日本のマスコミが報道しない本当のシリア情勢

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10月 242015

先日、日曜日に放送されているNHKの「週刊こどもニュース」のシリア情勢の解説を聞いていて目が点になってしまった。アメリカのネオコン派が世界に流布しようと思っているプロパガンダ以上に「アメリカ=正義の味方」という中立には、ほど遠い偏向した解説をしていたからだ。

 アフガン・イラク戦争は、2001年の911テロ捏造によって始まったネオコン、いわゆる戦争屋によって計画された一連の世界戦略であることは今日では、かなり明らかになってきている。経済アナリストの藤原直哉氏がこのことをNHK第一ラジオの放送でこの春(327日)に解説したことがあった。もちろん、彼はその後、ジャパンハンドラー等から圧力がかかってその番組から降板させられたことは言うまでもないが、その放送がまだ、インターネットで聞くことができるようである。以下。

https://www.youtube.com/watch?v=Hc0ObKlXvKY

 それをいまだに当時大統領だったブッシュにスーパーマンの格好をさせたイラストで解説しているようでは、話にもならないだろう。また、今回のシリア政権転覆の動きを正義の戦いに見せるべくオバマにまた、同様にスーパーマンスーツを着せている図を用いての解説、アメリカのネオコン派(=ジャパンハンドラー)に媚びている意図はよくわかるが、あまりにも幼稚な、単純な図式化であった。

しかしながら、このような幼稚な嘘のプロパガンダを公共放送であるNHKが日本の将来を担う子供たちに押し付ける権利が何処にあるのだろうか。こんな放送を平気でしている日本人は、自分の胸に手を押し当てて日本人としての誇りと良心を呼び起こすべきであろう。

 

 それでは、より真実に近いと思われるシリア情勢を知っていただきたい。

今起きている事は、米国覇権の衰退である。そのためにこれから中東情勢が大きく変わろうとしている。主役はロシアのプーチンである911以降、世界情勢をいいように混乱させてきたネオコン=戦争屋=シオニスト勢力の時代が終わろうとしているのである。このことをジャパンハンドラーに支配される日本の大手メディアは報道することができない。それは、日本を支配している日本の官僚が以前のレポートでも指摘したように「従米戦略というオプション」しか持っていないためでもある。今回は、このことがよくわかる記事を紹介したい。

以下、行政調査新聞20151010日号より

http://www.gyouseinews.com/p4_naigaijousei%20kokunaitenbou/p4_2_naigaijousei_kaigaijousei.html

 

中東の地図が塗り替えられる!―米国が中東を手放すときが迫っている―

 

昨年(2014年)6月、中東の地に突如出現した「イスラム国(ISISIL、ダーイシュ)」はその後猛威を振るい、多くの地域を破壊し人びとを殺戮した。米国を中心とする多国籍軍の空爆など物ともせず、活動拠点をイラクからシリアに移し、シリア全土を滅茶苦茶に荒らした。「イスラム国」の破壊活動により、大量の難民がヨーロッパに押し寄せることとなった。このまま中東全域は戦乱に呑み込まれ、全世界を恐怖のハルマゲドンに巻き込む可能性すら考えられたが、9月になって、状況は激変し始めている。中東はこの先どうなるのだろうか。 

 

ヨーロッパに流れ込んだイスラム国戦士

 

9月2日にシリア難民の3歳児アイラン君の遺体がトルコの海岸に打ち上げられ、この映像や写真を見た世界中の人びとが涙を流し、それをきっかけにヨーロッパで難民受け入れの気運が高まった。

シリアを中心とする中東やアフリカから欧州に殺到した難民の数は、第二次大戦後最大となり、9月末には16万人を大きく越えたと報じられている。その難民の中に「イスラム国」の工作員、戦闘員が紛れ込んでいるという疑惑は、かなり早い段階から浮上していた。しかし陸路あるいは海路、続々とやってくる膨大な難民について、その素性や身元を確認することなど、まったく不可能だ。英紙『デイリー・エクスプレス』はこの問題を大きく報じている。その報道によると、難民に紛れ込んで「イスラム国」の戦闘員が4000人以上も欧州に潜入したという。

中東情勢に詳しい専門家たちも「イスラム国戦闘員4000人が欧州に潜入」という情報を精度の高い情報と受け止めている。潜入した戦闘員が武器を入手する手段はいくらでも考えられ、欧州各地でテロが引き起こされる可能性が高まっている。

 

「イスラム国」潰しに動いた諸勢力

 

9月中旬に国際テロ組織であるアルカイダの最高指導者ザワヒリは、「イスラム国」の指導者バグダディを「偽物のカリフ」であると発表した。カリフとは預言者ムハンマド(マホメット)の後継者のこと。バグダディは「イスラム国はカリフ制国家」であり、「自分がカリフだ」と宣言していたのだが、同じイスラム教徒であるアルカイダNO.1のザワヒリが明確にこれを否定し、「バグダディのイスラム国はパレスチナ自治区などイスラム国の支配地以外ではイスラム教徒を支援していない」と厳しく批判している。アルカイダも「イスラム国」を敵と見なし、その殲滅を求めている。アルカイダに限らず「イスラム国」を敵視する国や組織は多く、物理的な攻撃も行っているが、その成果は現れていない。

昨年(2014年)9月以降、オバマ大統領は「イスラム国根絶」を目標に掲げ戦闘を開始した。米空軍機を中心に湾岸各国の爆撃機、戦闘機、あるいは無人機が「イスラム国」の拠点を空爆し、これまでにイラクとシリアで5万3000回の出動と6700回の空爆が行われたとされる。この作戦には合計37億ドル(約4440億円)が投入され、大規模な軍事攻撃が繰り返されたのだが、「イスラム国」に甚大な被害を与えたという実績は、残念ながらほとんどなかった。いっぽうで、米国と同盟国による「イスラム国」攻撃の結果、民間に大きな被害が出ており、一般人の死者数も600人に達している。

シリア政府軍と敵対し、同時に「イスラム国」とも敵対しているシリア反政府軍の装備と訓練に、米政府は5億ドルを投入することを決定。さらに「イスラム国」と地上戦を戦う兵士をトルコ、ヨルダン、サウジ、カタールで集め、今年中に5000人規模の軍隊を準備する予定があるとされる。しかし米政府が肩入れしている軍団だが、最初に作られたグループ54人は「イスラム国」の攻撃を受けて壊滅。現在は200人しか集められておらず、先行きが危ぶまれている。

米国も同盟国も、昨年から1年以上にわたって「イスラム国」を壊滅させようと努力してきたように見えるが、膨大な戦費を使ったものの、成果はゼロに等しい。

 

「イスラム国」を支える米国軍産複合体

 

本紙は以前から「イスラム国」の背後に米国とイスラエルが存在していると書いてきた。バグダディが重傷を負ったときにはイスラエルの病院に逃げ込んでおり、イラク軍はそれを確認し公表もしてきた。米軍は「イスラム国」と戦う相手に武器弾薬を支援するといいながら、(意図的に)間違えて「イスラム国」に武器弾薬を空から投下していた。

こう記すと「米国の背後にはユダヤ国際金融機関が存在し、彼らが米国を操っているのだ」と納得する人がいるかもしれない。あるいは「米国という『会社』の社長はオバマだが、実権を持つオーナーは軍産複合体だ」と、したり顔で解説する人もいるだろう。だが実際はそれほど単純ではなく、米国内部もいくつかに分裂している(とはいっても滅茶苦茶に複雑なわけでもない)。

イスラム国を支援し、彼らに武器弾薬を与え、中東を混乱に導いているのは米国の軍産複合体である。そして軍産複合体とは目標が多少異なっているが、とりあえず同一歩調をとっているのがイスラエルだと考えるとわかりやすい。

この状況打開に、軍産複合体と対立するオバマ大統領はイラクと核協約で妥協し、さらにシリア問題の処理をロシアに投げかけた。オバマにとっては米国内部での政争に勝つためには、何としても軍産複合体を叩く必要があり、「肉を切らせて骨を断つ」覚悟でロシアとの協調を選んだのだ。この一事だけを見ても、米国が一枚岩ではないことが理解できる。

 

プーチン大統領がアサド政権を支援

 

9月28日の国連総会で、ロシアのプーチン大統領は演説の大半の時間を中東情勢に回し、「極めて危険な組織である『IS(イスラム国)』と戦う国際戦線の設立」を呼びかけている。その演説の中でプーチンは「アサド敵視をやめてシリアを安定させないと、欧州への難民の流れも止められない」とも語っている。

プーチンのこの演説より1週間ほど前には、米国のケリー国務長官がロンドンでハモンド英外相と会談し、「シリア内戦の解決には政治的な安定が必要」との認識を示し、「国民から支持されていないアサド大統領の退陣」を求めている。

