政党政治の終焉

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10月 262017

日本国憲法下で行われた25回目の衆議院議員選挙である今回の総選挙ほど不思議な選挙は今まで、なかったのではないだろうか。

 

そもそも今回の選挙の争点とされた「北朝鮮対応」と「消費税の使途見直し」は本来、超党派の政策領域で与野党全員が問題を共有すべきテーマであり、今、為政者が緊急に有権者に問うべき争点ではないはずである。もし、本当に北朝鮮情勢が危機だと認識していたら、解散・選挙で政治空白をつくることはできないから、実際にはそのような情勢把握をしていないことも明らかであろう。また、選挙結果を見ても公示前に与党(自公)で318議席あった議席を313議席にしたことに何の意味があったのだろうか。憲法改正の発議をするためだったら、解散する必要は毛頭なかったはずである。大手メディアも指摘していたが、野党の臨時国会召集要求にも3ヶ月応じず、質疑なしで臨時国会を解散する大義が今回の解散・総選挙にあったとはとても思えない。また、「森友・加計問題隠し」という指摘も一部にはあるが、これも、新しくできた立憲民主党から今後、国会で追及されることは必至だから本質的な意味があるとは言えない。強いて言えば、消費税をアップする承認を有権者から得たと言えるぐらいである。通常、衆議院議員選挙には600億円以上、かかることを考えると、とても今回の選挙にその価値があったとは、考えられない。さらに今回の解散総選挙では、信じられないことが起きている。数年前まで政権政党だった野党第一党が、小池百合子東京都知事という稀代の劇場型政治家の手によって一日で崩壊するというおよそ、政党政治が健全に機能している民主主義国家では考えられないことが起きたことである。小池氏は、花粉症をゼロにするとか、原発ゼロなのに、再稼動はO.Kとかいう意味不明な公約を掲げ、挙句の果てに選挙前に自民党との連立を言及、名目は政権選択選挙である衆議院議員選挙を大混乱させた。  

 本来、政党政治は政策に応じて政党党派がつくられてこそ、意味がある。だが日本の政党は政策によって分かれていない。中選挙区時代は、自民党一党支配が続いたが、自民党は幅の広い政策を持った派閥の連合体であったので、それぞれの派閥が交互に総裁を出すことによって擬似政権交代のような役割を果たすことができていた。その派閥の弊害が言われ、推進された政治制度改革の末、行き着いた小選挙区比例代表制だが、現在、起きているのは野党の分裂であり、与党である自民党の政策の幅の硬直化である。目指した政権交代ができる政治基盤の確立には、ほど遠いことは間違いない。たしかにこの制度下で一度、20097月民主党政権による政権交代が起きたが、対等な日米関係を標榜し、日米関係の見直しを目指した鳩山政権は戦後、確立された戦後レジームに踏み込むことは許されなかった。その結果、政権与党であった自民党と同様な政策を民主党が採用したことは、周知の通りである。要するに日本では、与党がどの政党であっても同じ政策を求め、野党がどの政党であってもそれに反対するということである。例を上げれば、民主党は消費税増税に反対して選挙に勝ち、政権をとったら増税。自民党はTPPに反対して政権をとったらTPPに積極参加。このように現在、戦後民主主義をまがりなりにも支えてきた政党政治は機能不全の危機的状況に陥っている。

*東愛知新聞に投稿したものです。

情報が世界を変える

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10月 102017

少し、歴史を振り返ってみましょう。1987年ソビエト連邦最高指導者ゴルバチョフによって行われたグラスノスチ(情報公開)は、<ノーメンクラトゥーラ>と呼ばれる共産貴族の豪華絢爛な暮らしや汚職なども暴くことにつながっていき、国民の反共産党感情を一気に高め、ソビエト連邦解体への道を推し進めていく大きな原動力となりました。驚くべきことにグラスノスチ(情報公開)からソ連崩壊まで、たった4年の歳月しか要しませんでした。このように情報というものは、大きく社会を動かす力を持っています。

 ところで、昨年のアメリカの大統領選挙では、日本のマスコミのほとんどは、ヒラリー・クリントン候補の当選を予想していましたが、なぜでしょうか。

それは日本のマスコミの情報源であるアメリカ三大ネットワーク(ABCCBSNBC)をはじめ、グーグル、フェイスブック等のIT産業のCEOがクリントン女史を支持していたために米国内の状況を正確に把握できないことによって、起こった<ねじれ現象>とも言うべきものでした。例えば、日本では、ほとんど報道されませんでしたが、クリントン女史は、225000ドル(約2400万円)の講演料で20132月にサウスカロライナ州でゴールドマン・サックス社員向けの秘密講演会を行っています。そして、その内容がウィキーリークスによって暴露され、大きな波紋をアメリカ社会に投げかけました。その講演の中でゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファイン会長の質問に答え、クリントン女史はすでに、2013年の時点で、「米国として可能な限り隠密に、シリアに介入するべきだと考えていた」と明言。さらに、「こういうこと(秘密工作)に関して、この国は昔の方がずっと上手だった。今では、ご承知の通り、みんな我慢できない。みんなして仲良しの記者とかに言わずにはいられないのです。『見て、見てこんなことしているの、自分の手柄だよ』って」と述べ、秘密裏に外交戦略を進められない米国の現状を嘆いています。つまり、米国はシリアという独立した主権国家に介入しようとしている意図をはっきり持っていたことが暴露されたわけです。また、国務長官時代のクリントンメール漏洩事件のFBIによる捜査再開というものもありました。これらの漏洩されたメールによって何が見えてきたのでしょうか。現在、ロシアによってテロ組織ISISの終焉が見えてきましたが、2014年当初のクリントン女史から選対本部長ジョン・ポデスタ宛のメールでは、ISISはサウジアラビアとカタールが設立したと書かれ、クリントン財団には、女史が国務長官時代にサウジアラビアとカタールが資金提供していること、この時に国務省がサウジアラビアの膨大な兵器輸出を承認していることまで明らかになりました。また、クリントン女史からシドニー・ブルーメンソール宛のメールでは、リビアのカダフィー排除は、クリントン女史主導で進められたことも見えてきました。つまり、このような不都合な真実を多くの米国人がネットを通して知ることにより、トランプ氏が大統領選挙に勝利することにつながっていったわけです。

現在、日本では衆議院の選挙が行われていますが、これも5月に加計学園の獣医学部新設を巡り、内閣府から圧力をかけられた文書の存在を「あるものをないとは言えない」と明言し、官邸の意向によって「行政はゆがめられた」と告発した前川喜平前文部科学省事務次官の情報公開によって引き起こされたと考えることもできます。このように情報には世界を動かしていく力があります。

 

*東愛知新聞に投稿したものです。

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