現在、アメリカのアジア戦略家たち、主に外交問題を専門とするジャパン・ハンドラーズと言われる人たちは、日本だけではなく中国を中心にそこに日本を含めて東アジア関係をどのように管理していくか、中国の東アジアにおける台頭にどのように対処していくかという問題に忙殺されている。
したがって、日本が今の段階で必要以上に東シナ海や北朝鮮の問題で近隣と事を荒立てて緊張関係を作り出すことは、アメリカのブッシュ政権を動かす国際金融財閥の連中は臨んでいない。だから、現在、日本の政界工作を行うという様子はうかがえない。
コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授が、日本語の話せる日本対策要員として、アメリカの戦略を決定する情報収集要員として比較的頻繁に日本政府関係者と対談しているが、その彼でさえも、今の安倍首相を襲った「年金問題」について、「安倍首相にとってのハリケーン・カトリーナ」になると言っている。これはハリケーン・カトリーナ(2005年)がルイジアナ州に来襲したときに、ブッシュ政権が正しい対応をとらなかったために国内で大きな批判を浴びたことで支持率が急低下したことをさしている。
<安倍首相を定期的に監視しているカーティス教授>
北朝鮮問題でも、アメリカはロシアを通してバンコ・デルタ・アジアにあった北朝鮮の秘密資金口座を何の条件も付けずに全面的に返還する決定を行った。中国が米国の思うように動いてくれなかったので、ロシアの中央銀行を通し、アメリカのニューヨーク連銀を通した中央銀行ネットワークを使って送金を行った。ここまでするほどに追いつめられたと見るべきだろう。ネオコン勢力が、一気に停滞し、対中ビジネス重視派のロバート・ゾーリック前国務副長官(ゴールドマン・サックス・インターナショナル副会長)が、次の世銀総裁に就任するのも、今の総裁のウォルフォヴィッツがネオコン的思考から中国人の世銀スタッフを外そうとしたことを、国際金融業界のメンバーが多く参加する秘密会議「ビルダーバーグ」のメンバーの不興を買ったからと言われている。
国際金融財閥としては、今の中国の好景気が続き、アメリカの多国籍企業にとって有利にサイクルを回せる限り、この中国と米国の良好な投資環境を維持していきたいと考えている。北朝鮮と事を荒立てたくないのも、アメリカが、中国を刺激しないようにするのと、元外交官:原田武夫氏などが指摘してきたようにタングステン、ウラン、金等の稀少金属の利権を狙って先んじて確保したいという狙いがあっての事だろう。 タングステンは、劣化ウランを使わずに、兵器の砲弾を製造できるということで戦略物資と目されているのだ。
そのような国際情勢を安倍総理が理解しているかどうかは分からない。
安倍首相は、反米心と親米心が複雑にない交ぜになった心理状態を持っている?首相で、一方では岡崎久彦氏をブレーンに迎えながら、一方でアメリカからは慰安婦問題でタカ派疑惑(アメリカの意向を無視しかねないコントロールしにくい人材という意味で)を持たれて睨まれている。前の森首相時代には、北朝鮮の拉致問題解決には「拉致被害者が第三国で見つかったことにして解決させればいい」という不思議な考えもあった。これは森前首相らが北朝鮮の開発利権を、日本が先んじて確保したいという裏の意図があったわけである。この森前首相の思惑を、米国在住の片岡鉄哉氏(日本永久占領の著者)はかつて「森首相らは第三東名高速を北朝鮮に作りたい」のだと皮肉ったことがある。
いずれ、国交回復して何らかの戦後補償を行わなければならないのであれば、その交渉の中で生じる政治的なうま味を自分たちの派閥で押さえておきたいという発想である。これは韓国との国交回復で当時の日本政府首脳が行ったことと同じ手法である。
また、アメリカでわざわざ慰安婦問題で日本を糾弾する決議が採択された(現地時間26日)が、これは安倍首相個人に対する攻撃と見るのが正しい。実際には、産経新聞の親米派の古森義久記者が何度も指摘しているように、裏で中国系アメリカ人の団体が、政治献金を使って民主党のマイク・ホンダ下院議員らを操っているのだろうが、その採択が行われる事自体が、アメリカが今は日本よりも中国対策に気を使っていることを意味している。米国にとって、日本の価値がますます低くなっているという現状がある。カネだけは米国債買いや低金利の形で吸い出されるのでは、「キャッシュ・ディスペンサー」:「金のなる木」と同じである。
現在、アメリカは日本の国内情勢には総じて興味がない。今夏の参院選だけでは政権が変わらないことも理解している。
このことを踏まえた上で今の日本国内における安倍政権に対する支持率急低下を見ると、これは年金や社会保険庁の問題といった国内要因に端を発しているというしかない。安倍政権では、発足早々行革担当大臣が政治資金問題で辞任、農水大臣が“自殺”:”圧殺”している。特に現職大臣の自殺は全く始めてである。
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