米英政府がアサド退陣を求め、ロシアがアサド支援にシリア内戦に介入することで、米露両軍が偶発的に衝突する可能性が出てきている。これを見越して米カーター国防長官と露ショイグ国防相は電話で会談している。米露両国のハイレベル接触は昨年3月のウクライナ危機で凍結され、今回はそれ以来の接触となった。しかし両国の駆け引きは、まだ始まったばかりだ。じつのところ、米露両国を最終戦争の舞台に引きずり出したいと考えている勢力は、シリア内戦にロシア軍が出張ってくることを期待している雰囲気がある。欧州に流入したに違いない「イスラム国」戦闘員の問題も含め、中東情勢は綱渡り状態が続き、いつ何が起きても不思議ではない。

 

ロシアがシリアの「イスラム国」を空爆

 

プーチンの国連総会演説の2日後となった9月30日から、ロシア軍機はシリア国内の「イスラム国」拠点やアルカイダ系のアルヌスラ戦線などを空爆した。どちらの組織もアサド政権と敵対するもので、空爆は3日連続で行われ、ロシア軍の発表では60カ所が爆撃されたという。60カ所のうち50カ所が「イスラム国」の拠点で、とくにラッカにある「イスラム国総司令部」の爆撃にはバンカーバスター弾が使用され、総司令部は完全に破壊され、同時に近くにあった武器弾薬庫も大爆発により消失したと発表されている。

米国や同盟国の執拗で大規模な1年余の攻撃にビクともしなかった「イスラム国」だが、わずか3日間のロシアの空爆で致命的なダメージを受けてしまった。「イスラム国」の兵士たちは家族を安全な地方や隣国に避難させ、また欧州各国から戦場にやってきていた600人の兵士は、自分の故国に戻ってしまったという。ロシア政府は今後もしばらくの間、同様の空爆を継続させると発表しており、あれほど頑健だった「イスラム国」が崩れ始めている。ロシアはさらに、イラクだけではなくイラン政府にも働きかけ、イラクの首都バグダッドに「対イスラム国戦情報収集センター」を設立した。この結果、ロシアとシリア、イラク、イランは完全に歩調を揃え、「イスラム国」殲滅に邁進することは間違いないだろう。この4カ国の強固な結びつきは、これまでの中東には見られなかった形式だ。そしてここにはさらにクルド系武装組織も加わりそうなのだ。

 

ロシアによる「イスラム国潰し」を演出したオバマ

 

これまでの1年余、米軍中心の対「イスラム国」掃討戦は効果がなかった。軍産複合体の支配下にある米軍本流は「イスラム国」を本気で潰そうとは考えず、むしろ支援しようとしてきた。同盟国のサウジやヨルダンなどは、米軍の情報を元に「イスラム国」の拠点を空爆してきたが、ほとんどのところで無人の砂漠を爆撃するだけに終わっていた。

シリアにおけるアメリカとロシアの空の衝突

ロシアの空爆は米軍とは違って、本気で「イスラム国」を潰しにかかったものだ。問題はこの先、シリア政府軍を支援するロシアと、反政府軍やこっそり「イスラム国」を支援している米軍が正面衝突する可能性があるか否かだ。じつのところイスラエルは本気でその演出をしたがっているし、軍産複合体が待ち望んでいる大戦争でもある。しかし米露両軍の激突の可能性は恐ろしく低い。ゼロに近いか、または完全にゼロだろう。なぜか。ロシア軍による「イスラム国」空爆の3日前、プーチンの国連総会演説の日にプーチンとオバマが会談しているからだ。

もともとシリア内戦を早期に収束させようと、ロシアを引っ張り出したのはオバマ大統領である。オバマは軍産複合体との政争に勝つためにロシアを引きずり出し、そして勝利した。黒人大統領オバマの見事な勝利の結果が「イスラム国」の落日に繋がっているのだ。

 

米国隷属情報しか流さない日本の大マスコミ

 

米欧だけではなく、日本のマスコミは軒並み、中東とくにシリアの内戦に関しては米国を評価し、ロシアを悪者扱いしてきた。米国を高評価しロシアを叩くことは、米ソ東西冷戦時代から続けられてきた「正義」だと勘違いしているマスコミや評論家たちが、いまだ日本では圧倒的なのだ。しかしシリア内戦、対「イスラム国」戦に関しては、ロシアの手法は理にかなったもので、米国のやり方は間違っている。

米国や同盟国は、国連安保理の決議など得ずに、しかもシリア政府を無視して、シリア国内を空爆していた。これは国際法上、完全に違法である。いっぽう今回のロシアによるシリア国内の空爆は、シリア政府の要請に従ったもので、国際法上は合法である。米国が「国民の支持のないアサド政権を守るために空爆することは許されない」とロシアに怒りをぶつけているが、これは法を守らない側の言いがかりである。日本の国際ジャーナリストとか大マスコミの解説者のほぼ全員が米国べったりの評論を繰り返しているために、中東情勢が見えなくなっている。そうした意味ではネット上の情報には正しい評価が多い。(たとえば最近では『MAG2NEWS』で「右翼よりも重症…日本人ジャーナリストたちの『米国への属国根性』http://www.mag2.com/p/news/118965」といった記事などがある。)

 

中東はロシアの手によって安定する

 

露外務次官ミハイル・ボグダノフはシリア問題解決のための会議を10月中に開催すると発表した。この会議は「コンタクト・グループ会議(連絡先集団会議)」と名づけられ、ロシア以外に米国、エジプト、イラン、トルコ、サウジアラビアの計6カ国で構成されるという。

当初、アサド大統領潰しのために米国と歩調を合わせていたトルコとサウジは、プーチンの説得に応じ、米国はもはやアサド政権継続もやむなしの状況に陥っている。

難民が押し寄せて治安の悪化に悩む欧州各国は、プーチンの「シリアが安定しなければ難民危機は解消できない」という言葉に乗り、アサド政権を容認する方向に向かっている。とくにドイツのメルケル首相はプーチン案に好意的で、シリアでロシア軍が主導する多国籍軍(国連軍)が活躍する可能性も多分に出てきている。シリアでのこの方策が成功すれば、南スーダンでもマリ、ダルフール、コンゴでも同じ手法で問題が解決すると考えられる。中東やアフリカ各国の安定は、もはやロシア主体でしか考えられないのだ。

さらにシリアでのコンタクト・グループが成功すれば、ウクライナは間違いなく安定の方向に向かうだろう。とはいえ、安定を望まない強力な勢力が消えたわけではないので、世界が安定安寧に向かっているとは言い難いが。

 

世界の全体像を大雑把に理解すべき

 

日本の大マスコミ、有名評論家、ジャーナリストたちは「親米」あるいは「米国隷属」であって、中立的な判断が出来ない。「安保法制」では半世紀も前の反米闘争のような雰囲気を見せながら、全体的な国際情勢判断では完全に米国隷属の愚かな提灯持ちと化している。ヨーロッパで、ウクライナで、中東で、そしてアフリカで何がどのように進んでいるのか、大雑把に全体像を把握する必要がある。

とはいえ、それをここで開示するには紙幅もない。いきなり結論を言うなら、米国従属路線を直ちに放棄すべきだということだ。お断りしておくが、だからといって中国と手を組めなどとはいわない。日本の独自外交を切り拓くか、それが出来ないのであれば全方位外交を展開しろということだ。そしてわれわれ庶民大衆は声を大にしてその方向を支持することだ。

今回の対「イスラム国」戦に関して、中国はまったく関与しようとはしていない。しかしじつのところ、ロシアがシリアで力強く動くことが可能なのは、ウクライナ危機で欧州にエネルギーを売ることが出来なくなったとき、欧州に代わって中国が石油やガスを買って経済的に支援したからである。また中国は国連平和維持軍への参加の拡大を表明し、新たな兵力を南スーダンなどアフリカに派兵することを表明している。これまで米英主導で展開されていた世界平和の枠組み、行動に、ロシアと中国が大きく関与するようになるはずだ。安保法制の確立により、日本の自衛隊の海外派兵の道筋が作られたが、それは自衛隊がロシア軍や中国軍と行動を共にする可能性が強まったことを意味している。

経済的苦境のため、米国が世界の指導者の座を降りることは百パーセント間違いのない話である。ロシアや中国、あるいはEUが、米国に代わるわけではない。世界は集団指導体制のようになる。米国隷属を続ける限り、日本に未来はない。一刻も早く米国とのしがらみを断ち切り、真の独立国家にならなければならない。そのために庶民が声をあげるべきなのだ。(引用終わり)

もう一本、海外の記事を紹介させていただく。以下。

 

「力の均衡が決定的に変化した」 Paul Craig Roberts  20151010

 

928日、ロシアのプーチン大統領が国連演説で、ロシアはもはや耐えることができないと述べて世界情勢の大転換が起きたことを世界は認識し始めているワシントンの卑劣で愚劣で破綻した政策が解き放った混乱は、中東、そして今やヨーロッパを席巻している。二日後、ロシアはシリアの軍事情勢を支配して「イスラム国」勢力の破壊を開始した。

