戦争法案成立後の日本

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9月 292015

「パックスアメリカーナの時代」が黄昏時に入ったとは言え、太平洋戦争に負けた日本が米国の「特別行政自冶区」である現実には何の変わりもない。いまだに多くの日本人が日本をりっぱな独立国だとずっと勘違いしているが、また、米国の支配層はずっと勘違いしていてくれるように願ってはいるが、残念ながら現在の日本は真の独立国ではない。

 

「戦後日本という不思議の国」には、数々の神話が散りばめられ、美しい装飾が施されているが、勝者であるアメリカのマッカーサーと昭和天皇のギリギリの交渉の結果、成立した特別行政自冶区でしかないことは、間違いのないところだろう。それが徹底したリアリストであった昭和天皇が天皇制を残すためにした苦渋の決断であったのだ。そのことを豊下楢彦氏は近著「昭和天皇の戦後~<憲法・安保体制>にいたる道~」できっちりと「天皇実録」に基づいて証明している。

 その視点で見てはじめて日本の戦後史の実態が見えてくる。その意味で、今回の安保法案、いわゆる戦争法案は昭和天皇が創り出した<戦後の米国との均衡点>を明らかに逸脱している政治行為である。米国のジャパンハンドラーも、日本の為政者もおそらく戦後史の原点を忘却の彼方に押しやってしまったのである。

昭和天皇の戦後日本


ところで、「日米相互防衛援助協定(MSA協定)」というものがある。そこにはこう書かれている。

 

「各政府は,経済の安定が国際の平和及び安全保障に欠くことができないという原則と矛盾しない限り,他方の政府に対し,及びこの協定の両署名政府が各場合に合意するその他の政府に対し,援助を供与する政府が承認することがある装備,資材,役務その他の援助を,両署名政府の間で行うべき細目取極に従つて,使用に供するものとする」

 

つまり、戦後の日本は国の財政基盤が許す限り、米国の軍事行動に対して経済的に協力するということなのである。ところが国力の低下により、世界の警察官がもはや維持できなくなりつつある米国は、その取り決めを逸脱した集団自衛権の行使を今回、日本に求めてきたのである。そして、御所、天皇に向かって発砲するという前代未聞の蛮行を「蛤御門の変」で犯した長州卒族の末裔が何を勘違いしたか、米国のジャパンハンドラーの言うことを120%聞き入れてしまったのが、現在の日本である。

これはこの国の暗黙の統治機構に対するある意味、「クーデター」である。その意味でこれからは、反作用の力が大きく働いてくるのは必然である。恐らく、その反作用の動きは昭和天皇の創った均衡点へ振り子を戻すに止まらず、日本が「特別行政自冶区」でなくなる動きに繋がっていくはずである。従米で凝り固まった日本のマスコミは解説しないが、最近、ロシアのプーチンはシリアにISIS(イスラム国)対策とは思えないほどのロシア正規軍を派遣している。最終的な狙いは、ネオコン=戦争屋と表裏一体のイスラエルであろう。1948年にシオニズムに基づいて建国されたイスラエルがその後、世界の兵器需要の増加(戦争経済)にどれだけ貢献したか、冷静に考えてみれば、すぐわかることである。

中東地図 日本語



いよいよ2001年の911以降、世界をいいようにコントロールしてきた戦争屋=ネオコンがメインストリートから退場する時を迎えようとしているのかもしれない。

従米を自らの権力の源泉とする安保利権を守ろうとする日本の官僚は、傲慢にも「天皇制の下におけるアメリカンデモクラシーというこの国の在り方」を都合良く忘れてしまったのだろうか。彼らは敗戦後もこの国に天皇制が残っている理由を忘れてしまったエリート?なのである。米国による戦後教育の成果であろう。

<参考資料>

*週刊現代より

「デモ隊も見逃した「陰の主役」たち」

 

外務省の超エリート

条約局マフィアという言葉を聞かれたことがおありだろうか。外務省の超エリート・旧条約局(現国際法局)の局長経験者を中心に形成された人脈のことだ。

たとえば安保法制懇の柳井俊二座長。国家安全保障局の谷内正太郎局長。外務省一の切れ者とされる兼原信克内閣官房副長官補。安倍首相が法制局長官に起用した小松一郎氏(昨年病死)。みんな条約局長(国際法局長)経験者で、条約局マフィアの代表格と見なされている。安保法制を執拗に画策してきたのは彼らである。彼らこそ官邸の主役だと言っていいだろう。私はこれまで官僚の掌で政治家が踊る姿を何度も見てきたが、今ほど官僚が政治を思うままに動かす局面を見たことがない。先月末、河出書房新社から出た『安倍「壊憲」政権に異議あり 保守からの発言』(佐高信編著)で山崎拓元自民党副総裁がこう語っていた。

〈いまの内閣はまたぞろ官僚支配内閣になっている。自民党支配の内閣ではない。(中略)官僚が好きなようにやっているという状況が出来している〉

安倍壊憲政権に異議あり

ご承知のように山崎さんは自民党タカ派(改憲派)の有力者だった人で、防衛庁長官もつとめた安保政策の専門家だ。

山崎さんは、安倍首相には集団的自衛権の行使を政治的実績にするという目論見があり、それに官僚が従って法制化した――という部分ももちろんあるのだがと断って、こうつづける。

〈むしろこの機会にとにかく自衛隊を海外へ外交のツールとして展開させたいという、外務官僚の宿願が安保法制を推し進めるようになってきた。これは大変危険な事態です。もちろん集団的自衛権の問題ではあるのですが、集団安全保障のほうに官僚たちの宿願があるわけで、積極的平和主義という名のもとにそれをやろうとしている〉

山崎さんの言う外務官僚とは即ち条約局マフィアのことだろう。ちなみに集団安保とは、国連決議に基づいて侵略国を叩く措置だ。同じ武力行使でも「守る」ことを目的とする集団的自衛権とはまるで次元が違う。

 

彼らが集団安保に拘る理由

条約局マフィアが集団安保にそこまで拘る理由は何か。山崎さんによればこういうことだ。日本は今までODA(政府開発援助)で外交をしてきた。だが、1998年に1兆円をはるかに超えていたODA予算が、今はその4割しかない。一方、アフリカや発展途上国へのODA支援では中国の力が強い。人海戦術もあって支援が厚いので日本は対抗できなくなっている。また中国の軍事力膨張に対しASEAN10(東南アジア諸国連合10ヵ国)が怯えてきている状況もある。

そこで我が国も自衛隊という軍事力を外交のツールとして駆使したいということです。これは外務官僚の意志であり、同時にアメリカの要請でもあります。世界の警察官としてふるまってきたアメリカは、軍備が老朽化して、軍事費も減らして足元が弱っている。そこでアメリカは警察犬が欲しいということで、日本という警察犬を引きまわそうとしている

山崎さんの解説には説得力がある。彼は(1)安倍首相の目論見(2)外務官僚の意志(3)米国の要請――という3つの視点から法案を分析している。そのうえで実は「軍事力を外交のツールとして駆使」するための集団安保こそ条約局マフィアの狙いなんだよと重大な警告を発している。では、彼らはどうやって宿願を果たしたのか。その手口の一端を朝日新聞が連載「検証集団的自衛権」で書いている。

 

昨年5月の会見で首相は外務省が求める集団安保への参加を否定し「湾岸戦争やイラクでの戦闘に参加することは、これからも決してない」と明言した。

集団安保まで認めるのは「憲法の論理として無理」との意見が礒崎陽輔首相補佐官(国家安全保障担当・総務省出身)らを中心に政府内で強かったからだ。

ところが外務官僚は諦めなかった。集団的自衛権をめぐる与党協議にこっそり集団安保を潜り込ませようと画策した。たとえば議論の叩き台となる事例集。ホルムズ海峡の機雷除去のケースではイラストに米国旗とともに国連旗を並べた。

