今回、橋下 徹氏が脚本・演出・主演した大阪ダブル選挙(大阪府知事、大阪市長選11月27日投票)において「大阪維新の会」が圧勝した。「大阪維新の会」、橋下氏が掲げている「大阪都構想」の今日的意味について考えてみたい。

 (まず、福島原発の汚染状況を改めて確認していただきたい。)

 焼却灰のセシウムマップ16都県の一般廃棄物焼却施設における焼却灰の放射性セシウム濃度測定結果より

16都県の一般廃棄物焼却施設における焼却灰の放射性セシウム濃度測定結果 

(環境省、2011824日)をプロットしました。 

*早川由起夫氏のブログより 

purple 紫 30,000-99,999

red        赤  10,000-29,999

orange橙        1,000-9,999

yellow                   100-999

green   緑                     30-99

water   水                       0-29       (飛灰 fly ash  , Bq/kg 

○現在、終息しない福島原発事故により東京の首都機能が危機に晒されている。そのため、郷土の大先輩である村田敬次郎先生が熱心だった「首都機能移転」を再び真剣に考えるべき時代を迎えている。その意味で「大阪都構想」、「中京都構想」に今こそ注目すべきである。 

まずは、*朝日新聞(asahi.com)2011年5月8日より

「首都機能移転論、再燃も 震災受け、揺らぐ東京集中」 

 終息の道筋が見えない原発事故に、やまぬ余震と電力不足で人々の不安は尽きない。本当に東京は大丈夫なのか――。そんな声におされ、すっかり忘れ去られていた「首都機能移転論」も再び語られ始めようとしている。

「東京の水は大丈夫ですか。息子が心配で」。福島の原発事故以降、大学受験の「駿台予備学校」(本部・東京)に親からこんな相談が相次いだ。東京校を敬遠し、大阪や京都校に振り替えた浪人生は十数人にのぼったという。

「北陸や四国の生徒が中心です。この地域は駿台の拠点がなく、ライバルを求めて東京校を選ぶ傾向がある。でも、親は安全なところで勉強に専念させたいのでしょう」(同広報部)。

 別の予備校の関係者は「東京の私大はどこも来春は志願者減になりそうだ。早慶クラスも地方受験を設けるのではないか。これまでのように東京会場オンリーとはいかない」と話す。

 「3・11」以降、東京を絶対視するような考え方が揺らぎ始めている。

  「パンを製造しているが、電力が不安定な東京では商売ができない。大阪に移りたい。資金援助はないか」。大阪府と経済団体が3月15日に設置した経営相談窓口には、こんな電話が殺到した。1日数十件のペースは落ち着いたが、「原発への不安を訴える相談は減っていない」と担当者。

 賃貸マンションのレオパレス21(東京都中野区)は「震災後の新規契約4千件のうち京阪神は2割。埼玉に次いで多いエリアです」(広報室)と明かす。

 外資系企業を中心に本社機能が移る動きが相次いだ関西からは、首都機能の移転や分散を求める声が起きている。首都直下地震への不安から、国家の危機管理こそ急務だと――。

 橋下徹・大阪府知事が「東京がダメなら大阪があると世界に発信すべきだ」と発言すると、経済界も「リスク分散を考えるべきだ」(佐藤茂雄・大阪商工会議所会頭)と応じた。

 首都移転を求める声は関西だけでない。「やはり那須は地震に強い。東北新幹線も那須塩原駅まではほぼ大丈夫だった」と訴えるのは、栃木県の経済人たちだ。同県は国から、首都移転の候補ナンバー1評価を福島県とともに受けている。那須地域はその中心部に当たる。

 今回、被害が軽微だったことから、非常時に首相官邸機能を代行する「キャンプ那須」などの構想実現を改めて国や県に求めるつもりだ。「脱原発よりもっと現実的なテーマ。我々はいつでも議論を再開させる用意がある」(中津正修・県経済同友会副代表幹事)。

 国会や政府内の空気も変わりつつあるようだ。

 菅直人首相は1日の参院予算委員会で「首都の中枢機能を代替できる地域をしっかりと考えておかなければならない」と述べた。

 超党派の「危機管理都市推進議員連盟」(会長・石井一民主党副代表)も4月中旬、「バックアップ都市建設を急ぐべきだ」として、副首都建設に向け法整備を急ぐことで一致した。

 国土交通省の首都機能移転企画課は今夏の組織再編で廃止が内定している。石井氏は同省幹部を呼び出し、こうクギを刺したという。「国会での議論もじきに再開される。廃止でなく、むしろ陣容を強化するべきだ」(中村純)

 *オーストラリアABCニュースより

Japan government prepares plan to flee Tokyo

North Asia correspondent Mark Willacy

Updated August 09, 2011 08:30:28



Updated August 09, 2011 08:30:28



Photo: Fears for the future: a stunned woman stands amongst rubble in Ishimaki city after the earthquake (Yomiuri Shimbun: Reuters)

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Japan is considering the possibility of creating a back-up capital city in case a major natural disaster, like the March 11 earthquake, strikes Tokyo.