おそらくオバマ顧問の中にも、傲慢さに溺れておらず、この大転換を理解できるごく少数の人々はいる。スプートニック・ニュースは、オバマの安全保障担当幹部顧問の何人かが、アメリカ軍勢力をシリアから撤退させ、アサド打倒計画をあきらめるよう助言したと報道した。彼らは、ワシントン傀儡のヨーロッパ諸国を圧倒している難民の波を止めるため、ロシアと協力するようオバマに助言した。望んではいなかった人々の殺到で、アメリカの外交政策を可能にしておくことによる大きな犠牲に、ヨーロッパ人は気がつきつつある。顧問たちは、ネオコンの愚かな政策がワシントンのヨーロッパの帝国を脅かしているとオバマに言ったのだ。

マイク・ホィットニーや、スティーヴン・レンドマンなど、何人かの評論家たちが、「イスラム国」に対するロシアの行動について、ワシントンができることは何もないと正しく結論している。ロシアを追い出すための、ネオコンによるシリア上空の国連飛行禁止空域計画は夢物語だ。そのような決議が国連で行われるはずがない。実際、ロシアが既に事実上の飛行禁止空域を設定してしまったのだ。

プーチンは、言葉で脅したり、中傷したり一切することなく、力の均衡を決定的に変え、世界はそれを理解している。

ワシントンの対応は、罵倒、大言壮語や、更なるウソしかなく、しかもその一部を、更にいかがわしいワシントン傀儡がおうむ返しする。唯一の効果は、ワシントンの無能さの実証だ。

もしオバマに、多少の思慮分別があれば、政権からワシントンの力を浪費したネオコンの能なし連中を追放し、ヨーロッパやロシアと協力して、ヨーロッパを難民で困らせている、中東におけるテロの支援ではなく、破壊に注力するはずだ。

もしオバマが過ちを認めることができなければ、アメリカ合州国は、世界中で信頼性と威信を失い続けるだろう。(終わり)

 

Paul Craig Robertsは、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えていた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。

彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHOW AMERICA WAS LOSTが購入可能。

記事原文:http://www.paulcraigroberts.org/2015/10/10/decisive-shift-power-balance-occurred-paul-craig-roberts/ (引用終わり)

 

 

 1945年の敗戦以来、日本の国家戦略は、一貫して「対米依存、従米」である。この70年の間に冷戦の終了を含めて国際情勢は大きく変化している。そして今、シリアから大きく国際情勢が変わろうとしている。考えてみれば、周囲の状況が変わっても変わらない戦略などが国家戦略と呼べるものではないことは明らかである。戦後、米国によって奪われてしまった戦略思考能力を日本人一人、一人が取り戻さないと21世紀の日本の未来は見えて来ない。

 

 

<藤原直哉プロフィール>

1960年東京都生まれ。

1983年東京大学経済学部卒業。住友電気工業株式会社入社。電線ケーブルの海外輸出業務および企画部門に従事。

1985年経済企画庁経済研究所出向。世界経済モデルを使ったイタリア、日本および米国の短期経済予測、講造分析、計量経済分析の信頼性向上のための研究に従事。

1987年ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社入社。投資戦略調査部で債券・株式の数理分析に従事。特にオプション、スワップなどの金融デリバティブ商品、市場のベンチマークとしてのインデックス、および米国のモーゲージ担保証券に関する広範囲な研究・業務に従事。

1996年シンクタンク藤原事務所(株式会社あえるばの前身)設立。

10月 152015

日本という国の仕組みをそろそろ一般の国民も知るべき時を迎えている。

なぜなら、明治維新以降、薩長藩閥政府が強引に創ってきた日本という国の在り方が完全に限界に来ているからである。戦後、日本の官僚は、戦勝国である米国をバックに据えることによって政治家を完全に押さえ、官僚機構の肥大化とある意味、不労所得の恒久化に邁進することができるような公(おおやけ)優先の構造を創り出すことに成功した。つまり、司法、立法、行政、財政、外交、防衛、おおよそ国家の上部構造、つまり包括的権力がすべて官僚によって掌握され、宗主国である米国の意向は、日米合同委員会等を通じて忠実に反映されるが、日本人の本当の民意がなかなか反映されないのが、現在の日本の国政である。

いまだに3万人近い役人が天下る約4600の特殊・公益法人、そのグループ企業へ投じられる補助金は年間126000億円に達している。つまり、「天下り手当て」として復興財源を上回る予算が毎年注ぎ込まれているわけである。

「補完的社会事業」などと称し、国民の眼を欺いているが、特殊法人が本当の付加価値も創出していないことは言うまでもない。それどころか税金を投じて傘下に系列企業群を設立し、さらに役人が天下り、莫大な役員報酬を得、随意契約で優先的に業務を発注し、民業を圧迫している。これらの官製グループ企業は約3000社にも達している。もっとも、これらの利権のおこぼれに預かっている国民の数もかなりの数になるだろう。一言で表現するなら、戦後の日本システムの特徴は。市場経済において社会主義経済を実践するという二重構造にある。この既得権益層への傾斜的社会資本配分が行き過ぎたために現在、民間が極度の疲弊に陥っているというわけだ。

 何度もレポートで指摘しているようにこの国は、原発事故により現在、国家は存亡の危機にあり、過酷な税負担(この国には税の名前がついてない実質、税金と見なされる不思議な負担金?が特別会計に徴収されている。)により庶民が加速的に疲弊している。それにもかかわらず、何の能力も情報もない国会議員は、この日本の特殊利権構造に手を入れる意欲も手段ももっていないのである。

たとえば、役人の天下りへ投下されている126000億円の価値を考えてみるならば、5000億円で子供手当てを満額に継続し、3兆円で原発を全て廃炉にし、4兆円で福島の児童20万世帯を疎開させ生活保護費を支給し、5兆円で大学を完全無料化することができる。要するに似非エリート層によって利権が独占され、涙ぐましく、そのおこぼれに預かろうと陳情活動をするのが日本政治システムになってしまっているのである。

 たしか、ソビエト連邦崩壊時ノーメンクラツーラが私物化した社会資本は当時のレートで約34兆円以上と推計され、これは統治者による自国民からの収奪行為においては人類史上最高額に達するとされていたが、日本国における特権官僚の実践がそれを桁違いに上回っている可能性もあることを一般の日本人もそろそろ知るべきなのである。

 そういう意味でこの国の社会資本配分はある意味、詐欺もどきのものになっていると、言っても過言ではないだろう。国税と地方税の総計≒70兆円は人事院勧告準拠者700数十万人の給与、福利厚生、償還費、補助金で全額が蕩尽されている。このような無軌道な財政運営を続ければ、おそらく今後数年で公債総額は個人金融資産1500兆円と拮抗し、限界水域に達することになる。言うまでもないことだが、公債とは国民の資産と租税を担保とした借金にすぎない。

いずれにしろ絶対に責任を取らない官僚は、国債の暴落を引き起こし、桁違いの資産課税と年金、医療、公共サービスの切捨てをもってランディングする目論見であることは間違いないだろう。その時に、公務員の人員整理を強く要求するくらいしか、一般国民にはできないのだ。

官製国家である日本では報道されることもないが、1100兆円に達する公的債務のうち推計260兆円は、特殊法人へ貸付けた財投機関債(旧・財政投融資)によるものだ。つまり天下り官僚と準公務員という特権階級への献上金としてこれだけ莫大な金が費やされている。もともと国民の資産である年金、郵貯、簡保の積立金を原資とし、本来、出資者として配当を受け取るべき国民が、不良債権と化した財投債の元本、金利までをも負担し、租税として徴収されているわけであり、事実上の国家による強奪行為に他ならない。要するにわが国のエリートは、頭の悪い一般国民には財政の仕組みは何もわからないだろうと完全に馬鹿にしているのである。

当然のことだが、国債の9割近くは国民が市中銀行に預けた貯蓄で消化されている。国民の預貯金で公債を金に換え、国民が納める税金で元本償還を行い、公債金利を払っているわけだ。その上、宗主国である米国に外為特別会計を通じ米国債の購入を強制され、100何兆円規模で国民資産は米国に収奪されている。また、最近は特別会計の中にまでアメリカが手を突っ込み、活力交付金当たりから州債を買わせるなどしてお金を引き出しているようである。つまり馬鹿な日本人は国内外から二重にも三重にも搾取されているという見事な仕掛けができているのである。苫米地英人氏が「脱洗脳教育論」という本で述べているように日本人は明治維新の時から奴隷育成教育を受けているので、羊のように温和しくしているのであろうか。

 

先日、福島県宅地建物取引業協会が東京電力を訪れ、約25億円の損害補償を申し入れた。不動産への原発被害がいよいよ顕在化し、今後は周辺地域、都市圏への波及が警戒される事態となっている。これまでレポートで何回も指摘したが、日本政府が放射能汚染を頑なに隠蔽する一番大きな理由は、首都圏の不動産価格を下げたくないからである。都市圏の地価は10%の毀損で100兆円ちかい評価損失となる。これだけで信用創造機能は不全に陥いる。農林水産業や事業損失に加え不動産の賠償が加わるとなれば、脆弱なこの国の財政など一瞬で破綻することは明らかだろう。そのために官民上げて情報統制に狂奔し、被害実態を隠蔽し、富裕層が資産処分の時間を稼ぎ、クライシスを先送りしている。