二つの旗から自衛艦に矢印がのび「機雷掃海活動への参加要請」と記されていた。米国を守るための機雷除去は集団的自衛権だが、国連から要請されると集団安保になる。それを見て集団安保推進派の「ヒゲの隊長」こと佐藤正久参院議員は外務省の仕掛けに気づき、ニヤリとしたという。事例集作成の中心になったのは条約局マフィアの兼原信克副長官補だった。朝日は外務省の狙いを〈1991年の湾岸戦争で国際社会から「カネだけ出した」と批判されて以来、自衛隊の活動範囲を広げて「外交カード」を増やしたい考えがあった〉と説明している。

画策はさらにつづく。

その後の与党協議で配られた「高村(自民党副総裁)試案」では従来の「自衛権発動の3要件」が「武力行使の3要件」に変わった。自衛権を逸脱する集団安保を加える含みを持たせたのである。それと並行して首相の国会答弁も軌道修正された。

決戦場となったのは616日の自民側と政府側の会議だった。集団安保をめぐって推進派と慎重派の意見が対立した。その議論にじっと耳を傾けていた高村正彦副総裁は最終的に推進派に軍配を上げた。朝日はこう締めくくっている。

〈反発する公明党に配慮し、閣議決定文に「集団安全保障」の文字は書き込まれなかった。しかし、国家安全保障局が作った想定問答には、武力行使の3要件を満たせば、「憲法上許容される」と記された。/密室で繰り広げられた集団安保をめぐる暗闘。外務省の悲願であった武力行使への道が開けた〉

法案採決を目前にして私は自衛隊員の心情を思う。外務官僚の「カード」や「ツール」にされてしまったら、彼らの浮かぶ瀬はどこにあるのだろうかと。(引用終わり)

CNNより

「ロシア、シリアで空爆準備か ISISとは別の標的も」

2015.09.29

ワシントン(CNN)シリアで軍備増強の動きを見せているロシアが、近く空爆に踏み切るとの観測が強まっている。シリアでは米軍率いる有志連合も過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」に対する空爆を行っているが、米当局者によれば、ロシアの空爆ではISIS以外の標的が狙われる可能性もある。

2人の米当局者によると、ロシアは27日にかけ、シリアで空爆開始に向けた動きを見せた。同国は公にはISISを標的に据える。しかしロシア軍の動きを見る限り、空爆の狙いは別の所にある様子がうかがえるという。

米国防当局者は先に、ロシアの動きはシリアのアサド政権崩壊に備えて、その後の影響力確保を狙ったものとの分析を示していた。一方、シリアの同盟国であるロシアが、アサド政権支援に乗り出せるよう態勢を整えているとの見方もある。米国はアサド大統領の退陣を要求している。

米情報当局によると、ロシアの港で多段式ロケット発射システムの発射台と思われる物体が確認された。これがシリア行きの船に積み込まれる可能性もある。さらに、少数の長距離爆撃機がロシア南部の飛行場に移動していることも判明。これでシリアに対する長距離爆撃が可能になるという。

プーチンとオバマ

シリアのハマーには、ロシアとの連携のための拠点が設置されたが、用途は分かっていない。南西部のイドリブやハマー、ラタキアにはロシアの偵察用無人機が送り込まれた。しかしいずれもISISの拠点からは離れている。米政府は、ロシアがいつ空爆に踏み切ってもおかしくない状況と見て警戒を強めている。オバマ米大統領は28日に開かれるロシアのプーチン大統領との首脳会談で、ロシアの意図について説明を求める見通し。(引用終わり)

*田中宇氏の国際ニュース解説より

 

「ロシア主導の国連軍が米国製テロ組織を退治する?」

2015年9月24日  田中 宇

 

 9月28日、国連総会で、ロシアのプーチン大統領の演説が予定されている。この演説でプーチンは、シリアとイラクで拡大している「イスラム国(ISIS)」やアルカイダ系の「アルヌスラ戦線」など、スンニ派イスラム教徒のテロ組織を掃討する国際軍を編成することを提案する予定と報じられている。

 ロシアはすでに、8月末からシリアの地中海岸のラタキア周辺に2千人規模の自国軍を派遣し、ラタキアの飛行場を拡大し、迎撃ミサイルを配備して、ロシアの戦闘機や輸送機が離発着できるようにしている。ラタキアには冷戦時代から、ロシア海軍の基地が置かれている。ロシア軍のシリア派遣は、ISISに負けそうになっているアサド大統領のシリア政府軍をテコ入れするためで、アサド政権はロシアの派兵を歓迎している。

 

国連総会でのプーチンの提案は、シリアに派遣されているロシア軍に国連軍としての資格を付与するとともに、ロシア以外の諸国がロシアと同様の立場(親アサド)でシリアに派兵したり補給支援し、国連の多国籍軍としてISISやアルヌスラを退治する戦争を開始することを、国連安保理で決議しようとするものだ。ロシアは現在、輪番制になっている安保理の議長国であり、根回しがやりやすい。毎年9月に行われている国連総会へのプーチンの出席は10年ぶりで、プーチンがこの提案を重視していることがうかがえる。

 プーチンの提案は、安保理で可決されない可能性も高い。米国は以前から、ISISの掃討を目標として掲げる一方で、アサド政権の転覆も目標としてきた。アサド政権のシリア政府軍によるISISとの戦いを支援することでISISを掃討しようとするプーチン案は、アサド政権を強化することであり、米国にとって受け入れがたい。米国が安保理で拒否権を発動し、プーチンの提案を葬り去る可能性がある。この件を分析した記事の中には、米国が拒否権を発動するため、プーチンは国連総会に3日間出席する予定を1日に短縮し、怒って早々に帰国するだろうと予測するものもある。

 とはいえ、米国がこの件で必ず拒否権を発動するとは限らない。私が見るところ、米国が反対(拒否権発動)でなく棄権し、プーチンの提案が安保理で可決される可能性が日に日に高まっている。米国のケリー国務長官は、数日前まで、ロシアのシリア派兵を、アサドの延命に手を貸していると批判していたが、9月22日に態度を転換し、ロシアのシリア派兵はISISと戦う米軍を支援する意味で歓迎だと言い出した。米国は依然、アサド打倒を目標として掲げるが、当面、ISISが掃討されるまでは、ロシアがアサドを支援してISISを退治することを容認しよう、というのがケリーら米政府の新たな態度になっている。事態は流動的だ。米政府は、プーチン提案への賛否について、まだ何も表明していない。

 ISISは、イラク駐留中の米軍によって涵養されたテロ組織だ。米軍は、ISISを空爆する作戦をやりつつも、ISISの拠点だとわかっている場所への空爆を控えたり、イラク軍と戦うISISに米軍機が武器や食料を投下してやったりして、戦うふりをしてISISを強化してきた。米軍は、露軍の駐留に猛反対しても不思議でない。

 

 しかし最近、露軍駐留に対する米軍内の意見が「歓迎」の方向になっている。露軍が空爆するなら、米軍がISISを空爆する(ふりをする)必要がなくなって良いし、露軍がISISとの戦いで苦戦するほど、ソ連崩壊の一因となった1980年代のソ連軍のアフガニスタン占領と同様の重荷をロシアに背負わせ、プーチンのロシアが自滅していく流れになるので歓迎だ、という理由だ。国務省も国防総省も、ロシアにやらせてみたら良いじゃないかという姿勢で、米国がプーチン提案に反対しない可能性も高いと考えられる。

 国連安保理でプーチンの提案が可決されると、それは戦後の国連の創設以来の大転換となる。国連を創設した米国は、もともと米英仏と露中が安保理常任理事国として並び立つ「多極型」の国際秩序を戦後の覇権体制として考えていたが、国連創設後間もなく冷戦が激化し、米英仏と露中が対決して安保理は何も決められない状態になった。安保理で重要な提案をするのは米国だけで、露中は自分たちの利益に反しない場合だけ賛成し、利益に反するときは反対(拒否権発動)する受動的な態度を続けた。

