もし、ここに書かれていることが真実なら、戦争に負けることの情けなさを改めて日本国民は認識することができるだろう。

M資金について」

チャルマーズ・ジョンソン

M資金は、日本の戦後史の中でも極めて曖昧な話題の1つである。1970年代後半から1980年代、日本の詐欺師たちは、M資金の持つ怪しげな印象や、今も存在するとの見方を利用しては、富士製鉄、全日空、東急電鉄といった企業経営者を騙してきた。以下に紹介する論文の著者シュレイも、高野孟が『M資金:知られざる地下金融の世界』(日本経済新聞社刊)で紹介した人々と同様、M資金詐欺の虚説に騙された可能性もあることを指摘しておく。

ノーバート・A・シュレイは、エール大学ロー・スクールを首席で卒業し、ケネディおよびジョンソン政権では司法長官補佐を務めた。1962年、ミシシッピー州立大学に入学を申請した黒人学生を州当局が拒否したことから発生した暴動で軍隊が出動した際には、司法長官ロバート・ケネディの補佐役を務めていた。ロサンゼルスのヒューズ・ハバード&リード法律事務所の創設パートナーだった。

シュレイは数十人の日本人投資家を代表する弁護士として、日本政府が偽造と主張する国債還付金残高確認証を大蔵省に認めさせ、還付させる裁判を起こした人物である。『ニューヨーク・タイムズ』紙に対してシュレイは次のように語っている。「これは債券ではなく“国債還付金残高確認証”であり、政治資金に捜査の手が及ぶのを恐れた田中角栄が、自分とはゆかりのない人々の名義にするために、通常とは異なるルートで秘密裏に発行したものである」。シュレイによれば、この国債還付金残高確認証は、鈴木内閣当時の渡辺美智雄蔵相によって1982年に発行されたものだという。さらに、この詐欺事件の当事者として米国政府に訴えられる以前から、シュレイはこの件で日本政府と交渉していたと述べる。

シュレイはフロリダ州タンパの連邦裁判所で1995年1月5日に有罪判決を受けたが、その後、上訴裁判所はこれを覆した。事実や法律の詳細がまだ解明されていないため、裁判は終結していないが、米国の裁判所が戦後日本の内部工作の事実を解明する可能性は低く、かつ日本側の事情が米国の陪審員に正しく提示され、理解されることはないだろう。しかし、1947~1972年頃のM資金の存在に関する証拠は、シュレイの依頼人の発言以外にも数多く残っている。

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<自民の一人区での大敗>

注目の参議院選挙が終わった。ご存じの通り、自民党の大敗、民主党の大躍進という結果になった。参議院選挙の大事な点は、参議院議員の任期が6年と長く、大敗や大勝の結果がその後の政局に長く影響することである。自民党は、たとえ与党の立場にいたとしても3年後の参議院議員選挙でよほどの大勝(これは難しい)をしない限り、6年間という長い間参議院の運営で苦労することになる。

一方民主党は、3年後の参議院選挙で仮に単独で過半数の議席を取れなくとも他党と連立を組めば、6年間の間に衆議院選挙で勝つことによって、比較的簡単に両院を制することができる。つまり、現状のままの政党体制が維持されるなら、今後6年間の間に民主党が政権党に就く可能性が極めて大きくなったと言えるであろう。反対に自民党が野党に転落する可能性も大きくなってきた。仮に、そうなれば、政界再編に進むことになるのであろうが、この意味で今回の参議院選挙は大変重要であったと言えよう。ターニングポイントの選挙であった。

ところで、今回の選挙結果について、各種のメディアは各方面から分析をしている。これらはそれなりに面白く興味深い。現状での情報に基づいて今回の選挙を分析してみよう。

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