 だから、そんなことに関わりのない人は、自分自身で情報収集し、考え、自分自身、家族、友人を守ることである。

 

しかしながら、日本では「このままの官僚利権構造が続く」と、それによって糊口を拭って来た地方経済の担い手たちがもはや疲弊しているのは、「地方創生」がかつてのような1億円の金の延べ棒をばらまく「ふるさと創生事業」ではなく、要するに利権無しでも適宜自活するようにという一方的な政策の申し渡しになりつつある国の現状を見ても明らかなはずなのに、いまだに勘違いしている人が地方の経営者を中心に多くいる。アベノミクスに本当の成長戦略がないことを見てもわかることだが、これから既得利権の時代が終焉していくのは明らかである。そして次は都市部に暮らす住民、さらには大企業、そしてついには官公庁と立法府(国会)もその渦に巻き込まれるのは当然である。

利権の原資が無く、利権を創ることが出来ない国会議員の先生に誰が投票するのだろうか。利権によって保ってきた似非民主主義:日本版アメリカン・デモクラシーもいよいよ終焉の時を迎えている。大体、不正選挙の疑惑がこれだけネットで囁かれ、明らかにおかしい事例までマスメディアでも一部報道されていることを考えると、すでに選挙の公正性すら現在の日本では担保されていない可能性も高いのだ。

 

兎に角、これからは、下記に紹介するような今まで信じていた「お花畑」を木っ端微塵に壊すような吃驚情報が続々出てくるだろう。そのことによって、徐々に戦後創られたすべての利権構造が壊れていく。この大きな時代の流れは、おそらく、悪名高い特定秘密保護法でも止めることはできないのではないか。

 

それでは、似非愛国者石原慎太郎氏の正体を元外交官原田武夫氏が容赦なく暴いているので、情報操作が大衆を如何に巧みに騙すかをじっくり考えていただきたい。以下。

 

「<泥棒国家>ニッポンを越えて」            原田武夫       2015年10月04日

 

例えばこんな話を聴いたらば、読者の皆さんはどう感じるだろうか。―――ある国の首都で首長を務める政治家がいた。どうしても息子には総理大臣になってもらいたいが、なかなかうまくいかない。かといって今さら自分が総理大臣になる道を志すわけにもいかないのだ。若い頃には「政界の暴れん坊」として鳴らしたものの、もはやその年齢でもないからである。そこで一計を案じた。

 

この国の首都には大きな港湾がある。その丁度入口にあたる部分に巨大な海底トンネルを掘るという計画がある。よくよく考えるならば「誰がそんなトンネルを使うのか」と首をかしげてしまうわけだが、対岸の他の地方行政府からすれば切望してやまない案件ではある。しかもここにきて国家としての経済の停滞は甚だしいものがある。「公共工事による需要創出」という御題目を打ち出すには絶好の機会となっている。

そうした中、国レヴェルでこれを所管する官庁はようやくこれを承認するに至った。無論、「道路族」の国会議員たちと並んで、国会議員ではないが有力政治家であるこの首長が辣腕を振るったのは言うまでもない。何てことはない、要するにこのトンネル建設工事のために組まれる予算の中に、彼ら土木官僚たちの将来的な「食い扶持」が含まれているように話しをつければ良いだけのことなのだ。工事を担当するのはこの港湾に長年特化した子飼いの建設会社だ。そもそもこの港湾の開発計画は、先の世界大戦の結果、この国が大敗北を喫してからというものの、戦勝国でありその後、この国にとって「唯一絶対の同盟国」となった大国の軍部によって事実上牛耳られてきた。無論、この国が名目上の「再独立」を勝ち取ってからはこの同盟国の軍部が港湾工事の細部に対してあからさまに介入してくることはない。ただ、一定の分け前を当然のように求めて来るわけであり、この点でもきっちり手を打つ必要があるのだ。首長はこのことを青年期から感づいていた。そしてこの同盟国からまず注目されるためには、それが敗戦国であるこの国の人々が二度と刃を向けて来ることが無いようエンターテイメント産業の発達による「愚民化」を図っているのに、俳優となった弟と共に、小説家として協力することに決めたのである。そしてテーマは「青年たちの暴走」を一貫して取り上げ、本来ならば国家全体として同盟国に押さえつけられているという現実を全くもって隠蔽し、青年たちの有り余るエネルギーを同盟国への抵抗から、極めて個人的な世界(「3S=スポーツ、セックス、シネマ」)へと向けることとした。

彼ら兄弟のこのやり方は大成功し、マスメディアを席捲する中で政治家へとのし上がる切符を兄である首長は得ることになったのだ。本来ならば「同盟国様様」となるはずだが、そんなことは無論、お首にも出すはずがない。それどころか今度は「NOと言える日本」なる本を打ち出し、この同盟国がいかに我が国を苦しめているのか、真の独立こそ今求められていると切々と訴えることにした。これがまたベストセラーになったわけであり、その勢いの恐懼した同盟国は少壮政治家となった後のこの首長を早速、自らの首都へと呼び寄せ、厚遇したのである。毅然として同盟国との協議へと向かう首長を、マスメディアは拍手喝采した。

港湾トンネル

さて、件の港湾トンネル建設計画についてである。首長がこれを子飼いの土木会社を用いていよいよ着手しようとしたのには訳がある。所管官庁にも言い含めてある国家予算の中から「(邦貨換算すると)600億円」を捻出するためだ。しかもそのやり方は極めて簡単だ。トンネルとその両端につくる橋梁で使うコンクリートを“薄めれば”良いのである。距離をいじったり、トンネルの大きさをいじったのでは後でばれてしまう。ところがコンクリートの「濃度」となるともはや現場を知るものしか分かり得ない世界の出来事なのである。子飼いの土木会社はこの意味できっちりと仕事をしてくれた。首長は「600億円」を捻出した。

 

だが、ここではたと気付いたのである。この600億円を塊として名のある銀行に置いておくのはやや気が引けるのである。無論、首長は有名政治家であり、かつその恫喝力で知られているわけだから、別にやろうとして出来ないことはない。有名銀行の最高幹部たちを縛り上げることなど、そのこれまでの行状、特に反社会的組織とのつながりや、夜の街の女性たちとの深い関係などを辿れば、大したことではないからだ。そのための実力装置との付き合いも首長はこれまで、港湾を取り仕切る荒くれ者たちとのやりとりの中で培ってきた。だが、そうとはいえ、やはり600億円はそれなりの金額なのだ。首長が「ここぞ」と思った瞬間に使える体制を維持しなければ意味がない。

そこで首長は考えついたのである。「そうだ、自分自身で完全にコントロールできる銀行を創ることが出来れば良いのだ」と。首長とは地方行政府のいわば”大統領“だ。その一言で巨大な地方行政組織が動いてくれる。「住民の福利厚生増進のため、独自の銀行を創るべし」といえば良い。ただそれだけで、地方行政官僚たちは整然と動き、「銀行」を創ってくれるのである。もっとも銀行業は彼らとて素人だ。世界的な不況の中でたまさかその国からの撤退を画策していた外国銀行の、おあえつらいむきの首都支店が一つあった。これを「公有化」してしまうのが一番手っ取り早い。―――首長は即決し、官僚たちはまたしても整然と動いてくれた。例の600億円は早々にこの新しい銀行の口座へと振り込まれた。

 

「これでもう大丈夫だ、息子が総理大臣になる道のりが開けた」そう想った首長の前に、突然立ちふさがった男がいた。辣腕ジャーナリストとしてテレビでも有名な小男だ。しかも彼は実に意外なところで首長に対して切りつけてきたのである。世界的な不況はこの国に対しても容赦なく負の波をぶつけてきた。そうした中で大合唱となったのが「行政のムダを徹底して切り落とせ」という主張、すなわち“構造改革”の呼び声である。雄ライオンによく似た髪型をした時の総理大臣が「抵抗勢力を潰せ!」と叫び続ける中、そうした波はいよいよ公共事業にも及び始めたのである。土木官僚たちの抵抗もむなしく、とりわけ「道路建設計画について徹底検証するための有識者会議」なるものを設置せざるを得なくなった。ジャーナリストはその一員、中でも「斬り込み隊長」役として、土木官僚たちが渋々提出した資料を、持前の嗅覚をきかせるべく鼻をひくつかせながら熟読し始めたのである。

そして、ついに見つけたのである。例の「コンクリート・トリック」を、である。もっとも世界で一番の野心家であるジャーナリストはそれを直ちに公表するなどという愚行には走らなかった。その代りに向かった先は、ここでの主人公である首長の下だったのである。

「首長、これ、見つけたのですけれどね」にやつきながら“600億円”が架空計上されている動かぬ証拠を示すジャーナリスト。かつては田舎学生運動の旗頭であったジャーナリストなど、自分とは格が違うのだと首長は怒り心頭だったが、しかしさすがにこの資料を示されて、この首長の内心は大いに動揺した。さて、どうするか―――。