 冷戦終結後も、この態勢が続いたが、01年の911事件後、米国の世界戦略はどんどん好戦的、過激になり、一線を越えて頓珍漢な水準にまで達している。

たとえばシリアに関して米国は、存在しない架空の「穏健派イスラム教スンニ派武装勢力」を支援してISISとシリア政府軍との2正面内戦を戦わせる策をとっている。昨年来、穏健派勢力が存在せず架空であることが露呈すると、米議会は、5億ドルという巨額資金をかけて穏健派勢力を募集して軍事訓練する法律を作って施行したが、集まった穏健派は数十人しかおらず、彼ら(第30部隊)もシリアに入国したらすぐアルヌスラに武器を奪われてしまった。上記の件は以前の記事に書いたが、その後シリアに入国した第2派の第30部隊は、入国直後にアルヌスラにすすんで投降し、米国からもらったばかりの新しい武器も全部渡してしまった。彼らの中の司令官は「米国製の武器を得るため、最初から寝返るつもりで米国の募集に応じた」と言っている。米国の対シリア戦略は完全に破綻している。

 

 米国がこんな無能ないし茶番な策を延々と続けている以上、中東はいつまでも混乱し、何百万人もの難民が発生し、彼らの一部が欧州に押し寄せる事態が続く。このままだと、ISISがアサド政権を倒してシリア全土を乗っ取り、シリアとイラクの一部が、リビアのような無政府状態の恒久内戦に陥りかねない。米国に任せておけないと考えたプーチンのロシアが、シリア政府軍を支援してISISを倒すため、ラタキアの露軍基地を強化して駐留してきたことは、中東の安定に寄与する「良いこと」である。加えてプーチンが、自国軍だけでなく国連軍を組織してISISと戦うことを国連で提案することは、国連の創設以来初めて、ロシア(というより米国以外の国)が、自国の国益を越えた、世界の安定や平和に寄与する方向で、国連軍の組織を提案したものであり、画期的だ。

 シリアではすでにイランが、アサド政権を支援しつつISISと戦っている。ロシアはイランと協調してシリアに進出した。イランは、イラクの政府軍やシーア派民兵、レバノンのシーア派民兵(ヒズボラ)を支援してISISと戦っているが、その担当責任者であるスレイマニ司令官(Qasem Soleimani)が7月にロシアを訪問してプーチンらと会い、シリアでの露イランの協調について話し合っている。米軍筋は、7月のスレイマニ訪露が、ロシアのラタキア進駐にとってとても大事な会合だったと分析している。

 ロシアはその後、米議会がイランとの核協約を阻止できないことが確定的になった8月下旬まで待って、ラタキア進駐を開始した。米議会がイラン協約を阻止し、米国がイランを許さない状態のまま、ロシアがイランを助けることになるラタキア進駐を挙行すると、米国のタカ派にロシアを攻撃する口実を与えることになるので、ロシアは8月末まで待った。

 露軍のラタキア進駐に関して、イランも米国も、事前に察知していなかったと政府が言っているが、両方とも大ウソだ。シリアの外相は、ロシアとイランは軍事的に密接に協調しつつ、シリアを守っていると述べている。ロシアはラタキアがある地中海岸を中心にISISと戦い、イランはシリアの首都ダマスカスや、傘下のヒズボラが守るレバノン国境沿いに展開して戦っており、地域的な分担もできている。

 また、米国のケリー国務長官は、今春から何度もロシアを訪問してシリア問題について話し合っており、ロシアがシリアの内戦終結やISIS退治に貢献することを前から支持している。米国が露軍の進駐計画を事前に知らなかったはずはない。8月末時点で、ロシアはシリア進駐を事前に米政府に通告したと指摘されている。そもそも、露軍のシリア進駐を先に望んだのは、国内の軍産複合体との暗闘で苦戦していたオバマの方だ。 オバマはISISの掃討を望んだが、彼の命令で動くはずの米軍は勝手にこっそりISISを支援し続けていた。自国軍に頼れないオバマは、ロシアに頼るしかなかった。米国がイラン制裁を解くことが、オバマの要請に対するプーチンの条件だったのだろう。オバマがイランとの核協約を急ぎ、軍産に牛耳られた米議会がそれを阻止しようとしたのも、ロシア主導のシリア(中東)安定策を実現するか阻止するかの米国内の政争だったことになる。オバマのこれまでの動きからみて、米国はプーチン提案に拒否権を発動しないのでないかというのが私の見立てだ。

 

米軍(軍産)は、いまだにISISを支援している。露軍がラタキアに進駐を開始した後、ISISの軍勢が露軍基地を襲撃し、露軍の海兵隊と戦闘になった。ロシアのメディアによると、露軍が殺したISIS兵士の遺体を確認したところ、露軍基地を空撮した精密な衛星写真を持っていたという。このような精密写真をISISに提供しうるのは米軍、NATO軍、もしくはイスラエル軍しかいない。軍産がいまだにISISを支援していることが見てとれる。

 ISISがシリア政府軍の攻撃を事前に把握したり、政府軍の拠点を襲撃しやすいよう、米軍がISISに精密な衛星写真をリアルタイムで供給してきたことを、ロシアは以前から知っていた。これに対抗し、ロシアが衛星写真をリアルタイムでシリア政府軍に供給することが、露軍のシリア進駐の目的の一つだったことは、以前の記事に書いた。

 ISISをめぐる軍産との暗闘で、オバマは最近、自分の政権でISIS掃討の外交面の責任者だった元米軍司令官のジョン・アレン(John Allen)の辞任を決めた。昨年秋、アレンをISIS掃討担当にしたのは表向きオバマ自身だったが、アレンはISISをこっそり支援する米軍の「ペトラウス派」の一員で、シリアの穏健派武装勢力を強化するために安全地帯(飛行禁止区域)をシリア国内に作ること(穏健派などいないので実際はISISを強化する安全地帯になる。もともとトルコの発案)を提案したり、ISISと戦うため米軍の地上軍をシリアに派遣す(イラク侵攻と同様の占領の泥沼にはまる)べきだと提唱したりしてきた。いずれの案も、しつこく提案したがオバマに却下されている。

 ペトラウス派とは、元米軍司令官、元CIA長官のデビッド・ペトラウスを頭目とする派閥で、米軍内でこっそりISISを支援する勢力だ。ペトラウス自身、シリアに(ISISが強くなれる)飛行禁止区域を作るべきだと言い続けている。だが、上記のジョン・アレンの辞任は、オバマ政権に対するペトラウス派の影響力の終わりを意味すると指摘されている。オバマは、ペトラウス派を追い出すことで、軍産がISISを支援できないようにして、ロシアをこっそり支援している。

 ペトラウス派やトルコ政府が飛行禁止区域を作りたがったシリアのトルコ国境沿いの地域では今、クルド軍(YPG)がISISを追い出している。ISISは従来、トルコとシリアを自由に行き来することで、トルコの諜報機関から補給を受けて力を維持していたが、両国間の越境ルートは一つをのぞいてすべてクルド軍が押さえ、クルド軍は最後の一つ(Jarabulus)を攻略しようとしている。事態は、ISISの敗北、トルコの窮地、クルドの勝利に向かっている。クルド人が対トルコ国境に自治区(事実上の独立国)を作ることは、アサド政権も認めている。

 トルコの権力者エルドアン大統領は先日、モスクワを訪問し、シリア問題についてプーチンと会談した。エルドアンの訪露は、シリアに対するロシアの影響力の急伸を意味している。米国が安保理で拒否権を発動してシリアに駐留したロシアが孤立するなら、エルドアンが急いで訪露する必要はない。

 もう一人、エルドアンと前後して急いで訪露した権力者がいた。イスラエルのネタニヤフ首相だ。イスラエルは、以前からゴラン高原越しにシリアを砲撃しており、今後も攻撃を続けるとロシアに伝え、相互の戦闘にならないよう連絡網を設けるためにネタニヤフが9月21日に日帰りで訪露してプーチンと3時間会談したと報じられている。だが、その手の話だけなら、首相と大統領の会談でなく、国防相や実務者の会議でいいはずだ。

 オバマの米国が中東で傍観の姿勢を強め、米国の黙認を受けてロシアがシリアに駐留し、イスラエルの仇敵であるイランに味方してアサドをテコ入れし、軍産が涵養したISISを潰そうとしている。ロシアを後見人として、中東におけるイランの影響力が拡大している。ネタニヤフは、プーチンに「イスラエルの安全を守る気はあるのか」と尋ねたに違いない。プーチンは「イスラエルの懸念は理解できる。シリア(やイラン、ヒズボラ)がイスラエルを攻撃することはない」と答えた。ネタニヤフがアサド政権の継続やISISとアルカイダの掃討を容認するなら、ロシアはイランやヒズボラやアサドがイスラエルを攻撃させないよう監視するという密約が結ばれた(もしくは再確認された)のでないかと考えられる。