A new panel from Japan’s Ministry of Land and Infrastructure will consider the possibility of moving some of Tokyo’s capital functions to another big city, like Osaka.

Japan is located on the junction of four tectonic plates and experiences one-fifth of the world’s strongest earthquakes and geologists have warned Tokyo is particularly vulnerable to powerful earthquakes.

It is feared if a massive earthquake like the March magnitude 9.0 quake struck Tokyo, it could destroy the country’s political and economic base.

 *朝日新聞 2011年7月28日より

「官房長官、副首都構想に前向き姿勢 研究会設立の方向」 

http://www.asahi.com/politics/update/0729/TKY201107280784.html

 枝野幸男官房長官は28日の記者会見で、東京が被災した場合に首都機能を代行する副首都の設置構想について「3月11日以降、官邸で危機管理を担当した経験から体制を改善していく必要がある」と語り、前向きな姿勢を示した。内閣官房の内閣危機管理監を中心に研究会を立ち上げる方向だ。

 副首都については超党派の議員連盟が検討を進めている。また、大阪府の橋下徹知事と東京都の石原慎太郎知事が今月1日、大阪を副首都に位置づける考えで一致した。

(引用終わり)

 

それでは、大阪、名古屋などへの首都機能を移転の背景を考えてみよう。

(1)東京というメガロポリスを支える福島や茨城というインフラが原発事故で破壊された。つまり、福島などの東北地方は、東京が経済活動するためにエネルギー(電力・石油精製)および食糧を供給する重要なインフラであったのだが、そのインフラが放射能で汚染され、機能不全に陥っている。そのため、政府は福島原発を使い済み核燃料の「中間処理場という最終処分場」にしようとしているぐらいだ。福島や茨城といったインフラの代替を、静岡県が果たせるかというとそんな代替は効かないし、静岡県には浜岡原発がある。

そうであるなら、西日本全域を、大阪という新たなメガロポリスを支えるインフラへと改変・改造する方がはるかに現実的である。中京都を補完的に使うことも可能である。

 

(2)東京は、事故が収束していない福島原発に近いので、当然、海外から東京は忌避される。

阪神大震災のとき、神戸港から港湾物流機能がアジア(台湾や上海)に「一時的に」移ると思われたが、一時的ではなく、行ったきりで帰ってくることはなかった。アジアの港湾物流は、神戸港を経由しなくなってしまったのである。

これと同様に、成田空港を経由したら被爆すると外国人は考えるので、国際線は成田空港を中抜きの可能性も出てきている。横浜港も同様だ。そうなる前に日本のプレゼンスを維持すべく、最初から関西をトランジット先にしてもらえばよい。「京都という日本ブランド」を支える都市もあるので、外国人は再び大阪・京都なら訪問してくれるはずである。

 

(3)地震の周期から考えて、やがて東京直下型地震襲ってくる危険性も高い。それまでに首都機能を移転しておかないと、大東京が機能停止することで日本が壊滅的打撃を受ける心配もある。

 

(4)首都機能を移転すれば、大規模な公共土木工事需要が生まれ、デフレギャップに悩む日本経済にとってプラスだ。

 

 ところで、橋下氏は大阪市長への当選後は大阪市を解体して大阪都に移行すると宣言している。いったい何故このような政策を橋下氏は実行しようとしているのだろうか?

その答えは、大阪維新の会が示す大阪都構想の地図にある。

         大阪都20区構想                     面積              人口                     密度
01 都島区  旭区  北区 22.68 305,562 13,473 大阪市           
02 福島区  西区
此花区  港区
33.81 300,907 8,900 大阪市
03 大正区  浪速区
中央区  住之江区
43.45 337,395 7,765 大阪市
04 天王寺区  西成区
阿倍野区
18.14 298,420 16,451 大阪市
05 西淀川区  淀川区
東淀川区
40.13 446,206 11,119 大阪市
06 東成区  城東区
鶴見区
21.13 357,371 16,913 大阪市
07 生野区  平野区 23.68 334,139 14,111 大阪市
08 住吉区  東住吉区 19.09 286,371 15,001 大阪市
09 堺区  西区 52.31 282,487 5,400 堺市
10 中区  南区 58.38 278,327 4,768 堺市
11 東区  北区  美原区 39.30 281,320 7,158 堺市
12 豊中市 36.38 389,359 10,703 特例市
13 吹田市 36.11 355,567 9,847 特例市
14 守口市 12.73 146,554 11,512  
15 八尾市 41.71 268,652 6,441 特例市
16 松原市 16.66 124,400 7,467  
17 大東市 18.27 127,203 6,962  
18 門真市 12.28 130,368 10,616  
19 摂津市 14.87 83,696 5,629  
20 東大阪市 61.81 509,632 8,313 中核市
  大阪都20区 622.92 5,643,936 9,060
  大阪都全域 1,894.31 8,862,896 4,679  




