健康立国と地方再生

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1月 112017

中島みゆきさんの名曲に「命のリレー」という歌があります。その中に印象的な一節があります。「この一生だけでは辿り着けないとしても、命のバトン掴(つか)んで願いを引き継いでゆけ」と、いうものです。命を引き継いでいくのに一番大切なものは、言うまでもなく私たち一人一人の健康です。

ところで昨年、政府が第四次産業革命を目指して発表した「日本再興戦略2016」のなかで、<世界最先端の健康立国>を高々とその目標に掲げていることをご存じでしょうか。官民戦略プロジェクト10として1.4次産業革命(IoT・ビッグデータ・人工知能)、2.世界最先端の健康立国へ3.環境・エネルギー制約の克服と投資拡大、4.スポーツの成長産業化、5.既存住宅流通・リフォーム市場の活性化、6.サービス産業の生産性向上、7.中堅・中小企業・小規模事業者の革新、8.攻めの農林水産業の展開と輸出力の強化、9.観光立国、10.官民連携による消費マインドの喚起策等が取り上げられていますが、日本における第四次産業革命の本命は、日本の健康問題を今までにないイノベーションで根本的に立て直し、大きく進化させることではないでしょうか。現在、租税負担率と社会保障負担率を合計した国民負担率は、昭和45年の24.3%が平成28年には43.9%、財政赤字を加えた国民負担率は50%を超えています。もし、国民一人一人の健康をイノベーションで大幅に増進させることができれば、国民負担率を大幅に減らすことができます。そのためには、私たちのライフスタイルや政府との関係、社会保障、社会インフラ、そして産業や職場まで根本的に変える必要が出てきます。つまり、日本の足元からのイノベーションを、健康を通じて行うことができるわけです。こうした健康イノベーションが日本で起きれば、グローバリズムによる利益追求が行き詰まりを見せている現在の世界に向かって健康で持続可能性のあるライフスタイルの新しいモデルを提供することにも繋がっていきます。もちろん、健康イノベーションは現在、山積する社会問題を解決する方向で進めなければならないことは言うまでもありません。そこで、目指すべきは、ストレスのない職場、病気にならない生活、安心できる社会インフラの三つでしょう。強制捜査まで入った電通の過労死問題に象徴されるように多くの疾病や不調は、職場のストレスが生んでいます。21世紀にふさわしい経営革命、働き方革命を起こせば、職場のストレスを大幅に減らすこともができるでしょう。一番大事なのは、あらゆる分野の情報やイノベーションを通じて確立された病気にならない生活の知恵を国民全体で共有し、実践していくことでしょう。ここで問題になってくることは、「今だけ、自分だけ、お金だけ」の20世紀的な価値観を乗り越えることができるか、どうかです。そのためには、私たち人類の長い歴史には競争原理だけではなく、共生原理も太古から厳然と存在していたことを思い出す必要があるのかもしれません。また、安心・安全な衣食住空間を可能にする社会インフラが健康増進には欠かせないことは言うまでもありません。資源、エネルギー、交通、通信、教育、職場、住宅などあらゆる社会インフラを健康増進の目的に向けて再構築していく必要もあります。

これから、地方にはヘルスケア分野のエコシステム作り、食、農、観光、地域特性に根ざしたスポーツなどの地域資源等を利用した複合型の産業育成が求められてきます。医療ツーリズム、ホスピス活動等はこの地域でも数年前から関心が持たれてきました。その意味でドイツの統合型リゾート構想であるバーデン・バーデンを越えるものが東三河から生まれても不思議ではありません。いずれしろ、人間にとって一番大切なことは、命のリレーです。

*東愛知新聞に投稿したものです。

地方分権と消費税について考える

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1月 112017

ご存じのように、財務省は消費税の社会保障目的税化にまい進しています。

財務省のホームページには、次のような説明が掲載されています。 

「今後、少子高齢化により、現役世代が急なスピードで減っていく一方で、高齢者は増えていきます。社会保険料など、現役世代の負担が既に年々高まりつつある中で、社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中することとなります。特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいと考えられます。」 

その裏には、どのような意図が隠されているのでしょうか。それには消費税について基本的なことを考えてみる必要があります。消費税は1954年にフランス大蔵省の官僚モーリス・ローレが考案した間接税の一種です。消費税を定義すると次のようになります。「消費税は、財貨・サービスの取引により生ずる付加価値に着目して課税する仕組みであることから、欧米では、VATValue Added Tax/付加価値税、もしくは、GSTGoods and Services Tax/物品税と呼ばれる。」

サービスの対価として課せられる「応能税」的な性格を持つ消費税は、細かなところまで住民へのサービスが行える地方に納められ、地方の財源にするのが、海外では常識となっています。(日本でも1.7%が地方消費税となっています。)つまり、市民に対して基礎的なサービスを提供しているのは、地方なので、地方税にするのが合理的だという考えが根底にあるわけです。ところで、本当に地方分権を実現するには、1520兆円程の国から地方への財源委譲が必要だと試算されています。これほどの巨額の財源委譲を可能にするものは、消費税以外には考えられません。つまり、真の地方分権を実現するためには、地方自冶体の基幹税として消費税を国から地方へ財源委譲すべきだということになります。しかしながら、民主党政権から自民党政権に変わっても消費税の社会保障目的税化が財務省主導で着々と進んでいます。たしかにそうすることによって、将来税率を上げるときに社会保障の財源が足りないことを理由にできるので税率を引き上げやすいということ、何よりも消費税を国税として固定できるという財務省にとっては大きなメリットがあります。

 現在、日本の税金は、個人所得・法人所得・消費のいずれも、国と地方で分割しています。これは、国が地方の税率まで決める中央集権体制を採っているからこそできていることであり、本当に政府が地方分権を進め、地方に自主課税権を与えるつもりがあるのなら、課税対象を線引きしなければなりません。現在、地方と国の行政サービス比率は64ですが、その財源比率は、46と逆転しています。つまり、現在の国税を地方へ、その分委譲する必要があるということです。その意味で現在、進められている消費税の社会保障目的税化は、地方の時代を実現するための大きな障害になる可能性が高いものです。地方分権を進める意思があるのかが、本当は現在、問われているのです。

*東愛知新聞に投稿したものです。

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