 ロシアとイスラエルは、シリアでの活動を相互に報告して協力する協議会を設置した。この協議会には、ロシアと並んでシリアで活動するイラン軍の司令官も出席するかもしれない。ISISなどテロ組織が掃討された後、この協議会は、ロシアがイスラエルとイラン、シリア、ヒズボラとの停戦(和解)を仲裁する機関になりうる。イスラエルにとって、自国の安全を維持してくれる国が、米国からロシアにすり替わりつつある。

 

国連安保理で、プーチンの提案に対して米国が拒否権を発動した場合、ロシアは孤独な闘いを強いられそうだが、実はそうでない。露軍のシリア進駐は、コーカサス、中央アジア諸国から中国(新疆ウイグル自治区)にかけての地域でISISやアルカイダがはびこることを防ぐための「テロ戦争」として行われている。ロシア軍は「CSTO軍」としてシリアに駐留している。CSTOは、ロシア、中央アジア(カザフスタン、キルギス、タジキスタン)、ベラルーシ、アルメニアという旧ソ連諸国で構成される軍事同盟体だ。

 

 CSTOの兄弟組織として、CSTOに中国を加えたような構成になっているSCO(上海協力機構)がある。中国の新疆ウイグル自治区からは、数百人のウイグル人が、タイやトルコを経由してシリアに入り、イスラム戦士(テロリスト)としてISISに参加している。トルコ国境近くのシリア国内で、ISISが占領して村人を追い出した村(Jisr-al Shagour)に、ウイグル人を集めて住まわせる計画をISISが進めていると報じられている。この計画が進展すると、中国の新疆ウイグル自治区で、イスラム戦士をこっそり募集する動きが強まる。中国政府は、シリア政府が望むなら、この計画を潰すためにロシア主導のISIS退治に軍事的に参加することを検討すると表明している。

 

(上記の、シリアにISISのウイグル村を作る計画の黒幕は、以前からウイグルの独立運動をこっそり支援してきたトルコの諜報機関だと、イスラエルのメディアが報じている。トルコの諜報機関は、8月にタイのバンコクで起きたヒンドゥ寺院(廟)の爆破テロの実行犯を支援していた疑いもある。トルコのAKP政権は、ISISとの戦いでクルド人が伸張して与党の座をずり落ちかけているので、政権維持のために意図的に混乱を醸成している)

 ロシアだけでなく中国もISIS掃討戦に参加するとなると、これは上海機構のテロ戦争である(もともと上海機構は911後、中国と中央アジアのテロ対策組織として作られた)。中露はBRICSの主導役でもあるので、BRICS(中露印伯南ア)も、このテロ戦争を支持しそうだ。中国が主導する発展途上国の集団「G77」(134カ国)も賛成だろう。G7以外の多くの国が、プーチン提案を支持することになる。

 

ロシア軍のシリア進駐に対しては、欧州諸国も支持し始めている。ドイツのメルケル首相やショイブレ財務相が賛意を表明したし、オーストリアの外相はイランを訪問し、シリアの内戦終結のための交渉にアサド政権も入れてやるべきだと表明した。これらの発言の背景に、シリアに対するこれまでの米国主導の戦略が、200万人のシリア人が難民となり、その一部が欧州に押し寄せるという失敗の状況を生んでおり、好戦的で非現実的な米国でなく、中東の安定を模索する現実的なロシアと組んで、シリア危機の解決に取り組む方が良いという現実がある。欧州は、ISIS掃討に関するプーチンの提案に賛成だろう。

 ロシアは、シリアに軍事駐留するだけでなく、テロリストをのぞくシリアの各派とアサド政権をモスクワに集め、内戦の終結をめざす外交交渉も以前から仲裁している。プーチンは、シリアの内戦を解決したら、次はリビアの内戦終結も手がけるつもりかもしれない。その布石なのか、プーチンは今年、リビアの隣国であるエジプトの(元)軍事政権と仲良くしている。すでに書いたように、ロシアはイスラエルとイランの和解も仲裁し得る。先日は、パレスチナのアッバース大統領もモスクワを訪問しており、イスラエルがその気なら、パレスチナ問題もロシアに仲裁を頼める。

 

 これらのロシアの動きの脇には、経済面中心の伴侶として中国がいる。シリアをめぐるプーチンの国連での提案は、世界が米国覇権体制から多極型覇権体制へと転換していく大きな一つのきっかけとして重要だ。プーチンの提案に対し、米国が拒否権を発動したら多極型への転換がゆっくり進み、発動しなければ早く進む。どちらの場合でも、米国がロシアと立ち並ぶかたちでシリア内戦の解決やISIS退治を進めていくことはないだろう。米国が入ってくると、流れの全体が米国流の過激で好戦的な、失敗する方向に引っ張られる。国内で軍産と暗闘するオバマは、そんな自国の状況をよく知っているはずだ。オバマは、米国を健全な覇権国に戻すのをあきらめ、世界を多極型に転換させることで、世界を安定させようとしている。

 

露中やBRICSにEUが加わり、イスラエルまでがロシアにすり寄って、中東の問題を解決していこうとしている。米国は傍観している。そんな中で日本は、軍隊(自衛隊)をこれまでより自由に海外派兵できるようにした。安倍政権や官僚機構としては、対米従属を強化するため、米国が望む海外派兵の自由化を進めたつもりだろう。しかし、この日本の動きを、世界を多極型に転換していくプーチンのシリア提案と重ねて見ると、全く違う構図が見えてくる。

 


 プーチンが日本に言いそうなことは「せっかく自由に海外派兵して戦闘できるようにしたのだから、日本の自衛隊もシリアに進駐してISISと戦ってくれよ。南スーダンも良いけど、戦闘でなく建設工事が中心だろ。勧善懲悪のテロリスト退治の方が、自衛隊の国際イメージアップになるぞ。昨年、貴国のジャーナリストが無惨に殺されて大騒ぎしてたよね。仇討ちしたいだろ?。ラタキアの滑走路と港を貸してやるよ。日本に派兵を頼みたいってオバマ君に言ったら、そりゃいいねって賛成してたよ。単独派兵が重荷なら、日本と中国と韓国で合同軍を組むとかどう?」といったところか。

 この手のお招きに対し、以前なら「米国にいただいた平和憲法がございますので、残念ながら海外での戦闘に参加できません」とお断りできたのだが、官僚と安倍の努力の結果、それはもうできなくなった。対米従属を強化するはずの安倍政権の海外派兵策は、米国が傍観する中、ロシアや中国に招かれて多極化に貢献する策になろうとしている。今後、世界が多極化するほど、この傾向が強まる。8月の記事「インド洋を隠然と制する中国」の末尾でも、このことを指摘した。


 

 ISISは、米国が涵養した組織だ。ロシアは、ISISと戦う義理がない。それなのにロシアはISISとの戦いを買って出ている。軍港ラタキアの保持とか、シリアや中東を傘下に入れる地政学的な野心とか、ロシアには国際的な強欲さもあるが、シリアに進軍してISISと戦うリスクは、それらの利得を上回っている。シリア人の多くは今、アサド政権を支持しており、ロシアがアサド政権を支援することを歓迎している。ロシアは世界の平和と安定に貢献している。えらいと思う。

 

 反戦派の人々は「戦争をする人に、えらい人などいない。戦争反対。おまえは好戦派だ」と言うだろう。しかし、中東の多くの人々は、リスクをかけてラタキアに進軍してISISと戦い始めたロシアに感謝している。そもそも日本国憲法は、対米従属の国是を暗黙の前提にしている。米国の覇権が衰退している今、護憲派はこの点をもっと議論しないとダメだ。自衛隊がラタキアに行くべきだとは思わないが、ロシアには敬意を表するべきだ。(引用終わり)