「君、これはともかく、どうだね、首都行政のトップの現場で私を助けてくれはしないかね」

自分の顔がどうしてもひきつってしまうのを何とか隠しながら、首長は起死回生のための切り札をやおら切った。「野心家のこの小男のことだ、絶対に乗って来るはず」老獪な政治家である首長はそう確信していたのである。無論、その読みは当たっていた。「土木行政の切り込み隊長」として名を挙げたジャーナリストは今度は華々しく地方行政、しかも首都行政のトップへと転身。「国家で推し進めた構造改革を、今度は首都行政でも推し進める」と高らかに宣言し、鼻息荒く首都の牙城へと乗り込んだのである。

他方の首長はといえば、子飼いの首都行政組織幹部らに対してはこのジャーナリストへの「面従腹背」を命ずる一方、“その時”をひたすら待ち続けたのであった。その時、彼が胸の中で唱え続けた言葉はただ一つ。

「上げは下げのため、上げは下げのため、上げは下げのため・・・」

 

何人も急上昇すれば、必ず、そう”必ず“急降下するのである。奴を落とすにはまずもって急激な上昇気流に乗せてやるしかない。我が世の春となったジャーナリストは必ず踏み外すはずだ。そこで一撃必打、打ち取ればそれで良いのだ。

そして“その時”がやって来る。首長の「首都」が程なくして行われる夏季五輪の候補地として選定されるに至ったからである。首長自身は「オリンピック?ばかばかしい」と内心思っていたが、例のコンクリート・トリックが山ほど出来ることを思えば、無論そんな内心をお首にも出さなかった。だが同時に、マスメディアにとっては全くもってサプライズなことに「突然の辞任」を打ち出したのである。「老体にこの任はもはやきつすぎる。夏季五輪開催地の座を必ず射止めてくれるのは、これまで首都行政トップをきっちりとサポートしてくれた、このジャーナリスト氏しかいない」そう淡々と語り、首長は君臨していたその座から降りたのであった。

その深謀遠慮など、全く気付くことなく、意気揚々と首長の座に駆け上がった件のジャーナリスト。その後、紆余曲折が無かったわけではないが、「オリンピック利権」をこれまで何度となく味わって来た多くの魑魅魍魎たちの見えない力を借りて、夏季五輪開催というチケットを手にすることが出来たのであった。選定会場において、混血の我が方プレゼンテーターが口にした一言がもてはやされる中、首長であるジャーナリストはその人生の絶頂を迎えることになる。

 

だが、そこで「首長」の本当の計画が動き出したのであった。「夏季五輪開催を勝ち取ったのは自分。その自分こそが、夏季五輪開催時に栄えある首長の座に座っているべき」そう野心を今度は燃やし始めたジャーナリストは、今度こそ自分で潤沢なカネを集め、再選を目指そうと躍起になったのである。その裏側のどす黒い闇の中で「首長」が一撃必打の一手をその脳天めがけて振り落すとは知らずに、である。

ジャーナリストは、その手にまんまと乗り、「受け取ってはならないカネ」を受け取ってしまうのである。医療事故を起こし、もはや普通の病院では受け入れられなくなった「辣腕医師」たちを中心に集め、全国で病院チェーンを創り上げつつあった、自らは半身不随の経営者がいた。そのカネを不正献金と知りながら、ジャーナリストは懐にしまい込んだのである。無論、密室の中において、であない。「仲介役」を務めてくれた活動家の面前において、である。活動家は、かねてより「首長」とは昵懇だった。しかも”観念的な政治論“のレヴェルで「首長」とは相通ずるものがあった。そこで元来、真逆の思考を持っていたジャーナリストとは全くもって相容れないのである。だが、そんなことは全くもってお首にも出すことなく、活動家はいまや首長となったジャーナリストに急接近。「不法な政治献金の授受」の現場にまで立ち会うほどの関係を構築したのである。無論、盟友である「首長」の命を受け、動かぬ証拠をつかむために、である。

やがて「事件」は露呈する。得意の絶頂であったジャーナリストは全くもって脇が甘く、ものの見事に打ち取られた。マスメディアはほうほうの体で表舞台を去ろうとするジャーナリストの袖を引っ張り、そのこれまでの「傲慢さ」を暴き立てた。ジャーナリストは辞任はおろか、自宅謹慎、蟄居を余儀なくされた。「首長」はそのザマを見てほくそ笑んだ。「あの小男がこんな悲劇に襲われるのは当然のことなのだ。なぜならば、我が愛する息子が総理大臣へと駆けあがる道を塞ごうとしたのであるから。『政治生命』だけが奪われ、本当の“命”だけは助けてやったことにむしろ感謝してほしいくらいだ」―――。

 

そして迎えた与党総裁を選ぶ日。「首長」の愛すべき息子は総裁候補として立候補していた。候補は全部で3人。1度は総理になることが成功しながらも、謎の「腹痛」で辞任した男。秘書上がりでそのオタク趣味をテーマにメディア受けはするものの、ここ一番という時には手の震えが止まらなくなる男。そして政治部記者上がりで堂々とした美男子である我が愛すべき息子、である。「勝ったも同然」であった。傷がついていないのは息子だけだったからだ。それに今や、「環境保全」を理由に土木利権を完全掌握するに至った環境政策の所管官庁の大臣すら直前にはつとめていたのである。例の「実弾」を出さずとも、党所属の国会議員たちはついてくるはず、だった。

しかし、である。蓋を開けてみると何と惨敗だったのである。昔から「お坊ちゃま」として育てられ、優柔不断な長男である我が愛すべき息子は、「これがやりたいから総理になるのだ」と明言することが出来なかった。あれほど、そう“あれほど”家で、「首長」の前にて練習させたのに、である。口ごもりがちの息子をマスメディアは冷笑し、選挙戦は一気に前二者の一騎打ちになっていったのである。しかも例の「公衆の面前では震えの止まらない秘書上がりの男」が、インターネット上ではなぜか「総理ならばこの人だ!」と絶賛されている。全国の党員投票ではそうした流れを受けて圧倒的な優位まで獲得すらしていた。

「これはもう、例のブツを出すしかない」

そう思った「首長」は銀行を司っている首都行政組織の幹部へと電話をかけた。ところがそこで思いもよらない返答を耳にしたのである。

 

「申し訳ありません、『銀行』に公安当局が目を付けているという情報が入っており、即座にそれだけの金額を動かすとなると、かえって藪蛇になるかもしれないのです。今は静かにされておく方が良いかと・・・」

この国の国会議員の数と「600億円」。1人あたり割れば1回の選挙で勝ち抜くだけの資金になる計算だった。まずは与党の中でこれをばらまき、次にうるさ型の野党へとばらまく。これによって満場一致の「内閣総理大臣」として我が息子があの壇上で満面の笑みを浮かべるはず、だったのである。ところがそれが今、叶わないのだという。「なぜだ、一体なぜなんだ」―――。

 

事態は「首長」の知らないところで進行していた。そもそも買収される前、外国銀行の支店だった時から、経営不振に苦しむ同行は“この国”では禁じ手とされる「民族系マネー」の溜り場としての役割を果たし始めていたのである。そして「首長」の事実上のマイ・バンクとなってからはなおさら経営不振となり、ついにはこうした「民族系マネー」の温床とまで公安筋から言われるようになっていたのである。その様にして目を光らせ始めていた公安筋の背後には「この国のデモクラシーはこの国の内閣総理大臣によってだけリードさせなければならない」という例の“同盟国”の、敗戦直後からの強い意向が控えていた。だからこそ、600億円はすぐそこにあっても、絶対に引き出すことが出来ないマネーとなってしまっていたというわけなのである。

「大変申し訳ございません、もはや打つべき手は一つしかありません。この銀行の“健全化”を宣言し、他行との合併によって体質の根本的な改善を謳うしか道はないと考えます。そのためには我が地方行政府からの補助も打ち切らなければと―――。言いにくいことではございますが、どうぞお赦し下さい」子飼いであったはずの担当局長は「首長」に電話口でそこまで言い切ったのである。

 

「政界の暴れん坊」とまでかつてもてはやされた「首長」は、ただ一人の“老兵”、いや老人に過ぎなかった。後は、例のコンクリート・トリックでひねり出したマネーで建てた、海辺の豪邸で静かに寄せる波を見ながら余生を過ごすしかないのか。かつて道路を仕切る大臣を務めた時からこのトリックの甘い汁を覚えた自分のこれまでの歩みを懐かしみながら、潰えるしかないのか。

「いや、そんはずはない。まだ打つ手がどこかに、絶対にあるはずだ」―――。そうつぶやく「首長」の声が誰もいない書斎の中で響いていた。(引用終わり)

 

