと恐喝するのではないか。
ところで、現実は、どうだったのか?
厚生労働省が案の定、「営業停止」という過剰反応をするのである。そして営業停止になると、罠を仕掛けられた善良な創業者は責任を感じて必ず辞任させられるのである。するとそこにどういう訳か、必ず外資の息の掛かった金融機関が乗り出してくる。そしてその会社に取締役を送り出すのである。
そしてその後、大騒ぎが収まり、「営業再開」となる。すぐにその会社の業績はV字回復をする。もともと信頼があり、売れ筋商品を持っているから当然だ。そうなるとその金融機関からきた取締役は、なぜか、その会社の株式の売却に動く。そしてその前に、創業者一族が同族経営をやっていたのが今回の事件の原因だと、最初から決まっていた結論を出し、創業者一族を追放しようとするのである。
そしてその会社の株式を売却等の方法で経営権を外国資本のものにしてしまうか、もしくは三井住友ゴールドマンサックス銀行か、ゴールドマンサックス証券が主幹事証券となってその会社の株を上場をして大儲けを企むのである。
伊勢の名物、赤福もそのパターンである。ご存じのように赤福の会長には、三井住友ゴールドマンサックスカードの役員がしっかり天下りしている。もちろん、不二家も同じである。
日本のマスコミは、ある一部の人にとっては誠に素晴らしい機関である。
一部の資本家にとってはなくてはならない友であり、頼もしき義勇軍である。