9月 092015

今から5年前の20108月のお盆前、書店で手にしてほとんど立ち読みしてしまった本がある。広瀬 隆氏の「原子炉時限爆弾~大地震におびえる日本列島~」という本である。熱心な広瀬氏の読者ではなかったが、ロスチャイルド家を分析した「赤い楯」、「億万長者はハリウッドを殺す」等の本はもちろん、読んでいた。彼の提供する視点は、大変興味深いものであった。しかし、所詮、私にとってはあまりにも遠い話にしか感じることができなかったのも事実だ。だから、その時も日本という地震列島に設置された原発は時限爆弾のように危険なものだという、広瀬氏の警告を時代の空気に染まり、弛緩しきった私の脳髄は、真剣に受け止めることができなかった。そして、2011311日、東日本大震災が起こり、広瀬氏が警告した通りに日本の原発が大事故を起こしたのであった。

 その意味で、今回、彼が集大成として出版した「東京が壊滅する日~フクシマと日本の運命」という本は真剣に受け止めざるを得ないものだ。2011年以降、数十冊の原発、原子力関係の本を読んだが、政府、東京電力の発表には、あまりにも嘘が多いことは間違いないところだ。おそらく、日本のトップ官僚は、2500年前の論語を読むエリート感覚で「民これに由らしめるべし これ知らしめるべからず。」、と考えているのだろう。

もう一つ、私たちが知ってくべき事は、参考資料を英文で添付しておくが、20113月下旬、首相官邸は「首都圏3千万人避難計画」を本気で検討していたという事実である。そして現在もオリンピック騒ぎに隠されているが、フクシマ第一に関して根本的な対策は実際には、何一つされていないことも私たちは決して忘れてはならないだろう。

 その意味で一人一人が真摯に受け止めるべき本である。

*ダイヤモンドオンラインよりhttp://diamond.jp/articles/-/76417

タイムリミットは1年しかない!
戦後70年の「不都合な真実」とは?
――広瀬隆×坪井賢一(ダイヤモンド社論説委員)対談


『原子炉時限爆弾』で、福島第一原発事故を半年前に予言した、ノンフィクション作家の広瀬隆氏。
このたび、壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が第4刷となった。一般書店だけでなく、Amazon.co.jpの総合ランキングでも上位にランクインし、全国的に大きな話題となっている。新著で「タイムリミットはあと1年しかない」と、身の毛もよだつ予言をした著者が、原発問題に詳しいダイヤモンド社論説委員の坪井賢一と対談。
戦後70年の終戦記念日に緊急警告する!

広瀬 隆

広瀬 隆1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。

 

「戦後70年の不都合な真実」と安倍晋三の系図

 

広瀬 今日は2015815日ですので、みなさんは「終戦記念日」だとしか思っていませんよね。もしかしたら、「終戦記念日」ということすら忘れている人がいるかもしれません。1945814日――日本がこの日にポツダム宣言の受諾を連合国に伝えて無条件降伏し、815日が終戦記念日となりました。でも、これは日本人の記念日です。アメリカ・ヨーロッパの軍需財閥にとって、815日は格別深い意味を持つ日ではなかったのです。

坪井 それはどういうことですか。

 

広瀬 アメリカを中心とする軍需ビジネスは第2次世界大戦によって工場が肥大化した分だけ、戦後もそれを維持しなければならなかったので、一日も休みなく作業を続ける必要がありました。戦前から続いていた「核兵器開発」はここで終わったわけではなく、広島・長崎への原爆投下は、単なるプロローグにすぎなかったのです。歴史を1945815日の終戦で区切ると、われわれが目撃している彼らの事業の正体を見失うことになります。2次世界大戦後こそが、彼らの稼ぎ時だったのです。このあたりはほとんどの読者の方がご存じないでしょう。ですからあえて今回、具体的な固有名詞や実名企業をあげ、原爆開発から原子力発電へと“華麗な転身”をとげ、放射能の安全論を広めてきたIAEA(国際原子力機関)やICRP(国際放射線防護委員会)が戦前から戦後、どういうことをやってきたかを書きました。その本が『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』です。

東京が壊滅する日

坪井 オビには「戦後70年の不都合な真実」とありますね。

 

広瀬 正直個人的にはあまり好きなフレーズではないのですが、事前に原稿を読んでもらった編集者からも「これはまさに不都合な真実ですね」という声があがっていました。確かに、本書の内容は、政治家や役人、実業家にとって「不都合な真実」でしょう。この本を読むと、なぜ安倍晋三が、この2年で1ワットの電力も生んでいない原発をあえて再稼働させるのか。そのカラクリがわかります。ぜひ、本書にある「長州藩の歴代犯罪の系譜」の安倍晋三の系図を見ていただきたいですね。

 

「トリチウム」はなぜ怖いか

 

坪井今日、まずお聞きしたいのは、フクシマ原発から出た放射性物質トリチウム(三重水素)についてです。本連載第4回「フクシマ原発からの放射能漏洩はトテツモナイ量に!全く報道されない『トリチウム』の危険性」が82日(日)だけで45万ページビュー(サイトの閲覧数)を記録したそうです。すごい数字です。

 

広瀬読者の感度が相当鋭く、またテレビと新聞がいかに重大なことを伝えていないかということでしょう。トリチウムの問題は、日本のマスメディアでほとんど触れられていない危険性なので書きました。実は、「トリチウム問題」は現在、日本中の原発から使用済み核燃料を集めてきた青森県の六ヶ所村で最大の問題となっています。

六ヶ所再処理工場では、20062008年におこなわれた試験的な再処理(アクティブ試験)で、海洋放出廃液のトリチウムの最高濃度が、実に「17000万ベクレル/リットル」だったのです。これは、フクシマ原発事故現場のトリチウム放出規制値である「1500ベクレル/リットル以下」の11万倍ですよ。だから下流域の岩手県三陸海岸近くの住民は、「総量規制をしろ。規制できない再処理を断念しろ」と要求しているのです。このトリチウムが、千葉県まで流れてきます。原子力規制委員会委員の田中俊一委員長と田中知(さとる)委員は「トリチウムを海に流してしまえ」という趣旨のことを言っていますが、トンデモナイことです。

 

坪井トリチウムは、水素が中性子を捕えて「トリチウム水」として存在するんですよね。崩壊してヘリウムになるときに放射線(ベータ線)を出します。フクシマ原発を起源とするトリチウムはどのくらいの量になるのでしょうか。

 

広瀬フクシマ原発から出たトリチウムの放出総量はまったく明らかにされていません。しかし、汚染水タンクに大量に入っているのは確かです。特に深刻なのは、福島第一原発4号機の燃料プールです。東京電力は積極的に情報開示すべきですが、こちらについても、まだまったく分らないことだらけで、東電の発表は信用できません。

 

「ホールボディーカウンター」ではベータ線は検出できない

 

坪井フクシマ原発事故直後に、ダイヤモンドオンラインで関連する記事を十数本書きましたが、2011616日付の記事で、IAEA(国際原子力機関)が2006年に発表したレポートを紹介しました。その中にチェルノブイリ原発事故で放出された核種と放出量のリストが掲載されています。この一覧表を見ても、トリチウムは記されていません。つまりIAEAもノーマークでした。水の状態なのでよくわからなかったのでしょうか。

 

広瀬そうでしたか。水として存在するので、実際には化学的に正確な放射能測定は不能です。一般には「トリチウム?初耳だ」という人がほとんどでしょう。トリチウムはヘリウムになるまでに、ベータ線を出します。しかもトリチウム水として、普通の水と同じように体内の細胞や血液に入るので、体内のあらゆる組織にこのベータ線が作用することになります。人体の中に蓄積された放射性物質の量は、現在では「ホールボディーカウンター」と呼ばれる全身測定器で測れます。これは体内の“量の変化”を知るには有効なのですが、セシウム137がバリウム137に安定化するまでに放出する透過性の高いガンマ線しか測定できないので、実量の測定ではありません。ストロンチウム90やトリチウムが出すベータ線はまったく測定できないんです。この点をマスコミはまったく報道していません。

 

坪井この本では、健康被害はこれから出てくる、と書いておられますね。

 