大阪都の意義は、政令指定都市の大阪市・堺市と大阪府の二重行政の弊害を取り除くことにあるとされている。全くその通りだが、同様の二重行政の弊害は京都や神戸などの政令指定都市でも発生している。

おそらく、大阪の弊害が特に問題になっているのは、首都機能の一部を大阪に移転させるに当たって、首都機能の管轄者が知事と市長の二人であるという状況は好ましくないという考え方が根底にあるためだと思われる。同様に名古屋でも中京都構想があり、名古屋にも首都機能の一部が移転されることが望ましいことは言うまでもない。

もちろん、大阪府から大阪都への移行は政府の承認が必要であり、自治体の一存では不可能である。このことは「大阪維新の会」がいずれ国政に関与せざる得ないことを意味している。 

常識的に考えて、大阪で首都機能を移転させるのに最も適した場所は、大阪駅北側の貨物駅跡地である。交通の便は非常に良いと思われる。ここに建設したオフィスビルに霞ヶ関の中央官庁の機能の一部を移転させ、首都圏大災害時の首都機能バックアップ先として空きオフィスも確保しておくのがベストである。そうであるならば、大阪都の特別区は大阪市だけを含めば良いことになる。しかし、現状では大阪都の特別区は大阪市周辺の自治体を含んだ大規模なものとなっている。東大阪市や吹田市などを特別区に再編成することにいったい何の意味があるのだろうか?

もしかすると、大阪空港跡地にも首都機能の一部を移転させる計画があるのかもしれない。大阪空港は豊中市と伊丹市の両方にまたがっている。この豊中市で市長の権限の一部を奪い知事に移転させることが空港跡地への首都機能移転に必要なのだろう。

そして、首都機能移転決定後は、大阪空港跡地の伊丹市部分が大阪都に編入されることになる。

東京・大阪の証券取引所と東京工業品取引所の合流も興味深い。これは大阪で東京の取引をバックアップするシステムであり、首都機能を大阪に部分移転することに他ならないと考えることもできる。

今後、大阪都構想が議論されることによって、「首都機能移転」も議論の俎上に上がることになると思われる。

ところで、わが愛知であるが、これからの愛知県の将来は、名古屋大都市圏と周辺地域の整合性ある発展をどう図っていくかにかかっている。

評論家の増田悦佐氏は、世界の大都市圏の経済規模という大変興味深い指標を独自に作成しているが、それによれば、世界の六大都市圏の中に、日本の大都市圏が三つも入っている。

 ダントツの一位は、東京圏、二位は、ニューヨーク圏、三位は、大阪圏、四位は、ロサンゼルス圏、五位は、ロンドン圏、そして六位が、わが名古屋圏である。また、世界一の日本のエネルギー効率は、大都市圏における人口集中と自動車に過度に依存しない鉄道網を構築してきたことにあるという彼の主張には耳を傾けるべきものがある。

 

その意味で「中京都」構想も、ハードルは高いものだが、少子高齢化社会:人口減少社会を迎えた日本にとって、誠に時代にあった政策であることは間違いない。いわゆる「国土の均衡ある発展」を目指す余裕のあった時代は、残念ながら、終わっている。

たとえば、シンガポールのような人口470万人の都市国家の一人当たりGDPが、日本を遙かに上回っている事実を考えても、日本の真ん中である名古屋大都市圏の今後の政策展開(日本の国富が海外ではなく、国内に向かっていく経済環境づくり)が日本の将来を左右することになる。

首都機能移転にあたっては、世界のトヨタがある名古屋には経済産業省の本省移転ぐらいは求めたいところである。

また、上記の文書を読んでいただけたら、すぐおわかりなるように、中京都構想の最大のネックは、あまりに近くに浜岡原発が立地していることにある。首都機能移転を視野においているなら、橋下氏が脱原発を主張しているのも当然のことである。

いずれにしても郷土の大先輩である村田敬次郎先生が唱えていた「首都機能移転」が思わぬ形で動き出したようである。

 首都機能移転論者だった村田先生と仲の良かった評論家の堺屋太一氏が橋本氏のブレインであるのも偶然だとは思えない。

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