山口二郎教授のプログより

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9月 112007

*山口二郎教授のプログより



「自民党政治の終わり」

2007.09.03 Monday



参院選の大敗北から一か月の敗戦処理の仕方を見て、自民党の危機はいよいよ深まったことを痛感している。去年の今頃は、ポスト小泉の自民党総裁選で、安倍晋三の優位が固まり、党内の圧倒的多数が安倍政権実現の功労を競っていたものだ。日本の政治を少しでも観察した者なら、というか普通の人間観を持っている者なら、安倍が総理の器ではないことくらい一目瞭然である。にもかかわらず、安倍首相の下に圧倒的な巨大主流派が形成されたことこそ、自民党の危機である。

昔の自民党なら、これだけ選挙で大敗すれば、総裁の責任を追及する動きが起こり、権力闘争に発展していたであろう。党内で権力の移行が起これば、それが擬似的な政権交代の役割を果たし、政策転換のきっかけにもなった。そのような復元力のゆえに、自民党は半世紀も権力を維持してきたのである。しかし、今や派閥は戦闘集団の体をなしておらず、反主流に身を置いて出番を待つというような度量の大きい政治家もいない。体を張って正論を唱え、党を立て直そうという剛直の士もいない。



今回の選挙を自民党に対するお灸と捉える議論もある。そうした議論は、自民党が政権を持続することを自明の前提として、選挙における自民党敗北を、心を入れ替えてまじめにやれと国民が注意を喚起するメッセージとして意味づけるものである。

しかし、今の自民党はお灸をすえられて目覚めるだけの正気も失っているように思える。政権担当能力を持つのは自民党しかないというのは、もはや遠い昔の神話となった。やはり、疑似政権交代ではなく、本当の政権交代を起こすしか、日本政治を立て直す道はない。

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