広瀬 「原発事故は収束した、終わった」と思われていますが、トンデモナイ間違いです。原発事故から4年余りが経過した今、東京を含む東日本地域でも、これからガンや心筋梗塞になる人が急増することは間違いありません。過去の史実に照らし合わせると、チェルノブイリ原発事故(1986年)やアメリカのネバダ大気中核実験(195157年で計97回)でも、事故後5年から癌・白血病になる人が急増したからです。その意味で、「タイムリミットはあと1年しかない!」のです。大気中の核実験と原発事故は違うと思われがちですが、まったく同じ200種以上の放射性物質が20113月から6月にかけて首都圏でも大量に降り積もっています。あの事故のとき、私が観察しても、多くの人はほとんど無防備でした。いまがちょうど病気の潜伏期の最後の段階です。これから大変なことが起こります。

 

坪井チェルノブイリ事故のときは、事故発生の翌日、1986427日から軍のヘリコプターでホウ酸40トン、石灰岩800トン、鉛2400トン、ほかに粘土や砂など合計5000トンを原子炉へ投下しました。これは1週間続きます。その結果、10日目に放出量が低下しました。その後、「象の足」と呼ばれる溶岩が固まったような状態になります。フクシマ原発事故では地上と上空から放水しました。フクシマ原発事故でも、チェルノブイリと同じ対応をとるべきだったのではないでしょうか。

 

広瀬事故直後、私もとりあえず大至急、放射能放出をおさえるためにセメントなどを投下するべきではないかと、とっさに考えました。しかし今は、メルトダウンした燃料内部からの汚染水の発生を食い止めるべきだと思います。たとえば鉛を使った汚染水漏洩防止の方法について、立命館大学特任教授の山田廣成氏が、このサイトで提唱しています。今でも、試してみるべきでしょう。ただし、チェルノブイリ原発は黒鉛減速・軽水沸騰冷却・チャンネル型で、フクシマと構造が異なるので、何とも言えません。良心的で、しかも化学・物理・原子力・金属・機械の全分野にわたる優秀な頭脳の専門家を全世界から集めて、フクシマ原発事故現場の対処法を考えるほかありません。東京電力や無知な原子力規制委員会に任せて、これを解決することは不可能です。

 

30km圏内を立入禁止、国際的研究機関の設置を

 

坪井その通りですね。「帰宅困難区域」を含め、福島第一原発から30km圏内の土地を国が買い上げて国有地とする、そこに国際的な廃炉研究、核廃棄物処理の国立研究機関や大学院をつくるべきだと思うのです。東北・関東地方の除染後の放射性廃棄物もここに全部集め、処分するとともに研究対象にすべきです。

大規模な公共投資になりますが、研究成果のノウハウは世界中で購入されるはずですから、長期的にはリターンも期待できる。チェルノブイリでは30km圏内が立入禁止で、除染後の放射性廃棄物もここに集めています。廃炉の作業者や研究者には高額の給料を支払い、あらゆる関連分野の専門家と実務家を結集すべきです。脱原発後に原子力研究者を絶やさないためにも必要だと思います。30キロ圏外には、研究機関や大学院向けのサービス産業が集積するはずです。

 

広瀬放出された放射能の総量から考えて、フクシマ原発事故の後遺症は1000年続くと言っていいでしょう。もう元には戻れません。それなのに、東京電力の事故対応は素人同然ということばかりやっていて、まったく頼りになりません。私も30年以上、この問題を冷静に見続け、海外の文献も多く見てきましたが、科学的・医学的に致命的な間違いを犯した今回の事故は覆せません。「放射能は絶対外に出さない」ということが、原発を動かす者の守るべき原理──世界的な大原則です。だが、それをすべて崩すことしかやっていない。日本の電力会社には、原発を動かす資格はない。

 

坪井福島第一原発3号機ではプルトニウムを混合するMOX燃料を使って運転していました。

 

広瀬あそこから出たプルトニウムはロッキー山脈まで達しました。茨城県つくば市の気象庁気象研究所でプルトニウムよりはるかに沸点の高い4877度のテクネチウムが検出されていたので、沸点が3232度のプルトニウムがガス化していたのは間違いないのです。東京都心の大公園でも、沸点3745度のウランが検出されています。

 

おそるべき「フレコンバッグ」の正体

 

坪井『東京が壊滅する日』のオビ裏に、「おそるべきことが音もなく体内で進行している!次の被害者は、あなただ!」と書かれています。

 

広瀬この意味するところは、この本を読んでいただければ、誰でも分りますが、結論を言うと、東京を含む東日本地域住民の中で、これから癌や心筋梗塞などが必ず激増します。いやもう、その段階に入っています。この事実を大声で言うべきか、本当に迷いました。身も蓋もない話だからです。しかし、本連載第6回でも触れましたが、誰も本当のことを言わずに「体内被曝」が進みながら、安倍晋三が原発再稼働へ猛進しているので、これ以上の被害の拡大を防ぐために筆を執りました。各新聞の世論調査でも明らかですが、安倍晋三は再稼働だけなく、安保法案など国民がまったく望んでいないことをゴリ押ししています。

 

坪井『東京が壊滅する日』に膨大なフレコンバッグの写真が掲載されています。これは福島県内で積み上げられている放射性廃棄物を詰めた袋の山ですね。

 

広瀬私が驚いたのは、2015417日に、福島県富岡町の海岸線にぎっしり並べられたフレコンバッグを外国人がドローンで空撮したネット上の動画でした。

 

坪井上空から見ると、海岸線に黒い塊がびっしりですね。

 

広瀬深刻なのはこのフレコンバッグの耐用年数がわずか3なので、すでにあちこちで破れ始めていることです。本の中では福島県の実例を出しましたが、実はそれだけでなく、関東各地でも放射性廃棄物を入れた汚染物の山が積み上げられています。

 

坪井放射性廃棄物の管理と処分は、「帰宅困難区域」を「除染特別地域」として国が直轄していますが、環境省が指定した岩手県から関東平野にかけての「汚染状況重点調査地域」(8101市町村)では、各自治体が除染と処分を担当しています。除染して袋に詰め、どこかに一時保管しているわけですが、中間処分場はどの自治体もまだ決められていません。

 

広瀬それは、実際には中間貯蔵ではなく、最終処分場になることが明らかだからです。どこでも拒否するのは当たり前です。福島県内のフレコンバッグが積まれた場所は、福島県内だけで20153月までに8万ヵ所を超え、その1ヵ所ずつに何百何千というフレコンバッグが積み上げられています。さらに、削り取った土に入れていた草や木の種が、袋の中で勢いよく芽吹いて、プラスティックの袋を簡単に破って外に顔を出し始めています。それはそれは、身の毛もよだつ光景です。

 

いま、とれる対策はあるか?

 

坪井いま私たちがとれる対応策は何だとお考えでしょうか。

広瀬それをずっと考えているのですが、きわめて難しい問題です。個人的にはいま、「水が一番怖い」と思っています。福島県の阿武隈山地や群馬県・栃木県に大量に降り積もった放射性物質が、分水嶺を越えて日本海側の多くの河川を通じて流れ出ています。

秋山豊寛さん(宇宙飛行士、元TBS記者・ワシントン支局長、現在京都造形芸術大学芸術学部教授)も福島県で自然農法に従事していましたが、原発事故後は京都に避難して大学で教鞭をとられています。まずは放射能が降り積もったところから逃げるしかないのが現状で、それには国が最大の、全面的な資金援助をするべきです。金が与えられないから、多くの人は逃げられないのです。

 

坪井私はこう考えます。少なくとも「汚染状況重点調査地域」(8101市町村)に指定されている地域に住む私たちもDNAが損傷した確率が上がっているわけですから、ガンなどを早期発見する確率を上げることが対応策だと思います。年に一度の健康診断は必ず受ける、再検査の指示があればさぼらない、心配なら年に2回検査する、という方法で早期発見率を上昇させることです。

 

日本最大の活断層の上に立つ川内原発再稼働の恐怖

 

坪井さて、川内原発が811日に再稼働されました。

 

広瀬詳しくは本連載第1回、第2回、第5回で書いてきたので、それを見てください。私も再稼働当日、川内原発に乗り込みましたが、それはそれはひどいものでした。19847月の稼働以来今年で31年。原子炉の耐用年数はとっくにすぎています。