<アメリッポン>への道を突き進む?日本の官僚

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10月 102015

「本当に丁寧に説明すれば、ほとんどの人が賛成しない」というある意味、国民国家主権を放棄する取り決めがTPP(環太平洋経済連携協定)である。 

かつてブレンジスキー元大統領補佐官は今から20年以上前に「アウト・オブ・コントロール」という自著の中で次のようなことを書いている。

アウトオブコントロール

「日本は軍事大国化が世界からの孤立に繋がることを認識している。日本のリーダーたちは、それよりも同盟国で最強の米国と密接に関係を保ち、米国の主導のもとにパートーナー・シップを築くことが望ましい姿だと考えている。その先には太平洋をはさんだ日米コミュニティ=アメリッポンが見える。」 *「アウト・オブ・コントロール」より抜粋

 

この言葉は、もちろん戦後、半世紀にわたって外国軍(米軍)が駐留している国は、君主論で有名なマキャベリーの言葉を引用するまでもなく、政治的にはその属国だが、経済的にもアメリカの完全な属国であるアメリッポンを作ろうとしている大胆不敵な米国の戦略を意味している。戦後、宗主国であるアメリカは、日本の教育をコントロールして日本の優秀な官僚たちを親米、従米に育て上げる見事な仕組みを創り上げてきた。彼らが選挙活動で忙しくて勉強する時間も、その気もない政治家たちを振り付けして、今回の大筋合意に漕ぎ着けたわけである。しかしながら、国民国家のエリート(ベスト・アンド・ブライテスト)を自称する人々が自国の国益(国民全体の利益)より宗主国の利益、自己の権益を優先するようでは、その国の将来は、推して知るべし、であろう。しかしながら、何人もアメリカの覇権衰退という大きな歴史の流れの必然には逆らえないことも忘れてはならない。

 

 それでは、今から4年前TPPについて解説させていただいたレポートから抜粋させていただく。以下。

 

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)は、マスコミ等で宣伝されているような開国政策ではなく、全く逆の現代の集団鎖国政策、米国によるブロック経済、囲い込み政策であり、自由貿易に逆行する政策である。

TPPなどで関税を撤廃すれば参加国内の貿易は促進されるが、他地域との貿易で関税を引き上げなくても相対的に障壁を高める結果となり、逆に保護貿易を招く可能性も高い。

1929年の世界大恐慌後も、特定地域間で経済圏を形成し、その中で貿易を拡大して景気回復を図るブロック経済の動きがみられた。当時の経済協定は宗主国と植民地及び周辺国との間で締結された。代表的な例が当時覇権国のイギリスを中心に1932年に成立したオタワ協定である。これは英連邦国間で特恵関税制度を導入し、連邦外の国との貿易には高関税を課すもので、スターリング・ブロックと呼ばれる閉鎖的な経済圏が形成された。これによりイギリスの対英連邦国の貿易比率は拡大した。米国も関税を大幅に引き上げるスムート・ホーリー法や中南米諸国との経済協定を締結した。一方で植民地の少なかった日本やドイツは、経済圏の拡大を目指して満州や中欧への進出を強め、第二次大戦につながっていった。

tpp 参加国1

TPP参加国?

 *世界最大の債権国である日本にはアメリカだけでなく、中国からのアプローチも当然ある。 

 

(以下引用)

「アジア共同体や海洋協力を 日中友好委で唐氏が提唱2011.10.23 18:17 産経新聞

 

 日中両国の有識者でつくる「新日中友好21世紀委員会」の第3回会合の開幕式が23日、北京の釣魚台迎賓館であった。中国側座長の唐家(=王へんに旋)元国務委員は基調講演で、東アジア共同体の構築を視野に、自由貿易協定(FTA)の推進や海洋上の協力体制の創設を提唱した。

 唐氏は「アジアの大国として協調と協力を深め、多くの利益の接点を探さなければいけない」と日中がアジア一体化に努力すべきだと強調。日中韓FTAや東アジア貿易圏の創設などを提案した。

 また、唐氏は沖縄県・尖閣諸島や東シナ海ガス田の問題などを念頭に、海上危機管理メカニズムの必要性を強調、西太平洋における海洋環境調査やシーレーン(海上交通路)の安全確保も日中合同で実施するように求めた。(共同)(引用終わり)

 

下記にあるように米国のエリート自身がアメリカにすでにリーダーシップがないことを認めている。であるならば、本来、日本は純粋に経済的損得だけを考えてこの問題を考えるべきである。(以下引用)

 

金融危機が出現させたGゼロの世界――主導国なき世界経済は相互依存からゼロサムへ

A G-Zero World

――The New Economic Club Will Produce Conflict, Not Cooperation

イアン・ブレマー ユーラシア・グループ会長 

ノリエル・ルービニニューヨーク大学教授 

フォーリン・アフェアーズ リポート 20113月号

 

市場経済、自由貿易、資本の移動に適した安全な環境を作りだすことを覇権国が担ってきた時代はすでに終わっている。アメリカの国際的影響力が低下し、先進国と途上国、さらにはアメリカとヨーロッパ間の政策をめぐる対立によって、世界が国際的リーダーシップを必要としているまさにそのときに、リーダーシップの空白が生じている。われわれは、Gゼロの時代に足を踏み入れている。金融危機をきっかけに、さまざまな国際問題が噴出し、経済不安が高まっているにもかかわらず、いかなる国や国家ブロックも、問題解決に向けた国際的アプローチを主導する影響力をもはや失ってしまっている。各国の政策担当者は自国の経済成長と国内雇用の創出を最優先にし、グローバル経済の活性化は、遠く離れた二番目のアジェンダに据えられているにすぎない。軍事領域だけでなく、いまや経済もゼロサムの時代へ突入している。

(引用終わり)

経済的な利害だけを考えれば、TPPは日本国民一人一人には、何のメリットもないものである。ただ、世界最大の債権国である日本を参加させなければ米国の戦略にとって何の意味もないことだけは確かである。つまり、TPPは米国の年次改革要望書の仕上げである。

<09年におけるTPP関連諸国のGDP(単位:十億ドル)>

tpp関連諸国のgdp

出典:IMF

上記のグラフを見れば、一目瞭然、TPPとは、日米の問題なのである。

 

*以下、読売新聞より

「TPP大筋合意…交渉5年半、巨大経済圏誕生へ」読売新聞105()

世界経済の4割を占める?

【アトランタ(米ジョージア州)=横堀裕也、辻本貴啓】環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加する12か国は5日朝(日本時間5日夜)、共同記者会見を開き、交渉が大筋合意に達したとする声明を発表した。
 2010年3月に始まったTPP交渉は5年半を経て終結し、世界の国内総生産(GDP)の約4割を占める巨大な経済圏が誕生することになった。
 記者会見に先立ち、甘利TPP相は記者団に「TPPは21世紀型のルール、貿易のあり方を示す大きな基本になる。この基本は世界のスタンダードになっていく」と意義を強調した。議長役のフロマン・米通商代表部(USTR)代表は記者会見で、「成功裏に妥結したと発表できることをうれしく思う」と述べた。
 TPPは安倍首相の経済政策「アベノミクス」の柱の一つ。発効すると、域内でのモノや人材、サービスのやりとりが盛んになり、経済が大きく活性化することが期待できる。日本は少子高齢化で国内市場が縮小に向かう中、米国や新興国の需要を取り込み、新たな成長のよりどころとする。(引用終わり)

 

TPP風刺画

ビジネスマン:「さあ、これで、あなたもマレーシアと商売ができますよ!」

派遣労働者: TPPのせいで、失業生活を送っている俺にはカンケーねー」



*参考資料 

20151008日(ロシアの声)

全世界の中央銀行が前代未聞の速さで米国債を売却しようとしている。ウォールストリートジャーナル紙が報じた。」

 

ドイチェバンク(独中央銀行)国際問題部の主任エコノミスト、トーステン・スロク氏の掴んだデーターでは、米国債市場からの資本引き上げは6月も続いており、過去12ヶ月の資金流失額は1230億ドルに達した。この額は1978年以来、最大。

一連のアナリストらは中央銀行側からの大売りの結果として国債の収入増を予測している。これは、世界経済の将来に対するペシミズムが高まる背景で、より信頼性の高い金融ツールに資金を転換せざるを得ない民間企業からの国債への需要は増えているにもかかわらず起きるだろうと予測されている。多くの資本家らは国債市場の方向転換はすでに起きており、今後は収益性はただ増す一方との確信を示している。

SLJ マクロ パートナーズ LLP社のパートナーで元IMFのエコノミストのステファン・イエン氏は「過去10年、世界の中央銀行が米国債を買い続けたために、米国債の収益性は深刻にダウンしたが、今、見られるのはその反対のプロセス」と語る。

1年前の時点では、世界の中央銀行は米国債のポジションを270億ドルも拡大していたことは特筆に価する。(引用終わり)

 

田中 宇氏「多極化とTPP」という記事の中で実に適確な指摘をしているので抜粋して紹介する。

以下。http://tanakanews.com/151007tpp.htm 

米国は、アジア太平洋諸国とのTPPと、欧州(EU)との協定であるTTIPという、2つの似た内容の自由貿易圏を同時並行的に交渉して設置することで、米国中心の新たな経済覇権体制として構築しようとしてきた。だがTTIPは、24の全項目のうち10項目についてしか米欧双方の意見表明がおこなわれておらず、対立点の整理すら未完成で、まだ交渉に入っていない。EUでは、署名活動として史上最多の300万人がTTIPに反対する署名を行った。

