日本という国の中で、1985年9月のプラザ合意、1989年11月のベルリンの壁の崩壊、その裏で、米中によって行われた日本封じ込めのための中国の通貨、元の大幅切り下げ、いまだにそれらの本質が理解されていないのは、あまりに残念なことである。

冷戦が存在したことによって米国によって事実上、占領されながらも、ある意味保護され、自由主義陣営のショーウインドーの中にその目玉商品として陳列された日本という国の立場が冷戦終了後、全く変わってしまったことをもっと冷徹に国民一人一人が認識すべきであろう。

中国の元は、1980~1994年の間に、何度も切り下げられ、対ドルで累計82.6%の非常に大幅な減価となった。80年にわずか1.5元だった1ドルは、94年には8.7元となった、つまり大幅なドル高・元安となったのである。対円で見ると、80年の1元=151円が94年にはわずか1元=12円となり、92.2%の減価となっている。もちろん、これは自然現象ではない。日本パッシングのための米国の意図した戦略の結果である。そして、このことが、中国経済の急成長=日本製造業の空洞化とユニクロのような産業の隆盛をもたらしたのである。

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2005年にNHKのBS-1においてBBC(英国)で2004年に制作されたドキュメンタリー番組「テロとの戦いの幻想」 The Power of Nightmares (3回シリーズ)が放送された。

http://news.bbc.co.uk/1/hi/programmes/3755686.stm

ところで、この番組の主題は「アルカイダなどという組織が体系立ってテロを実施することは有り得ない」(ただし、ネオコンとイスラミストは存在する)というユニークな視点で制作されていた。

ネオコンとイスラム原理主義は一つの点で共通しているとこの番組は言う。過ぎ去った日の理想である。現実への妥協ではなく、あくなき理想の追求、これがまた悲劇を生む。このことは、『神々の軍隊』で描かれた2・26事件の皇道派の青年将校の悲劇を考えてみればあまりにもはっきりする。彼らは原理的には、正しかったかも知れないが、魑魅魍魎の戦争期の「悪の論理」に叩きつぶされてしまった。

その点でイスラム原理主義とアメリカのネオコン派は同じなのだが、決定的に違うのはアメリカのネオコンが、「嘘でも良いから一般大衆の信じることができる大義をでっち上げろ!」=「高貴なる嘘をつくれ!」と考えていることだろう。

ところで、この考え方の主導を行ったのが、アメリカの政治哲学者のレオ・シュトラウスであった。この番組では、シュトラウスが、勧善懲悪の西部劇テレビ番組をこよなく愛好していたこと、弁護士ペリー・メイスンを愛好していたことなどを例に挙げながら、「シュトラウスは政治的なコメンタリーもほとんど一切残さなかったが、堕落したアメリカの大衆に対して、今一度“神話”を作り出す必要がある、と考えていたと主張している。

このシュトラウシアンのネオコン源流説をここまで判りやすく解説したのは今回の番組が初めてであろう。このシュトラウスの言う“神話“のことを、「高貴な嘘」という。

 もともと、「高貴な嘘」(ノーブル・ライ)という概念はプラトンの「法律」という本に書かれていたものだ。悪意で解釈すれば、「嘘も100回言えば真実だ」(ゲッペルス)ということだ。善意で解釈すれば「子供には神話を最初に教える必要がある。ある程度物が分かるようになってから科学を教えても遅くはない。それが教育的な配慮だ。」と言うものである。大衆を騙すのは権力者にとって必要悪?であるという考え方である。

残念ことだが、権力者が大衆を騙すのは、政治の世界では、いつの時代でも当たり前の話だ。だからこそ、政治家の評価はその政治家の人格を基準にするべきではなく結果としてどれだけ国や地域を豊かにしたか、それを基準とすべきだということになるのだろう。本当の事を言ってしまえば、政治というものは、結果責任がすべてなのであろう。

 要するに米国の支配者たちは、キリスト教原理主義者やネオコンにとって真理だと思えるものが、すなわち「真理」だということにしたかったということだ。もちろん、それは他の人々にとっては真理ではない、ただの妄想である。アメリカの市場原理主義もこのような「高貴な嘘」に基づいている。政治家が国民を騙すのはいつも当たり前の話であるというのが、このBBC番組のテーマでもあった。

そして、この番組はアルカイダなんて言う組織は幻想だと堂々と主張して、イギリスのドキュメンタリー賞を受賞したのである。

ところで、現在の朝鮮半島を巡る情勢、普天間基地問題、イラン経済制裁問題には、どんな高貴な嘘が隠されているのだろうか。

日本のマスコミでおそらく、一番欧米のエリートの意志を伝えているメディアは、ダイヤモンド社ではないだろうか。そこで、ダイヤモンドオンラインから、特別レポートを引用し、分析してみよう。

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