本連載でも指摘したとおり、原子炉の古さだけでなく、この原発の下には日本を縦断する最大の活断層=中央構造線が走っています。活発な地震と火山噴火期に入った日本列島で再稼働は狂気の沙汰といえます。みなさんよく考えてみてください。この2年間、原発に1ワットも頼らずに、この猛暑を乗り切っています。これだけ危険な地域に耐用年数をすぎた原発があること自体危ないのに、それを再稼働第一号とする安倍晋三の頭の中はどうなっているのでしょうか。

 

ドブに捨てた5兆円の内訳

 

坪井『東京が壊滅する日』のカバー右ソデに、「5兆円をドブに捨ててもなお、いつまで日本人は“モルモット”にされるのか?」とあります。

これはどういう意味ですか。

 

広瀬青森県六ケ所村の核燃料サイクル政策に2兆円以上の建設費が投じられ、さらに、まったく使い物にならなかった高速増殖炉もんじゅの開発費にも3兆円近い大金が投じられてきました。しかし、現在まで両方ともまったく稼働できずに、結局5兆円以上をドブに捨てた結果になった。これはおそるべき血税のムダ遣いです。いつまで国民は“モルモット”にされ続けるのか。マスコミがなぜこの問題を真剣に論じないのかまったく理解できません。

 

坪井電気料金は、「総括原価方式」といって、コストを積み上げた上に利益を乗せて決められてきましたからね。いくらでもコストをかけられたわけです。

 

広瀬それが諸悪の根源なんです。でも、来年20164月から実施される電力の完全自由化によって“電力会社が7割の利益を得てきた家庭の消費者”にも選択が可能になります。くわしくは『東京が壊滅する日』に書きました。

坪井電力小売りの完全自由化によって、七十数年ぶりに電力が真の競争市場で取引されるようになります。

 

広瀬そのとおりです。これからの時代、もっともっと競争して、少しでも家計がひっ迫している消費者に安い電気料金を提示すべきなんです。

 

『東京が壊滅する日』誕生秘話

 

坪井今回の本では、原子爆弾(原爆)からクリーンエネルギーとして美化された原子力発電(原発)へと「双子の悪魔」のラインが描かれています。私が20代のころに読んだ広瀬さんの『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』(文春文庫、元本は1982年)では、原爆と原子力発電の関係を初めて教えられました。

 

広瀬いままで私の本を読んでくださった方に加え、20代、30代、40代の働きざかりの人たち、とくにいままで私の本を読んだことがない人が読まないと時代が変わらないので、その人たちにどうしても読んでほしいという想いで書きました。原発問題に反対している人でも「ただ反対」と言っているだけでは、状況はまったく変わりません。51の系図・図版と写真のリストを軸とした史実とデータに基づく本書を思考のスタートラインにして、たくさん議論していただきたい。そして、議論に終わらせずに、ぜひ現実を変える行動に出ていただきたい。

 

坪井どういうふうに本書をつくっていったのですか。

 

広瀬 201411月末に『文明開化は長崎から(上)(下)』(集英社)という本を書いたのですが、その日本史が面白かったので、何度も読んでから書棚に戻そうとしたときに目に入ったのが、『赤い楯――ロスチャイルドの謎』(集英社、1991年)でした。

私は書いた本は読み返さない習慣だったので、いままでそんなことをしたことがないのですが、そのとき、『赤い楯』の菊判上下巻を一気に読んでみた。そして内容に驚いて、次から次へその他の自著も最後まで読み返してみたのですね。そうしたら、どれも面白かった。同時に「自分自身がすごく大切なことを忘れていた」と思ったのです。著者である私自身がそうなら、反原発運動に関わる人やマスコミの人だけでなく、一般の読者の方々はこういう史実やデータはまったく知らないだろう。それを今回のフクシマ原発事故を縦軸に描くことによって、思考の原点に戻る必要がある、と思って一気に書き下ろしたのが本書なのです。

 

「史実と科学的データ」こそが未来を教えてくれる

 

坪井歴史の記述と分析が重要ですね。

 

広瀬よく「核兵器」という言い方をします。でもこれは「攻撃側が使う用語」なのです。被害を受けた側は「核兵器」ではなく「原子爆弾」と呼び、「核兵器禁止運動」と言わずに、「原水爆禁止運動」と言います。「公害」(攻撃者側)と抽象化するのではなく、「水俣病、イタイイタイ病」(被害者側)と言うのと同じです。今回の本は、一面でフクシマ原発事故を扱った本ですが、一面で歴史の本でもあります。史実こそがこれからの未来を予測するうえで有益な示唆をくれると確信しているからです。安倍晋三の目に余る暴走のために、国会議事堂近くに「戦争反対」のシュプレヒコールをあげる大学生や高校生が増えてきました。すばらしいことです。

戦後70年の今こそ、本書にある原爆と原発の「双子の悪魔」の歴史、つまり戦争と原子力の関係を、巨悪の本丸IAEA(国際原子力機関)やICRP(国際放射線防護委員会)の正体から、抽象論ではなく、個別具体的な固有名詞と壮大な史実と科学的データで、若い世代に知ってほしいと強く思っています。

 

坪井広瀬さんとは1980年代後半からのおつき合いです。当時、「BOX」という月刊誌がダイヤモンド社にありました。編集部でアメリカのオンライン・データベースを導入したのですが、広瀬さんをお誘いしてインターネットがない時代に海外のデータベースを大量に検索し、チェルノブイリ事故の実像に迫ろうとしました。

 30年前から広瀬さんの主張は1ミリも変わっていません。

チェルノブイリはあれだけの大事故だったのに、4年後の1990年には「原子力はクリーンエネルギー」と言われるようになりましたよね。

 

広瀬フランスの当時の大統領、ミッテランがそういうふうに宣伝したのですね。そもそも原発事故が最初に起きた1979年のスリーマイル島原発事故の前から、原子力発電ビジネスは衰退期に入っていました。原発ルネッサンスは虚言だったのです。

 

坪井本書にも、2014年に巨額の欠損を抱えたフランスの国営原子力会社、アレヴァの実質経営破綻の事例が出ていますが、先進国で原発ビジネスが低迷するなか、日本は国内で再稼働に走り、新興国への輸出にのめり込んでいます。細川元首相や小泉元首相だってハタと覚醒したわけでしょう、政府が判断すれば原発はやめられると。原発がゼロになっても誰も困りません。電力も十分にある。研究者の欠乏を避け、研究水準を維持するためには、廃炉と放射性廃棄物処理の研究開発に投資すればいいと思うんですよね。

 

広瀬 先日、東芝の不正会計問題でウェスティングハウス・エレクトリックの買収が巨大な損失を生み出した問題で、原子力の末期的状況がクローズアップされましたが、三菱重工が「アメリカのサザンカリフォルニアエジソン社のサンオノフレ原子力発電所」に2009~2010年に納入した蒸気発生器が事故を起こし、原子炉2基が廃炉に追い込まれ、9300億円の損害賠償訴訟を起こされました。原発ビジネスに明日はありません。

 

なぜ、『東京が壊滅する日』を

緊急出版したのか――広瀬隆からのメッセージ


 

このたび、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』を緊急出版した。

現在、福島県内の子どもの甲状腺ガン発生率は平常時の70倍超。201136月の放射性セシウムの月間降下物総量は「新宿が盛岡の6倍」、甲状腺癌を起こす放射性ヨウ素の月間降下物総量は「新宿が盛岡の100倍超」(文科省20111125日公表値)という驚くべき数値になっている。東京を含む東日本地域住民の内部被曝は極めて深刻だ。

映画俳優ジョン・ウェインの死を招いたアメリカのネバダ核実験(195157年で計97回)や、チェルノブイリ事故でも「事故後5年」から癌患者が急増。フクシマ原発事故から4年余りが経過した今、『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』で描いたおそるべき史実とデータに向き合っておかねばならない。

 195157年に計97回行われたアメリカのネバダ大気中核実験では、核実験場から220キロ離れたセント・ジョージで大規模な癌発生事件が続出した。220キロといえば、福島第一原発~東京駅、福島第一原発~釜石と同じ距離だ。

核実験と原発事故は違うのでは?と思われがちだが、中身は同じ200種以上の放射性物質。福島第一原発の場合、3号機から猛毒物プルトニウムを含む放射性ガスが放出されている。これがセシウムよりはるかに危険度が高い。

3.11で地上に降った放射能総量は、ネバダ核実験場で大気中に放出されたそれより「2割」多いからだ。

 

不気味な火山活動&地震発生の今、「残された時間」が本当にない。子どもたちを見殺しにしたまま、大人たちはこの事態を静観していいはずがない。

 

最大の汚染となった阿武隈川の河口は宮城県にあり、大量の汚染物が流れこんできた河川の終点の1つが、東京オリンピックで「トライアスロン」を予定する東京湾。世界人口の2割を占める中国も、東京を含む10都県の全食品を輸入停止し、数々の身体異常と白血病を含む癌の大量発生が日本人の体内で進んでいる今、オリンピックは本当に開けるのか?