 TPPもTTIPも、企業が超国家的な法廷(裁定機関)をあやつって国権を超越できるISDS条項や、交渉中の協定文が機密指定され国会議員でも見ることが許されていない(米議会では数人が見たらしいが、日本の国会議員は誰も見ていない)など、国民国家の主権を否定する傾向が強い。EUの調査では、欧州市民の96%がTTIPに反対だというが、当然だ。

 すでに書いたように、EUは今後、米国との同盟関係を希薄化して露中への接近を加速し、米単独覇権体制を見捨てて多極型世界の「極」の一つをめざすだろう。欧州がTTIPに同意する可能性は今後さらに低くなる。おそらくTTIPは破棄される。TPPだけが残るが、TPPは拡大NAFTAであり、米単独覇権体制の強化でなく、多極型世界における米国周辺地域の統合を強化するものになる。(米国の中枢には、単独覇権体制を声高に希求する人々と、多極型世界をこっそり希求する人々がいる。ベトナム戦争もイラク戦争も、単独覇権を過激に追求してわざと失敗させ、多極型世界を実現する流れだ。単独覇権型の貿易体制が多極型の体制に化けても不思議でない)

 以前、日本はTPPの交渉に入っていなかった。日本がTPP交渉に途中から参加し、今や米国より熱心な推進者になっている理由は、世界の多極化が進む中で、何とかして自国を米国の傘下に置き続けたいからだ。日本の権力者が国際的に自立した野心を持っているなら、対米従属の継続を望まないだろうが、戦後の日本の隠然独裁的な権力者である官僚機構は、日本を対米従属させることで権力を維持してきた。対米従属下では、日本の国会(政治家)よりも米国の方が上位にあり、官僚(外務省など)は米国の意志を解釈する権限を乱用し、官僚が政治家を抑えて権力を持ち続けられる。近年では、08-09年の小沢鳩山の政権が、官僚独裁体制の破壊を画策したが惨敗している。対米従属は、官僚という日本の権力機構にとって何よりも重要なものだ。

  

TPPは、米国の多国籍企業が、ISDS条項などを使って日本政府の政策をねじ曲げて、日本の生産者を壊滅させつつ日本市場に入り込むことに道を開く。日本経済を米企業の餌食にする体制がTPPだが、日本の権力である官僚機構にとっては、米政府に影響力を持つ米企業が日本で経済利権をむさぼり続けられる構図を作った方が、米国に日本を支配し続けたいと思わせられ、官僚が日本の権力を握り続ける対米従属の構図を維持できるので好都合だ。米企業が日本でぼろ儲けし、日本の生産者がひどい目に遭うことが、官僚にとってTPPの成功になる。官僚が、意志表示もほとんどしない国民の生活より、自分たちの権力維持を大事と考えるのは、人間のさがとして自然だ。

 

日本ではここ数年、国民が中国や韓国を嫌うように仕向けるプロパガンダがマスコミによって流布され、それを国民の多くが軽信している。こうした洗脳戦略も、米国が衰退して中国が台頭する多極化の傾向への対策だろう。洗脳戦略がなかったら、国民のしだいに多くが「米国より中国と組んだ方が日本経済のためだ」「TPPでなく日中韓で貿易圏を作れば良い」と思うようになり、民意主導で日本が対米従属から離脱していってしまう。それを防ぐため、国民が中国や韓国を「敵視」するのでなく「嫌悪」するよう仕向ける洗脳戦略が採られ、かなり成功している(敵視を扇動すると、日本が中国に対して攻撃的に関与してしまうことにつながり、どこかの時点で日中が折り合って和解してしまいかねない)。

 

TPPと並んで、自衛隊が米軍と一緒に海外派兵できるようにする日本の集団的自衛権の強化も、対米従属維持のためだ。先に書いた、カナダ軍が米軍の傘下に入って海外派兵する新体制を作ろうとする米加軍事統合を、日本の集団的自衛権の強化と並べてみると、2つが良く似ていることに気づく。カナダは米国から「多極化の中で国家統合を進めたいなら、カナダ軍が米軍の傘下に入って海外派兵できるようにしろ」と言われ、迷いつつ進めている。それを見た日本外務省が「うちも、米軍の傘下に入って海外派兵できるようにしますので、多極型世界における北米圏に入れてもらって良いですか」と申し出た。米国は了承し、日本は集団的自衛権を改訂した。NAFTA(北米経済圏)の拡大版であるTPPに、日本が何とかして入ろうとしたのと同じ構図だ。

  

今回、TPPの交渉が妥結した一因は、乳製品問題で前回の交渉を頓挫させたニュージーランドを、日本が輸入増で譲歩してなだめたからだ。バイオ医薬品の独占期間の5年+3年の解決方法も日本が進めた。TPPは、日本のイニシアチブで妥結した。

安倍政権を動かしている日本の官僚機構は、多極化が進んで日本が米国圏から切り離される前に米国にしがみつこうと、これまでにない積極性で対米従属を強化している。日本が主導してTPPを妥結に持ち込んだのはその一つだし、説明抜きで無理矢理に集団的自衛権を強化したのもそうだ。日本の主導権発揮を受け、オバマはTPPの妥結を容認した。しかし、中東や対露関係から判断してオバマは隠れ多極主義者であると考えられるので、このまますんなりTPPが実現していくとは考えにくい。10月中のカナダの選挙で右派の与党が負けると、カナダ議会がTPPの批准を否決する可能性が強まる。米議会でも超党派でTPPへの反対があり、来年の大統領選挙で勝ちそうな共和党のトランプもTPPに反対だ。TPPをめぐる戦いはまだ終わっていない。(引用終わり)

米国議会図書館議会調査局文書>

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-7c4a.html

 

TPPでのアメリカの狙いは、関税よりずっと重大な邪魔者であり続けている非関税施策を日本に解除させることにある

 

<市場アクセス>

TPP交渉への日本参加は、アメリカの通商と日本投資における機会を増大する可能性がある。アメリカ合州国の狙いは、米日貿易関係において、関税よりずっと重大な邪魔者であり続けている非関税施策、ある種の政府規制等を、日本に解除させることにある。現在の9ヶ国によって想定され、交渉されているTPPは、日本が維持しているこうした非関税施策の少なくとも一部を対象にすることになろう。もし日本が TPP交渉に参加すれば、アメリカ合州国と日本は、その中でこれら積年の市場アクセス問題に対処することになる、枠組みを持つようになる。

上記項目は、この文書の大分下の方にでてくるが、お時間とお手間をとらせないよう、一番先に貼り付けておく。

以下は、原文の通りの順序。該当文書の6から11ページの部分訳である。(文章末にある数字は、原文中で、原典を示す注番号。)

 

<残された課題とTPP
米日経済関係をいらだたせ続けてきた問題の多くは、TPPの枠内で対応可能かも知れない。アメリカの議員や他のステークホルダーは、もし解決ができれば、日本をTPPにとりこむことへの、アメリカの支持を強化しうる“信頼構築の施策”と見なすことができるであろう、三つの点を特定している。問題点は以下の通り。アメリカ牛肉に対する日本の制限、デトロイトを本拠とするアメリカ自動車メーカーが製造した自動車の日本での市場アクセス、そして、国営の日本郵政の保険と宅急便子会社の優遇措置だ。

<アメリカ牛肉の市場のアクセス>

200312月、ワシントン州で、牛海綿状脳症(BSE、いわゆる“狂牛病”)のアメリカ最初の事例が発見されたことに対応して、日本は、他の多数の国々と共に、アメリカ牛肉輸入禁止を課した。2006年、多数の交渉後、日本は20カ月以下の牛の牛肉を認めるよう制限を緩和した。(韓国や台湾等、他国の中には、30カ月以下の牛のアメリカ牛肉輸入を許可している) アメリカ牛肉生産業者と一部の議員は、国際的監視機関が牛の年齢とは無関係にアメリカ牛肉は安全だと宣言しているので、日本は制限を完全に解除すべきだと主張している。アメリカと日本の当局者間の交渉は、この問題を解決できていない。

20111112日、ハワイ、ホノルルでのAPEC指導者フォーラム会合前の、オバマ大統領との会談で、野田首相は、日本の牛肉輸入規制を改訂し、アメリカ牛肉の市場アクセスを拡大する取り組みが進行中であることを示した。ホワイト・ハウスによれば、“大統領は、こうした初期対策を歓迎し、科学に基づく、この積年の問題を解決することの重要性に言及した。野田首相によって行われている迅速な対策に励まされる思いであり、こうした構想で彼と密接に仕事をすることを期待している。”14 20111117-18日の東京での日本の当局者との会合で、デメトリオス・マランティス米通商部(USTR)次席代表は、アメリカ牛肉に対する制限解除の問題を話題にした。15 201112月、日本は、日本に輸出するアメリカ牛肉用の牛の最高年齢を20カ月から30カ月に上げるという目的で、BSEに関連する規制を見直していると発表した。2012424日に、アメリカ農務省(USDA)検査官が、中部カリフォルニアのレンダリング施設で、この病気のサンプリングをしたものの中で、牛のBSE症例を発見した。USDAは、この牛は、人間の消費用に屠殺したものではないので“食品供給や、人間の健康にとって、決してリスクにはならない”と述べた。16 日本当局者は、最近BSEが発見されたが、アメリカ牛肉の輸出に対する政策は変えていないと発言した。17