同時に、日本の原発から出るプルトニウムで核兵器がつくられている現実をイラン、イラク、トルコ、イスラエル、パキスタン、印中台韓、北朝鮮の最新事情にはじめて触れた。

 51の【系図・図表と写真のリスト】をはじめとする壮大な史実とデータをぜひご覧いただきたい。(引用終わり)

 

*参考資料

「フクシマ第一原子力発電所不測事態のシナリオ素描」

 http://grnba.com/iiyama/i/img/saiakusinario.pdf

Russia Stunned After Japanese Plan To Evacuate 40 Million Revealed

http://www.eutimes.net/2012/04/russia-stunned-after-japanese-plan-to-evacuate-40-million-revealed/

 

4千万人以上の日本人が放射能の毒性により「極めて危険な」状況下にあり、世界最大の都市東京を含め、東日本の大半の都市から強制的に避難させられる状況に直面している。

中国政府が日本側に提示したとされる、中国国内にある「無人都市(ゴースト・シティーズ)」への数千万人の移住者受け入れの申し出を、日本が「真剣に検討」していることも、ロシア側に通告してきた。

 

A new report circulating in the Kremlin today prepared by the Foreign Ministry on the planned re-opening of talks with Japan over the disputed Kuril Islands during the next fortnight states that Russian diplomats were “stunned” after being told by their Japanese counterparts that upwards of 40 million of their peoples were in “extreme danger” of life threatening radiation poisoning and could very well likely be faced with forced evacuations away from their countries eastern most located cities… including the world’s largest one, Tokyo.

The Kuril Islands are located in Russia’s Sakhalin Oblast region and stretch approximately 1,300 km (810 miles) northeast from Hokkaidō, Japan, to Kamchatka, Russia, separating the Sea of Okhotsk from the North Pacific Ocean. There are 56 islands and many more minor rocks. It consists of Greater Kuril Ridge and Lesser Kuril Ridge, all of which were captured by Soviet Forces in the closing days of World War II from the Japanese.

The “extreme danger” facing tens of millions of the Japanese peoples is the result of the Fukushima Daiichi Nuclear Disaster that was a series of equipment failures, nuclear meltdowns, and releases of radioactive materials at the Fukushima I Nuclear Power Plant, following the Tōhoku earthquake and tsunami on 11 March 2011.

According to this report, Japanese diplomats have signaled to their Russian counterparts that the returning of the Kuril Islands to Japan is “critical” as they have no other place to resettle so many people that would, in essence, become the largest migration of human beings since the 1930’s when Soviet leader Stalin forced tens of millions to resettle Russia’s far eastern regions.

Important to note, this report continues, are that Japanese diplomats told their Russian counterparts that they were, also, “seriously considering” an offer by China to relocate tens of millions of their citizens to the Chinese mainland to inhabit what are called the “ghost cities,” built for reasons still unknown and described, in part, by London’s Daily Mail News Service in their 18 December 2010 article titled: “The Ghost Towns Of China: Amazing Satellite Images Show Cities Meant To Be Home To Millions Lying Deserted” that says:

These amazing satellite images show sprawling cities built in remote parts of China that have been left completely abandoned, sometimes years after their construction. Elaborate public buildings and open spaces are completely unused, with the exception of a few government vehicles near communist authority offices. Some estimates put the number of empty homes at as many as 64 million, with up to 20 new cities being built every year in the country’s vast swathes of free land.”

 

Foreign Ministry experts in this report note that should Japan accept China’s offer, the combined power of these two Asian peoples would make them the largest super-power in human history with an economy larger than that of the United States and European Union combined and able to field a combined military force of over 200 million.

To how dire the situation is in Japan was recently articulated by Japanese diplomat Akio Matsumura who warned that the disaster at the Fukushima nuclear plant may ultimately turn into an event capable of extinguishing all life on Earth.

According to the Prison Planet News Service:

Matsumura posted [this] startling entry on his blog following a statement made by Japan’s former ambassador to Switzerland, Mitsuhei Murata, on the situation at Fukushima.

Speaking at a public hearing of the Budgetary Committee of the House of Councilors on 22 March 2012, Murata warned that “if the crippled building of reactor unit 4 – with 1,535 fuel rods in the spent fuel pool 100 feet (30 meters) above the ground – collapses, not only will it cause a shutdown of all six reactors but will also affect the common spent fuel pool containing 6,375 fuel rods, located some 50 meters from reactor 4,” writes Matsumura.

In both cases the radioactive rods are not protected by a containment vessel; dangerously, they are open to the air. This would certainly cause a global catastrophe like we have never before experienced. He stressed that the responsibility of Japan to the rest of the world is immeasurable. Such a catastrophe would affect us all for centuries. Ambassador Murata informed us that the total numbers of the spent fuel rods at the Fukushima Daiichi site excluding the rods in the pressure vessel is 11,421.”

 

Disturbingly, the desperate situation facing Japan is, also, facing the United States as Russian military observers overflying the US this week as part of the Open Skies Treaty are reporting “unprecedented” amounts of radiation in the Western regions of that country, a finding that was further confirmed by scientists with the Woods Hole Oceanographic Institute who have confirmed that a wave of highly radioactive waste is headed directly for the US west coast.

Important to note is that this new wave of Fukushima radiation headed towards the US is in addition to earlier radiation events that American scientists are now blaming for radioactive particles from Japan being detected in California kelp.

Though the news of this ongoing global catastrophe is still being heavily censored in the US, the same cannot be said about Japan, and as recently reported by the leading Japanese newspaper The Mainichi Daily News that reports:

One of the biggest issues that we face is the possibility that the spent nuclear fuel pool of the No. 4 reactor at the stricken Fukushima No. 1 Nuclear Power Plant will collapse. This is something that experts from both within and outside Japan have pointed out since the massive quake struck. TEPCO, meanwhile, says that the situation is under control. However, not only independent experts, but also sources within the government say that it’s a grave concern.

The storage pool in the No. 4 reactor building has a total of 1,535 fuel rods, or 460 tons of nuclear fuel, in it. The 7-story building itself has suffered great damage, with the storage pool barely intact on the building’s third and fourth floors. The roof has been blown away. If the storage pool breaks and runs dry, the nuclear fuel inside will overheat and explode, causing a massive amount of radioactive substances to spread over a wide area. Both the U.S. Nuclear Regulatory Commission (NRC) and French nuclear energy company Areva have warned about this risk.

A report released in February by the Independent Investigation Commission on the Fukushima Daiichi Nuclear Accident stated that the storage pool of the plant’s No. 4 reactor has clearly been shown to be “the weakest link” in the parallel, chain-reaction crises of the nuclear disaster. The worse-case scenario drawn up by the government includes not only the collapse of the No. 4 reactor pool, but the disintegration of spent fuel rods from all the plant’s other reactors. If this were to happen, residents in the Tokyo metropolitan area would be forced to evacuate.”

Even though this crisis in Japan has been described as “a nuclear war without a war” and the US Military is being reported is now stocking up on massive amounts of anti-radiation pills in preparation for nuclear fallout, there remains no evidence at all the ordinary peoples are being warned about this danger in any way whatsoever.

 

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