 

<アメリカ製自動車の市場アクセス>

自動車と自動車部品関連の貿易と投資は、米日経済関係の中で、非常に微妙な問題であり続けてきた。問題の根は、1970年代末と、1980年代初期、主としてガソリン価格急速な高騰に対応して、アメリカ消費者の小型車需要が増加した結果、アメリカの日本製自動車輸入が急増したことにある。

一方、アメリカ製の自動車の需要は急落した。日本製の自動車輸入制限という形での、アメリカ自動車業界の圧力と、議会からの圧力に直面して、1981年に、レーガン政権は、自発的輸出制限に合意するよう、日本を説得した。日本の自動車会社は、制限に対応して、アメリカ合州国内に製造工場を建設し、高価値の乗用車を輸出することにした。アメリカのメーカーは、日本国内での外国製自動車販売と、アメリカ合州国で製造された日本車でのアメリカ製部品使用を制限する為、日本は様々な手段を使っていると主張した。これらの問題は、1990年代中、二国間交渉と合意の対象とされた。合意は、概して、政府規制が、日本でのアメリカ製自動車の販売を決して妨げないようにするという日本政府の約束と、アメリカ合州国で製造される自動車で、アメリカ製自動車部品の使用を増やすという日本メーカー側の自発的努力という形のものだった。アメリカ政府は、日本へのアメリカ製自動車の輸出促進プログラムを実施すると約束した。

デトロイトに本拠を置く三社の自動車メーカー-クライスラー、フォードと、ゼネラル・モーターズは、日本がTPPに参加する可能性に対し、日本政府の規制が、日本国内の自動車売り上げ中で、彼等が応分のシェアを得るのを妨げ続けていると非難している。彼等は日本の全自動車売り上げ中の、伝統的に小さな輸入車のシェア、約5%に触れている。対照的に、2010年の輸入は、アメリカでの軽自動車の売り上げの26%を占めている。18アメリカ・メーカーはまた、2010年の総売り上げ中の、アメリカ製自動車の0.2%という小さなシェアを指摘している。

とりわけ、アメリカ自動車メーカーは、安全規制と、車検規制と、そうしたものの進展と実施での透明性の欠如が、アメリカ製の車の輸入を妨げていると主張している。アメリカの自動車メーカーは、日本で、自分達の車を販売するディーラーを設立する障壁にも言及した。19 日本側の業界は、アメリカ・メーカーが、日本で需要がある小型エンジン車両を十分な量、製造していないのだと主張している。対照的に、ヨーロッパ・メーカーは、そうしたモデルを多く製造しており、2010年の日本国内販売中で、彼らのシェアは、2.9%である。20

 

<保険、宅急便と、日本郵便>

日本は、アメリカ合州国に次いで、世界で二番目に大きい保険市場である。アメリカに本社を置く保険会社は、市場参入が困難であることに気がついた、特に、生命保険と年金保険。彼等は、日本の国内の保険市で大きなシェアを有する国営郵便制度の保険子会社、日本郵政保険に政府が与えている有利な規制の扱いを憂慮している。日本郵政は、他の業務からの収入で、保険業務を補助している。また、日本郵政の保険は、他の国内、外国、両方の民間保険会社に対するのと同じ規制を受けずにいる。同様に、アメリカの宅急便会社は、日本郵政の宅急便運送会社は、国有の親会社から補助を得ており、それが、競争上の不公平な優位性を与えていると非難している。

 

<日本の環太平洋連携協定への参加可能性と、その意味あい>

2007101日、当時の小泉純一郎首相政権は、日本郵政の改革と民営化を導入し、彼の政権の主要目標とした。ブッシュ政権と多くのアメリカ企業、特に保険会社は、こうした改革を支持した。しかしながら、民主党が率いる後継政権は、改革を巻き返す措置を講じた。2012312日、政府は規制の要求を緩和する法案を提出し、2012427日、日本の議会が、法案を法律として成立させた。業界報告や他の意見によれば、法案は小泉政権が導入した改革を逆転するものだ。21 法案は、与党の民主党と、二大野党、自由民主党 (自民党)と公明党議員達による妥協パッケージだとされている。22

 

<アメリカの全体的目標>

日本のTPP参加の可能性は、様々なアメリカの貿易、外交政策目標に関わっている。アメリカ合州国は、201111月のTPP参加の可能性を追求するという野田首相の声明を積極的に歓迎した。しかしながら、USTR ロン・カークは下記のように明記している。

交渉に参加するためには、日本は貿易自由化のTPPの高い水準に合致する用意ができていて、農業、サービスと、製造業に対する非関税施策を含む障壁について、アメリカ合州国が関心を持っている特定の問題に対処しなければならない。日本のTPPへの関心は、この構想の、この地域に対する経済的、戦略的重要性を実証している。23

 

<市場アクセス>

TPP交渉への日本参加は、アメリカの通商と日本投資のおける機会を増大する可能性がある。アメリカ合州国の狙いは、米日貿易関係において、関税よりずっと重大な邪魔者であり続けている非関税施策、ある種の政府規制等を、日本に解除させることにある。現在の9ヶ国によって想定され、交渉されているTPPは、日本が維持しているこうした非関税施策の少なくとも一部を対象にすることになろう。もし日本がTPP交渉に参加すれば、アメリカ合州国と日本は、その中でこれら積年の市場アクセス問題に対処することになる、枠組みを持つようになる。

 

<ルールに基づく貿易の枠組みと、公平な紛争処理>

アメリカ合州国と日本が過去に使ってきた二国間の枠組みの欠点の一つは、そこに正式な紛争処理機構がないことである。例えば、アメリカ製自動車と自動車部品の日本市場アクセス、半導体の日本の貿易慣習や、建設サービスの日本市場アクセスを含む1980年代と、1990年代の、多数の貿易紛争は、アメリカによる一方的な行動の脅しをともなう、全体的な関係をむしばみかねない、深刻な政治問題と化した。

紛争は通常、瀬戸際で解決されたが、日本の貿易慣習の意味ある変化や、対象になっているアメリカの製品輸出の大幅な増加をもたらさないことが多かった。TPPは、WTOを越えるが、問題解決において、11の対決の役割を小さくするよう、WTOで用いられているような、公平な複数メンバーの紛争調停機構を用いる可能性の高い、相互に合意した一連の規則を提供することとなろう。

 

TPPの強化>

アメリカから見て、日本は、TPPの経済的重要性を増すだろう。TPP(オリジナルの9ヶ国プラス、カナダとメキシコ)がカバーするアメリカ商品の貿易額を、2011年データに基づく、34%から、39%に増大するだろう、また、TPP内でのサービス貿易と、外国投資活動も増大するだろう。(1参照) 日本は、TPP加盟国(カナダとメキシコを含む)占める世界経済でのシェアを、約30%から、38%に増大させるだろう。

日本の参加は、TPP内の多くの問題で、アメリカの立場を強化する可能性がある。アメリカ合州国と日本は、以下を含む目標を共有している。知的財産権の強力な保護、外国投資の保護、貿易を促進する明確な原産地規則、サービスの市場アクセス。(終わり) 

 

*基軸通貨ドルベースで見た日本経済:見事なまでに世界経済でのウエイトを下げている。

 アベノミクスの裏面である。


 

ドルベースで見た日本のGDP

*日本はこの10年で500兆円規模もの対外資産を増やしている。

 財務省は毎年、本邦対外資産負債残高の数字を発表している。それによれば、日本の対外資産残高は、平成16年末が433.9兆円、平成26年末が945.3兆円である。その差額は511.4兆円にもなる。日本はこの10年間にて500兆円規模の資産を海外移転している。

 なぜ、こんなにも巨額の国富移転が行われているのか、その主な要因は、円高になったとき、日銀は円売りドル買いオペをやって、そのドルにてせっせと米国債を買っているからだ。政府日銀がやっていることは、結局、米国の財政を日本国民の資産でサポートしているということに他ならない。ここまで対外資産が膨らんでいるのは米国から日本への資産還流、すなわち、日本の持つ米国債の償還が行われていない事も意味している。

 要するに日本は米国に累計945兆円ものおカネを貸しているのだが、それ(元本)が返済されていないということを意味している。

○平成16年末現在本邦対外資産負債残高(財務省資料)

https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/16_g5.htm

○平成26年末現在本邦対外資産負債残高(財務省資料)

https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/2014.htm

 

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